表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界(この世)は戦場、金と暴力が俺の実弾(武器)  作者: 木虎海人
2章  初心者講習 乱痴気騒ぎ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/196

第二東門の奥で




第二東門内側の後方には講習生が集まっていた。

一度集合し、第二東門の後方部へと講習生たちは配置される予定だった。

まだ移動は出来ていない。

集合した彼らにはトラブルが発生している。

講習生が1人、それも班長がいない。


問題にならないわけが無かった。







「貴様ら・・・これでイゾウが戻れなかったら絶対に許さんからな。

貴様らは元より、貴様らのパーティメンバーもその家族も、1人残らず徹底的に叩きつぶしてやるからな!」


憤怒の形相を見せるヤクザ。

いや教官だ。


イゾウを単体でオークを追わせたという話を聞いた彼の師匠2人、サイモン教官(ガハハ髭)ガーファ(傷顔の)教官だ。


ガーファ(傷顔の)教官は声を荒げ怒り狂っている。

サイモン教官(ガハハ髭)は一見冷静そうにみえるが、そのスキンヘッドには青筋が何本も走り、顔も真っ赤に染めている。

今にも爆発しそうな身体を腕を組むことで必死に押さえているようだ。


講師3人は班担当のガハハ髭教官に何故イゾウがいないのか問われたとき、勝手に班を離脱したと言い放った。

それを聞いていたもう1人の講師、イゾウ班と共に行動していたハーフエルフのリリィ講師がそれは嘘だと声を大に指摘した。

3人は自説を曲げず、リリィ講師を罵倒することで強引に話を通そうとした。

リリィが真っ向から反論し、彼らの嘘の報告をガハハ髭教官に正しく報告したためにその場は騒ぎになってしまった。


近くにいた別班の担当だった傷顔の教官も騒ぎを聞いて合流し、班長のユリウスが呼ばれ真偽を問われた。

ユリウスは講師を庇うことなく、本当のことを伝えた。

極道コンビはイゾウ班の残りの班員全てに1人1人、同じ事を問うた。

その際、講習生相手に騒ぎ立て、自分の味方をさせようとしたアホな講師3人は近くにいた別の教官に地面に抑えつけられた。


12班の面々、特に一部女子に涙ながらに訴えられ、彼ら3人の独断で無理矢理オークの討伐にイゾウがだされたことを聞いた教官たちは激怒する。

いついかなる場合でも講師にそんな権限は無い、と。

講師とは臨時雇いの()()では無い。

なんの権限もない、日雇いの任務だ。


班に補佐としてついていた講師に出されていた命令は、講習生を第二東門へと連れてくる事のみ。

彼らはマナを口説くののに邪魔だったイゾウを追いやるためだけににわざわざ回り道までして、話を作って追い出していた。


激怒する教官たちを見て、イゾウを個人でオーク討伐に向かわせることに賛成した1班の講習生も慌てて手の平を返した、3人の馬鹿講師は武術課の教官の手で、力尽くで本当のことを喋らされることになった。







「 貴様ら! 本当にオークを見たんだろうな! 」


すでに3人は武術課の教官たちにかなり本気で殴りつけられて、顔を腫らしたままおいおい泣き喚いている。


当初魔法課の教官に助けを求めた講師の3人だが、その魔法課の教官にすら越権行為だと咎められている。


それでも嗚咽混じりで答える彼らの答えは、3人の中での罪を押しつけ合いだった。

「 A が見たと言った」「 B から聞きました」 「 C が言ってました」

名前を変えて、これの繰り返しである。


ガハハ髭ことサイモン教官は、イゾウからこの講師の1人がマナという講習生にしつこく絡んでいるという報告(はなし)を聞いていたために、早くに真相を察している。

故に激怒していた。手を出せば殺しかねないほどその怒りは深く、故に耐えている。

声を出すのは傷顔の教官のみである。

いつも豪快に笑い飛ばしてしゃべる教官の無言の怒りは、周囲を威圧するには充分だった。




これによって一気に立場がなくなってしまったのは魔法課の教官たち、特に教課長だった。

ギルドは今回の講習で多くの講師を雇っている。

だが、今回はそれでも班についていける人数は12班 × 2名 の 24名分の枠しか無かった。

魔法課はそこに自分たちの息の掛かった講師を多くねじ込んでいた。

代わりに武術課の講師を補佐では無く、別動で前線に送り込むために。


反対意見も多数あったが、今回は防壁の上での防衛任務の予定だったことから、今回の参加講師は魔法課と弓術の講師をメインにさせることに成功していた。

特にイゾウの所属するユリウス班には、教科長の父である老人教官がこの3人を強硬にねじ込んでいた。

この3人は講師の中でも特に1段階、腕が落ちる。それは教官ならば、誰の目にも明らかだ。

今回の講習がたまたま人数が多く、かつこの3人も過去にこの初心者講習を受けていたことから数あわせの講師として雇われたに過ぎない。

それをあえて補佐につけ、何かあったときに足を引っ張らせるという地味な嫌がらせの為だった。


特にユリウス、ノリックが魔法の講習でイゾウたちと合流して以降、老人教官は彼らを目の敵にする事が多かった。

故にイゾウを嫌うこの3人を裏で重宝していた。

魔法課の職員や関係者は皆それを知っていながら、見ない振りをしていた。

当然、今までも武術課の教官からは何度も彼らの嫌がらせに関しては抗議の声を受けている。


今回彼らがやったことは嫌がらせとしては受け取られない。

犯罪として扱われるだろう。

教唆はこの国では立派な犯罪である。


講習生の個別行動は許されていない。懲罰ものの罪である。

そしてこれを指示した者がいる。

もし教官の誰か、責任の取れる者が出した指示であれば問題にならない。

だが、今回指示を出したのは責任を取れない講師である。

この場合、双方が罪に取られることになる。


講師が越権行為で講習生を単独で動かしたなどと、世間にしられるわけにはいかない問題だ。

次回以降の講習生は勿論、講師を雇うことにも支障がでるだろう。



魔法課の教官はみな青い顔をしていた。




同じように青い顔をしているのがユリウス班の女たちだ。

ユリウスと元兵士の2人を除く、7人は先ほどまでイゾウがいなくなったことを大いに喜んでいた。

積極的賛成をして、イゾウをオークを探しに行かせる事に協力した者も、消極的にだが、けっして反対はせず、地味に援護をした者も。そしてそれを黙ってみていただけの者も。


此処へ至る道中、小声で馬鹿にしては、笑い飛ばしていた。

中にはそのまま死ねば良いのにとまで言った者もいる。


本人たちは小声のつもりだったのだろうが、次第に声は大きくなっていった。

悪口、陰口とはそんなものである。

横にいた12班に丸聞こえになるのに大した時間は必要とせず、それを耳にしたセレナとマナは勿論、幽木女ですらどん引いていた。

現在12班の者は殆どが1班に対し怒りを抱いており、双方の班の関係は最悪の状態だった。



彼女たちはその時、その現場ではごねる講師3人の方が力関係が上だと判断したために、そちらについた。

以降、第二東門につくまでの道中は彼らに賛同している自分たちの方が優位()だとすら思っていた。

だがここで集まってみれば彼らは下っ端も良いところだ。

彼らの言い分に同調する者は誰もいなかった。


自分たち以外に。



怒り狂う、極道コンビ。

傷顔の教官は人目も憚らず3人の講師を殴り飛ばし罵倒する。


教官たちもそれを止めることは無かった。殴ることに参加した教官もいる。

中には此処で即座に解雇すべきだと言う者すらいた。


手の平を返した自分たちに、冷たい視線を向けるユリウスと元兵士の2人。

ユリウスは声を掛けても返事すらせず、冷たい目で一瞥するようになった。


険悪になった隣班

何人かは怒りの形相でこちらを見ている。

特に自分は魔法使いですとアピールする格好をした女は「焼き殺してやるわ」としきりに呟いている。

次の瞬間に突然魔法を放ってきてもおかしくない危ない雰囲気を醸し出している。


筋肉の鎧を纏った中年修道闘士(モンク)はかなり怖い顔で睨んでいる、目が完全に据わっている。


その横で半笑いで恐ろしい殺意を醸し出している男、さらにその横で氷のような鉄仮面で自分たちの顔を順番に眺めている女、おそらく顔を完全に記憶しているのだろう。


ここへ向かう道中の楽しい雰囲気はどこかへ行ってしまい、彼女たちは直立不動の姿勢で震えていた。

矛先がいつ自分に向くか、それだけを心配して。









「あの女たち・・・焼き殺してやりたいわ・・・・」


自称魔法使い(クィレア)が相手に聞こえるように呟く。もうこの台詞は何度目かわからない。

これは脅しでは無い。それは何度も手に持った魔法媒介の杖に魔力を篭めたことから周囲の魔法を使える者には伝わっている。

偽らぬ彼女の本心なのであろう。


「いい加減になさい。戻ってきたとき魔力を無駄にしたってまた怒られるわよ。」


「わ、わかってるわよ、でも許せないんですもの!

ちょっとくらいなら・・・〝 炎の矢(ファイヤーアロー) 〟 1発くらい・・・いや〝 炎の球(ファイヤーボール) 〟で・・・」


聖職者(プリースト)アベニルの言葉に、クィレアが反論する。

アベニルもまた怒ってはいるのだが、周囲の怒り具合がすさまじく、冷静さが残っていたためにそのフォローに追われてしまっている。

特に昨日から仲良くしている呪い娘チカチーノがわかりやすい表情で静かに怒っているためそちらのフォローを必死でしていた。彼女がこんなに怒りを露わにするのは珍しい。

今にも詰め寄らんばかりの顔をしている。

呪われた身の彼女がそんなことをすれば、裏で何を言われるかわからない。

それを望むイゾウでは無いだろうという判断だ。


講師3人に当初怒っていた12班の班員だったが道中の暴言を聞いて怒りの対象は変わった。

ここに来て講師3人は教官たちにこっぴどく詰められているために、自然と怒りは1班の班員に向いている。


「クィレア、落ち着け。」


「ナード!貴方まで止めるわけ!? 」


ナードはイゾウにいない間の仮リーダーを任されている。故に一応は止めた。

そんなナードにクィレアは怒りを露わにする。


「違う、いきなり魔法を放つな。手を下すなら俺たちが先だ。魔法は止めに使え。」


俺たちと言いながらナードはジスナを顎で指し示す。

クィレア、ナード、ジスナは一昨日の第一陣から参戦している戦友でもある。

共に続いてイゾウと組むことを選んだ仲間だった。

クィレアはそれを理解し頷く。


「でもイゾウさん、大丈夫かな・・・」


呪い娘チカチーノが呟く。


「貴方、呼び捨てで呼べって言われてなかったかしら?

別にオークなら問題ないわよ。魔法が使えなくても1人で何匹も相手にしてたし。

先日の任務も、討伐数はイゾウがトップだったらしいわ。


戻れなくて苦労してるのでしょう。どうやったら戻ってこれるかしら?」


それに対しクィレアが答える。

ナード、ジスナも「 オークならば問題は無い。壁を越えられないのが問題だ。」と答える。

共に戦闘に参加した身であるが故、戦闘に関しての信頼は熱い。


修道闘士モンク ギュソンが防壁を眺めて答える。


「某でもあの防壁を越えるのはきついだろうな。イゾウ殿はどうするのか・・・・」


12班の面子はその後どうやってイゾウを回収するかを話し合うことになった。


だがその時間は多く取れない。

伝令が駆けてきて、講習生も、教官も残らず移動することになる。


第二東門より総力を挙げて反撃にでるらしい。

火力を集めて総攻撃をかけるのだ。


講師3人の件は保留になった。


門前のオークに一斉攻撃を行い。

その後精鋭が反撃に出る。


元高ランクの教官たちは大半がそこに組み込まれた。


講師に再び班を任せ、教官たちは前線へと向かう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ