再会
「え・・・・女なの? 髪も短いし、男なのかと思い込んでた。」
「すまねぇ旦那、先に説明しとくべきだったか・・・
人攫い対策で俺らがこいつらには男の振りをさせてたんだ。」
ああ・・・なるほどね。そりゃ賢明だ、頭が下がる。下げないけど。
どう考えても女の方が先に狙われるだろう。
悪い言い方になるがどう考えても女の方が使い道が多い。
「なるほどね、そりゃ弟分じゃなくて妹分だわ・・・」
「そうなるな、まぁ旦那が微妙ならいまから無かったことにしても」
「ば、馬鹿野郎! 男に二言はねぇよ。こいつらは今から俺の妹、家族、人攫いなんかに手を出させるな!」
子供たちの顔が一瞬で暗くなるのを感じ、即座に否定してしまった。
出会ったときもそうだけど、前世の自分の子供の表情と被る。
まぁ光源氏計画という男の浪漫もありましてね。
年下も何年か待てば美味しくいただけるかもしれないし。
「了解したよ、旦那。」
「一応確認だけど、こいつらが女だからお前らが保護してたわけじゃねぇよな?」
「旦那、やめてくれよ。男は大概の奴があれこれ言うと反発するんだよ。
散々忠告してやったのに聞かないで他所で下っ端に組み込まれたり、人攫いに連れて行かれたり、さっきの薬に手を出したりな・・・
こいつらはちゃんと忠告を聞いて、逃げ延びてるから自然とな。手をさしのべる機会が増えて結構長い付き合いになって、ほっとけなくてな。」
「なるほど、いいとこあるじゃんか・・・・
こいつらも頭は悪くないようだし、しっかり守ってやってくれ。
とりあえず俺は戻る。講習終わったら顔を出すからそれまで良くしてやってくれ。」
髭面の悪人顔なんだけどね。子供には優しいようだ。
しかし良かった、馬鹿なガキじゃ無くて。
男の子供ってなんであんなに馬鹿なんだろうね?
自分の過去を振り返ってつくづくそう思うよ。子供時代からのやり直しじゃ無くて良かった。
子供たちの頭を順番に撫でてみた。特に抵抗もなくされるがままで可愛い奴らだ。
だが感触はガサガサだった。シャンプーしてやりたくなる。
確か石けんの作り方は子供の夏休みの自由研究で調べたことがある。
拘らなければ出来ないものでは無い。
シャンプーとかリンスはどうだろうな。そこまでは拘らなくていいか・・・
でも石けんで髪まで洗うと痛むんじゃなかったかな。獣人とかどうすればいいのか。
「旦那、じゃー半分くらい連れて行っていいか?オーク肉はなるべく確保しておきたい。
こいつらも早速働かせるか?」
「それは駄目だろ。 男なら有りだったが女はオークを引きつけちまう。
俺が殺す前に、オークがそっちに向かっちまう。今回は留守番だ。
人選は任せるからそれなりに戦える奴を、オークを運ぶから2た・・・いや4人で一匹として4人組をいくつか作ってくれ。」
「ああ、そうか・・・オークにはそれがあったか、忘れてたわ。
了解、4人一組でオークを運べばいいんだな。」
オークを解体して運べれば苦労は少ないが、そんな余裕は無いだろう。
物を運ぶなら偶数が基本だ。
どの程度距離があるかわからないが、2人でよりは余裕をみて4人で一体を運ばせればいい。
最悪 板でもどこかから剥がしてそれに乗せて運んでもらおう。
食い物なら多少重くても頑張って運ぶはずだ。
ハーフドワーフ兄弟が犬獣人たちと話し合って16人ほどが俺と共に第二東門へと向かうことになった。
四体は確保したいのだそうだ。
俺はその間に右目のスキル欄を動かし、
『 氷魔法 : 氷結 レベル3 』 を 『 氷魔法 : 氷結 レベル5 』に上げる。
冷凍保存しておけばしばらくは持つだろう。
子分の食糧確保は親分の義務だ。
氷結のスキルレベルを上げれば多少凍らせる範囲も増えるはず。
何度か繰り返せばオークくらい凍らせられるだろう。
レベル5に振ると、『氷魔法』の欄に新しく魔法が表示された。
『 氷魔法 : 氷の棺 』 だ。
なんともソソる名前のスキルだ。厨二の心を擽りやがる。
ついでだから1にしておいた。 1ポイントで取れるし、勢いは大切だ。
楽しみだな、名前の通り凍りつかせて閉じ込めちゃうのかな!
決め台詞を考えておかねば。
★☆★☆
残る部下や子供たちに別れを告げ、大通りに戻る。
俺はしばらく戻らない予定だ。いくつか指示というか頼み事をしておいた。
講習が終わったらまた顔を出す。
基本的に大通りや主要道路は縄張りにはならないらしい。
でないと誰も通れなくなる。
そこから1本入った路地に怖い人たちが待ち構えてるというわけだ。有る意味理に適っている。
そんな路地を知らん顔で何本も横切ったらまぁ絡まれても仕方無い。
部下たちは表に出てきて平気なのかと思ったが、オークが攻めてきている緊急事態に兵士も余裕が無いから顔を隠せば大丈夫だと言って、布を巻いたり、深めのフードを被っている。
その程度で問題無いらしい。
東門の方向からはちらほら人が逃げて来ていた。やはりオークは向こうにいるようだ。
おれたちはその流れに逆らって東門へと向かう。
しばらく歩いて行くと、前方から兵士の一団が来た。
部下たちは警戒して隠れるように俺の後ろに下がる。
兵士の一団は10人ほどで、負傷が酷い。
まともに歩ける人間は少ないようで誰かしらの肩を借りながら、足を引きずって歩いている。
その血塗れの兵士の中から知った顔を見つけた。
「あっ、街へ連れて来られたときの! どうした! 怪我をしたのか?」
その顔を見つけたときに、つい声を上げてしまった。
後ろで部下たちが「ちょっと、ボス」とか「旦那、旦那まずいですって」とか言ってるが知った事では無い。彼らのうち何人かには見覚えがあるのだ。
異世界に放り出された俺を保護してこの街まで連れて来てくれた兵士たち。
受けた恩を返せるときに返さずに見捨てたら、明日食う飯が不味くなる。
部下たちを後ろ手で下がるように指示を出し、兵士の一団の前に駆け寄った。
「どいてくれ、怪我人がいるんだ。」
兵士の1人が言う。状況的に安全な場所に運んで治療でもするのだろう。
別にそれを邪魔する意図は無い。
ただお前が肩を貸してる男に用がある。
「待った、回復魔法が使える。 癒やしの水 」
有無を言わさず魔法を放つ。
空中から水が現れ、負傷した兵士に降り注いだ。
水を浴び、血塗れだった男の顔や身体から綺麗に傷が消えた。
「おおっ、これは水魔法か・・・頼む、私以外にも負傷者が・・・」
「ああ、兵士さん任せてくれ。だがその前に、俺のこと覚えてないか?
あなたたちに街の外で倒れていたとこを運んでもらったんだよ。その借りを返しに来た。」
「き、君は! あの時の少年か!」
いや少年じゃねーよ。中身はおっさんだし、見かけは若くなったがそれなりに老け顔だ。
素っ裸だったので下の毛がぼーぼーなとこまで見てるだろうに。
よくて青年くらいじゃねーかな?
その後怪我した兵士を治してやった。
どれだけ魔力があるんだと驚かれたが遠慮するつもりは無い。
あの時この街に運んでくれなければどうなっていたか。
感謝している。
ついでに有能っぷりをアピールしておいて、戻ったときに口添えをお願いする作戦だ。
1兵士にどれだけの発言力があるかは知らないが、地道に信用を積み上げるのは大事だ。
何より恩人と、その仲間だ。
別に見返りはいらん。助けられるときに助けておきたい。
「しかし、あれからまだ一月ほど・・・もう魔法まで覚えているとは・・・」
冒険者ギルドなんてとこに放り込んでくれたおかげですね。
そこに関しては感謝はしているが、少しだけ恨んでもいる。少しだけね。
「それでイゾウさんは何故こんな所に1人で?」
兵士の1人に問われる。年配の方だ、別に呼び捨てで構わないのだがな。
なのでここは素直に全部喋った。
嘘も思いつかないし、下手なことを言って支離滅裂になるほうがマズい。
講師の指示で路地に入っていったオークを追わされたこと。
路地裏にオークはいなく、親切な人たちが東門に案内してくれていること。
講習生の所に戻りたいと思っているところ。
脱走するつもりは全くないということ。
連れていた人間には何かしら思うところがありそうな表情をしていたが、今この場で深く追求する気はないようでそこ助かった。
彼らはオークを殺したら肉はあげる約束で道案内を頼んだという事にした。
「しかし酷いな・・・講習生に1人でオークを狩りに行かせるとは。
なんて講師だ?名前は?」
「あーすいません魔法課の講師で3人いるんですよ。名前まで知らなくて。」
「講師の名前、覚えてないのか?」
「魔法課では落ちこぼれ扱いだったので、ほとんど接点無かったんですよ。
ずっと隅っこで瞑想させられてたんで。」
「え!?あれだけ凄い回復魔法が使えるのに!?」
「魔法は昨日覚えたばっかりなんで。」
「「「「「「 昨日!!!! 」」」」」」
兵士ばかりか部下までもが驚いていた。
「そういえば昨日、白の大魔道に魔法を教わった講習生の噂を聞いたな・・・」
兵士の中から声があがる。「俺も聞いた。」「俺も」と何人かが続く。
もうそんなに広まってるのかよ。
幼女の股間に顔を突っ込んで魔法を教えてもらった男、それは
「ああそれ俺ですね。おかげで魔法課に睨まれてましてね。こんな酷い扱いなんですよ。」
やれやれとでも言ったポーズを取る。
「そうか事情は分かったが、講習生は第二東門に布陣しているはずだ。
もう東門と東門を繋ぐセンターロードはオークに占領されている状態だ。
今から東門に向かっても合流は出来まい。
第二南門を通りそこから第二東門に廻った方が確実だろう。」
あれぇ!?おかしいな、班で動いてるときも第二東門に向かっていたはずだ。
いつの間に第二南門へ?
「マジですか・・・う~む、第二南門は通れないしな・・・」
第二地区へ入るには身分証がいる。
当然持ってるわけがない。
厳戒態勢の中、講習生だと名乗ったくらいで入れるとは思えない。
「どうする?旦那・・・」
「第二東門に行くしかないな・・・オークも狩る必要あるし、タイミング見て合流するしか無いだろう。」
「そうか、俺たちのことなら気にしなくていいぞ?」
「正直オークの群れには近づきたくない」とハーフドワーフ兄が小声で言う。
兵士といるのも神経使うのだろう。
「提案なんだが・・・」
兵士のリーダー格、兵士長とでも言うべき人が声を掛けてきた。
そういや前もこの人のこと心の中で兵士長とか呼んでた気がする。
彼ら兵士も東門に戻る必要があるので一緒に来てくれると助かるというものだ。
ギルドに口は出せないが、脱走では無いという証言は出来るという事。
勿論目当ては回復魔法だろう。
兵士の中での回復魔法の使い手は第二地区に優先して廻されているらしい。この大通りを進めば、第二と第三の東門を繋ぐセンターロードに出る。
怪我人も運ばれてくる可能性があるから治療しながら、援護に戻りたいとのこと。
それに対し、回復魔法はもう連発は出来ないと答えた。
勿論嘘だが、あなたたちを治すのに結構魔力を使ったアピールする。
ハッキリさせておいたほうがいいと思い、同じ事はもう出来ないと伝えた。
今後兵士は当然、一般市民にまで掛けろと言われても御免だ。
正直、あの時の兵士だから助けたのであって、他人はどうでもいい。
治すなら金を寄越せと戦争中だからこそ強く言いたい。
戦争需要ですよ。金儲けして何が悪い。
恩人とはいえ、良いように使われるのはお断りである。
今回治したことで借りは返した。
これは魔力が多い者でも連続使用が厳しいのは理解出来るようで、納得してもらえた。
あとは細かい事に目を瞑ってもらうことを条件に引き受けた。
部下は連れて行きたい。
何もオークなんかを相手に一斉に飛びかかる必要は無いのだ。
俺が引きつけてるうちに後ろからズブリで良い。
途中でオークの死体を持って消えることになるが、それに関しては見なかったことにしてくれると言う。
黙認だ。
どうせオークの数なんて数えられないし、数匹なら構わないと言ってもらえた。
部下と兵士と打ち合わせをし、再度東門へと向かう。
移動しながらオークの数を聞く。
「総数600~!? なんじゃそりゃー。」
確か南門の襲撃時のオークが300前後だと聞いている。
何故別働隊がその倍・・・
「信じられないのはわかるが事実だ。今回砦を越えたのはふたつの集団だったのだろう。
手前の300の集団のみ確認して報告してしまったのではないかと思っている。
その奥にさらに巨大な群れがいたんだ。
それを知らず南門に戦力を集めてしまった。
悪い事に東門に来た方が上位の魔物を含む群れになっていた。」
ふむふむ。もしくは900~1000の群れが砦を抜け、その後に分離した、とかだな。
特攻用に雑魚が手前に配置されていて、知らずにそれだけを南門に引っ張って来ちゃった流れもあり得る。
南門へ来た300の群れは雑魚オークがほとんどだった。
そんなことを考えていると人はどんどん減っていき、誰も見なくなった。
だいたい逃げたか、家に立てこもってるかか。
いるのは少し先に負傷した兵士と、それを追うオークだけだ。
こっちにもオークが流れてきているようで一般人は誰もいなくなった。
兵士たちが雄叫びをあげて走りだした。
オークの意識をこちらに向けたいのだろう。
オークの数は4、兵士は10。10人で一隊というところか。
怪我人を庇ってろくに戦えていないようだ。
半分の6人以上が大けがを負っていて、残る4人も傷だらけだ。
それでも必死にオークに立ち向かっている。
特に3人ほどは足を負傷しているようで、血塗れの足を引きずってオークから距離を取ろうとしている。
オークも小狡く、怪我をした兵士を狙って動く。
兵士と共に駆ける。
走りながら 『 氷の矢 』を使う。言いにくいな、 『 氷の矢 』でいいや。
レベル2 の 4本発生させ、1番手前のオークに叩き込む。
嬲るように、這いずって逃げる兵士を追いかける意地の悪いオークだ。
こちらに気づいているようだが、弱者をいたぶる手を止めるつもりは無いようだ。
上半身裸で下半身にボロ布のようなズボンを履いているだけの汚いオークの身体に4本の氷の矢が突き刺さる。
よしよし、この距離なら問題無く当たる。
足を止め、兵士を先に行かせ、再度『 氷の矢 』を放つ、今度は一匹にではなく、後ろ二匹を狙う。これは威嚇で良い。
さらに4本作りだし、残るもう一匹に撃つ。
最後のオークは対処しようと反応したが、『氷の精霊眼(劣化)』で狙いをつけた魔法を全矢撃ち落とす事は出来なかった。
一本をなんとか防いだところへ、残る三本が突き刺さった。
深手を与えたところに兵士が反撃に出て、さらに駆けていった兵士が合流し止めをさした。
多勢に無勢、オークはあっという間に殺される。
部下たちも何人かは空気を読んでしっかり参加はしていたようだ。
あれくらいでレベルが上がるとは思えないけど、塵も積もればマウンテンだ。
怪我をした兵士を回復魔法で治療し、一緒に来た兵士に事情を話してもらう。
俺たちが話すよりは話が通じるだろう。
殺したオークはすんなり譲ってもらえた。
右の耳を削ぎ落とし確保する。死体を確保出来ない場合、人型の魔物は右耳が討伐の証になる。
部下たちがオークを運び、俺は兵士と先に進むことになった。
味を占めたようで、部下たちはコレを置いたらまた合流したいと言って来たので許可しておいた。
レベルも上がってないだろうしな。
「 『 氷結 』 」
手を直接当てて魔法を使うと、オークは全身が白く凍りついた。
どうやら遠隔だと効果が落ちるスキルのようだ。
直接触れて発動させるのが本来の使い方なのだろう。
「おぉ~」と兵士や部下たちが感嘆の声を上げる。
おそらくオークが暴れて壊しただろう、落ちていた適当な板に乗せて4人がかりで運ばせる。
「切り分けるのに苦労するだろうが、これならしばらく持つだろう。保存しておけ。
火をよく通せば食えるはずだ。ちゃんと焼くか煮るかしろよ、凍ったままだと食えないぞ。」
「旦那、了解だ!」
ハーフドワーフ兄も、犬獣人のジョンもそれ以外の部下たちもみなほくほくした顔をしている。
あの四匹でしばらくは持つらしい。
元々四匹は欲しいと言っていた。1回で済んだ。
だが確保出来るときに確保しておきたいと言って来た。
ならばと思って凍らせてみた。
どこかに日当たりの悪い場所に冷蔵用の部屋を作らせて凍った獲物を確保しておけば何日か持つだろう。
その辺りも含めて指示を出し、一度部下たちを戻らせた。
もし合流できなければ、その四匹で我慢するように言い含めて。
一緒に来た犬獣人たちがボスの匂いで辿って見せますとか言ってたので、多分大丈夫だろうけど。
10連休の後始末に追われていて余裕がありませぬ(;つД`)
少し更新頻度は落ちるかと。
10連休した翌週、土日返上で仕事とかもうね。
何考えてんだバーカとボヤキながら仕事してますm(__)m
いつもなら空き時間にスマホでも書けるんですが最近はその時間すら取れない・・・




