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ガーデン・オブ・ガーディアン 〜Forbidden flower garden〜  作者: サムソン・ライトブリッジ
~一章 野望の剣士編~
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十四話 足りないもの


一瞬の隙──! よもや自分の炎が、剣技で巻き起こった風の塊に消されるとはつゆにも思わないコーリーの動揺を突く一閃が、ディーノの剣から閃いた!


「終わりだッ!!」



ザンッッッッ!!



「よっしゃあ! やったぜ相棒!」


ディーノの剣が、コーリーの肩口から袈裟斬りにすると、


「これは……!」


斬ったはずのコーリーは手応えが皆無であった。その姿は揺れる陽炎と消え、実体無き偽物は炎の塊であった。


「キャキャキャキャキャキャ!! 危ない危ない。少しひやりとしたよ……『ファイヤーストーム』!」


急に背後から現れたコーリーの手から炎の渦が打たれた。


「うおおッッ!!」


「くそっ!」


振り向くと同時に、間一髪でそれを避ける。コーリーは騙された俺達を見てニヤニヤと笑みを隠しきれていないようである。


「てめえ! 分身なんてしゃらくせえ事してんじゃねえ!!」


「キャキャキャ! 倒したと思ったかい? ざ~んねん。僕は器用なのさ。君達なんかの攻撃はいくら頑張っても当たらないよ!」


コーリーは軽快な足取りを見せると、指を振りながら挑発してきた。


「くそったれ! ぶったぎってやらあ!」


シャィィィィィィン! シャィィィィィィン!


頭に血が昇る俺は、一撃で決めるため月光剣を研ぎ始める。


「ん~? 面白い事をするね。でも君、研いでる暇なんてないよ? そーれ! 『ファイヤードラゴン』!」


コーリーは手を扇ぐと、炎を纏う無数の竜が俺をめがけて飛んでくる──!


「だーーッ! これじゃ研げねえ!!」


「バッジョ! 研ぐ事にこだわるな!」


ディーノが竜を避けながらアドバイスする。月光剣はその真価を発揮するのに時間がかかる。だからこうやって止めどなく不規則に攻撃してくる敵は天敵なのだ。


「(どうする……! 風弾はもう読まれている。他の阿吽の技も炎が相手では分が悪い……)」


窮地である。だが、二人のその眼は決して諦めることの無い炎が灯っている。それは敵の下品な炎なんかでは無い、明日を切り開く熱き血潮と闘争心による炎である。


「──さあて、そろそろ終わりにしようか。僕もあまり遊んでると怒られちゃうからね。それに君達にもそろそろ飽きてきちゃった。道具は遊び終わったら灰にしないとねえ!」


コーリーは子供がおもちゃに飽きたように、俺達に興味を無くすと、指を立ててまるでマッチのようにその先から炎を立ち上げた。


「最後に見せてあげよう。これが僕の本気だ! 『フレイムミラージュ』!!」


何体もの人の形をした炎がコーリーの周りに現れると、一体一体が本体のコーリーそっくりに形を変える。十数人の影武者となった炎はもはや本物がどれだかわからない状態である。


「キャキャキャキャ!! これで終わりだね! 仲良く地獄に送ってあげよう!」


「ぐうぅ! なめやがって……!」


ふらつく足で俺は言う。分身をしたコーリーは俺達をぐるりと囲むと、両手に炎を宿して構えた。


「ここで終われねえぞコラ……! 勝つのは俺達だ……!」


背中から燃えるような痛みが続く中で、我慢強く啖呵を切る。そんな限界が近づく中でディーノが俺の肩を掴んだ。


「──バッジョ。ブレシア師匠の教えだ。わかるな」


「へっ、──『窮地こそ真価の時なり。力で勝てぬならある物を使え、技で勝てぬなら頭を使え』だろ?」


「そうだ。──俺を信じろ。阿吽(あうん)で合わせる……!」


「ガッツあるしッッッッ!!!!」


気合いの一声を入れる! 覚悟の剣士は互いに背を預け、囲む敵を見渡すと、背から伝わる相方の鼓動と共に剣を左右に構えた──!


「「────阿吽」」


「キャキャ!! また風でもぶつけるか! だがこの数では無駄だ! 上を見ろお!」


二人の上空には何十もの炎の竜がいまかいまかと、炎の息吹を吐きながら待ち構えていた。


「この攻撃に死角はない! さあ燃えろ燃えろ燃えろお!! 踊る火ダルマになるがいいいい!!」


全方位から炎の竜とコーリーが襲ってくる──!



「──いまだ!! ティエナ!!!!」



「ディーノ!! 正面上から二番目奥!! そこよ!!!!」



「心得た──ッ! 静ノ断ち、『波雲(なみぐも)』──ッ!!!!」



ズバァァァァァァァァァッッッ!!!!



「──なっ、──馬鹿な…………ッ!!」



高々と波打つ剣は実体を捕らえたッッ! 斬り伏せられた道化と共に、陽炎と分身した無数の虚影は風に溶け、空を泳ぐ紅蓮の竜は空中にて霧散した!!


「ぐっッ…………! かはっ……! ──そうか、あの女……! 真偽を見抜く力か…………!」


地に落ちたコーリーは、胸に刻まれた斬撃から出る血を押さえながら言う。


「やったぜ!! ディーノ!!」


「終わりだな、コーリー。貴様に燃やされた全ての人の仇、討たせてもらう──!!」


ディーノは確実な止めをさすため、剣を再び構えた。


「……キ…………キャキャ!! お前も道づれだああ!!」


コーリーの口から炎が蛇のように出てくると、ディーノに巻きつき、焼き尽くす如く燃え盛る!


「ディーノ!! くそっ!!」


叫ぶ俺はディーノを助けようとしたが、蓄積したダメージからか足がもつれる。


「キャキャキャキャキャキャ!!!! 甘いんだよおおお死ねえええええ!!!!」


「ディーノ!! 受け取ってーー!!!!」


ティエナが何かを投げると、ディーノはそれを右手でキャッチする。そして受け取ったそれを頭上に高く上げ、握り潰した。



ブシャャャャャャャャャャャ



ディーノの頭上から大量の水が溢れると、その身に巻きついた炎が蒸気となって消える。


──それこそは、アクアスの花。この花が彼を助けたのだ。



「なん、だ……って」



「甘かったのは貴様のようだなコーリー」


(したた)る水に濡れた髪を片手でかき上げると、ディーノの視線は鋭く敵を見つめる。


「貴様は初めから勘違いしていた。自分の相手は二人だとな。もう彼女は俺達の立派な仲間であり、信頼し合う友だ。最初から貴様の相手は三人だ……! 今度は貴様が味わう番。本当にこれで終わりだ──!」


ディーノは幻視ノ剣を強く握り、辺りに残る炎に照らす! その剣身は炎の輝きにより、幾重もの赤き刃となりて道化を討たん!!!!



「幻視ノ剣、『(あくた)乱れ斬り』────!」



────シャンッ



それはとても静かな剣であった。わずかに聞こえた一瞬の斬撃は、炎に心を奪われた道化の身体を問答無用に細切れにした──。



「な、何が、足りな、かった──こ、んな、や、つ、に──」



バラバラになったコーリーは積み木のように崩れた。



「貴様に足りないもの、それは──馬鹿馬鹿しい程に愉快な仲間だ」










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