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異世界(この世)は戦場、金と暴力が俺の実弾(武器)  作者: 木虎海人
序章 この世は戦場、小金持ちは悪人の鴨と葱

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バイト



「で、どうするか決めたか?」


「ええ、お世話になりたいと思います。

講習への参加をお願い出来ますか?」


「うむ、良いだろう」

「ガハハハ、宜しくな!」

「宜しくお願いします」


教官2人が差し出して来た手を握る。

なんか思ってたよりフレンドリーだ。


「で、だ。次の初心者講習会は10日後からなのだが貴様はそれまでどうする?

ギルドとしては講習が始まらないと講習生としての生活は保障してやれないのだが」


「げ、どうしましょう?」


あー、講習開始日が決まってるのか、ってそりゃそうだよなぁ。

普通はそうだ。誰にだって予定がある。組織ならその辺は規則があってそれに沿った形で行うだろう。

個別で来た奴を来た順番に教えるよりは、日にちを決めてよーいどんで全員に教えれば一回で済む話だ。

その分人件費も掛からない。手間も掛からない。


「ガハハハ、コゾウよ、講習とは別にギルドが生活を保護してやれる方法がある、聞くか?」


「聞きます。聞かせてください」


この期に及んで聞かないわけにはいくまいよ。

正直野宿は嫌だし、街の外に行くのはもっと嫌だ。


「なに、ギルドでそれまで働けばいい。元々は口減らしを食らい、親元から放り出されたような奴のための制度なのだが、問題あるまい。

やることも難しくは無い、講習開始日前日まで儂らの仕事を手伝え。講習の準備なんかは人手がいるのでな。

儂も手伝いを確保出来て助かる。貴様も寝床が確保出来て助かる。

悪い話ではあるまい?ガハハハハハ」


「それは有り難いのですが、俺以外にも何人かいるんですか?」


「うむ、教官1人に1人までという制限があって誰も彼もとはいかんのだが、今は15人ほど手伝いがおる。

今回の講習はいつもより人数が多くてな。準備に手間取りそうでもう少し手伝いが欲しいと思っていた所だからちょうどいい」


傷顔の教官は真面目な顔でそう答えた。

俺1人教官の中に混じるのはちょっと微妙だ、正直嫌だ。

だが他にも何人かいるんなられはそこまででもない。助かる。


「なるほど・・・

ちなみにいつもは何人くらいで今回はどのくらいの規模なのか聞いてもいいですか?」


「普段は50人といくらかだな。70か80もいれば多いほうだ。

それが今回は十日前の今日現在で120を超えておる」


通常の倍の規模か、ならば特に疑うことは無いな、準備が大変なんだだろう。

裏のある話では無いと思う。

その分手伝いは大変そうだけどそれは仕方無いだろうし。

面倒を見てもらえるなら一生懸命働くさ。

だが確認しておけることは確認してから返事をしよう。


「・・・それは確かに多いですね。確認なんですが今日は十日前なんですか?

どのくらいの頻度で講習を行っているんですか?」



「うむ、初心者用の講習は三ヶ月に一度だ。それが十日後に迫っていてな。」


()()()()ね。

ということは他の講習もあって、そっちの分も何かしら仕事をさせられそうだな。

契約のある前世の仕事とは違って、聞いていない仕事もガンガンやらされそうだ。

なんというブラック企業。

ってほどでもないな。本当にブラックなら即奴隷に堕として働かせる。

生き死にギリギリのラインでこき使うはずだ。

異世界より怖いのが現世のブラック企業だという事実。


「有り難いのでぜひお願いしたいのですが、そんなに大勢寝泊まり出来るのですか?」



「ああ、記憶喪失だったな」


いえ、実は違うんだけどね。

余計なことは言わず黙って続きを聞こう。


「ならば5年前の戦争は覚えておるまい。その戦争でこの第三地区は随分と荒れ果てたのだ。

住人はほとんどが逃げて、建物だけが残った。ここの支部はそんな無人になった比較的無事な建物を囲い込んで作られた。

だから建物だけならいくらでもある。広い故に訓練の場にも困らない。

問題は整備する人の手だな。管理するにも人手が必要だ。

まぁ貴様1人増えたところで問題無いくらいには空きはある」


サラッと言われたけど凄い話だと思いますよそれ?

人がいなくなったから建物だけ貰ったとか。

元の住人が帰ってきたらどうするんでしょうかね?

怖くて聞けない。

考えないようにしよう。


「ガハハハ、ではお前は今から儂付きだ。

十日後までギルドをうろつくときは常に儂の側にいろ。1人でいた場合、とっ捕まっても文句は言えないからな。最も文句などいう間もなく取り押さえられるだろうが、ガハハハハハハ!

とりあえず先に動きやすい服をやろう。その格好では仕事も出来まい、ついでに着替えも必要だろう。

あとは先に寝床を決めるか。

では行くぞ、ついて来い!」


そういうとガハハ髭はさっさと立ち上がり部屋を出て行った。

それに傷顔の教官も続く。

俺も慌てて立ち上がり部屋を出て追いかけた。


「ああ、儂にも1人講習生が手伝いに付いている。後で紹介するが基本は儂らとそやつと組んで仕事をするからそのつもりでいろ」


道中傷顔の教官にそう教えられた。






その後ガハハ髭はギルド支部の倉庫に向かい、そこで今着ている『ぬのの服』よりはまともそうな『作業用のぬのの服』をくれた。教官が着ている物より数段劣るが充分着れそうでありがたかった。

例えるなら虎壱とワゴンに入った服ぐらい違う、が特に今は拘る気もないので問題無い。

虎壱って何だ?と思う人は一度作業服屋に見に行くといい。作業服のブランドですよ。

作業服を着る人たちに人気のブランドで、お洒落で着てる人も多い。

だが間違っても作業服を着ている人をガン見して見ないように。

絡まれても責任は取れませんので。


着替えで何枚かもらえたのでついでに勇気を出して下着もせがんでみたらあっさりもらえた。

これでブラブラから解放される。

ブラブラも開放感有ってたまにならばいいんだけどね。

正直落ち着かない感の方が強いのでもらえて良かった。

ボクサーパンツ派だった俺にはブリーフみたいなシンプルな下着(パンツ)は違和感があるが無いよりは全然良い。そのうち慣れるだろう。

しかしフンドシとかじゃなくて良かった。あれを渡されていたらどうしていいかわからなくなるところだった。

ついでにタオル代わりの布きれなんかも数枚もらえた。

倉庫の中にはまだ色々入っていたのでそのうち信用度が高まった頃にまたおねだりしようと思う。

ガハハ髭はやけに上機嫌に見えた。

意外と人になにかをあげたりするのが好きなのかもしれない。


一通り服が揃うと次は手伝いの作業員が寝泊まりする建物に移動した。

話に聞いていたとおりギルドの敷地内には古い建物が結構あった。

2人の後ろを歩きながらざっと眺めた感じでの感想だが、無駄に広い、が率直な感想だ。

どっかの田舎の大学の敷地かというくらいには広い。

なのに建物だけがあるのだ。

無人になったから確保しておいただけで、現状はあまり使っていないのだという。

壊せば広く使えるのに勿体ないと正直思った。


その中の一棟に案内され中に入る。

ここは男の作業員用の建屋だという。


「つまり女の作業員もいるんですか?」


と食い気味で反応したら傷顔にまた頭を殴られた。痛い。

だって嬉しいじゃん?

仕事での出会いが1番恋愛に発展しやすいと思うのですよ。

特に苦しい環境とか大変な時期をお互い助け合って乗り越えて生活してたりしたらもうね。

「抱いて」とか言われちゃったりしてね、ガハハハハハ。

おっと笑い方が移ったか。


そんな逞しい想像をしてた俺を見て本家ガハハ笑いが炸裂する。


「ガハハハハハ、コゾウ。お前も好きだな!

ならば良いことを教えてやる、今の手伝いはお前を除いて女が9人、男が6人だったか、男はお前で7人目になる。

どこの家も跡継ぎになる男子は外にださんし、次男三男辺りも労働力として残しておく家も多い。長男に万が一の事があった場合の予備も必要だ。

対し女は家長が嫁ぎ先を決めるような家でもなければ、とっとと自立を求められる場合が多い。

家を出てすぐに仕事に就けず冒険者を選択する奴も少なくない。

つまり講習は女性比率が高くなるんだ。励むがいい!

ガハハハハハハハハハハハ」


「!!!

うっす、頑張ります!」


高らかに笑うガハハ髭、喜ぶ俺、それを見て傷顔の教官は呆れたような顔をしていた。

しかし俺は単純だ、女が多いと聞いただけでちょっとやる気が出た。

まぁ数が多ければ俺みたいな40のおっさんでも若い子を捕まえられるかもしれない。

頑張ろう。そっち方面も。

しかしコゾウ呼びはどうにかならないものか。

確かに50前後のこの極道コンビに比べれば小僧だろうが、俺も結構良い歳だと思うんだが。

怖くてまだそこまでは言えないので早めに名前を決めた方が良いかもしれない。

名前があればさすがに小僧呼びはされないと思う。多分・・・・。



その後部屋に案内され、ここを1人で使えと言われた。

部屋には二段ベッドが二つ並んでいる。

あれ先に何人かいるんじゃねーの?と思ったが全員1人で一つの部屋を使っているらしい。


「貴様の部屋はここだが、毎日ここと左右隣の部屋を管理しろ。

ここと隣は貴様の受け持ちだ」


と傷顔の教官に言われた。

つまり部屋を貸すかわりに管理しろということらしい。

管理と言っても掃除したり、雨戸を開けたりそんなレベルで良いらしい。

どっかの用務員とか管理人みたいだ。

まぁそれはそれでいい。部屋も使わないと朽ちる。埃も溜まるだろう。

空気の淀んだ部屋も微妙に嫌だ。

そして二段ベッドが二個あるということは講習が始まると4人部屋での生活になるわけだ。

今のうちに1人の自由を満喫しよう。


「あと夜中は外から施錠するからな」


まるで体育会系の学生寮みたいだぞ。完全に脱走防止策じゃねーか。

学生寮で生活したことないけど。

昔、新入社員研修で泊まりがけで勉強させられたことを思い出した。

それと似たようなものだろうか。

ただあのときは割と自由だったんだよね。

酒も飲んだし、外にも出れた。

仕事の勉強は糞みてーで何の役にも立たなかったが楽しかったな。






作業服に着替えさせられ、次は訓練所に向かった。

着替える時に肉付きをチェックするように見られていたがまさかこのおっさんたち男色のケとかないだろうな?

この辺に襲われるとかなり危険だぞ、逃げられる気がしない。

それでも必死に逃げるけどな、そっちのケは俺には無い。

死んでこの世界に来て生まれ変わっただろうから、色々最初からやり直しだろう。

とりあえず童貞は早く捨てたいが、後ろの処女のほうは死ぬまで取っておくつもりだ。

死んで転生したからとはいえ、新しい性癖に目覚めるつもりは微塵もない。


俺は女の子といちゃラブがしたいのだ。

ハーレム?アホ言っちゃいけないよ。俺は行きずりでたくさんの女性と遊びたいのだ。

ハーレムなんてトラブルの種、修羅の道じゃねーか。

取っ替え引っ替え、時にキープ、最低だな。

だが最高だ。

もう一度言おう、俺に男色のケは無い。

ガハハ髭のほうは女の話に乗ってきたから大丈夫だとは思うが。



・・・・両方イケたらどうしよう。

うーん、きっと大丈夫。

たぶんこうゆうゴツいおっさんはちっちゃい可愛い男が好きなはずだ。

俺みたいなむさいゴツい系のおっさんは狙われない、はず・・・・・・

狙われたら他の6人の手伝いを差し出して逃げよう・・・・許せ。








今日は今向かっている訓練所で作業をすると言われた。

基本的にはガハハ髭の側で言われたことをしていればいいらしい。

何だよその説明、ちゃんと仕事を教えろっての。

だから若手が育たないんだぞ。まぁ前世での会社の話だ。

この冒険者ギルドからも同じ匂いがする。


今日は朝からギルドに連れてこられたので時間的にはまだ午前中だ。

体感的には10時くらいだと思う。時計が無いのでその辺の判断が出来ない。

朝飯は兵士の宿舎でだしてもらえた。

お昼からはギルドで食べられるのだと思う。もらえなかったらどうしよう。

俺は食わないと動けないんだ・・・・・・燃費が悪いんだよ。


そんなことを考えながら歩いていたらいつの間にか訓練所に着いてしまった。

飯のことを考えていたら道順を覚えるのが抜けてしまった。

あとで再確認しなければ。


訓練所では30代半ばくらいの、極道コンビに比べれば比較的若い教官と、講習生らしき若い男がいた。

講習生らしき男は地味な奴だ。

多分村人、いやこの場合元村人か。

今後は彼も冒険者なわけだし。

とりあえず村人Aでいいか。むらびとAた、な。

脳内で勝手に名前をつける。

何故ならば教官に彼らを紹介されて、こちらも自己紹介という流れになるかと思って身構えていたのだが、そんなやりとりは特に無かった。

身構えた俺が馬鹿みたいだ。

教官の「こいつも手伝いだ。」のひと言で自己紹介は終わった。

なんて大雑把な世界だろうか、別にいいけどさ。

なので若い教官、村人エータ。勝手に心の中でそう呼んだ。


その後は5人で荷物を運ばされたり、壊れた訓練器具の修理なんかをした。

5人で組になってはいたが、ガハハ髭付きの手伝い扱いと言うことで彼の指示で彼の手元での手伝い作業が多く、もう1人の手伝いとは話す機会は無かった。

エータには早めに声を掛けて名前の認識を変えないと素でエータとか呼んでしまいそうなくらい失礼な人間が俺という存在なので、声をかけたかったのだが何故かうまい具合に声をかけられない反対側に位置する事が多かった。

代わりに若い教官と、よく笑いよく喋るガハハ髭に挟まれていたので俺はそれなりに楽しく仕事を出来たが、反対に傷顔の教官は物凄く怒鳴り散らしていた。

やっぱこの教官は怖い。


エータも悪いんだけどね。いやエータが、かな。

エータ以外は180センチ前後というそれなりの身長と、それに見合う体格があるのに彼だけ背が低く、細い体型だというのもあるだろうが、とにかく体力がない。すぐへばる。

そこは可哀想だと思うけど、そのせいか仕事に対し及び腰で、何故か立つ位置が少しづつ後ろに下がっていく。

俺達は教官の手元で手伝え、と言われているのに、だ。


傷顔の教官が2人での作業したい時に、何故か後ろでエータは見学している。

当然怒って怒鳴り散らすワケだ。

ある意味瞬間湯沸かし器だ、この人。

怖い顔がもっと怖くなる。

そりゃー若い教官もこちらにだんだん寄ってくる。


空気が重くなるのでガハハ髭が良く喋る。若い教官がそれに乗っかる。こうゆう流れだ。

俺は前世でも社会人経験があるからそこまで及び腰で仕事はしない。

怖くても空気を読んでいる。だから特に問題にならない。

むしろ訓練所にある物は前世で見たことが無い武器防具、又はそれの的だったりするからワクワクドキドキが止まらなかった。もうウキウキしながら働いた。


結果そのせいでエータの動きが悪く見えてさらに怒られていた。


そんな感じで一日頑張って働いた。



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