人を犠牲にした罠
「 D ランク !! ですか? 」
「あー、小さいがクランを率いていてな、部下を逃がしてる間に囲まれて困ってたんだ。」
走りながら2人に身の上を聞く。
Dランクといえば、Hから始まる冒険者のランクでは下から五番目のランクだ。
よく分からないSから上のランクを1つと考えれば上から五番目のランクでもある。
ちょうど真ん中辺り。
世の中とは下層が厚く多いものだ。
上に行く過程でふるい落とされ、数を減らし、少数になっていく。
彼らはなかなかの腕を持っている先輩だと見て良いだろう。
実際に立ち回りが上手く、強かった。
見殺しにしないで良かった。
自己紹介もほどほどに共に連れ立って南門へと戻る。
なんでも、第二東門前に魔物の群れを集めたのは防衛側の罠らしい。
これから第2地区以上に在留する戦力が出てきて、大火力で魔物の群れを攻撃するらしい。
高威力範囲魔法だとか、魔剣だとか、聖剣も乱舞る!するらしい。
なにそれ、超見たい! と思ったが、住民のことなど一切考慮されないらしく、巻き込まれる可能性が高いから一刻も早く離れるんだ!早く! と強く説得され渋々一緒に避難している。
長く防衛戦には参戦しているらしいが、反撃に出るタイミングは読めないらしく、彼らもかなり焦っていた。
今この瞬間に爆撃が始まってもおかしくないそうだ。
随分イカれた指揮官だなと思う。
今回は魔法使いに特にヤバイことで有名な人が混じっているらしい。
光を中心にしたかなり範囲が広い攻撃魔法が得意な奴らしい。
そういえば光魔法は魔法の中でも特に範囲に長けた魔法だと白い幼女が言っていた。
無い胸を反らして威張っていたことを思い出した。
つまり俺にはそんな攻撃魔法を撃ち込んできそうな見た目幼女、推定ババアに心当たりがある、まさかね?
脳裏に空に浮きながら、町一面を焼き付くす幼女の絵が浮かぶ。
当人たちから街を焼き尽くした前科の話を聞いたからがそのサマが綺麗に脳内に浮かび上がった。
高らかに笑う白いドレスのロリババアがスカートをたなびかせて街を焼き尽くす絵。
そういえば第二地区在留だね・・・・
あーなるほど、だから男が逃げるのか。
確かに巻き込まれたくないな・・・・充分痛い女だ。
見たいけれど巻き込まれる自信が沸いてきたので早々に逃げることに賛同した。
彼らはクランのメンバーを、
俺は部下にした奴らと合流し、万が一にもロリババアの魔法に巻き込まれないように避難させなければならない。
移動しながら互いに置かれている状況を説明し、第二東門にはその後、彼らに連れて言ってもらえることになった。
彼らと一緒になら第二地区に入れるらしい。
先に倒した分も討伐証明は全て譲ってもらった。
これまで倒した分も合わせて見せたら、Dランクにすら引かれるくらい集まっていたので脱走の疑いは否定できるだろうという意見をもらえた。
倒した数でアピールするわけだ、俺はこんなに戦ってましたよーと。
聞く耳を持つ人がいればなんとかなる。
彼らは俺が参戦しなかったならかなり危なかったようで命の恩人だと感謝された。
彼らは〝 林檎の帽子 〟というクランを率いて今回の任務に当たっていた。
リーダーのフレデリック と サブリーダー ファーレン。
兵士たちと同じように、南門からこちらに来たらしい。
兵士と違い、裏町を駆使し、門の近くまで来ていたというから凄い。
だが若手が緊張から先走り、魔物に見つかって負傷者がでたらしい。
自分たちが身体を張り、先に下の者を逃がしたと言うのだから偉いと思う。
「しかし、今回の講習生は有望株が多いって噂だったけど、本当だったんだな・・・」
「あ-、新人でこの強さ、ぜひうちのクランに入って欲しいぜ、どうだ?」
「有り難い話ですけど、まずは奴隷落ちを回避が先なので、そのあとの事は今は考えられないですよ。」
お約束の社交辞令だろう。無難に返事をしておく。
「ちげぇねぇ、しかしタチの悪い嫌がらせする野郎もいたもんだな。」
「あー、なんて野郎だ? 俺らがとっちめてやろうか?」
「名前は知りません。魔法の講師のもやし野郎ども三匹です。 とっちめるのも自分でやるから結構ですよ。むしろやめてください、消化不良で欲求不満になる。
講習が終われば、お互い冒険者だ。
喧嘩は自己責任なんですよね?」
「欲求不満か、ちげぇねぇ。個人間のやりあいならたいした問題になんねぇさ。
アンタに狙われるなんて馬鹿な奴らだ、やるときは見学させてくれ。
ちなみに講習生の中でどのくらい強いんだ? やっぱり1番強いのか?」
「あー、なんでも王都から凄いのが参加してるんだろ? 兵士の中でも有望だってのが。」
2人がドスドスと足音を立てながら聞いてくる。
どちらもオーク型の、相撲取りのようなアンコ型の体型の上に、鎧を着込んでいるので走るのは遅い。
東門からはだいぶ離れたので魔物に遭遇しないのが救いだ。
「うーん、どうなんですかね・・・強い奴は結構いますね。
俺が今のところ12位なんで上に11人はいますし、13位以下にも腕が立つのは隠れてますから。
1位はその王都から来た奴ですよ。」
「「12位!!!」」
俺の言葉を聞いて小走りで移動していた足が止まってしまう。
急いでるんじゃないのか?
「どうかしました?」
「いや・・・アンタで12位なんて、信じられなくてな・・・魔法も使えて、ハイオークとサシでやりあえて・・・・」
「あー、今回の講習は凄いって噂になってたんだが、そこまでとは・・・ハイオークとやり合えるルーキーなんて滅多にいないぜ?」
ふーん、そんな噂になってるのか。教官も当たりの回だとは言っていた。最悪の世代的なあれか?
滅多にいないって事はいないこともないのだろう。
じゃー別に問題無くないか?
多分12位までの全員は微妙だけど半分くらいは出来るだろう。
ギュソンさんとか下位の成績でも出来る奴は出来るだろうし、順位は当てにならないかもしれない。
ま、今回の順位なんて魔法を使えるようになる前までの成績での話だ。
さらに師匠が弄くった上での12位だという。
今後さらに入れ替えが激しくなるだろう。
人生の順位なんて頻繁に入れ替わって当然だ。
必要なときに1位を狙える位置につけておけばいい。
細かい所まで教える必要もない。
手の内を明かすほど信用もしていない。会ったばかりだ。
当然魔力は残り少なく、回復魔法は出来てあと1、2回だ、と伝えてある。
気分的に、だけどな。
(今の気分で)使える魔法は氷の矢と、癒しの水だけと言っておいた。
「よく知りませんけど、上位の成績の講習生は化け物ばっかりですよ、俺なんてかわいいもんです。」
このくらい謙遜しておけばいいだろう。
あとは勝手に12位として広まって、油断させておけばいい。
先輩冒険者からちょっかいを出されるというお約束が俺を待ってるぜ。
迷惑料は装備品一式だ。
彼らの案内で裏道を進む。
逃走用のルートが決まっているらしい。
途中で落ち合うポイントも決まっているそうだ。
勉強になる。
そう考えると俺の指示は追い付けとか、匂いを辿れとか曖昧すぎる。
今後は見習うべきだろう。
連絡手段の無いこんな世の中じゃ、せめて頭を使うべきだ。
しばらく進むと彼らの言葉通り、彼らのクランメンバーが待っていた。
再会して喜びあう仲間たち。
命の恩人だと紹介され、一通りの感謝の言葉を受けた。
「ほい、これで俺の魔力は空に近いですね。氷の矢をギリギリ何本か撃てるかってところです。」
2人ほど足を怪我していたので回復魔法を掛けて、自走出来る程度に治してやった。
善意ではなく移動の足に支障が出るからだ。
兵士たちと違い、冒険者の彼らは治療までさせるのは申し訳ないと固持したが、早く先に進みたかったので無償で治した。
ここら辺の通りは前に通った道でも無ければ、上から見て頭に叩き込んだ道でも無い、彼らについて行かねば抜けられない裏道だ。
「凄い、回復魔法・・・これでまだ、講習生・・・」
足を治してやったうちの1人の若い冒険者が呟いた。女だ、見た目は悪くない。
年齢的には今の俺とあまり変わらない。彼女と変わらない年の人間も何人かいる。
思ったよりも若いメンバーが多いクランだ。
「あ、あなたっ、何歳ですか!?こ、講習を受ける前は何を!?」
今なおしてやってリスみたいな小柄な女の子が声を荒げて問うてきた。
髪を後ろに1つにポニーテールで纏めた活発だが勝ち気そうな女の子。
ツバを飛ばすな、ツバを。
「18歳です。 講習前とかの話を、今してる場合じゃないと思うんですけど?」
「お、同い年、ぐぬぬぬ、で、でも私のが二期先輩ですからね。か、感謝はしますけど偉そうにしないでくださいね!」
よく分からんが俺と同い年らしい、どうやら絡まれているのだろうか。
「あーイゾウくんは多分お前らより全然強いから絡まないほうがいいぞ?」
若い冒険者に一緒にきた自称人間が言う。
サブマスターの
それはフォローになってないんじゃないかな?
「ううっ」とか言ってるし。
「あーすまねぇな、こいつら2つ前の初心者講習を終えたルーキーでな。うちで面倒見てるんだが、講習で魔法を使えるようにならなかったからひがんでるんだと思う、許してやってくれないか?」
「別にひがんでなんかいません、ただちょっとずる、す、凄いと思っただけで・・・
冒険者は、ま、魔法が使えなくても戦闘で役にたてばいいんですから!」
「あー、それがイゾウくん、戦闘も半端ないんだ・・‐
ハイオークなんか1人で殺しまくってる・・・討伐証明見たらビビるぞ、ルーキーとは思えない。」
俺の腰にぶら下げたオーク、ハイオーク、ハーピーなどの魔物の耳を繋いだ束を指差して言う。
それを見たこのクランのルーキーたちは絶句していた。ちょっと怖い物を見る顔になった。
人を化け物みたいな目で見るのはやめてほしい。
先の女だけが「ま、まけませんから!」と言って離れて行った。
別に競うつもりはないんだけどね。
何で何処へ行っても敵視されるかな?
「すまんな、まだまだひよっこなんだが負けん気が強くてな。
そんな部分も見込みがあると思ってるんだが、恩人に向かって・・・」
「気にしてませんから大丈夫ですよ。
魔法、俺は運良く覚えられただけですしね。
それより申し訳ないんですが、大通りに出たいんですが道を教えてもらえると。」
魔法が使えない気持ちはわかる。
俺もずいぶん不貞腐れた。
だから気にはしないでくれて構わないが、クランメンバーが突っかかってくると居心地が悪くなる。
ここにいるのは向こうの味方だけだしな。
最悪1人でも大通りに向かおうと思ったのだが、それは引き留められた。
彼らと連れだって大通りへと出た。
かなり居心地は悪かったがここまで出ればこっちのものだ。あとは1人でもなんとかなる。
この通りを戻れば部下どもと出てきた路地に辿り着く。
そこまで行けば連絡がつくだろう。
とりあえず走って戻るか、と思ったら袖を引かれた。
誰かと思えばさっきの女だ。
「何です?」
「人、いっぱい倒れてます」
「だから?」
「何とも思わないんですか?治してあげようだとか、」
「もう魔力無いって言いませんでした?さっきので切れましたよ。
無償で人を治して廻るつもりもないですけど。」
「そうですか・・・冷たいんですね、どうしてこんなに冷たい人が魔法を使えて、私が使えないんでしょうか・・・
私が使えたなら絶対見殺しになんてしたりしないのに、天は不公平です。」
一瞬何を言ってるんだこいつは?と真剣に考えてしまった。
なんかひがみっぽくて面倒臭い。
魔法を使える奴に恨みでもあるのか?
「・・・あぁ馬鹿か・・・」
「なっ、ばっ、馬鹿とは失礼じゃ無いですか!」
女が真っ赤になって反論しようとした瞬間、ドン!と短く何かが落ちるような大きな音が響き、大地が一度揺れた。
音の方角を見れば、第二東門の方角だ。
つまり俺が先ほどまでいた方となる。
白い光が門周辺に幾重にも重なり降り注いでいる。
まるで光のカーテンだ。
それが幾重にも折り重なって、降り落ちている。
そして白のカーテンが消えたところから赤い炎が立ち上る。
白と赤が混じり、少し陰った空が白く染まっていった。
これが白夜か・・・
ああ、ロリババアが暴れ始めたと直感した。
どうして俺の周囲には碌な女がいないのだろうか?
きっと冒険者になったからだな。商人にでもなれば違ったろうに。
「始まったな。」
「あー、危ないところだった・・・」
一緒にこちらへ逃げて来た2人の男が頷き合っている。
あの場所で1人で、班に戻る画策を続けていたならば、巻き込まれていた可能性が高い。
2人には感謝だ。
白い光が収まると、黒い竜巻が次々に立ち上っていった。
ここから見るだけでも5個以上発生し、オークを巻き上げている。その向こうの景色が怖い。
あの時借りた、ネクロスの指輪。確か銘は 〝狂飆色欲〟
きょうひょうとは、確か荒れ狂う風とか嵐の事だった。
なるほど、黒の大魔道さまはそっち系の魔法が得意なのか、恐ろしい、エロいババアなだけじゃなかったのか。
考えてみれば、俺の腕を切り落とした魔法も風魔法だったのかもしれない。
あの時は腕を落とされたショックでそこまで頭が回らなかった。
何か俺とんでもない化け物に失礼な態度を取っていた気がする。
す、少しだけ反省した方がいいかもしれない。少しだけね。
暫く呆然と見送っていたが、そのうち竜巻は収まり、次は衝撃音や炸裂音が響いてきた。
「突撃が始まったな!」
「あー、間違いないな。参加したかったぜ!」
「どうゆうことなの?」
クランの若い女メンバーが問う。
俺も気になるところだ。細かく頼む。
「東門前に集まった魔物に魔法を集めて撃ち込んだんだ。魔法の範囲に収まるようにワザとな。
さっきの光の雨とか竜巻がそれだろう。」
「あー、魔法で陣形を乱したあとに精鋭が門を開けて突っ込むわけだ。勇者とか聖騎士なんかを中心にな。
強い魔物は倒してもらえるから、経験値稼ぎとしては美味しいんだよ。」
でたよ勇者。
彼らの話では、魔法で場を乱した後に、精鋭が魔剣とかを振りかざして順滅していくらしい。
それが、手負い魔物を仕留める機会で、美味しいらしい。
それなら俺も確かに参加したい。
彼らのクランと共に終わらない嵐を眺めていた。
竜巻は次から次に立ち上がっては消え、また立ち上がる。
それをただ眺めていた。
そんな俺に走り寄ってくる男たちがいた。
俺が部下にしたチンピラたちだ。
俺を見つけて、息を弾ませたまま声を掛けてくる。
声を掛けてきたのはハーフドワーフ兄。
「旦那・・・すまん、このタイミングで、攫われた・・・・
北部の奴らだ! あいつら、妹分にした奴らが・・・・」
m(_ _)m
2019/06/02
クラン名の変更、 リーダーサブリーダーの名前を追加。




