3人の勇者
1人目の勇者 アーネスト 40歳
2人目の勇者 ピーター 35歳
3人目の勇者 ローイン 25歳
別に覚える必要はないです。急に出てくるので一応。
【第二東門前 少し前】
門が開く、勇者2人がいち早く飛び出し、オークキングへと斬りかかった。
オークキングは巨大な戦斧を振り回し、応戦した。
体格差で勇者を弾き飛ばすが、勇者もすぐに体勢を建て直し応戦する。
単体ならばオークキングが勝る。
だが勇者は2人。
目立つ協力こそしないが、互いの足を引っ張りあうほど愚かではなかった。
キングへの攻撃に激怒する上位オークが勇者へと襲い掛かる。
そこへ2人の勇者の仲間たちが合流し、参戦していく。
周囲を囲まれたオークキングは、空を忌々しげに睨み付ける。
先ほどの強大な魔法を使った魔法使いの女が2人まだそこに浮いていた。
吠えるような大きな雄叫びを上げる。
これは撤退の合図だ。
上位種のオークは襲って来た勇者の一団、そして続々と門から飛び出してくる人間たちを忌々しげに睨む。
オークキングは巨大な戦斧を豪快に振り回し、地面の土ごと抉り飛ばす。
人間の、主に後衛職が固まっている所を狙って。
撤退を決めたオークの動きは早い。
キングのその攻撃を合図に上位種たちが勇者のパーティ、その後衛職へと一斉に襲い掛かった。
各々が大きく振りかぶった一撃を後衛職に見舞う、そして離脱した。
他の上位種が散るのをみて、オークキングは勇者の1人に狙いをつける。
戦斧で斬りかかった。
そして挑発するように薄く笑う。
逃げるのはその後だ。
そこにいた殆どの者は後衛を庇い動きが止まる、もしくは、上位種オークの攻撃を食らって傷ついた。
即座に反応出来たのはもう1人の勇者だけだ。
彼は逃げるオークキングともう1人の勇者の間に割って入った。
オークキングは2勇者2人と、逃走しながらの戦闘へと突入した。
「くそっ、先を越されたか!」
声を上げたのも勇者。
今この街には3人の勇者が滞在している。
3人目の勇者。
この3人は街に関係する貴族をスポンサーに持っている。
故にこの街を拠点に活動していた。
表向きは対立していないが、貴族間の派閥の問題、力関係の影響もあり、勇者3人の間では水面下で手柄を争っていた。
この防衛戦で、第二東門で迎え撃つと決まったのは貴族が彼らに大物を仕留めさせ、手柄を取らせる狙いが大きい。
この3人の中で、最初から貴族に投資されて育った勇者は彼だけだ。
その成果で、若くして勇者に成る。
残り2人は元、冒険者だった。
冒険者として活動していた期間があり、それを経てから貴族の紐付きとなった。
貴族の後押しを受けて成る勇者。
それは世間一般的に勇者としては、一段階評価が落ちる。
世間に求められるような勇者としての任務は受けず、貴族の利益になる仕事を中心に活動するからだ。
今、勇者と呼ばれる者の殆どがソレを専門にする者が多い。
世間は故に〝養殖勇者〟と影で蔑む。
普通の冒険者から勇者になった2人の勇者はそれを理解している。
理解してなお勇者の道を選んだ。
どちらも長い冒険者としての活動期間があり、若いとは言えない。
1人目40歳、2人目は35歳
油の乗っていた時期は過ぎている、これからどんどん衰えていくだろう。
3番目の勇者はそれに比べればまだ若い、25歳になる歳だ。
比較的最近、勇者を名乗る事を許されている。
若いこともあり、街に滞在する勇者の中では常に3番手の扱いだ。
彼はここで目立つ成果を欲しがった。
3人に共通するのは防衛任務で、この機会に手柄を挙げること。
前2人は可能ならば養殖勇者などという不名誉な呼ばれ方を打ち消したいと考えている。
勇者の戦闘力は年齢順と同じ並び、40歳の勇者が特に、今後加齢により衰えが予想されている。
2人はそれでも長くこの街の勇者として活動しているために、先んじて行動できた。
若い勇者はまだ経験が足りない、流れに乗れずに少し出遅れた。
彼の理想では、オークキングを3人の勇者で競いあって倒し、自分が止めを刺すことで2人の勇者にも自分を認めさせたいと考えていた。
だが乗り遅れた。
先輩勇者たちが、自分たちの足を引っ張らないように裏で手を回されていた。
彼は勇者に成って日が浅い、先輩勇者2人にはまだ勇者としては認められていない。
勇者を認めるのは勇者ではない。
なので間違い無く彼は勇者である。
だが勇者の中にも格が有る。
彼はまだ認められていない。
「まだだ、キングに2人勇者が当たっている。それだけだ、他がいる。
俺たちは俺たちで上位オークを狩ればいい。
勇者2チームで倒したオークキングよりも、単独チームで上位種を倒した方が評価が大きい。」
勇者に戦士♂が声をかける。
この戦士職の男は貴族が勇者を補佐するためにつけた男。
30代のベテラン戦士で、武術的な意味合いでは勇者よりも遥かに強い。
「そうです、勇者さまなら上位オークを倒せます。
何なら二匹でも三匹でも倒してしまえばい。」
勇者のチームのお調子者、魔法使い♂が勇者に声をかけた。
弓を武器に戦う狩人♂ と 僧侶♂ 、そして魔法剣士♂ もそれに同意する。
迷うのは勇者一人。
彼はあくまでも勇者間で争い、勝ちたいと考えている。
勇者の中で頭1つ抜けでたい、それでこそ自分は認められるだろう。
別の場所であげた成果では、彼らに伝わらないと考えている。
迷う勇者の一団を尻目に追い越していく者がいた。
ギルドの教官、サイモン教官だ。
「先手は勇者に譲れ」
教官たちを含む参加者にはそう通達されている。
その先手はオークキングが逃げたことで終了した。
このまま逃がせば大事になる。
教官たちを含む、先手を譲った者たちはそう判断し、一斉に動き始めた。
その中でサイモンはいち早く動き出した。
その怒り故に。
サイモンのあとにガーファが続いて駆けていく。
ベテランの戦士はその両者の顔が憤怒に染まっていることに気づく。
第3の勇者が迷っているうちに勇者と斬り結びながら撤退していくオークキングへとサイモンが追いついてしまう。
勇者に遠慮することなく彼はオークキングへと刃を向けた。
勇者二人。 元Åランクのギルド教官。
3人に囲まれたオークキングは、そこで足が止まった。
その横を同じくギルド教官ガーファが追い越し、続いて数人の教官や他の戦力もどんどん追い越していった。
「勇者殿」
「わ、分かった、別の上位種を追う。行こう!」
ベテラン戦士が促し、勇者が決断する。
その選択が彼の人生を変えることになる。
【 オークキングサイド】
「サイモンさん、手助けは不要です。
後で怒られますよ」
「 フン、虫の居所が悪い。貴様らごと纏めて斬り殺されたくなかったら儂に譲れ。
手柄はくれてやる。」
オークキングと2人の勇者が戦っていると、1つの影が飛び込んできた。
飛び込んできた影ことサイモンのその言い分に年長の勇者こと〝アーネスト〟はため息が出る。
サイモンことガハハ髭教官は、彼が勇者になる前の駆け出し冒険者の頃の大先輩にあたる。
彼にとってが大先輩、 もう1人の2番目の勇者にとっては若い頃の畏怖の象徴的存在である。
憤怒しているサイモンの姿に完全に萎縮し、怖くて声もでなくなった。
「我々にも面子があるので、堪忍して頂きたい、さすがに譲れませんよ。
どうしてもと言うのならば何があったかを、聞かせてください。」
1番目の勇者アーネストがオークキングの攻撃を交わしながら返した。
オークキングと新たに斬り結びながらサイモンは少し考えた。
そして答える。
「・・・・弟子が出来たのだ。」
「「・・・・」」
2人の勇者は言われた意味がしばらく理解出来なかった。
「お、おめでとうございます!?」
2番目の勇者はなんとかそれだけを絞り出した。
「え!? サイモンさん、に弟子!? 本当ですか!?
え!? 凄いですね、どんな奴ですか!?」
大して1番目の勇者は理解したあとに驚愕し、戦闘中にも関わらず興味をひかれ、つい聞いてしまった。
サイモンが過去に弟子を取ったことがないことを知っていたために。
「少し変わっているが物怖じしない、見込みのある奴だ。
儂だけで無く、ガーファと兄貴、我ら3兄弟の弟子になった。」
「兄貴!? サイモンさんの兄貴って教官長殿も! ですか!?
元勇者じゃないですか!? では次代の勇者候補!を?」
「!?」
サイモンとガーファ、2人が兄貴と呼ぶ者は教官長しかいない。
その教官長は〝聖剣〟の所持を許された勇者だ。
今もその〝聖剣〟は教官長の元にある。
箔付けで聖剣と呼ばれる数多な聖剣と違い、彼の持つ聖剣は能力を引き出す必要のある聖剣だ。
彼よりも使いこなせる者が現れないが故に譲ることを許されない。
新しく勇者を任せられた者は大半が聖剣を使えるか試しに来る。
教官長の持つ聖剣は所有権が国に在る。
預かっているという前提なので貴族の推薦状があれば断れない。
2人の勇者は当然のことながら以前、貴族のコネを使い聖剣を試している。
そして認められなかった。
教官長に弟子入りすると言うことは元勇者の弟子となるいうことになる。
それも〝聖剣〟の勇者だ。
世間広まれば、当然彼に後の勇者の姿を望むだろう。
養殖勇者と呼ばれる2人には面白く無い話だ。
「安心しろ、 本人は勇者に成るつもりなど微塵もない。
強くなって暴力を生かして金儲けがしたいと儂らの前で平気言う。
勇者にするには性格的にも行動にもかなり問題がある奴だ。
だが勇者でなくとも見込みはある、強くなる素養が、だから儂らはそれで構わん。
勇者を育てるつもりはない。」
「・・・・・」
「それはまた変わ、・・・いや面白い男ですね。」
「変わってるでいい。その通りだ。変わっているだろう、
だが儂らにとっては弟子だ!
その弟子が・・・嵌められた。」
「「 嵌められた!!? 」」
「ああ、詳しくは言えんが、よりによって冒険者にな。
まぁそやつらは後でしっかり落とし前をつけさせるつもりなのだが、足りぬ、収まらぬ。
そやつらだけでは殺しても、殺しても、殺しても、何度殺しても殺し足りぬ。
そこにオークキングがいた。それだけだ。」
「足りなくてオークキングですか・・・」
「フン、1番手前にいただけだ。
傷顔の教官も収まらんだろう。次のでかいのは兄弟の獲物だ。」
2人の勇者は冒険者上がりだ。冒険者を経て勇者に成った。
サイモンたちはその2人の少し上の世代になり、冒険者としても先輩に当たる。
勇者に成る前から面識があり、その強さは理解していた。
〝狂乱血桜〟
いつも豪快にガハハと笑う彼が笑わないとき、それは逆らってはいけないときだということを2人は知っていた。
諦めて勇者2人は剣を下ろす。
オークキングの血で桜を描く、その双剣の太刀筋を自身の目に焼き付けるために。
勇者2人は退く。
しばらくしてオークキングは断末魔の叫びを上げて死んだ。
最後の叫びを聞いた上位種はキングが死んだことを理解する。
独立して動き、時代の王を目指すために速度を上げて逃げた。
サイモンと2人の勇者が最前線へと追いついたときには ギルドの教官たちがオークジェネラルと他2種の上位種オークへと追いつき、彼らが率いる100を越える魔物との戦闘を開始していた。
鬼のような顔をしたガーファ教官がオークジェネラルを嬲り殺していた。
第1の勇者アーネストはそれを見て腰が引ける。
彼は冒険者上がり故に冒険者の後輩が多い。
この殺意がそちらに向かないことを祈った。
教官のエクルンドが上位種を一体相手取り、教官たちがそれを囲みつつオークを始末しながら援護していた。
もう一体のオークの上位種はすでに聖騎士、そして神殿騎士の手でに討伐されていた。
このオークの上位種を1人で相手取るエクルンド教官は現在32歳。
教官に少し上の代が多いために若い扱いをされているがもうそこまで若くはない。
元冒険者であり、現役時代は20代でかなり早くにAランクになった教官の中でも実力派だ。
正式に盃を交わしてはいないが、極道コンビの弟分のような存在だった。
2人に目を掛けられ、扱かれ、上り詰めた。
極道コンビの弟子は彼にとっての弟弟子。
彼の中でイゾウはそんな存在だった。
彼もまた、イゾウの話をきいて、静かに怒っていた。
2人目の勇者〝ピーター〟はオークの上位種と戦うエクルンドの姿が苛立たしかった。
見るに耐えれず、飛び込んで参戦してしまうほどに。
「〝ピーター〟さん ここは任せてくれ、上位種が一体、配下を連れて先に逃げたんだ!
それを追ってくれ!」
「ふざけんな! 勇者は私だ、お前は何だ! 指図される覚えは無い!
追いたければお前が行け!」
叫ぶエクルンドに2人目の勇者ピーターは敵意を持って答える。
この2人は歳が近く、冒険者の時期が被っている。
とはいえ、貴族に推され勇者に成る前のピーターのランクは B止まりだった。
冒険者としてはエクルンドの方が遥かに評価が高かった。
一方的に彼が敵視していた関係とも言える。
エクルンドは自力での元Aランク
ピーターは勇者に成った事で S ランクへと上がる。
勇者が元の自分より上のランクの者に噛みつく。
この構図は貴族の推薦で勇者に成れる現状ではそう珍しくない。
教官たちは「またか!」と苦々しく思うも、相手が貴族付きの勇者ゆえには手が出せない。
オークを殺す事に専念する。
「 オーク剣闘士が先に逃げている、被害が出ますよ!」
エクルンドが叫ぶも第2の勇者ピーターは取り合わない。
エクルンドの言葉を無視し、オークの上位種を攻撃する。
そして勇者の仲間たちも追いついてきた。
彼らも囲むように布陣し、参戦の意志を見せる。
だが1人、教官になったエクルンドの声に応えるがいた。
「そうかエクル、それは良い情報だ感謝しよう。
俺たち、勇者〝ローイン〟のパーティが追おう。」
第三の勇者のパーティの戦士だ。
彼はエクルンドが教官になるまで、エクルンドのパーティで共に活動していた冒険者だった。
「勇者〝ローイン〟!?・・・そうか君はいまそこにいたのか・・・」
彼らの関係もまた良好ではない。
エクルンドは冒険者時代に何度も貴族から誘いを受けている。
勇者に推薦してやると。
戦士の男はそれを受けるように再三進言したが、エクルンドは首を縦に振ることはなかった。
そして結婚を決め、パーティを解散し、サイモンとガーファを追って教官になった。
2人の関係はそこで終わっている。
「ふん、教官になると世事にも疎くなるのか、同じ街にいたのに。
お前が勇者になれば・・・いやそれは言うまい。
無駄な時間を使ったが、おかげで〝ローイン〟と出会い、勇者へと導けた。
ピーター殿! 先の魔物は我らが追います故、ここはお任せしたい!」
「ああ、任せろ!」
戦士の男とはそれ以来だ。
彼は勇者の従者として名を残すことを望んでいた。
第三の勇者の男を勇者にするために動き、勇者に成らせた。
当然〝第2の勇者ピーター〟がエクルンドを忌々しく思っていることも戦士は気づいている。
あえてどちらもここに釘付けするために言った。
勇者と戦士、別のパーティだった2人もまた同期のライバル関係にある。
エクルンドと共にAランクだった戦士
第2の勇者、彼が勇者に成った時
エクルンドがパーティを解散した時のこと
その後、戦士の男をピーターが自パーティへと誘ったが、彼は拒否し別の貴族に雇われた
そして〝ローイン〟が第3の勇者に成り、その横に彼がいた
小さないざこざが何度もあり、そのたびに顔を合わせた仲だ。
どちらも今更教官になったエクルンドに上位種のオークを倒させ、手柄を渡したくないと考えている。
戦士を先頭に第3の勇者のチームが駆けていく。
彼らはここに遅れて合流したものの上位種に手が出せず、二の足を踏んでいた。
そこへ情報が入る。
志気は高い。
そして第2の勇者のパーティはエクルンドを盾にするように上位種のオークを囲む。
今の第2の勇者の仲間は冒険者時代からの仲間が多い。
彼らも皆、エクルンドの事は知っている。同じように良い感情は持っていない。
しばらくエクルンドにメインで相手をさせ消耗させ、上位種が傷つくと段々と主導権を奪っていった。
最後はエクルンドを追いやり、第2の勇者のパーティたちが止めを刺した。
現在この街には勇者のパーティが3つ存在する。
彼らは勇者だ、だが誰も救わない。
勇者は貴族の為に
教官はギルドの為に
冒険者は自分の為に
街は、特に第3地区は荒廃が進む。
街に住み、地を司る小精霊が再起を諦め、堕落するほどに。
若い教官のエクルンドは予定ではイゾウの兄貴分みたいな感じでもう少し出番があったんですが気づいたらそこを全く書いてなかったですね、なぜだ。
そして明日はまたイゾウに戻ります。




