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ガーデン・オブ・ガーディアン 〜Forbidden flower garden〜  作者: サムソン・ライトブリッジ
~三章 復讐の拳闘士編~
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二十九話 幕間


「はあ、終わってみればだけど大変だったね」


「『はあ』じゃないわよぉ。ギリギリもいいとこじゃない。サンちゃんが勝てなかったと思うとぞっとするわよぉ」


「あはは! そうだね。もうギャンブルはこりごりだ。サンゴーごめんね、あなたにまた助けられたわ」


「ヴィエリィヲ、守ルノガ私ノ使命デス。アノ程度ノピンチ、問題アリマセン」


ガラガラと進む馬車の中で昨日までの珍妙で恐ろしき勝負を語り合う一同。オリゾンの街からほどなく離れた山道を下る最中、大量に買い込んだ食料をつまみながらちょっとした豪遊を私達は味わっていた。


昨日までは空っぽだった財布の中身も今はかなり潤っている。ギャラス町長との闘いにギリギリ勝った私達はその多額の賞金を手に入れ、捕らわれていたサンゴーも無事救うことができた。


……元はと言えば自分達が撒いた種であり、更には決着はサンゴーに任せっきりというていたらくであったが、まあ結果はどうあれ元の鞘に落ち着きお金まで増えたのだ。もちろんもうあんな賭博に熱くなって自分を見失わないよう反省点もあるのを忘れず、肝に銘じてこの旅を続けることは明白であり課題でもある。


「それにしてもサンちゃんよく勝てたわねぇ……。あの状況であたしまじで色々と覚悟してたのにほんとすごいわぁ!」


「あの町長は間違いなく心を読むような能力を使っていたわ。サンゴーには効かなかったのかしら?」


「アノ男ハ、自分ノ能力ニ絶対的ナ過信ヲシテマシタ。ソレガ油断トナッタノデス」


肝が違うというか、淡々とサンゴーは言う。


「あらカッコいい。サンちゃんは身も心も鋼鉄ってことなのかしらぁ?」


「私ハ、人間ノヨウニ複雑ナ感情、心ヲ持チ合ワセテイマセン。ダカラ勝テタノデス」


「……そんなことないよ。サンゴーは私達を助けてくれた。それは『優しさ』や『勇気』に違いないわ。サンゴーは機械だけど人間らしい心を持った特殊なロボットだよ。少なくとも私はそう思う。あなたは使命では無く『友達』を助けるために、友情を持ってその体を動かしたんだよ」


「──友情……ソノワード、複雑デ処理ガ難シイデス。デモ、ナニカ嬉シイヨウナ気ガシマス」


いまいち理解ができてないサンゴーの肩をポンポンと叩きながら、私は鉄の体と肩を組んで今ある現状に感謝し笑った。


「ところでこの馬車どこ向かってるの?」


「あんたそんなことも知らないで乗ってたの……。よく聞きなさい。今から向かうのは『パラカト』、ここに着けばもうちょいで目的地のブリガディーロ遺跡も近づくわぁ」


なるほどと、私はうなづく。資金が増えたことにより馬車が使えるのはやはりでかい。体力を減らすことなく、道にも迷わず目的地に近づけるのはメリットが大きいことに少し感動する。……それでも私はやはり走って向かいたいのが本音だが、オリゾンの街で大ポカやらかした私は強くは言えなかった。


「パラカトって何があるの?」


「そうねぇ。強いて言えば……何もないわぁ」


「田舎ナノデスカ?」


「ずばりその通りねぇ。あたしも地理に詳しい方だけど、パラカトの町は平和なだけで特に物珍しい町では無いわぁ」


バラコフはこともなさげにあっさりと答える。


「なーんだ。あんまりわくわくしないなぁ」


「あのねぇ、なんかある方が珍しいのよぉ。普通の町ってのは平和でなんもないのが当たり前なのよぉ。逆に言えば平和で平凡な方がすごいことなの!」


私はがっかりするが、昨日までのギャンブルタウンのような華やかさに少し目眩がしていたのでもしかしたら丁度いいのかも知れない。それに私達の村だって何にも無いのだから親近感も覚えそうだ。


「パラカトには知り合いもいるからあたしは楽しみねぇ」


「そうなんだ。珍しいね、どこで知り合ったの?」


「前にマスターのバーに遊びに来てくれたのよぉ。商業の関係でヴァスコの方まで流れて来たんだって。本業はパラカトでやってるって言ってたから多分いると思うわ」


珍しく浮き足立つようにバラコフは語る。


「ふー……それにしても昨日の勝負の疲れが何だかまだ抜けないわぁ。あんなに精神すり減らしたの初めてよぉ……。ちょっと横になるわね、パラカトまではまだ距離があるからあんた達も今はしっかり休んでおきなさい」


そう言うとバラコフは荷台に背を預けてすぐ眠ってしまった。


「あらら、よっぽど疲れてたのね。もう寝ちゃったわ」


「バラコフハ、頑張ッテマシタ。今ハ休マセテアゲマショウ」


「ふふ。そうだね。……あら、雨が降ってきたね」


空気の湿りを感じて馬車から顔を出すと、しんしんと小雨が降り始めた。


「──ねぇサンゴー。あなたは何か思い出した? 自分の過去を、その生い立ちを」


「……データ検索……。──ダメデス。記憶回路(メモリー)ハ破損シタママデス。修復デキマセン」


「そっか……」


静かに降る雨の馬車内で、二人は向かい合わせに話す。


「……サンゴー、私は反省してるわ」


「反省、デスカ?」


「そう、反省。今回のことで自分の愚かさを学べたし、あなたを危険な目に合わせてしまった。もしあなたが勝ってなかったら私達は身ぐるみを剥がされて一文無しの放浪者。そしてあなたは悪い大人達にどこかに売られていたかも知れないわ。ごめんなさい」


次第に強くなる雨、その降る雨音と共に私は友に頭を下げた。その様子にサンゴーは不動に佇まい、声をかける。


「頭ヲ上ゲテ、ヴィエリィ。失敗ハ、誰デモアリマス。デモ、前ニ進メルノガ人間ノ良イ所デス」


「ありがとう、サンゴー。もうあなたを危険な目になんか合わせないわ。こんな危険な旅に付き合わせてるんだから、あなたは私がきっちり守る! 今ここに誓うわ!」


私はサンゴーの両肩をがっしりと掴んで決意を固めた。その様子にサンゴーはどこかその変わらぬ鉄の体から嬉しそうに熱を発したのであった。






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