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子爵領都クラウゼル04

 お茶会を終えて、シアちゃんと一緒に夕食を食べたり、お風呂に入ったりして更には一緒に寝ようとまで言いだしたシアちゃんを説得してようやく一人になることが出来た。


 日も完全に落ちて、窓の外には魔道具の明かりがちらほらと見える程度の明かりしかない。夜でも眩しいくらいの明かりが常にある日本とは大違いだ。今更ながらここが異世界なんだと、私は改めて実感した。


 まずは神様に話を聞いてみよう。私と他の転移者との転移時期のズレについてだ。私は色々とイレギュラーな状況だったのは知っているけれど、神様を経由しないでこの世界に来たのなら早く着くことはあっても遅くなることはないと思うのだけど。ま、聞いてみればわかるか。メール送信っと。


 あ、返って来た。相変わらず早いな。最近は本当に私ばかり見ているんじゃないの?ちゃんと世界全体の管理もしてる?神様の仕事なんて何やっているか知らないけどね。えっとなになに…?


「他の転移者達との転移時期のズレについてはすっかりお伝えするのを忘れていました。悠久を生きる私にとって半年程度など些細なものでしたから。ですが、人間にとっては半年はかなりの月日が経っていることになるのですね。謝罪いたします」


 ふむ。やっぱり神様は転移時期のズレは知っていたみたいだね。まぁ、世界を創ってからずっと管理してるぐらい生きているんだから半年なんて些細な時間だよね。神様の住む世界の時間だって、この世界とは違う時間の流れかもしれないし、これは責めることは出来ないよ。


「悠理さんの転移については、どうやら人間達が本来は1人しか呼べない魔法陣を強引に改良して複数人呼び出そうとした結果起きた不具合のようです。3人まではなんとか偶然に成功したようですが、悠理さんのみ失敗してしまったようですね。本来とは違う異空間の中を漂いながら少しずつこの世界に近付き、転移してきたようなので、私の居る場所にも来なかったのでしょう。この世界ではない別の世界や、最悪の場合、一生を異空間の中を漂っていた可能性もありました。無事にこの世界にこれたのはある意味奇跡とも言えるでしょうね」


 どうやら私は非常に危険な異世界転移の魔法で呼び出されたらしい。まぁ、無事に生きてこの世界に着いたし、それについては良いとしよう。今怒ってもしょうがないことだからね。


「悠理さんが何を考えて、他の転移者達をどうするのかは聞きませんし、止めません。悠理さんはよく自分のことを『異物』と言っていますが、この世界に来て、生きている貴女もまたこの世界の住人なのです。そしてなにより、私の大切な友人です。だから、もし転移者達と争うことなれば、私自身が手を貸すことは出来ませんが、精霊達に全面的な支援をするように働きかけましょう。どうかお気をつけて」


 ふふ。沢山の転移者達がチートを持ってこの世界に来たのだろうけど、たぶん私が一番のチート持ちだよね。なんてたって神様から友人認定されていて、沢山の精霊達から支援してもらえるのだから。


 それにしても、なんで異世界転移の魔法なんだろうね?これっ普通、異世界人召喚の魔法じゃないの?…一応聞いてみる?理由が下らなさそうだけど。


 メールが返ってきた。早いな~。さって内容はっと。


「言われてみれば普通は異世界召喚になりますね。初めて召喚された転移者が転移魔法と表現されていたので、そのままその呼称で呼んでいました」


 やっぱり、実に下らない理由だったよ。じゃあもう転移人でいいや。ていうかどうでもいいわ。


 クラウゼル領都周辺をある程度探索したら予定通り王都に向かおうか。転移人の扱いを聞いた限りでは、その異世界転移魔法とやらをそのままにするわけにはいかないね。


 この世界の物語はこの世界の人達によって綴られるべき。私の考えを変えるつもりはない。


 でも、私の考えを押し付けるつもりもない。転移人達が自らの意思でこの世界の住人として生きていくならば、それはそれで構わないのだ。だけど、話を聞いている限りは転移人達の意思はあまり尊重されていないみたい。


 それが異世界転移魔法によるものなのか、洗脳されたものなのか、はたまた全く別の要因なのかまではわからないけど、まずは転移人達の意思を確認しないといけないね。


 とりあえず目的は決まった。王都に行く→転移人に会う→転移人を呼び出す魔法を壊す。


 最後のは神様から私達を転移させた魔法の説明を受けたときから決めていたことだ。望郷の意識を薄れさすとか絶対にろくなやつが考えたものじゃないからね。しかも、今回の魔法は無理な改良をして4人もの転移人を呼んだ。今後のことを考えても破壊しておいた方が良いでしょ。


 王都であれこれやった後は、終わってから考えようかな。私にはまだまだ時間があるし。それこそ途方もないくらいにね。


 ふわぁ~。真面目なことを考えていたらもうこんな時間。さて、最後にこの魔性のベッドで寝るか~。…これ貰えないかな?ダメもとで頼んでみる?あ、でも対価とか求められたら面倒だな…、


 いろいろ考えながらベッドにダ~イブ!うはっ!ふかふか!幸せすぎて寝てしまう。ここが天国か…すやぁ…



……


………


「本当に行ってしまいますのね、お姉様」


 シアちゃんが潤んだ瞳で私を見詰めてくる。うっ、これはなんていう攻撃か!とっても大ダメージだよ!でも負けちゃダメだ!


 私が鋼の精神でシアちゃんにお別れの言葉を言うと、シアちゃんは本当に残念そうな顔で頷いてくれた。ふぅ。これでもう大丈夫でしょ。


「しばらくは領都に居るのでしょう?その間だけでも、うちの屋敷に居てくれてもよろしいのよ?」


 リナ様からの何度目かの誘いをやんわりと断る。私の意思が変わらないことを察すると、リナ様は「そう」と一言呟いて私に近付くと、手紙のようなものを手渡された。


 中身は冒険者ギルドに提出する依頼完了書と、どうやら王城の見取図のようなものが混じっていた。え?なにこれ?


「今後の貴女に必要になると思うわ。私にはこれくらいしか出来ないけれど、後は任せたわ」


 私は一体何を任されたの?なんだか怖いから笑って誤魔化そう。すると、リナ様も笑って返してきた。ひえ。貴族怖い…。


 ま、リナ様にも何か事情があるみたいだね。城の見取図には本来は一般の貴族では知り得ないような機密情報が混じっていたし。魔法陣がある部屋とか、異世界転移魔法の補助をする魔道具に関する情報とか、ね。


 でも、私はその情報には一切触れずに流すことにする。私は私のやりたいことやるだけ。そこに誰かの意思を混じらせることはないから。


 それからは、シアちゃんの護衛の2人に別れの挨拶をして、最後にまたシアちゃんに別れと再会の約束の言葉を送って私はクラウゼル領主館を後にした。


 今後の予定なんだけど、とりあえずは、リナ様も言っていた通り数日はこの町に留まるつもり。マップも埋めたいしね。


 ということで、今後の活動拠点となる宿屋を探して適当な部屋を手にいれた。そして、依頼達成報告とこの町の依頼を見に冒険者ギルドに向かう。


 冒険者ギルドの扉を開くと、毎度お馴染みの視線に晒される。まぁ、顔をフードですっぽり隠した人なんて怪しいよね。


 この視線には慣れているので、完全に無視して受付に向かう。お、珍しく男の人だ。


「ご用件はなんでしょう?」


 丁寧な言葉使いだけど、やや警戒心が混じっているね。当たり前なんだけど。私はギルドカードを見せて自分が冒険者であることを説明して、依頼達成報告をしにきたと目的を言った。すると、先ほどまでの警戒心が無くなったように朗らかな声音になった受付の人が手続きをしてくれる。


 私が貴族の依頼を受けていたことに驚いたのか、受付の人の表情が一瞬だけ変わるけどすぐに取り繕った。おお、ベテランさんなのかな?


「はい。手続きは完了しました。依頼料は後日ギルドカードに直接振り込まれますので、後程ご確認ください」


 私は受付の人にお礼を言うと、そのまま隣にある依頼ボードを確認しに行く。周りの視線が気になるけど、無視無視。


 んー。面白そうな依頼あるかなぁ。


 お?おー?おー!!


 見付けてしまった面白そうな依頼!ちょっと遠くの村に出た、はぐれワイバーンの討伐だって。ワイバーンだよ!ワイバーン!亜竜ってやつだよね!?ドラゴンだよね!


 是非依頼を受けて見に行きたいけど、依頼のランクがBなせいで受けられない。うぬぬ!とっても残念だけど、諦めるしかないか…。


 私は肩をがっくしと落として冒険者ギルドを後にした。あーあ。ワイバーン見たいなぁ。



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