兵士 > 冒険者 (見習い)
大通りを進む。
そのあと三度も負傷した兵士を見つけた。
随分激しい戦いのようで第三地区にいた兵士は散り散りらしい。
教官たちはどうしたのだろうか。気になる。
状況を確認すると、現在は第二東門で交戦中とのこと。
俺が治した兵士たちは元々南門での防衛任務に俺たち講習生と同じくついていて、そこから東門に移動したらしい。
移動したのはいいが、既に第三東門は突破されていた。
急な移動のために、準備の整った各班ごとで動いていたために、逆にオークの群れに返り討ちにあったようだ。
さすがに全部治すと色々突っ込まれそうなので、残り魔力が厳しいと言って、軽い治療で済ませている。
おかげで攻撃魔法は使うな、とか、凍らせるのは控えてくれとか釘を刺されてしまった。
俺あんたたちの部下じゃないんだけどね?
その物言いにイラッと来た。
どうも 兵士 > 冒険者とでも言いたげな態度の者が数人いて一緒にいてどんどん居心地が悪くなっていく。
怪我の具合が悪い兵士とその付き添いが南門へと戻ったので今は20人ほどの兵士とのみ一緒だ。
最初以降は上辺しか治してないので仕方が無い。
何よりも、手とか足とかがもげた兵士は治せない。
もげた場合、繋ぐことは出来るけど生やす事は出来ない。
これは魔法を教わったときに黒の大魔道さまにも散々言われている。
切り落とされたならば必ずそれを確保するようにと。
あの人はそれを説明するためだけに俺の腕を切り落としてくれた。
口で言えば理解出来るというのに。
おっぱい揉めなくなったらどうしてくれるんだ、全く。
こうね、後ろからね、抱きついて両手で揉むのがいいんだよ!
片手になったらいっこずつしか楽しめないじゃ無いか!
何のためにおっぱいが二個有ると思ってんだ!
魔力の無駄になるので魔法は使わず傷口を洗って、傷口の上で縛って搬送させた。
冷たいようだが仕方無い。
鬼の形相で頼むと、頼むから治してやってくれと、何人かには懇願されたが、無理なモノは無理だ。
その無駄にした魔力で何人救えるか考えて欲しいと丁寧に伝えて断った。
手も足も生えないことは兵士も理解していた。
それでもわずかな希望にかけてやってやって欲しいと懇願してくる者は現れる。
目の前で親しい者が手足を無くして苦しんでいるのだ、気持ちは分からなくも無い。
仲がよろしくて結構だけどね。他人の為に俺の魔力を無駄にさせようとすんじゃねーよ。
お前の好きにして良い魔力じゃ無い。俺の魔力だ。
おかげで兵士たちとの関係も進むごとに微妙な雰囲気になってきている。
この集団と一緒にいるのも適当なところで切り上げた方が良さそうだ。
勿論魔力を無駄に使えない事を理解して庇ってくれる者の方が多い。
一部の感情的になってる人間が場を乱していて空気が重くなった。
この懇願した兵士は、一緒に南門へ向かわず残りやがった。
うぜえ。
正直助けなきゃ良かったと何度思ったことか。
あいつらが怪我したら見捨てようと思う。
20人ほどで再編成してセンターロードが見えるところまで進む。
このセンターロードと呼ばれる道は門と門を繋ぐ道で、南門にもある。
門を抜けて先に進むと第一門へとたどり着く。
東西南北を走る巨大な十字の、街で1番広い道となっている。
侵攻する方も数が増えて大群になれば当然そこを通る選択肢になる。
600の魔物がその占拠しているようだ。
個人的には少しずつ釣って殺したい。
600に20で対抗するなんて馬鹿のすることだ。
弓があれば矢が切れるまで、ギリギリの所から射殺すのがいい。
だが残念ながら弓はクィレアに預けてある。
街中では矢を射るのは微妙だと思ったから大剣を選択した。
兵士の一部は強行突入を強硬に提案してきた。
当然さっきの彼らだ。
足を切られた、手を切られた兵士の友人とか兄弟らしい。それを治療しなかった俺に冷たく当たる男たち。
大怪我をした彼らの分までオークを殺すんだよ!と言って憚らない。
勿論俺を含め他の兵士に反対されている。
反対した俺に対し、「ガキは黙って言うことを聞けばいいんだよ!」と言い放ちやがった。
さすがにカチンと来た。
「突っ込むのは勝手だが、俺はもう魔力がない。回復は期待するな。」と言い返し、一触即発となった。
さすがに周りの兵士が止めに入って向こうの兵士を宥めたが、これでさすがにもう無理だと思った。
こんな馬鹿に付き合いたくない。
よくこんな奴が兵士になれたもんだ。
逆か、下っ端兵士なんて馬鹿でもなれる。
今は統率する者が不在な為に暴走してるんだろう。
ちなみにこの場合の魔力が無いは、おまえに使う魔力は無い、である。
勝手に突っ込んで死んでこい。なんでお前みたいな奴まで治してもらえると思ってるのか理解出来ない。
とてもとても残念だ。
「申し訳ないですがお付き合いはここまでですね。俺は班に戻るのが優先なので。
ここまでありがとうございました。」
「ちょっと待て、逃げるのか!」
「何言ってるのか理解出来ませんね。最初からここに来るまでの約束ですから。
俺は自分の班に戻るために来たのであって、あんたに付き合う理由は無いんですよ。」
「俺の言うことが聞けないってのか!」
「俺にあんたの命令に聞く筋合いは無い。」
「このやろおおおお!!」
件の兵士は顔を真っ赤にして突っ込んできたが、周りの兵士に取り押さえられた。
ここにいるのはみな平の役職の兵士だ。何故にこんなに高圧的なのか意味が分からん。
「イゾウ君待ってくれ。今から合流するのは無理だ。
ならば我々と力を合わせて街を守った方がいい。戦争が終われば我々の方からギルドに必ず伝える。上に訴えてもいい。」
「残念ですがその言葉、もう信用出来ませんよ。あの人みたいな人たちが何を言うか分かったもんじゃない。
ここで馬鹿みたいな作戦に付き合うより、自分で行動した方が戻れる確率高そうですし。
何より俺、皆さんに、もうね。回復魔法掛けたくなくなっちゃいました。」
今日1番の笑顔で言う。
「そんな・・・」「待ってくれ」「そんなこと言わないで・・・」
兵士口々に言うが知った事じゃ無い。
回復方法も無く死んでいけばいい。死人に口なしだ。
あんまり長く会話をしていると、力ずくで抑えに来るだろう。
〝魔剣グラム〟に魔力を注ぎ、地面を叩き付けて大地を割る。
土埃を巻き上げ、その場を逃げた。
後ろを振り返る事無く適当な路地に入り、走った。
3度目の兵士と合流してグダグダやっているときに部下たちが一度追いついてきている。
再度持てるだけのオークを持たせて戻した。
今度は氷漬けにはせず、そのまま持たせた。
魔力が無いと言いながら氷魔法はマズい、兵士に釘も刺されていた。
多分その前の時に凍らせたのも気に入らない兵士がいるのだと思う。
そんな余裕があるなら回復魔法に廻せとでも言わんばかりの顔をしていた。
その兵士は口には出さなかったが、内心はどうだかわからない。
その上で次は様子を見ながら追いかけてくるように言ってある。
彼らがわざわざ兵士に自分から近寄るとは思えない。
駄目なら戻る。そう伝えた。
走って走って、辺りで1番高そうな建物を見つける。
裏口が空いてたのでそこから入った。
不法侵入すいませーん。緊急事態なんでご容赦下さい。
探し物は高いところから確認するのが基本だ。
迷子の子を肩車して探すアレだよ、アレ。 俺は別に迷子じゃねーけどな。
上から見れば全体像が見える。 バードアイって奴ですね。
エレベーターは無かったので仕方無く階段を駆け上がる。
結構高い建物だった。7階分駆け上がった。
上から見た景色は爽快だ。
まるで戦争映画だ。
東門までは少し距離がある。おかげで全体がしっかり見えた。
門前にはビッシリ、オークを筆頭に魔物が群がっていた。
門を壊せとばかりに門にしがみつき、叩き、暴れている。
その門を守ろうと防壁の上から矢が射られる。
南門では効果的だったが、今度の群れは結構装備がしっかりしている。
盾持ちがいたり、矢を弾く体表をしていたり、成果はあまり良くないようだ。
魔物の群れはセンタロードを埋め尽くすようにいる。
これで600か・・・もっといるように見える。
ここから講習生の位置取りまでは分からない。
最前線という事は無いだろう。
魔物の群れは門を破壊することに夢中なので、それを裏から弓を撃ち込めばボーナスゲームだと思う。
だが弓は無い。
今頃巨乳の谷間の中だ。大事に胸に挟んでおけと言って渡してある。
弓は無いけど魔法の矢ならある。
別に魔力もそれなりに残ってる。こうしてる間にも回復している。流石、神様の魔力。
ではどうするか。
確かに班に戻るのは至難の業だ。
でも近くに行ってタイミングは計った方がいい。
門近くの建物にでも潜んでこっそり撃ち殺す。これがベストとは言わないがベターなんじゃないかな?
〝隠密〟のスキルもあることだし。気分は暗殺者だ。
要は囲まれなければ良い。
門に向かう道を確認するために路地を注意して見てみると、結構魔物が入ってきていた。
我が物顔で歩き回っている。
戻れなかったときのためにレベルあげをしてもいい。
ついでに戦闘の経験値も積んでおきたい。
逃げるのにも強くなってる方が有利だ。
上から見て地理を頭にいれていく。ここで迷子は死活問題だ。
地理地形を把握し終わった頃、1羽のハーピーに気づかれてしまった。
やっぱり飛行系の魔物もいた。
南門にもいたから当然だろう。
このハーピー、一応人型という扱いだったのでエロい期待をしていたら、ただの猿顔だった。
身体も毛むくじゃらで抱けたもんじゃない。毛が悪いんじゃ無いぞ。毛だらけなのだ。
乳も尻も毛だらけなのだ、動物と変わらない。
即座に『 氷の矢 』を作り撃ち落とす。
だが墜落しながらも即死で無かった為に、断末魔の叫び声を上げられてしまった。
それを聞いた周囲のハーピーが集まってきてしまった。
どこかの建物の屋上で囲まれた俺。
ハーピーじゃない女型の魔物だったらなぁ・・・ ウハウハなのに。
右目でスキル欄を開き レベル3 → レベル4へとあげる。
「『 吹雪 』 レベル4だ!」
強烈な白い嵐が周囲を襲う。
ハーピーは雪像のように白に染まり固まっていた。
レベル4強し。
俺はそれを〝魔剣グラム〟で叩き割ってから、階段を駆け下りた。
身体が熱い、テンションが上がってきて、どんどん戦いたい気分になった。
跳ねるように階段を駆け下りていき、路地に出て、魔物の陰を探す。
バトルハイに入ったかもしれない。
すっかり隠れて移動する気分では無くなってしまった。




