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スターチスへ
初めて手紙を書くな。
女の子と文通なんて初めてで何を書けば良いのかわからない。
どんな事に興味があるのか教えてくれ。
じゃあ、またな。
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私とお兄さんは文通するにあたってお互いに本名の記載をしないようにした。
それはお兄さんの領と接する隣国と現在小競り合いが続いているから万が一手紙を奪われた時の保険との事だった。
手紙自体はお兄さんの信頼する商隊が辺境領と王都を定期的に往復するとの事でそちらに任せる事にした。
さっそく届いた手紙は少し雑な筆跡の文面とスターチスのドライフラワーが入っていた。
可愛い花に嬉しくなってしまう。
私は花と手紙を宝箱に仕舞うとさっそく返事を書く事にした。
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レオン様
手紙ありがとうございます。
花もありがとうございます。
私は読書が好きです。レオン様は本は読みますか?
他に趣味があるなら教えてほしいです。
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最初はお互い手探りの文面が続いた。
それで段々要領がわかるようになりかれこれ16年程経っていた。
私はもう21歳になっていた。手紙の相手であるレオン様は35歳だった筈だ。
彼ももう結婚をするのだろうか?
彼は辺境伯の当主だ。跡取りの問題もあるさすがにもう結婚しないといけないだろう。
本当は私が彼のところに嫁ぎたいが私もブルネイ公爵家の時期当主だ。
本当なら当主の孫に継がせるという奥の手もあるが、初代王弟の興した由緒正しい公爵家をそんな未確定な事にするわけにはいかないし、レオン様はもう当主に就いている。今更兄弟に替えてくれなんてもちろん言うわけにいかない。
そもそもレオン様が私と結婚したいと考えてくれるかもわからないが。
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最近ブルネイ公爵家はざわついていた。
私の従妹がこの国の第2王子との間に娘が出来たからだ。
王子とは2ヶ月後に結婚する事も決まっている。
何が問題かというと娘の存在だった。初代国王の直系と初代王弟の当主候補の間の子供。これはこの国においてもっとも高貴と血筋の子供という事になる。
この娘が望めばブルマン王になることも可能だろう。
そんな娘を分家にしておくわけにはいかない。私が当主になるなら私が養子として引き取って時期当主にする事になるだろう。
この話を聞いて、私は諦めていた夢がもしかしたら叶うのかもしれないと思ってしまった。…あの方の妻になるという夢が。