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ガーデン・オブ・ガーディアン 〜Forbidden flower garden〜  作者: サムソン・ライトブリッジ
~一章 野望の剣士編~
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~第一章 野望の剣士編~


「──である事からこの国は今は目立った戦争は無いが、逸脱(いつだつ)の者による被害は近年増しており、各大陸では行方不明者が多数出ていたり、逸脱を狩ろうとし、返り討ちにあって命を落とす冒険者も多くはない……」


「zzzz……」


今日も長々と退屈な座学を、師匠はその白ひげを揺らしながら俺達に聞かせていた。まあ俺からしたらそれはお昼寝タイム、厳しい剣の修行の合間にある休息の時間だ。


「こら! バッジョ! 寝るな! 」


師匠が怒鳴り声を上げる。


「……ぁうす。起きてますよ、師匠……」


寝ぼけた声で返事をする俺に師匠の拳が飛んできた。ゴツンと鈍い音が教室に響くと、


「うおおおッッ!! 痛ってえええええ!!」


頭の中で鐘が鳴り響くが如く、痛みが電流のように走り、ぐわんとした音が体内で反響すると、俺は飛び上がった。


その様子を見てた俺の相棒のディーノが、ふふふと鼻で笑う。

毎日同じやり取りを目にしてる教室のみんなは慣れたように呆れつつも笑うと、師匠は、


「いいかバッジョ! 剣の腕だけでなく、文武両道でなければいざと云うときに困るのだ。だからお前には学業をもっと頑張ってやる必要がある。少しはディーノを見習ったらどうだ。ディーノは剣の腕もさることながら、学業もこの街で一番の成績じゃぞ!」


「へいへい。そりゃようござんすね」


「真面目に聞けいッ!!」


ゴツン


「痛たたたたたたたたたたた!!!!」


昔からの幼なじみの俺とディーノはよく比較される。相棒は頭がすこぶる良くて、剣の腕も抜群だ。おまけに高身長のスタイル抜群なこいつは自慢の青髪をなびかせながら、その前髪から見え隠れする甘いマスクを輝かせ、女性からも人気高い。この『セーリエ』の街を代表するイケメンであり、百年に一人の天才なんて呼ばれてるスゲーやつ。


対して俺は同じ17歳だというのに、中背で目付きの悪い顔した野郎で、寝癖のように立った赤褐色の髪しか目立つ所が無いような男だ。学業はこの街で歴史上類を見ない程の頭の悪さだと言われ、セーリエの粗大ゴミなんて言われてらあ。唯一の取り柄は剣の腕だが、それも最近はディーノに連敗していて悔しさで肩がもげそうな思いをしてるが、不思議と俺なんかと仲良くしてくれるディーノを見るとやはり憎めない。


仲良くなったのはお互いが剣の腕を極めんとする同胞である事もそうだが、俺とディーノには共通の夢があった。

それはこの世の何処かにある『禁断の花園』を探しだし、この孤児院で育った俺とディーノが世界で初めての発見者になって有名になることだ。


そして何でも願いが叶うと言われているそこで、この世から俺達のような孤児がいなくなる事を願う。ちゃんと親の元で子供達が育つように幸せをこめて願いたい。そんな野望が俺達にはあった。


ゴーン──ゴーン。


夕刻を過ぎる頃、街の高台から鐘が鳴る。それはこの退屈な座学を終わらせる合図でもあった。


「もうこんな時間か、本日の授業はこれまで! 各自さっさと寝ておけ、明日も明朝から剣の稽古じゃぞ!」


今日も一日が終わった。朝から激しい剣の修行を終え、昼過ぎから座学をするルーティンは俺とディーノがこの孤児院に来た十二年前から何も変わらない。


俺達は物心ついた時には街の片隅で夜風に晒され凍えていた。そこにブレシア師匠が現れ俺達を拾ってくれたのだ。


師匠には返しきれない恩がある。そのためにも俺と相棒は禁断の花園を探しだし、金銭的に厳しい中で孤児院を経営する師匠や、年中腹をすかせた子供達にもっといい生活をさせてやりたい──なんて思ったりもする。


「バッジョ、早く飯を食いに行こう。今日は肉が出るらしいぞ」


「……ああ。そうだな腹へってしょうがねえや」



相棒が屈託のない笑顔で言う。こいつ、こう言う子供っぽいとこがあるからやっぱ好きだわ。



こいつと出会えた事が、俺の今までの人生の中で大きくなっている。前向きに考えればここの孤児院に来たことは悪い話ではなかったのかもな──。




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