子爵領都クラウゼル~飛竜の村道中
宿屋にあるベッドでは満足出来ない体になってしまった。
突然何言っているんだろうね、わたし。でも、これ本当の話で、宿屋のベッドも地球産に比べたら十分高級布団な感触だったはずなんだけど、なんか物足りなく感じるんだよね。うーん、贅沢は人をダメにする。まさか私が実感することになろうとは…。
でもまぁ、実は領主館を出る前にあのベッドを隅々まで鑑定したから、【創造魔法】で作れるんだよねー。後で作ろう。うん。
ベッドの話はもういい?私にとっては大事な話なんだけどなぁ…。
さて、昨日はワイバーンの依頼が受けられないという現実にうちひしがれて、領都の町をぶらぶらとして時間を潰してから宿屋に帰ったよ。
しかし!宿屋に帰ってきた私はふと思い付いたのだ!
別に冒険者として依頼を受けなくても、勝手にワイバーンに会いに行けばよくね?と!
まったく、思い付いた時は目から鱗だったね。なんでこんな簡単なことを思い付かなかったんだろうね。
他の転移者のことは良いのか?いや、だってどうせ知らない人だし。ちょっとぐらい寄り道しても問題無いよね?むしろ、私より早くこの世界に来ていたんだから、その分私が異世界を楽しむことは当然の権利なのです。なのです!!!(迫真)
なーんてことを考えながら町の外に出た私は、ワイバーンが出たという村方面の道に沿って飛んでいた。
うん。比喩でもなんでもなく、私は今、空を飛んでいます。
いやね。最初の頃は異世界の景色だー!って歩いて楽しんでいたよ?でも、町と町の間は長いし、魔物に襲われる時とかあるし、通りすがりの人に声掛けられるし、とにかくめんどう!
それに異世界の景色もなにも、森やら一面平原やら、地球でも普通にあるし。特別感なんてそんなに無いってことに気付いちゃったんだよね。
そんなわけで、魔法を使って空を飛んでいるよ。周りに人が居ないからか微精霊達が集まってくる。キラキラしてて綺麗だな~。っわわ、風が強くなった!ちょっと集まりすぎだよ!
空を飛ぶスピードは車が高速道路を走るくらい。だと思う。車を運転したことないから分からないけど。たぶんそれくらい。風圧で目を開けるのが辛かったから、風の結界を纏っているよ。
んー。しかし、魔女みたいに箒に乗って飛んだ方が面白いかな?いや、箒の分だけ魔力が無駄か。無駄に魔力あるからやっても良いんだけどね。でも、この世界の魔術師は別に箒に乗って空飛ばないし、目立つからやっぱりやめよう。
なんてどうでもいいことを考えながら、キラキラ微精霊を従えつつのんびりと空の旅を楽しんでいた。ここから飛竜の村(正式な名前ではありません。私が勝手に呼んでいます)へは馬車で二週間以上かかるらしいから結構遠いんだよね。途中に別の村もあるけれど、どうしようかな…。寄っても良いけど、その時の気分にしようか。
結局、道中の村は無視することにした。いやだって、全身黒いマントで身を隠して、フードで顔も見えないなんて目立つじゃん?何を今更とか言わないで。そこそこの人口があって人の出入りも多い町と、人の出入りが少なくて人口の少ない村では、怪しい余所者の扱いだって変わるかもしれないじゃない。
でも、本当の理由は、私が持ってきたベッドで寝たかったからである。村の宿よりも自前のテントの方が落ち着くしね。
しかし、人里から離れるということはつまり、精霊達が集まってくるということで。
精霊に夜だから寝るという概念は無いのか、深夜になってもテントの内外が微精霊達でキラキラとしていた。こんな賑やかな状況で眠れるわけないよね?
ま、寝るんですけどね。【創造魔法】でクラウゼル領主館に泊まっていた時のベッドを一式召喚してと。そこにダーイブ!うほぉおおお!!これこれ!これだよこれ!もうこのベッドじゃないと寝られない!!では、おやすみなさーい。
で、朝になりました。幼精霊達が集まって私のベッドの周りですやすや寝ております。なにコレ?どういう状況?というか、精霊って寝るの?
とにかく、私の上やら隣やらで寝ている幼精霊達をひっぺがして(私はとても大変だったけれど、精霊達は楽しそうだった)朝から疲労困憊になりそうな中、朝食に白米とお味噌汁、焼き魚という一度はやってみたかった朝食セットを用意して食べた。ちなみにデザートはヨーグルトだよ。なんか健康的なった気がする!もちろん、気のせいだけど。そもそも私って病気になるのかな?なりたくないから検証はしないけど、とっても気になる。
そんな人目を避けた空の旅をすること3日間。予想していたよりもかなり早くに目的の飛竜の村が見えてきた。そりゃあ、馬車と違って休憩も少ないし、飛行の魔法による速度と馬車ののろのろがたがた運転を比べるだけ可哀想だよね。ま、早く着く分にはいっか。
さすがにこの村で情報収集をしないといけないから、中に入らないとだよねぇ。面倒事は避けるようにしないと。
ワイバーンまでもうすぐそこだと思った私は、テンション高めで村の中へと入っていくのであった。
あ、飛んだままはよくない。少し遠くで降りてから歩いていかなきゃ。めんどくさ…。




