勇者という障害物
投稿の順番間違えましたm(_ _)m
こっからイゾウ回(多分)ということで
デカオークは オーク剣闘士と言うらしい。
乱入してきた勇者がそう呼んでいた。
いい加減このデカオークから解放されたいので、戦闘に参加してくれるのは大歓迎だ。
2人で倒してしまおうと声をかけた。
だが、その選択肢は失敗だった。
(「この勇者は駄目だな奴だ。」)
共闘した俺の偽らぬ感想だ。
動きは良く、確かに強い。
周りの兵士よりは個人では遥かに強いだろう。
だが周りが見えていない。
兵士に乗せられ好き放題に動いている。
予想だが、周囲が彼に合わせる事に慣れてしまっているのだろう。
そして厳しい意見を言う者、叱る者がいないのだ。
彼を褒める、悪く言えばヨイショして持ち上げているだけの兵士の声をそのまま聞き入れている。
彼がこちらに合わせる事は勿論、譲ることもないためにこちらにだけ譲歩を強いられ互いの動きが噛み合わないまま、俺は苛ついての戦闘が続いている。
彼は俺に下がれと言い、前に出てオークグラジエーターと向き合う。
そこまでは良い。
だが彼が前に出るならば、相手の攻撃を上手く止めて欲しい。
だが彼は受けない、大きく避ける。
交わして2の手に繋げることなく、ただ大きく避けて避ける。
そしてオークグラジエーターとの戦闘域から抜けてしまう。
故に自然とオークグラジエーターは俺の方を向く。
それはそうだ、奴の狙いは変わらず俺だ。俺を食って進化を狙っている。
目の前から消えた勇者を気にすること無く、俺へと立ちふさがる。
俺とオークグラジエーターの大剣がぶつかり合う。
互いの大剣がぶつかり合い、破裂音が響く。
すると勇者の彼は慌ててそこに割って入ってくる。
そして勇者の彼も、取り巻きと化した兵士も俺に下がるように促す。
下がれと言われた所で俺は路地には逃げ込めない。
追って路地に入られたならば目も当てられない結果になるだろう。
そして避けるしか手段の無い勇者に足止めは出来ない。
俺は下がれず、逃げられない。
斬り込もうとすると兵士に邪魔をされてしまう。
とても歯がゆい。
お互いの動きを知らない同士、ある程度は仕方無いのだが、せめてもう少し合わせる努力をしてほしい。
勇者はともかく兵士は俺を排除したいのだろう。
勇者はそれに乗せられてしまっている。
だが、俺が抜けたら全滅するだけだ。
そしてオークグラジエーターは追ってくる。
それは考えなくても理解している。
これなら1人で立ち向かっているほうがやりやすかった。
勇者の彼と俺は戦闘において相性が合わないようだ。
何より勇者の彼に問題なのは武器だろう。
勇者の彼が使うのは片手剣、だが勇者が持つにはかなり粗末な剣を持っている。
彼はここに連れてこられたときに武器を帯びていなかった。
兵士か誰かに借りたのだろう。
その粗末な武器ではオーク剣闘士の大剣を受け止められない。
だからこそ本来は俺が前に出るべきだ。
オークグラジエーターの大剣を〝魔剣グラム〟で受けて防ぐ、その後に勇者に攻撃をすればいい。
だが、彼はどうしても前を譲らない。
おかげでもううんざりしてきた。
帰りたい。
一度だけ勇者の彼は、目を見張る凄い動きをした。
一度だけな。
飛ぶ斬撃、 〝疾風斬〟と言っていた。
最もオークグラジエーターには全く通じてなかった、薄皮1枚削れたくらいだ。
だが、なかなかいい技だった。
おそらく武器がまともなら、少なくとも自前の武器だったならばもう少し手応えがあったハズ。
さすが勇者と言うだけのことはあるとそこだけは思った。
俺があの技を使えば後方からでも攻撃が通る。
教えてくれと頼んだところ、「戦闘中だぞ、真面目にやってくれ」と怒られた。
おかしい、真面目にやって欲しいのは俺のほうだ。
だから真面目に教えて欲しかった。
そして真面目に帰りたくなってきた。
仕方無く勇者を魔法で援護する。
兵士が俺と勇者の間に位置するようになったので他に手が無い。
また〝咆哮〟でも食らえば全滅するのは確定だ。
なのに馬鹿な奴らだとおもう。
仕方無しに兵士が相手取っているハイオークを横取りする。
勇者をおだてる馬鹿な兵士を、ハイオークと戦うまともな兵士に止めてもらいたかった。
だが兵士は所詮、兵士だった。
先の時多少俺の側に成ってくれた兵士も、今はもう勇者の味方だった。
「勇者に任せて君は下がれ」 もしくは 「回復魔法に専念してくれ」
彼らは「勇者」という言葉に踊らされている。
今此処にいる勇者では現状を打破できない。
それを理解出来ていないようだ。
残念ながら兵士というくくりで考えることにした。
元は命の恩人だ。
命の恩人が混じる集団だ。
だが彼らと行動を共にするのは悪手だろう。
彼らを見捨てるのは簡単だが、もう一方の恩人はまだ見捨てたくない。
クラン、林檎の帽子のメンバーは路地の入口を塞ぎ奮戦している。
もし俺があそこへと逃げ込めば、彼らがオークグラジエーターと向き合わなければならなくなる。
それだけは避けたい。
多分だが相性的にタンク型の 林檎の帽子のリーダーとサブリーダ2人。
タンクタイプの2人が勇者の彼が組んだ方が戦況は安定するだろう。
あくまでも相性的には、だ。
プライドが高そうな勇者がそんな提案を飲むとは思えないし、命の恩人でクランを支える核である2人にそんな危険な真似はさせられない。
犠牲になってくれと言うようなものだ、そんなことを頼むつもりは無い。
勇者の彼は正統派の剣士。本来は片手剣+盾の剣士だと思われる。
ただし現在は、剣は借り物で盾は持っていない。
装備はボロボロだ。元がどんな姿だが想像もつかないが、動きを見る限り重装備で相手の攻撃を引きつける盾役では無く、攻撃メイン + サブ盾役といったところが本来のポジションだと予想する。
アタッカータイプと言っていいだろう、なのに今無理をして前に出て盾役をこなそうとして無理が出ている。
勇者の矜持なのか、周りを信用出来ないのか、それとも俺が戦うのが気に入らないのか、彼の考えていることは俺には分からない。
俺個人の気持ちとしては彼よりも俺のほうが相性的に前に向いている。。
相性的に俺とオークグラジエーターは上手く噛み合ってなんとか戦えたが、オークグラジエーターと勇者だと、圧倒的に勇者に分が悪くなる。
そして俺と勇者はポジションが被る、なので仲間としては相性がかなり悪い。
間に、もしくは周囲に他の役割が混じれば変わるだろう。
盾役、回復役、そして純粋な後衛火力。
それをこなす者がいれば彼とはうまくやれたかもしれない。
だが現在完全に噛み合わなくなっている。
なんとか別の手段が欲しい。
そう考えていると、手段は空に浮いていた。
大魔道2人だ。
あの大魔道2人 、俺が戦うのを眺めてやがる。
俺は大きく手を振ってアピールした
限界だ。
このまま行っても倒せないだろう。
頼む、助けてくれ。
必要なら股間でも足でも舐める。
もう喜んで舐める。
だから助けてくれ。
だが彼女たちは笑顔で手を振り返すだけだった。
どうやら手を出す気は無いらしい。
彼女らが参戦してくれればこれ以上死傷者をださぜ終えられるのに。
見捨てられた!?
違うな、勇者といるからか!?
勇者と大魔道って仲が悪いのか!?
ババアの考えてることはさっぱり分からない。
これで死んだら化けて出て、一生結婚出来ないように呪ってやろう。
俺としては勇者の援護など馬鹿らしいだけだ。
名誉もクソもいらない。
子分を助けたいだけだ。
勇者の彼を含め兵士らが俺を助けようとした事は理解出来る、それは有り難い。
だがオークグラジエーターを倒して、俺を助けようという行動は迷惑でしか無い。
選択肢が狭まり、足手まといになっている。
咆哮で倒れた部下を連れ出してくれた以上、俺はとっとと逃げたい。
なのに、部下の代わりに彼らがいてはそれが出来ない。
最悪クランのほうをなんとか先に逃がして、兵士と勇者を囮にして逃げようと思いはじめている。
出来ればそこまではしたくない。
最終手段だ。
しばらくすると状況が動いた、
俺がハイオークを数匹横取りしていたおかげで、手の空いた兵士が複数でハイオークたちに当たるようになった。
数の利を得て、兵士たちが一気に優勢になる。
ここの安全が確保出来たなら、逆の発想が出来る。
最悪俺がオークグラジエーターを引きつけてここを離れるのだ。
オークグラジエーターはどうあっても俺を食べたいようだ、俺が逃げれば確実に追ってくるだろう。
問題なのは勇者だ。
逃げるのに勇者は必要無い。
むしろ俺を追いかけさせるのに勇者の存在は邪魔になる。
俺を追わせればなんとかなる。
精鋭部隊には師匠たちがいる。
薄情な大魔道2人 とは違う、師匠のところに逃げ込めればいい。
俺の見立てでは上位種といえど、こいつよりも師匠たちのほうが強い。
そう考えると、師匠たちは改めてとんでもない化け物だ。
勇者が少し下がるタイミングを見計らう。
「手の空いた者はこちらへ手を貸してくれ!」
だが勇者の声でさらに場が動いた、最悪な方へと加速する。
おいおい本気か!?と目を疑った。
ここに来ている兵士の中には、ずば抜けて強い兵士はいない。
最初は俺も兵士とはこんなものなのか、と不思議に思ったが話によると強い兵士は第2地区の防衛に廻されているらしい。
そして反撃のタイミングで投入されている。
兵士の仕事は戦闘が出来るだけでは務まらない。
今此処にいる兵士には、戦闘に特化した兵士はいない。
さすがにそんな彼らをオークグラジエーターの前、最前線には出させないはず。
そう考えていたところ、兵士に後ろから体当たりをされた。
一瞬呆けて油断していたため大きく突き飛ばされた。
前に集中しているときは後ろからの衝撃に弱い。
一緒に行動していたときに揉めた兵士だ。
仲間の腕を治せと喚いてた兵士だ。
まだ根に持っていたのか。
よろけて体勢を崩してしまった。
すぐに直したがその間に前に出た兵士が1人、オークグラジエーターに食われていた。
気づいたときにはその兵士、頭が無かった。一囓りで首から上が無くなっていた。
(なんでだよ!何で勇者より前に出ている!?意味が分からない。)
兵士を食ったオークグラジエーターの傷が癒え始めて行った。
俺が手足につけた傷だ、良く覚えている。
それがゆっくりとだが塞がり始めてしまった。
同時に俺の右目に映るステータスにも変化が起きていた。
スキル、そしてレベルが上がった。
なるほど、片方に変化があったときは敵同士で同時に起きるのか。
これは奴のほうにも経験値が入った可能性が高い。
傷が癒えてさらに経験値が入り、強くなったであろうオークグラジエーター
下手をするとさらに進化するかもしれない。
俺の方は、『 氷の矢 』のレベルが 5になっている。
特に目新しい魔法は覚えていない。
前の数字を覚えていないが確かにレベルも上がっている、が僅かだ。
今から魔法を吟味して取得するには時間が足りない。
オークグラジエーターがそれを許してはくれないだろう。
勿体ぶって慎重に選ぼうと先伸ばしにしていたツケがここで一気に来たようだ。
呆然とする俺の前でオークグラジエーターは次の兵士を手にとって食った。
逆の手にも既に1人兵士が捕まっている。
周囲には腰を抜かしへたり込んだ兵士がまだ数人いた。
3人目を食べたオークグラジエーターの身体の傷は加速して癒えていく。
脇にあった大きな傷もゆっくりと塞がってきていた。
怪我をしていた状態であの強さだった、もう既に先ほどとは段違いの強さになっているだろう。
俺の伸び代は僅かだ、起死回生の手段は無い。
潮時だ。
もう無理。
「勇者さん、逃げ足に自信は?」
「え!? 何の話だ!?」
「逃げ足ですよ逃げる、足! 奴から逃げる自信はあるかどうか?
俺は今のところ、なにをおいても逃げ足に一番自信があります。」
「な、何を言ってるんだ君は!
ま、まさか逃げるつもりなのか!?」
「そのまさかですよ、勇者さんに逃げろというのも変な話だ。
ならは俺があいつを引き付けて逃げる。
勇者さんはあいつらをその間に撤退させて欲しい、頼みます。」
あいつらと言って兵士と冒険者を、そして心の中で自分の部下を指す。
悪いが何より、自分が死にたくない。
もしこれで逃げてくれないならば、それ以上は構えない。
「おい、待て、待つんだ、君!」
返事は聞かない。
ゴネられる時間が勿体ない。
俺は全力で氷の矢を作る。
その数10本、予想通り1レベル2アローだった。
全てを打ち出すと同時に走り出す。
矢は全てが食事中のオークグラジエーターを削る。
体表を軽く削る程度だが苛つかせ、気を引くには充分だったようだ。
不愉快そうな顔でこちらを睨む。
あえてそのオークグラジエーターの近く通ってを走り抜けた。
まだ数人、周囲で腰を抜かしへたり込んでいる兵士を無視し、俺へと向き直り追いかけてきた。
回復したオークグラジエーターの足は思うより早い。
だが幸いなことに講習で鍛えられた俺の足はもっと早い。
第二東門へと向かって走った。




