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異世界(この世)は戦場、金と暴力が俺の実弾(武器)  作者: 木虎海人
2章  初心者講習 乱痴気騒ぎ

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剛速球


【 イゾウサイド 】


先手必勝。

囲まれた状態を打開するべく 『 吹雪 』を使う。

目の前のデカいオークに狙いを定めた。


〝剛速球〟

視界に入った瞬間に思い浮かんだ言葉がそれだった。

魔法が発動する前に何かが投げつけられた。


左手に持っていた人間だ。

どっかのエースピッチャーの本気のストレート張りに一直線で飛んで来る。



危ない! と 助けなければ! が同時に浮かんだが 危ないが勝る。

当然だ。

サッと避けた。

酷いようだが受け止めた所で2人とも吹っ飛ばされて壁に激突だろう。

詰んだ未来しか見えない。

仕方無い。

知らん人だしな。


しかし、路地の入口の角地に激突してくれたおかげで路地への間口が広くなってしまった。

少しだけど、守る範囲が広がったじゃねーか。くそっ。


再度、『 吹雪 』を念じる。

さっきの 『 吹雪 』 は発動しなかった。

俺が危険を感じて反射的に避けたからだろうか?


念じた瞬間にデカオークが大剣で斬りかかってくる。

俺はそれを反射的に〝魔剣グラム〟で受け止める。

こうゆう瞬間に考えなくても動けているのは短い期間だが講習の賜だろう。

もう少しの間、ちゃんと受けたかった。



( 駄目だ主、魔法の発動を読まれている。)


ピクシーの念話が届く。

姿は見えないが探してまで見る余裕はない。

多分どこか邪魔にならないところにいるのだろう。


(発動!? 無詠唱だろ!?)


( 主の魔法は無詠唱じゃない、溜めがある。その瞬間を読まれてる。)


( 溜め!? なんだそりゃ、 くそっ、確かに剣で戦いながらは使えないけっ、どっ!)


デカオークと斬り結びながら念じるも、 『 吹雪 』は発動しない。


〝溜め〟・・・


よくわからんが、いまだ、と思った瞬間に即座にバン! と発動するのでは無く、

力を篭める一呼吸を必要とするのだろう。

要は数秒の集中力。


人が飛んできたときに、『 吹雪 』への集中は乱された。

剣を斬り結びながら、他に集中力を割くのはまだ無理だ。難しい。


仕方無いので、デカオークの大剣に周囲のオークを巻き込む方向で動く。


デカオークの剣を受け流し、近くにいるオークへと誘導する。

デカオークは雑魚のオークなど気にもならないのか、何度かそのままオークを両断した。

目の前のオークでだいぶきついが、そのタイミングで俺も別のオークを切り伏せる。


問題は次から次へとオークが流れてくること。

逃げて来たはずのオークが俺たちの前で足を止める。

後ろを振り返り、追っ手が来てないことを確認するとこちらに躙り寄ってくる。

もしくは食われている人攫いの残骸を一緒になって食べ始めた、


いつまで経っても俺を囲むオークの数は減らなかった。

ちゃんと追って来いよ、精鋭さんたち。仕事が半端すぎる。


不幸中の幸いにもデカオークは大剣使い。

大剣の相手は教官長との毎日の稽古で慣れている。


少しサイズが大きいだけだ。

戦っているうちにそれは慣れる。

何よりもデカオークは全身怪我だらけの影響もあって、剣を振る速度が遅い。

普通のオークの攻撃よりも遥かに早いのだが、教官長の大剣はこの3倍は早い。

代わりにこのデカオークは腕力が俺より強い。

一撃一撃が思い、腕に響く。


大きさは重さ、重さは強さだ。

〝魔剣グラム〟が重さに特化した大剣なおかげでなんとか耐えれている。

普通の片手剣で応対していたら、剣を受けきれず戦線はとっくに崩壊してるだろう。


デカオークの脇腹にある傷も大きい。

鎧を砕き、少し抉れている。

かなりの重傷だ、おかげで本調子で無いのだろう、ざまぁみろ。

おかげでなんとか戦えている。



この投げ飛ばされた男がやったのだろうか!?だったら感謝だ。


ピクシーもどきも言ったが間違い無く今の俺よりも、目の前のデカオークの方が強いだろう。


正直なところ路地の入口を守るという制限が無ければ、速度(速さ)でなんとか別に色々な対応が出来そうだとも考えなくも無い。


だが、今この場を離れたら部下4人とそこのもう1人がオークに食われるだけだ。


ここまで来た全てが無意味になる。



(おい、回復して援護させられないか?)


ピクシーもどきに声を掛ける。そこの倒れている男をだ。

強いならあいつがメインで戦って欲しい、譲る譲る。

俺は雑魚を相手に無双していたい。


(回復魔法を使う間に殺される、主がな)


(やっぱりか。多分  癒やしの水 (アクアヒール)も溜めが要る。クソがッ!

魔法覚えたのに肝心なときに使えねぇ!)


(我々を使った魔法も多分・・・)


(言うな、分かってる!)


改めて聞きたくない。聞けば苛ついて役立たず扱いする言葉が出てきそうだ。

こいつらは探すのに協力してくれた、そこは感謝してる。

そんな言葉は口にしたくない、だが状況的に口を開けば文句しか出てこない。


せめてそこの倒れている男、這いずりだして避難してくれないだろうか。

そこにいると邪魔だ。

奥で倒れてる4人を連れて逃げて欲しい。


無理な相談だ、俺が踏ん張るしか無いだろう。

それが出来るなら倒れてやしない。


そんなことを考えながら斬り合っていると、少し斬られた。

横から飛び込んで来た雑魚オークに。


痛い、イラッとくる。

だがデカオーク斬り合っている現状、横にあまり意識も避けない。


俺の前でデカオークの剣は軌跡を変え、俺に石で出来た槍もどきを刺しているオークを凪いだ。

デカオークは邪魔だと言わんばかりの勢いで、オークを真っ二つに割って吹き飛ばした。

部下とか子分じゃないのかよ。


デカオークは俺を目で捉えながら、周囲のオークへ大きく吠えた。

そして自分の周囲を剣で凪ぐような仕草をする。

その動きを見たオークが後ずさっていった。


ああ、なるほど、自分の獲物だ、手を出すな的な奴か!

いかんな、完全にコイツの獲物認定されている。


なんとなく俺を食べる気満々なのが目から伝わってくる。

俺は色んな意味で食えない男なんだがな・・・

オークの、それも上位種相手だと関係ないようだ。



雑魚オークを少し下がらせたならば、そのまま諦めて撤収してくれないかな?

ここで遊んでると追っ手が来ると思うよ。


言えば理解出来ないかな?上位種らしいし。


とか考えてると大剣を上段に斬り込んでくる。

大迫力だが、立ち向かうしか無い。


(主を食べるつもりだろう。逃げた方がいい。)


(俺は食い物じゃねぇ!)


(多分さっきのニンゲンも食べるつもりで持って帰って来たんだ。魔物は強いニンゲンを食べると強くなると聞く。腹の傷を治すのにそこの男が必要で、魔力の多い主を食べて進化するつもりだろう。

絶対に引かないから主が逃げた方がいい。

いいじゃないか、主と違って精霊の見えないただの人間だ。)


(お前にとって区別がつかない人間でも俺にとって部下なんだよ。

見捨てたら最後、今後人はついてこない。)


(我々にとっては精霊の見えないニンゲンのために主が死ぬ方が困る。)


(精霊より人手がいる。制限のある魔法より稼ぎ手だ。

何より俺は死なん。そのうちこいつら追いかけてくる戦力があるはずだ!それまで粘る!)


(本当に来るか~? 逃げたほうが良いと思うぞ)


(うるさい! もう黙れ! 消えろ!)


子鬼の声を遮ってにデカオークとの斬り合いに集中する。

こいつらと話しても逃げろとしか言わなくなった。

逃げる選択肢は無しだ。


何合かの斬り合いで互いに少しずつ削り合った。


だが元々のサイズが違うためにこちらのダメージの方がデカい。


「 クソがぁ!  癒やしの水 (アクアヒール) おっ!」


斬り合いながらも少しだけ傷が癒えた。

回復出来た。


(魔力をあまり篭めなければ溜めがなくても発動するようだ。

かわりに効果は薄いようだが。)


(まだいたのか。)


(酷いな、従属した。)


(俺の選択肢と真逆のアドバイスしかしない精霊はいらん、解除していい。)


(ぐっ)


(切り捨てられたくなければ、前向きなアドバイスだけしろ。逃げるは無しだ。)


(わ、わかった。多分、篭める魔力の量の問題なんだ。

攻撃魔法の方が魔力を使うか、慣れなのか。

魔法を覚えてから今までで、より多く使っている慣れた魔法の方が少ない魔力で発動するはずだ。)


(昨日だ)


(昨日!? 何が!?)


(魔法覚えたの! 大して変わんねーよ、どれも。)


(う、嘘だろ主どの・・・・昨日!?)


とはいえ、氷魔法よりは水魔法のほうが多分多い。

 癒やしの水 (アクアヒール)が回数的に少し多いか。


デカオークと斬り合いながら、壁に叩き付けられ、瓦礫に埋もれた男をちらりと見る。

そして彼に向かって 癒やしの水 (アクアヒール)を試した。

魔力は篭めない。篭めたか篭めてないかギリギリのところだ。


男の居るところに水が降り注いだ、成功だ。


「う・・・・此処は・・・?」


「路地へ!そこは邪魔だ!」


男は頭上で打ち合わせられる大剣をちらりと確認し、動き出した。

男が動きだした姿を確認したデカオークがそちらへ身体の向きを変えた。


当然だ、奴も俺も非常食扱いだ。

逃げたら追う。逃げたほうを優先だ。

俺だってそうする。

デカオークが俺から目を切った瞬間にザックリ斬り込んでやった。


手応え有り。良いのが入る。

オークなら両断出来る俺の一太刀が両断出来なかった。

やはり堅い。が、大きく斬れた。


デカオークの目がさらに鋭くなり、俺を睨み付ける。


ばーか、俺はお前の餌になんかなんねーよ。

そして間を取ったな、間抜けが!


死ね、『 吹雪 』



そう念じた瞬間に、即座に体勢を直しこちらに斬りかかってこられた。

姿勢を低く構え、一気に飛び込んでくる。

巨体が飛び込んでくる、それだけで危険だ。


(やっぱり強く篭めた魔力に反応している。)


『 吹雪 』だと使う魔力が大きいのか。

奴はそれに反応している、と。

逆に言えば『 吹雪 』ならこいつにも有効な攻撃手段になりそうだ。


さらに何合か斬り合っているとズリズリと身体を引き摺って倒れていた男が路地へと入っていく。

あんまり回復していない。


その後も何度か彼に向かい  癒やしの水 (アクアヒール)を念じてみたが、ほぼ不発だった。


一度だけ成功し、身体を引き摺る速度が少し上がった気がした。

が、多分そこまでは大差ない。

正直な所、俺は他人を治すのが下手くそだ。

何度か自分の予想以上に回復してしまったことがある。それを見込んだが難しいようだ。

魔力を篭めずに片手間で発動した 癒やしの水 (アクアヒール)ではそこまで癒えない。

今後は自分に集中してかけるのが正解か。


「私にもっと回復魔法を掛けてくれ!」


後ろで男が叫ぶ。戦おうとする姿勢はいいけどな。

正直邪魔だ。死んでくれた方が諦めがつくかもしれない。


「見てわかるだろ!隙がねーんだよ!早く逃げてくれ!」


馬鹿が、今後ろを振り向いたら背中から斬り殺されるだろうが!俺が!

早く逃げろっての。


「ぐっ、わ、私は勇者だ! 君より戦える!」


「俺はギルドの講習生だ! 魔法は覚えたてで下手くそなんだよ!

頼むから、離れてくれ!剣を受けるので手一杯なんだ!」


よりによって勇者かよ。

たしか今この街に滞在している勇者はたしか3人。

全部貴族の紐付きだ。

貴族に投資されて育ち、貴族の依頼のみをこなして評価され、貴族の推薦を受けて勇者に成った勇者。

通称 : 養殖勇者 

ああ、この名称は陰口に使う呼び方だから呼んじゃいけないんだった。

なんか表向きの綺麗な呼び方もあったはず、興味無いから覚えていない。

声に出してないからセーフ。


(思いっきり聞こえてるんだが)


(うるさい、黙ってろ。)


「こ、講習生だと! し、しかしっ勇者の私が講習生に任せて逃げるなんて・・・」


「自分で回復魔法を掛けるのはどうだ!?」


「わ、私は剣士なんだ、魔法は使えない!」


なんでだよ!ドラ〇エの勇者はちゃんと覚えるぞ!


「回復魔法はどうしてるんだ!?」


「な、仲間の僧侶が!」


おお、僧侶!! いるのか、勇者の仲間といったら戦士、僧侶、魔法使いが基本だ。

他!?2週目からでいいだろ。

ああ、商人も育てないと駄目なんだっけ!?


「そいつはどこに!?」


「し、死んだ! そいつに最初に殺された!」


駄目じゃねーか、回復役(ヒーラー)殺すんじゃねーよ勇者(馬鹿)が!

回復役(ヒーラー)殺されて、勇者が非常食とか何考えてんだ馬鹿パーティ!


「回復薬とか!?」


「つっ、使い切った!」


ぐっ、本当に強いのかよ勇者(こいつ)


「腹の傷はどうやって!?何か弱点が!?」


「なっ、仲間の戦士が!!」


「そいつは!? どうやった!?」


「さっ最後の力を振り絞って相討ちになった!」


なってねーよ! ちゃんと責任持って相討てよ!

いや、すまん。これは口が悪い(酷い)な、正直おかげで助かってる!

顔も知らぬ、戦士よ冥福を祈る。

そこの勇者も引き取ってく、いや、駄目だ。もしかしたらまだ何か・・・


「他に仲間は!?魔法使いとか!?」


「ぜっ、全員死んだ・・・・」


「ぐっ・・・マジか・・・」


駄目じゃねーか。つーかこいつ本当に勇者か? 回復させても役に立つと思えなくなったぞ。

腹に傷を負わせた戦士が生きてた方が良かったんじゃないか?

戦士さん僧侶さん実は生きてて、追いかけて来てる展開をお願い!


いや、待て。もしかしたら勇者固有の凄い能力があるかもしれん。


「回復したら何か奥の手が!?」


「す、すまん、無い・・・」


駄目だった。

ちなみに〝神の寝床〟で〝使徒〟であるイゾウには簡単な毒は効きません。

田舎のスラムの人攫いが手に入れられる程度の毒では問題なく動けます。

ただし、あくまでも効きにくいだけで、猛毒で死ねます。

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