子爵領都クラウゼル02
トントンとドアをノックする音が聞こえた。私が入室を許可すると、ガチャっという音と共にメイドさんが部屋の中に一歩だけ入って来た。
部屋の中ではフードを外していたから、メイドさんは私の顔を見てとても驚いたような顔をして、すぐに何事も無かったかのように笑みを湛えて取り繕った。さすがプロだね。
「ユーリ様。お夕食の準備が整いましたのでご案内します」
あ~やっぱりかぁ。正直、あの空間で食べてまともに食事が喉を通る気がしないんだよね。適当に誤魔化して断れないかな?
私が無事に護衛任務を終えて疲れが出てきたから食欲がわかない、みたいな感じで適当に理由を付けて断ったら、メイドさんが気づかわし気な表情になって、
「それでしたら、マッサージでもどうでしょう?ここのメイドはユートリナ様の要望でたまにマッサージをすることがありますので、そこそこ上手いのですよ」
と、提案された。うぬぬ。ちょっと惹かれるかも。でも、今は一人にさせてもらおうかな。こういう一人の時間も大切だからね。私が丁寧に断ると、メイドさんが「出過ぎたことを言いました」と頭をさげてから、「では、お食事の方は私からユートリナ様にお伝えしておきます。ゆっくりとお休み下さい」と言って部屋から退出して丁寧にドアを閉めた。
遠ざかっていく足音と聞いて、念のため〈索敵〉で気配を探って人が居なくなったのを確認してからふぅっと溜息を吐く。なんとか食事は回避することが出来たみたい。でも、ちょっとお腹は減ってきたかな。お昼は結局、あのお茶会で食べたお茶請けのクッキーくらいしか食べていないし。
食事は久しぶりに洋食にしようか。というか、パスタ食べたい。ここ7日間はずっとおにぎりだったからね。私がいくら日本人でお米大好きでもさすがに飽きるよ…。お米農家さんには悪いけどね。っとフォローのコメントをしておく。おこめだけに……
さてさて、パスタを【創造魔法】で作って、ソースはどうしよう?ペペロンチーノ、カルボナーラ、スパゲッティ、たらこ、明太子等々…。うぬぬ。どれも捨てがたいな。…よし!決めた!カルボナーラにしよう!半熟たまごを乗せて~♪どうでも良いけど、半熟たまごがあるだけで料理って美味しく見えるよね?たまごの魔力恐るべし。うん。か・ん・ぺ・き☆
では、いただきます。もぐもぐ。いやぁ~美味しい。私ってば料理の天才だね!まさに天災級の美味しさだね☆……
あれ?おかしいな。今日はちょっと冷えるね。温かいパスタで暖まらなきゃ。もぐもぐ。
ごちそうさまでした。ちなみに私の料理の腕は並みだよ。不味くはなく、良くも悪くもレシピ通りって感じ。レシピ通りっていうのも意外に難しいんだけどね。特に料理初心者には。適量とか少々とかお好みでとかなんぞやって思わない?それと出来上がった料理が写真とは違う見た目になって、コレジャナイ感とか味わったことない?私はある!!
料理をしなくてよくて、私の記憶にある料理をそのまま出せる【創造魔法】さん最高です。これからもよろしくね!
そういえば、人間を殺したことで経験値って入っているのかな?ちょっとステータス確認してみようか。
〈名前〉 平野悠理
〈種族〉 人間(異世界人)
〈年齢〉 16
〈性別〉 女性
〈職業〉 冒険者(ランクD)、魔術師
〈ステータス〉
レベル 10
HP 1150/1150
MP 5500/5500
攻撃力 650
防御力 589
魔力 730
精神力1150
素早さ 623
知力 735
器用 640
魅力 900
運 515
〈スキル〉
【創造魔法】【魔法生成】【刀神】【鑑定】【不老】
【精神異常無効】【精霊の祝福】【一騎当千レベル1】
【才色兼備レベル3】【元素魔法レベル5】
【空間魔法レベル9】【魔力操作レベル8】
【孤高レベル2】【索敵レベル5】【隠蔽レベル5】
【瞑想レベル3】【無慈悲レベル2】【速読レベル2】
【魔法陣作成レベル1】【魔力感知レベル3】
【魔力自動回復量上昇レベル2】【魔法剣レベル1】
【攻撃受け流しレベル1】【受け身レベル1】
【攻撃力上昇レベル1】【防御力上昇レベル1】
【素早さ上昇レベル1】【魔力上昇レベル2】
【魔法耐性レベル1】
まてまてまてまて!!
レベル上がって嬉しい!やっとレベル10突破だ!いやっほぉ~い!!ってしたいよ!でもその前にツッコミが多いの!
まず、レベルの10の位が上がるとステータスの上がりが大きくなるのは察していたけど、いくらなんでも上がり幅がおかしいから!バグだよ!特に魅力!200ぐらい上がっているよね!?私はサキュバスじゃないんだけど!?なんで魅力特化なの!?いやまだ精神の方が高いけど。いやいや、何故精神が高いのかも謎だけど!
運は?ねぇ。私の運の上がり低くない?それともこれが普通なの?もうこれネタだよね?私、不運属性ついてるよね?だって上がりが低いんだもん。魅力から分けようよ。分け合う精神大事だよ。助け合いだよ(?)
それと新しいスキル!【一騎当千】って何!?私のスキルは四文字熟語収集でもしてるの!?
ツッコミ3つしか無いじゃんって?3つあるのもおかしいでしょ!?ちょっと神様!?どゆことなの?説明して!
神様にステータスのスクショを撮ってメールを送ってみた。絶対におかしいから修正されるはず。特に魅力とか魅力とか運とか魅力とか…。
あ、返事返ってきた。1日に2度もやり取り出来て嬉しいです?そういうのどうでもいいから!!前から思っていたけど、絶対にこの神様ぽわぽわしてるよね?天然はいっているよね?
っで、返事の結果なんだけど、個性の範囲です。だってさ。いやいやいや。あ、でも魅力はスキルによる成長補正があるみたい。本来は隠し要素的なものだから【鑑定】スキルでも見れないんだって。他の人には内緒ですよって、言わないよ。神様に教えてもらったとか言ったらただの危ない奴だから。最悪異教徒扱い。宗教怖い(偏見)
ただ、スキルによる補正だけじゃなくて、私の場合は精霊達によるアイドル化も影響しているみたい。【精霊の祝福】を持っているから精霊に慕われるのはまだ普通の範疇なんだけど、そこに精霊界トップの精霊王や、始祖精霊とかも交ざっているせいで、ほぼ全ての精霊から熱狂的な祝福を受けているらしいの。そのせいで、あらゆる精霊から愛される存在→魅力の上昇補正に繋がっているんだって。ってちょっと待ってよ!精霊王に何か言ったのって神様だよね?つまり神様が悪いんじゃない!!
そして最後にこう書いてあった…これらの要因が確かにありますが、一番の要因は悠理さん自身の魅力があるからですよ?…いやいやいや…悠理さんはもともと高い精神力持ち、魅力はもともとの高さもありましたが、この世界にきて更にその能力を開花させているのです。もっと自信を持って下さいね?つまり、このステータスの上がり幅の一番の原因は悠理さん自身の力によるものなので、個人の範囲でありバグではありません…いやいやいやいやいやいや…。
ステータスはもういいや。全部神様のせい!はい決定。さて、私の四文字熟語スキルの新しい仲間を鑑定してみようか。なんとなく効果の予想はつくけどね。
【一騎当千】…一対多数との戦闘時に全ステータス上昇。相手の数の多さでステータス上昇値アップ。
ま、予想通りかな。具体的に相手が何体だと効果を発揮するんだろうね?なんにせよ、あって悪いスキルではないし、ありがたいスキルだね。まあ、もともとがかなりステータス高いから恩恵を実感出来るかと言われたら微妙だけど。
ステータスの確認でぐったりした私は、誘われるようにベッドによろよろと近付いていく。今日はもう寝よう。あのヤバそうなベッドで天国にいくんだ。
あと一歩のところまできて、よし飛び込もうとした瞬間にトントンっと遠慮がちに入り口の扉をノックする音が聞こえた。
【索敵】で確認すると、シアちゃんといつもの護衛の2人っぽいことがわかったから、くるりと踵を返してドアの方に向き直ってから返事をした。
「お姉様、お疲れだとお聞きしました。もし良かったら一緒にお風呂に入りませんか?」
イッショニオフロ?一緒にお風呂?シアちゃんと一緒にお風呂!?
って、ちょっと私危ない奴になってるわ。落ち着け~。そういえば、この世界は魔法がある世界で、洗浄魔法っていう汚れとか臭いとかを取り除く【生活魔法】っていうスキルが一般の人でも持っているから、どの建物の中もわりと清潔で人々の身だしなみも整っている人が多いんだよね。だから、お風呂は体を洗うためのものというよりは、一部の人だけが持っている娯楽のようなものみたい。一部って表現したけど、大概は貴族だね。そしてこのお風呂という存在も昔の転移者が普及したんじゃないかなと私は睨んでいるよ。
お風呂についてはいっか。今はシアちゃんの話を聞こう。私がドアを開けると、私より少しだけ目線が下(といってもほぼ変わらないけど)のシアちゃんの青い瞳を目が合った。私が疲れて食事も取っていないことを心配している様子がとてもわかる。実はバッチリ夕食たべましたとか言えない。
「お姉様はお風呂についてあまり馴染みがありませんか?温かいお湯に浸かって体を温めて疲れを癒すことが出来ますよ。是非、ご一緒しましょう?」
ニコリとほほ笑んだシアちゃんの誘いに私は二つ返事で了承した。こんな可愛い子とお風呂に入れるとか役得だよね!あ、もちろんだけど、私はいたってノーマルだからね?ただ、可愛い女の子の入浴シーンとか男女問わずご褒美だと思わない?テコ入れともいう。
…
……
………
いや~久しぶりのお風呂良かった~。あと、シアちゃんはやっぱりスタイル良かった。あれでまだ12歳とか信じられない。私も散々褒められたけど、どうせステータスせいだし。胸負けてるし…ぐぬぬ…。
えっ?入浴シーンは?テコ入れ回なんじゃないのって?そんなことしか考えていない人達にシアちゃんと私の入浴シーンを晒すわけないでしょ?だからカットします。苦情は受け付けません。
しかし、服を脱いでお風呂に入っている時にシアちゃんから恐ろしい言葉を頂いたよ。
「初めて会ってから綺麗な方だと見惚れていましたけど、ここ最近はお姉様を見ているとなんだかドキドキしてきてしまいます」
って、とても潤んだ目付きで言われた時はヒヤッとしたね。私のレベルが10になって魅力の数値も大幅に上がったのが原因だと思うけど、危うくシアちゃんが何かに目覚めてしまうところだった。あぶないあぶない。しかし、異性にさえここまでの威力がある魅力値にも困った物だね。これで【魅了】とかのスキルがあったら違うチート無双が出来そうだよ。絶対にやらないけど。あと絶対に覚えないでね【魅了】スキル。絶対だよ。フリじゃないよ!!
そろそろ本気で対策を考えないとかなぁ。ステータスを下げる魔道具とか無いかなぁ?本物を見ないと【創造魔法】でも作れないからなぁ。ステータスを下げるとか明らかに呪いの装備っぽいから、正規で売っていることはなさそう。うぬぬ。何の対策も思い付かなかったら、最悪は神様ねだりをしてみようか。メールで対策を聞くくらいは良いよね?良いんだよ!
魅力値の対策をあれこれ考えながら、私はベッドにダイブした。すると、まるで雲の上かのようにふわふわとした感触に一気に思考が吹っ飛んだ。これ凄いわ。欲しい。持ち帰りたい。寝ている場所が沈み込んでそのまま体を包むような感じとマシュマロのようにふんわりした感触がどんどんと私を堕落させていくような錯覚を覚える。これはヤバすぎる。人をダメにするなんてものじゃない。これはそう、人を堕落させる呪いのアイテムだよ!あ~もうダメ。このまま寝ます。おやすみなさい…。あ~~……




