縄張りを得る。
「薬の禁止と子供の保護ねぇ・・・・」
「ああ、そこを守ってもらえるならハーフドワーフ一味はアンタに、いや旦那に従うよ。」
「犬人族の保護も、どうか、どうかお願いします。」
そろそろ魔法の実験にも飽きてきたので、講習生が布陣しているところへ戻ろうと思う。
よく考えたところ最終的にしれっと班に混じってれば問題無いんじゃないか、と思う。
レベル4とか5の〝氷魔法 :吹雪 〟を試したいし、心の痛まないオークでやりたくなった。
別に今も全く心は痛くないけど。オークなら向こうに行けば一杯いるはずだ。
戦争が終わったときにいないから問題なんだ。最後の点呼の時にいれば確認しようが無くないか?
ドラレコは勿論、監視カメラも無いんだし。いないこともいることも証明出来やしない。
近くで戻るタイミングを見計らってればいい。
どちらの組織にも今後俺に通行料を請求しないことを約束させて戻ろうとしたところ、何故か向こうから配下になると言いだした。
そういえばそんなこと言った。もうすでにどうでもいいのだが。
ただ厚かましいことに条件を出してきた。
それが
・危険薬物の売買の許可をしないこと。
・孤児の保護
・犬人族の保護
みっつめは勿論犬獣人の連中単独の願いだ。
「構わない。けど、縄張りを治めるのはお前らがやるんなら、だぞ?
俺はギルドの講習に戻る。」
「旦那がそうしたいと言うのであれば、部下として当然手伝う。だが本当に戻って大丈夫なのか?
戻った瞬間に奴隷落ちなんてことは・・・」
「その辺はやばそうなら逃げてくるさ。
その条件はのむのは良いけど、ある程度の制限、というか基準が欲しい、薬って言ってもな、一言で言ってしまえば曖昧すぎだし、子供の保護もいぬびと?の保護もどこまで出来るか俺にはわからん。」
「子供に関してはさっき少し言ったが人攫いが出るんだ。裏町じゃ人が消えても大して騒がれないからな。子供でも大人でもすぐ消えちまう。
あとは余裕があれば飯は分けてやりたい。」
「獣人はこの街では立場が弱いのでよく裏町に逃げ込んでくるんです。
そんな奴らも連れ去られてしまいます。せめて犬人族だけでも守ってやりたいんです。」
「・・・いやそこは犬じゃなくても助けてやれよ。モフモフがかわいそうだろうが・・・モフモフが!
子供の保護もするのは構わないけどそんなにお前ら食い物に余裕有るのか?」
「・・・正直微妙だけど、なんとか・・・」
「微妙なのかよ・・・なのに助けたいとかお前も大概だな。
まぁいい、分かった。その辺は許可するから上手くやってくれ。
ただし犬だろうが猫だろうがガキだろうが頭のおかしい犯罪者だけは駄目だ。戦争から逃げたとかじゃなくて、国から本気で指名手配されるようなガチの犯罪者は無しにしてくれ。」
ハーフドワーフ兄弟と犬獣人が頷く。
「で、薬物なんだけど・・・」
★☆★☆ ★☆★☆
薬に関しては実物を見た方が早いと言うことで2つのグループを配下に来た道を戻る。
5度目の襲撃地点にはその時の連中がまだ転がっていたので、数の利を生かしてさらに配下を増やした。
3個目の配下グループだ。
軽く治療をしてやると物凄く驚いていた。
すぐ働いてもらうんだけどね。
4度目の襲撃地点に戻るとさすがに誰も倒れてはいなかった。
どこかへ移動したようだ。たしか4度目は5.6人いたと思う。
犬は鼻が利くんじゃ無いのか?と聞いたところ、犬獣人が鼻をクンクン利かせて探しにいった。
冗談だったのに。
どうやら怪我をしたために隠れて休んでいたらしくすぐに5人の男を拘束して帰ってきた。
「待て、く、薬が欲しいんだろ!? 全部やる、やるから離してくれ!
俺たちが死んだらもう手に入らなくなるぞ!」
何言ってるんだかこのお馬鹿は。
事前にここのグループは全員が薬の売人だと聞いている。
いわゆるヤバい薬を売りさばいているようで、その薬は使った当人は多少の快楽は得られるようだが、かなり頭がおかしくなるらしい。凶暴化しては暴れ、最終的には自傷行為に走る者もでるらしい。
繰り返すうちに意志の無い廃人になるそうだ。
ハーフドワーフ兄弟の縄張りでも、犬獣人の縄張りでも被害者がいるらしくどちらも激しく嫌悪していた。
先ほど吸収したグループでも同様らしく、これから潰すつもりだと伝えたら激しく勇んでついてきた。
「そんなに嫌いならとっととぶちのめしてやれば良かったのに。」
「あいつらを捕まえたところで別の売人が送り込まれてくるだけだったんだよ。
隠しているがこいつらはどっかの大手の枝組織だ。
下手に手を出して恨まれでもしたら、自分の縄張りに重点的にばらまかちまう危険があった。」
「随分弱気だな。 まぁこれからは力を合わせて追い返せよ。
再編後にもそんな弱気だとつけ込まれるぞ。」
「分かってる。旦那の縄張りにはこんな薬を入れさせないように尽力を尽くすつもりだ。」
ハーフドワーフ兄が言い、犬獣人たちも頷いている。
随分調子が良い。数が増えて気が大きくなっているのだろう。
もしくは自分の縄張りじゃ無くて俺の縄張りだから、狙われても問題無いって理屈だろうか?
捕まえた男たちの持ち物を調べさせると、やはり薬を持っていた。
見たことの無い粉薬だった。
残念なことにというか、ある意味当然なのだが俺は違法薬物の知識はあまり無い。服用すると危ないくらいしかわからない。
テレビのニュースでくらいしか見たことがない。
現物を見たこともないので良く分からない。
やっぱり〝錬金術師〟の講習は受けないと駄目だ。
現物を見ても判断が出来ない。
もしくは〝錬金術師〟のスキル持ちをスカウトしてくるかだが、その辺も性格に難がある奴だと問題になる。
こちらに知識が無いのを良いことに適当な事を言って、上手く利用しようとしてくる危険性がある。
交流を持たせず、2人の人間を用意出来れば悪くないが、手間とコストを考えると微妙だ。
今はとりあえず試して見るしかない。
拘束している配下に命じてその薬を売人グループの1人に無理矢理飲ませる。
飲んだ変化で危険度を計る。
2人の男が拘束して、1人が口を開けさせる。そして1人がその口に男の持っていた薬を流し込まさせた。
「止めろ!その薬はそんなにいっぺんに飲むもんじゃ無い!少し、少しでいいんだ!」
売人グループの男たちが口々に叫ぶ。
知った事では無い。
「くくくっ、売りに出すほど自慢の品物なんだろ?遠慮するな。最後の晩餐だ、奢ってやる。
全部流し込んでしまえ。」
「「「「 おお! 」」」」
配下たちもこの薬を忌み嫌っているためか、迷い無く実行した。
有る意味非人道的行為なんだけどね、異世界怖いわ~。
飲まされた男は、飲みきった後に絶叫をあげ、拘束している男たちを振り払って暴れだしたが、死ぬ前の最後の灯火だったようで、すぐに心臓を抑えて絶命した。
やっぱり駄目なお薬だったようだ。
粗悪も粗悪、超粗悪品だ。
「じゃ、次は今の倍の量を飲ませてみようか。
ああ水を作ってやるから流し込んでしまえ。」
売人グループの男たち泣き叫んで命乞いをしたが、こちらの連中は受け入れず、嬉々として飲ませていた。
もう2人ほど倒れたところで一応止めに入る。
アメのお時間だ。 飴と鞭。自作自演なんだけどね。
どっちかを担当してくれる部下が欲しい。その辺も教え込まないとな。
知ってることを教えてくれたら解放してやると言った所、ベラベラと全部喋った。
忠誠心は無いようた。
彼らの本来の所属はこの南東エリアの大手組織。
その大手組織は北側のとある裏町グループの下部組織に当たる。
そこの命令でこの辺りに薬をばらまいている。
子供を攫ってるのもそこの命令でこいつらがやってやがった。
その辺りまで聞いたところで、周りの奴らが抑えきれなくなったようで袋叩きにして殺してしまった。
1人が手を出すと決壊するように皆が暴れ出した。
目的まで聞きだしたかったのだがちょっと俺には止められなかった。
大の男が誰かの名前を泣き叫びながら、人を叩き殺すさまは少し来るモノがあった。
その辺は此処の住人では無い俺には分からない。
せめてその気持ちを尊重して好きなようにさせてやった。
しばらく泣いたあと、彼らは何故か俺の前に平伏し、改めて忠誠を誓うと言って来たので
「薬は悪だ。こんな物を売って金儲けをする奴らは糞だ。力を合わせて追い返そう。」
と返しておいた。
まぁ戦うのは基本君らなんだけどね。
その後は早かった。
「大手に対抗するには数が必要だ。1つに纏まる必要がある」とかなんとかどこかで聞いたような言葉を並べるとその気になって勢いよく進軍していった。
最終的に大通りに面する縄張り以外は奪取すること成功した。
人間的には2つのグループに加えて、さらに2つのグループを飲み込んだ
最終的に4つのグループを再編させて30人を超える数を揃えたグループになった。
大通りに面するエリアを支配するグループはまた別の大手の傘下らしく徹底的抗戦の動きをみせた事もあって今日の所は一旦引かせた。
だが縄張りとして主張するのは難しいくらいにはガタガタな状態になっている。
今後この場所を巡っての縄張り争いをさせるためだ。
外敵を近くに作る事で、今回無理矢理纏めあげた連中が上手く1つに纏まる事を狙っている。
大通りに面するエリアはかなり稼ぎの良い場所らしく全員が意欲を見せているのでそこに期待しよう。
★☆★☆
「んじゃ俺は戻るが、どうする?
見かけたらオークも狩るつもりだが、何人かついてきて耳を削いだら持ってくか?」
「それは助かるが、良いのか旦那?」
「殺す端からオークの死体なんて運べないしな。それがお前らの食料になるならその方がいい。
ああガキどもにも食わせてやってくれ。」
俺が泣かせたガキどもは何故かしっかりついてきていた。
あの時3人だったのがいつの間にか分裂して7人になっている。
どこかから合流したのだろうが見分けはつかない。
汚いのは成長によくない。水魔法が上手くなって大量の水が出せるようになったら部下も含め、片っ端から水浴びさせないといけないだろう。
「ああ、そのガキどもだけど、ちょっと聞いてやってくれないか?
ほら、自分で言えって。」
ハーフドワーフの弟に促されガキンチョどもが前に出てくる。
その周囲を見守るように再編された部下たちが並ぶ。
「お、お兄ちゃん、お願いします。私達も子分にしてください!」
「「「「「「 お願いします 」」」」」」
ガキどもが頭を下げてくる。
いや、どう見ても大人が言わせてるよね?
だいたいガキどもさっきまでおじちゃん呼びしてたよな?
「どうゆうこと?」
俺は視線でハーフドワーフ兄に問いかける。
ハーフドワーフ兄は肩を竦め言う。
「旦那のとこで働きたいって」
「いやそれ絶対お前らが言わせたよな?」
「違うって、本当にこいつらが自分で旦那の下につきたいって言って来たんだよ。
むしろ俺らは止めたんだ。子供の来る世界じゃ無いって」
「じゃーなんで連れてきた?」
「さっきも言ったけど人攫いがいるんだよ。縁もゆかりもない奴だと俺たちも介入しにくいんだ。
親戚だとか、家族が探してるだとか言われるとそれ以上手を出せない。
だから旦那がこいつらを下につけてくれたら身内として堂々と守れるかな~と。」
なるほど、わからなくはない。身内の問題って奴だよな。他人は干渉しにくい。
こいつらを身内にすればこいつらだけは最低限守れる。
犬獣人の奴らまで味方してるのは2人ほど犬系の獣人が混じっているからか。
モフモフか、子供のモフモフなのか、悪くない。
別に俺が子供の面倒見るわけじゃないし。
今後の事を考えると子供を育てられる環境を準備するのも悪くないかもしれない。
将来子だくさん予定だ。
何より俺がいまから教育すれば、それなりに戦える部下が出来るかも知れない。
愛想尽かされて独立される危険性もあるけどな。
そんなこと考えてたら人なんて育てられないし、その時はその時だ。
洗脳と教育は紙一重だ。
俺はガキども向き合う。
「そうなると年齢的に俺の弟分の扱いって訳か・・・・
俺は戦える奴が欲しい。そういう教え方しか出来ないけど・・・
俺を兄として、戦える力を身に付けるって言うんなら仲間に入れても言い。」
口角を釣り上げニヒルに言い放つ。
ふぅ、決まった!
「え!?私達のお兄ちゃんになってくれるの?」
「なるなる、やるよ~」
「私お兄ちゃん欲しかったの!」
「お、おう」
思ったより食いつきが良くてビックリした。
「じゃーお前ら俺の兄弟分な。俺が7でお前ら3だから弁えろよな。」
個人的な弟分で扱えば良いだろう。
よく言えば親分の弟分。悪く言えば味噌っかすだ。
「あー・・・旦那勘違いしてないか?」
「何をだ?」
「そいつら全員、女だ・・・・
妹分になるな・・・」
「え!? マジで !?」
ガキどもは全員こちらをみてコクンと頷いた。
坊主じゃなくてお嬢ちゃんだったらしい。
うん、知ってた。お約束だよね・・・




