勇者の視点(3番目)
私の名前はローイン、勇者だ。
自称では無い。
正式に国に認められし勇者だ。
この街を拠点に活動する勇者としては3人目の勇者なる。
貴族の父を持つが、貴族では無い。
庶子と言われる存在だ。
私を含め父には庶子が10人近くいた。
正確な人数は覚えていない。
私達は幼少より勇者になるために育てられた。
同じ父を持つはずの兄弟が貴族として生活する中、私達庶子の扱いは酷いものだった。
勇者になれなければ捨てられる。
その一心で厳しい訓練を重ねてきた。
途中で挫折し、努力を止めた母親の違う兄弟たちは容赦なく追い出され、放り出されてしまった。
私達には才能が無かったのだろう。
魔法を使えるようになった者は兄弟の中でも数人だけ、使えても魔力量が多くなかったために、大した魔法は使いこなせなかった。
皆、体躯も平凡で剣術槍術弓術どれも人並みが良いところだ。
父に雇われた指導者が頭を抱えて悩み、何人も交代するくらいだ、嫌でも気づく。
だが父はどうしても勇者が欲しかったようだ。
途中で剣術が他の兄弟より少しだけ秀でていた私を徹底的に鍛える方針に変えた。
私だけを。
私以外の兄弟は誰もいなくなった。
今ではあれだけいた兄弟の顔も思い出せない。
彼らがどうしたのか私には知ることも出来ない。
幸いなことに剣術の師匠には恵まれた。
父が私のみに集中した結果、腕の良い指導者を雇えるようになったからだろう。
彼の指導と、1人残された恐怖、死にたくない思いでした努力の成果で強くなった。
私は強くなれた。
父は歓喜し、元Aランクのベテラン戦士を筆頭に可能な限り腕に覚えのある者たちを集めてくれた。
彼らとパーティを組み活動した。
父に望まれた依頼を受ける。
難しい任務もあったが仲間と力を合わせて達成していった。
数年の活動期間を経て、父の根回しが実り、私は勇者へと成った。
〝 オーク 剣闘士 〟
オークの上位種にして、特殊個体。名前は知っている。
一通りの知識は幼少期より叩き込まれている。
オークジェネラルがオークキングに進化し、オークキングがオークロードへと至る。
対しオーク 剣闘士はその進化の過程から外れた個体だ。
その先の進化があるという話は聞いた事がない。
上位種であるからには強いだろうとは考えていた。
だが、所詮は進化の系譜から外れた個体。
そこまでの強さでは無い、心のどこかにそんな甘えがあったのかも知れない。
オークグラジエーターは多数のオークと少数だがハイオークを連れていた。
我々は追いつき、追撃戦へと突入する。
我らの後ろからは兵士の部隊も追いついてきている。
上位種を渡すわけには行かない。
オークグラジエーターはハイオークを盾に、多数のオークを引き連れ逃げた。
私達は奴を逃がすまいと追うが、ハイオークたちが必死に道を塞ぐ。
オークグラジエーターを逃がすためにハイオークは捨て駒になった
と、そう思っていた。
逃げたのは振りだった、突如仲間の僧侶を殺された。
ハイオークを排し後を追おうと必死で戦っていた私達の後ろにオークグラジエーターはいつの間にか回り込んでいたのだ。
そこからは覚えていない。
必死で戦った。
気がつけば仲間を1人、また1人殺されていった。
なんとかハイオークは全て倒した。
たが、残ったのは戦士と私の2人だけだった。
私と戦士は、オークグラジエーターと戦った。
オークグラジエーターは強かった。
パーティで1番強い、ベテランの戦士と2人がかりでも圧倒されるほどに。
戦士が最後の力を振り絞り彼の持つ最大の技、〝槍龍波・三連撃〟を放つ。
見事にオーク 剣闘士の脇腹を抉ったが、技を放った後に大剣で両断されていた。
そして眼前に迫るオークグラジエーターの巨大な拳。
それが思い出せる最後の光景だ。
気がつけば瓦礫に埋もれていた。
オークグラジエーターとは若い男が戦っていた。
彼が回復魔法を掛けてくれたのだろうか。
待ってろ、私もすぐに参戦する。
そう思うが身体が動かない。
暫しの問答の後、彼は私の言葉に返事を返さなくなった。
否、返せないのだろう。
彼は自分が講習生だと言った、まだオークグラジエーターの相手は厳しいだろう。
良く戦っていると思う。彼は見込みがあるのだろう。こんなところで死んで欲しくは無い。
どうにか力になってやりたいが、身体が動かない。
なんとか摺って離れる。
気づけば涙が出た。
悔しい、なんと自分は無力なのだ。
若い者に危険な上位種を押しつけて逃げる勇者
彼は自分の身体を盾に路地の入口を塞ぎ、オークから防いで戦ってくれている。
その気持ちに応えるべく、必死で這いずった。
「おーい、こっちだ、何人か倒れているぞ」
人の声がする。
「いた! イゾウくんだ!」
私を探しに来たわけじゃないようだ。
そうか、あの彼を探しに。
イゾウか、変わった名前だ。
「げ、上位種! おい、寄せ、近寄るな、足を引っ張ることになるぞ。」
駆けつけた者の数人が飛び出そうとしたのを、別の者が止めた。
それが賢明だろう、オーク 剣闘士は強い。
あれと戦えるあの講習生がおかしいのだ。
「いち、にい、さん、しぃ聞いている数より多い。
縛られた女の子がイゾウくんが助けようとした2人で、ああ、お前ら解いてやれ。」
冒険者の男が女の冒険者へと声を掛けた。
縛られた女の子!? それを助けにきた!? どうゆう状況だ!?
「こっちの獣人の2人はさっきもいたから分かる。
もう1人・・・つまりコイツが人攫いか? 」
は・・・!? 人攫い!?
「違う!人攫いなどでは決してない! わ、私は勇者だ、勇者ローイン! な、名前くらい聞いたことがあるだろう!?」
「おいおいよりによって勇者様の名前を語るのか? 兵士も一緒に来てるんだ、しょっ引かれても文句も言えないぞ?」
「違う、本当だ! 」
その後しばし冒険者と問答をしたが目を覚ました犬獣人が人攫いは全員既に死んでいることを伝えられた。兵士の中に1人私の顔を見たことが有るという者がいて、似ているということでなんとか信じてもらえた。
「彼、1人に戦わせるわけにはいかない!誰か、回復魔法を使える者はいないか!?」
「いない、冒険者も兵士も回復魔法を使える奴らは真っ先に第2地区へ招集されちまってる。
あえていうならイゾウくんだが、あの状況じゃな・・・」
男が指指すのはオークグラジエーターと必死で戦う講習生の男。
誰かが変わってやれば良い。だがそんな者はいないだろう、この私以外に
「回復薬は!? 誰か持ってないか!?」
「へへ、勇者様、ありますよ。兵士に支給された分ですが、使ってください。」
数人の兵士が下級だが回復ポーションをくれた。
助かる。
「おい、お前ら持ってるくせにイゾウ君に回復魔法をかけさせたのか!」と別の兵士が怒っているが、その兵士は「こうゆう緊急時のための保険だろ、文句あんのか!」と言い返し、口論になった。
回復薬を節約するのは大事だ。だが、回復魔法を使える者の魔力も大事だ。
どちらかを天秤にかけてこの兵士は回復薬を温存したのだろう。
3本の回復薬を飲み干して少し傷が癒える。
「よし、動く、感謝するぞ。私がオークグラジエーターを相手をしよう。
私が出たら彼は退かせてくれ、まだ若い彼が前に立つ必要は無い。
私は請け負おう!」
「おお、素晴らしい、流石勇者様! 我々もお供をさせてください。」
「危険だぞ」
「勿論です、あんなコゾウよりも我々兵士の方が戦える。役に立ってみせますよ。」
一部の兵士が共に戦うと志願してくれた。
それを志願しなかった他の兵士と、冒険者たちが渋い顔でみている。
きっと自分も戦いたいのだが力不足を感じているのだろう。
嘆くことは無い、その為に私達勇者はいるのだ。
「あんた、いや、勇者様、イゾウくんを助けてくれるのか!?」
冒険者の男が言う。知り合いなのだろうか、もしかしたら講習後、彼は彼らのパーティに入るのかもしれない。
「勿論だ、約束する。」
「そうか、わかった。じゃーこれを飲め。虎の子の上級回復薬だ、万が一のときを考えて温存していたが、まさか上位種とぶちあたるとは思いもしなかった。大赤字だが、仕方無い。イゾウくんを助けてやってくれ!」
「そうか、わかったありがとう。この分もさっきもらって分も帰ったら必ず補填する。パーティ、いやクランか!? 名前を教えてくれ。」
「頼みますよ、弱小クランでいつも家系は火の車なんだ。
クラン『 林檎の帽子 』 リーダーのフレデリックだ。
及ばずながら俺らも援護させてもらう。」
私は彼から回復薬を受け取った。
「あー、要らないかもな、それ・・・」
「どうした?」
リーダーと名乗ったフレデリックの横にいた男が呟く。
見れば、講習生の彼がオークグラジエーターを一方的に斬り刻み始めた。
凄い!
このまま倒してしまいそうな勢いだ。
「か、彼は本当に講習生なのか!?」
「あー、俺たちも今日会ったばかりだから詳しくは無いんだが、あれで成績だと12番目らしい・・・
講習生内には自分より強い奴がいるって・・・」
「じゅ、12位だと・・・」
驚愕した。あれで、12位・・・
「今回の講習は化け物揃いだって・・・言ってましたね・・・」
「・・・」
その話は私も聞いている。
まさかこれほどだとは思わなかった。
「勇者様、急ぎましょう!」
「いや、このまま倒せそうじゃ無いか・・・」
「駄目ですよ、あんなクソガキじゃ駄目だ。勇者様が上位種を倒してこそ志気が上がる。」
「そうですよ、講習生なんかが上位種を倒したら勘違いして無茶する馬鹿が出てきます!」
兵士が必死で声を掛けてきた、何をそんない急ぐのだろう。
勝てそうな戦いに横やりをいれるのは勇者としてどうなのだろう!?
「勇者様、そいつらはイゾウ君に無理矢理変な命令をだして反発されて拒否されたからムキになってるんですよ。」
「ち、違う、余計なこと言うんじゃねぇ!」
兵士が再び口論を始めたが、それどころではなくなった。
状況が変わったのだ。
イゾウと呼ばれた彼の動きが急に衰えた。
随分無理をして動いていたのだろう、限界が来たのがわかった。
そして 剣闘士が強烈な一撃を放つ。
彼は大きく後ろに弾き飛ばされた。
「マズいな、行くぞ。入口を固める! イゾウくんを援護する!
チビどもは無茶するな、行くぞファーレン、ここが踏ん張りどころだ!」
「あー最悪俺たちで オークグラジエーターとやらを押さえるぞ。イゾウくんを死なすわけにはいかん。
彼が無事ならなんとか立て直せる。
てめーら、先輩冒険者の意地をみせてやれ!」
クラン 林檎の帽子 のメンバーが一斉に「おお!!」と叫び駆けていく。
よく訓練された良いクランだ。リーダーの言葉に即座に動く。
その動きに迷いは感じない。
兵士たちも慌てて後を追った。
私も受け取った回復薬を飲み干して後へと続く。
彼らはこの路地の入口を塞ぐように構える。
年長者が前線に出て、若手が援護と、怪我人を避難させるようだ。
随分渋ったようだが、犬獣人と子供は何人かに連れられ避難した。
彼らが布陣すると、オークグラジエーターがこちらに気づく。
そして大きく息を吸い込んだ。
あれは〝咆哮〟だ。
不味い。
先の戦いでは使わなかったが、行動不能に陥らせるという範囲型のスキルだ。
私が飛び出そうとするも、先に講習生の彼が飛び込んだ。
そして鍔迫り合いになる。
判断も速い。
オークグラジエーターが忌々しそうに吠える。
それまで静かだったオークが一斉にこちらへと向かって動き出した。
周囲の者が応戦する。
「気をつけろ!何匹か進化してる!ハイオークが混じるぞ!」
講習生の彼が叫ぶ。
みれば数匹のオークがハイオークへと進化していた。
ハイオークはこちらよりも、講習生の彼に近い。危険だ。
「 オークグラジエーターは私が、ハイオークを頼む!」
そう叫んで飛び出した。
鍔迫り合いをしている彼が、「お!?」という声を出して驚いていたが、私は必死で走ってオークグラジエーターを斬りつけた。
さっきの兵士たちがハイオークへと向かう。
「君ッ。戻れ、変わろう。」
「いやいや駄目でしょう、いま抜けたら崩れかねない。やるなら2人がかりで仕留めましょう。
勇者様には不本意かもしれないけどさ・・・」
「わかった、手を貸してくれ。」
彼の言うとおり、2人がかりでも倒してしまうべきだろう。
手柄を独り占めにしたりしない、君のことは私から父に必ず伝えよう。
相応の報酬を用意するように伝えよう。
結論を言えば、2人でも倒せなかった。
追い詰められたオークグラジエーターは強かった。
そして講習生の彼は多才だった。
少し緊張感がないところが無ければ完璧だ。
魔法で矢を放ち援護し、傷つけば回復魔法で治してくれた。
じわじわと追い詰めた感じがあった、が、彼が先ほどまでと違い少し精鋭さに欠けた動きになった。
勿論疲労があることは理解しているが、どこか巫山戯ているような動きになった。
緊張感が無く、戦闘中にも関わらず私の剣技に反応した。
「え!? 何それ、どうやって斬撃を飛ばしてるの!?俺も出来る!?」
私の〝疾風斬〟を見た彼の反応だ。
違う、今の技に続くんだ。その大剣で斬り込むんだ。
まだ連携を理解出来ていないのだろう、若いから仕方無いが勿体ない事だ。
その後、彼は大剣で同じ事が出来ないか試し始めた。
後にしてくれ。
かと思えば、空に浮かんでいた2人の大魔道に手を振っていた。
珍しいのは分かるが時と場合を考えてもらいたい。
まだまだ子供なのだろう。
大魔道さまも手を振り返さないでいただきたい。
勿論、氷の矢を放ったり、オークグラジエーターの大剣を弾いたりと目を見張る動きはあるのだが、私の後に続く動きが出来ていない。
突如、彼は兵士が相手取るハイオークを横から斬り殺した。
何度か既に繰り返しているようだ。
それを見て理解出来た。
なるほど、オークグラジエーターに当たる者を増やすつもりか。
2人では難しいと判断したようだ。
悔しいが仕方が無い。
進化したハイオークの数はどんどん減っていった。
兵士や冒険者は段々と複数でハイオークに当たれるようになったからだ。
複数で囲み安定して倒していく。
「手の空いた者はこちらへ手を貸してくれ!」
私の声に数人の兵士が反応する。
慌てたのか講習生の彼にぶつかってしまう者もいた。
慌てなくて良い、じっくり囲むんだ。そう声を上げる。
「あっ、馬鹿、前に出るな!」
兵士の何人かが前にでたのを見たのて講習生の彼が声を上げる。
そうだ、援護でいいんだ。フォローしてくれ。
そう声をかようとした。
が、その前に捕まってしまった。
そして頭からオークグラジエーターに食べられた。
オークグラジエーターは手前にいる者を捕まえて咀嚼していく。
あっという間に3人の兵士が食べられた。
「やべぇ詰んだかも」
それを見て彼が言う。
まだだ、諦めるのは早い、そう声を掛けた。
ここに勇者がいるんだ、諦めることは無い。
勇者とは希望、そう在るべきだ。
私はまだ諦めない。
「いや、回復してるし」
彼は顔を引きつらせて言う。
兵士を食べたオークグラジエーターの身体はみるみるうちに傷が癒えていく。
そして次の兵士に手を伸ばそうとする。。
「あーくそ、馬鹿ばっかだ、弱いくせに前に出るなよ。
食われに行ったよーなもんじゃねーか、クソ兵士が」
講習生の彼の言葉が私を責めるように聞こえた。
いつもありがとうございます
更新していなくても毎日のPV本当に感謝してますm(__)m
リアル事情でこの投稿で少し間が空きます
本業が忙しい事と、仕事あとの飲みへの付き合いで、録に書けません。
正確には〆まではたらたら書いていたりするんですがそちらもグタグタな感じです
まぁいつもグタグタなんですが飲んで酔って書いた文章はさらにグダグタで、シラフ後に直すのが大変で・・・
ちゃんと書けたら纏めて一気に投稿する事にします
書けば書くほど上手くなると言う言葉に騙されました
書けば書くほど話が変わってしまい、書き溜めが使えなくなりました
のでちゃんと繋がるようにやりかえ用かと。
投稿した分を直しながら繋がるように書き直してから投稿します。
宜しくお願いしますm(__)m




