筋肉バトル
「で、いい加減メンバーを決めてくれ。
もう面倒くさいからユリウス、お前が指名しろよ。
足りなきゃ俺の班も3人分、枠があるからどうしてもって奴はそこを使え。」
班が合流して任務に当たることを説明し、早く決めろとせっついた。
俺と合流の時点で大半の女は嫌な顔をしたが散々暴力の限りを尽くしたためにか、文句を声にする者はいなかった。
俺の言葉を聞いて、周りで聞いている者は明らかにほっとした顔をしている。
いい加減話が進まなくてうんざりしていたのだろう。
「イゾウ、指名と言われても。
それに面倒くさいって、ハッキリ言うなぁ・・・・」
「何でもいいよ、適当に9人選んで、その後こっちに混じっても良いって奴を3人決めろ。
もーーーーー俺、飽ーきた。」
本当に飽きたわけではないが流石に班員にまで表だって口を出す気は無い。
出したら出したで関わろうとしてくる奴が出てくる。
よっぽど酷い面子だったら適当な理由をつけて元兵士組の余ってる人と変えさせればいい。
あっちは最初からそのつもりなんだから構わないだろう。
ユリウスの周りに群がってるゴミは上位30位にも入れない雑魚どもだ。
俺のところに上位30位が3人も来てるので、それを理由に口出しは充分に出来る。
神殿兄妹もいるため、どうみても平均値で俺の班の方が充実している。
決まるまでは地面に座って班員とお喋りタイム。交流は大事だ。
余計な事していたせいでだいぶ時間を取られた。
暴れたことに思ったよりも引いて無くて驚いた。
ただし、チカチーノだけは水樽に向かって魔力を送る練習をさせている。
正確には送れていないので個別練習中だ。
そこが出来ないと話が進まない。
「分かった・・・・じゃーセレナさんと・・・マナさん。
イゾウの班に入って欲しい。
多分2人ならイゾウとも上手くやれるよね?」
「え!?あ、ハイ大丈夫です。」「えー、マナやだー」「ちょっとマナ。」「だってぇー」
「イゾウ、それでどうかな?」
「ユリウスが決めてくれていいって。
さっきも言ったけど1班のお前がリーダーだ。俺はそれを補佐する。
で、班員はどちらも平等。それが守られてればこちらに来るのは誰でも構わない。
別に後から来た者も差別しない。
俺の班で班員としてやってくれるなら先の6人と平等に扱うさ。」
俺は地べたに座り込んだまま気だるげに言う。
内心は複雑だ。
最近はセレナとは全然接点が無かった。
別に俺の気持ちは変わっていない。多少他に流れてはいたがセレナのことは変わらず好きだ。
そこへユリウスの班ときたもんだ。
面白い訳が無い。
だがこれは任務だ。私情を挟む気はそんなに無い。やるべき事はちゃんとやる。
「ふーーん。じゃーオレがあんたの班に入ってもいいのか?」
突然声が上がった。
声の方を見ると先ほど切り刻んだ幽木女だった。
「おまえが? 何? 何かの復讐? 嫌がらせ? 」
「ち、違う。傷も治してもらったし、もうそこまで恨んでねぇよ。でも・・・リベンジはしたいから近くで見ておきたい。なぁいいだろ?ちゃんとメンバーとして指示は聞くからよ?」
「ふーん、リベンジね・・・ユリウスはどう思う?」
「僕はいいと思う。もう1人を選ぶのにちょっと迷うところだったし。」
「ははは、確かに。誰も来なそうだな。
・・・お前弓のほうはどうなの?」
「人並みには出来る。けど短剣のが得意だ。あっ、でもちゃんと働くぜ?」
それを聞いて俺は班員を見る。皆頷いたので俺も頷き返した。
立ち上がり、幽木女に近づいていく。
目の前にいき、〝ぬののふく〟の上着を脱ぐ。
上半身裸になった俺に女は胸を隠したままビクッと震えた。
「ひっ、な、なんで脱ぐんだよ、こ、こんなとこで何するつもりだよっ!」
「とりあえず目に毒だから服を着ろ。俺の目が奪われるだろうが! この痴女が!
ああ、メンバーとしては歓迎するよ、班長のイゾウだ、宜しくな。」
「あ、あんたが切ったんだろう・・・くそっ・・・洗ってか、返すからよ!」
「誰も貸してくれないのな、悲しい奴。」
「う、五月蠅い!」
頭から俺の着てたふくを被せてやった。さすがに上半身裸で胸を抑えたままはな。
目が奪われてしまう。顔は関係無く見てしまうのが男の悲しいところだ。
「おまえのせいで汗掻いたから汗臭いのは我慢しろよ。」
「だ、大丈夫だ。べ、別にく、臭くない、と思う。」
その後は俺が上半身裸のまま軽く自己紹介をしてもらう。
かなりぶかぶかの俺の服を必死に押さえながら喋る姿はなかなかだった。
元がガリガリだからぶかぶかであまり隠せていない。
チラリズムもいいよね。
メンバーが揃ったので、本当はここで一度解散し、一息入れてから再度集まりたかったのだが、一緒に動くことになるユリウスの班が決まらないことには解散出来ない。
ほっといて、大変な事になっても問題だ。今までの苦労はどこへいく。
班員にもここまで付き合わせたのに申し訳ないし、一緒に戦う面子の顔くらい見せておきたい。
俺が近くで睨んでいるせいでユリウスに積極的にアプローチをかける者はいなかったが、多数の中から9人を選ぶのは苦行だろう。
残念だがそれを乗り越えねば勇者になんて成れやしない。
取捨選択は世の常だ。
今のうちに慣れて練習しておくといい。
別に間違えたらまた殴り合えばいいだけだ。
俺はというと、ぬののふくを貸したことでクィレアとジスナに突っ込まれていた。
要約すると狡いという話だったけど、貸して欲しいのならば一度俺に切り刻まれる必要がある。
クィレアは馬鹿だからそのうちしそうだけど、ジスナは割と素直なのでしないと思う。
地味魔法使い女を切り刻んでもつまんないけどな。
後は脱ぐとマッチョな俺の身体を見て、ナードとギュソンが筋肉評価を始めたのがウザかった。
一応この世界でもできる限り筋トレはしている。
しているが男に評価されるためでは無いのだよ。
転生チートと相まって良い感じで仕上がっているんだけどな。
今の所見せる相手がいない。
少し時間は掛かったがユリウスは先に俺が溺死させようとした6人と、幸薄そうな3人の女を選んだ。
どうやら不幸な女が好みらしい。
不幸体質め、絶対おまえ苦労する。
さすがに自分で引き込んだ苦労までは面倒見る気は無いぞ。自分で頑張ってくれ。
溺死しかかった6人は王子さまを見るような目でユリウスを見ている。
だが多分また何かあっても助けてくれないと思うぞ?
仮に俺の班員がユリウスに失礼な態度を取って怒らせたなら俺はユリウスの方につく。
ユリウスも同じだ。お前らが失礼だから、俺を止めるに止められないのだ。
俺とユリウス、もしくは他の友人の間にゴミが入るなんて万死に値する。
ただこちらの場合は失礼な態度を取ったならば激しく叱るだろうからそんなことはまずおきないけどね。自分たちの態度を見直したほうが安全だ。
ユリウスにそれでいいか聞かれたので、全員に教官から呼ばれた順位を言わせた。
どうでもいい女の順位まで頭に入っていない。
案の定全員が90位以下だった。
「カースーばっっっっっっかりじゃねーーーーか!
ふざけんな!!!やり直せ!!!ぶっ殺すぞクソ女どもがあああああああ!!!」
青筋が切れるんじゃ無いかと思えるほどに盛大にぶちギレたのは言うまでもない。
もちろん半分は演技だ、半分ね。
演技が上手すぎてナードとギュソンさんが止めに入ったほどだ。
交渉の第一歩。まずは脅かして譲歩を求める。
特に順位の低かった女を2人放流し、元兵士の女を2人を入れさせた。
放流された女は元兵士組の班にそれぞれ引き取られていた。
これでやっと班員が決まった。長かった。
「あー、疲れた。」
「あははは、イゾウさんお疲れ様です。」
一段落して首と肩を回していると、チカチーノが少し困った笑い方で労ってくれる。
彼女だけが俺の癒しだ。
ユリウス班が決まった事で周りで見ていた他の班も続々とメンバーが決まっていく。
各班やっと動きだし始めた。俺の役目も無事終了である。
いい加減面倒みるのも疲れたのでこのタイミングで一度逃げたかった。
後で落ち着いた頃にまた班長同士で打ち合わせればいいだろう。
向こうの班員も一度俺から解放してやった方がいい。
ずっと緊張してるからそのうち漏らすぞ。
俺も威嚇して過ごすのに疲れた。
そう思っていたが元兵士の女からも泣きつかれ、先に合同班ミーティングをすることになる。
ユリウスに総合リーダーとして挨拶をさせ、サブリーダーとして後を引き継ぐ。
さっさと終わらせたいので班員に説明したようなことを説明して、それを踏まえた準備をするように促して解散する。
もう夜は集まんねーからな。そう心の中で誓った。
「では某たちも解散かな?イゾウ殿。」
「ですね、着替えもあるし、装備を変える人もいるだろう。1時間ほど開けましょうか。
ギュソンさんたちは装備どうします?」
「某たちは自前の装備があるから、弓を借りるくらいだな。その辺も詳しくないから教えてほしい。」
「俺もここに来てから弓を覚えたからそこまで詳しくないんですよ、あとで一緒に教官に聞きましょう。
あ、チカチーノもな。中途半端な知識でやるより、ちゃんと聞いて教わったほうがいい。」
「あ、はい、お願いします。」
「某も了解した。」
「で、ギュソンさん時間あるなら少し模擬組手しませんか?今のうちに修道闘士の力を感じてみたい。
俺今のところ、何の武器を使うよりも肉弾戦の方が得意なんです。どの程度本職に通じるか試してみたい。」
「ほう・・・それは面白い。熱い、熱いなイゾウ殿。
イゾウ殿のところへ来たのは間違いでは無かったな。」
「なんで貴方ってすぐ戦おうとするのよ・・・理解出来ないわ」
クィレアは呆れているが男とはそうゆう生き物だから仕方無い。
自分がどのくらい強いかを試さずにはいられない生き物なのだ。
後は〝鑑定〟の結果 〝格闘〟のレベルが上がり、技能を覚えていたこともある。ぜひ試してみたい。
人体実験だ。筋肉ダルマなら死にはしまい。どんな技能か楽しみだ。
形式上、解散はしたがほぼ装備の決まっている昨日から一緒の3人は見学することになった。
特にやることも無いらしい。
幽木女は着替えに行き、セレナとマナは2人で消えた。チカチーノは聖職者 のアニベルさんに抱きつかれて連れ去られてしまった。回復役をアニベルさんにはお願いしようと思ったのだが「時間までチカちゃんと遊んでる-。」と言って消えていった。
彼女もよく分からない。
ユリウスは見たがっていたが、班員の女どもにどこか連れて行かれた。今からきっと乱交ぱーてぃだろう。
羨ましい。
が、多分それは無い。今ひとつ色男ぶりが上手く使えて無くて羨ましいのかそうでないのか不思議な所だ。
組手は訓練所で行うために、他にも多少、遠巻きに見学している者はいる。
サムソン教官がちょうど手が空いてたようで、立ち会いを頼んだ。ついでに弓の選定をお願いしたら快く引き受けてくれた。
〝鑑定〟の結果、『 格闘 Ⅲ 』 は 『 格闘 Ⅳ 』にレベルアップしていた。
さらに『 氷の精霊眼(劣化) 』にレベルアップしたことで、俺の右目にはスキルの中に〝技能〟が見えるようになった。
『 格闘 Ⅰ 』 ~ 『 格闘 Ⅲ 』を凝視するとその中に空手と柔道の技名がいくつもあった。
予想では俺が使える技能だと思われる。好んで使う技が多く載っていた。
そして『 格闘 Ⅳ 』には 〝技能 : 強撃〟 が。
これをどんなものか試しておきたい。
修道闘士は漫画に出てくるアクロバティック系の中国憲法の動きが近かった。
水を被ると女になっちゃう主人公の動きをむきむきのおっさんがやってると考えてほしい。
ちょっと引いた。
あれは一応色男だから許されるのだと思う。
素早く、それでいてトリッキーな筋肉ダルマ。きもい。
柔道 → フルコンタクト空手 とやってきた俺にはかなり相性が悪く、追いかけて捕まえて打撃戦に持ち込まない限り翻弄されてしまった。
最大の理由は〝波〇拳〟だ。〝かめは〇波〟と言い換えても言い。
まさか魔力を〝気〟みたいに変換して飛ばしてくるとは思わなかった。修道闘士すげー。
飛び道具がある相手に近接格闘のスキルのみで立ち向かうのはかなり厳しかった。
1回目は何も知らず一気に前進して突っ込んで行ったところへ、初見の技に直撃されてK、O 。漫画みたいに吹っ飛ばされて壁に叩き付けられた。
2回目はなんとか交わしたところへ、飛び蹴りで吹っ飛ばされ、体勢を立て直すことが出来ずに一方的にボコられた。
3回目以降はそれを警戒しスローペースな打撃戦となり、波〇拳のフェイントにビビったところを昇〇拳。ではなく打撃技を叩き込まれた。なんとか堪えたが判定負け。
6度目でなんとか捕まえて乱打戦に持ち込んだところ、少し追い込めた。
そのまま首相撲からの膝蹴り連打で仕留めに掛かったところにボクシングでいうところの〝1インチパンチ〟所謂 〝寸勁〟を食らって派手に吹っ飛ばされた。
修道闘士強し。
実戦ではこれに、かぎ爪や手甲や、蹴り用のブーツを装備して戦うらしい。恐ろしや。
随分吹っ飛ばされて失神したが、俺のパンチも多少は入ったので、顔は向こうの方が腫れ上がっていた。
お互いに腫れた顔を合わせて健闘を称え合う。
結局 〝技能 : 強撃〟 は使えたのかどうか分からなかった。
暇を見てオークでもぶん殴って試すか・・・
ちなみに回復魔法を俺は何度もかけたけれど、ギュソンさんは一度も使わなかった。
一度くらい使ってくれないと腕が分からないんですけどね。
そこまで追い込めなかった俺が悪い、のか?
「ふー、『 格闘 Ⅳ 』になってたからもう少しやり合えるかと思ったんですが、完敗ですよ。」
「わはははは、いやいやイゾウ殿、良い動きだった。 よい訓練になったな。
またお願いしたい。」
「またやるのはいいんですけど、あの飛ぶ打撃の対策がなー。
あれって俺も使えるようになるんですか?」
「おお、イゾウ殿も興味があるか! だが『 格闘 Ⅳ 』だと少し厳しいな。某これでも 『 格闘王 Ⅳ 』ゆえに。
イゾウ殿はこれから剣術をメインにするのであろう?」
『 格闘王 Ⅳ 』ってなんだそりゃ・・・言葉面てきに 『 格闘 』スキルの上位スキルか?
上だと仮定した場合、おそらく 『 格闘 Ⅴ 』 から 『 格闘王 Ⅰ 』になるわけか。
前提が 『 Ⅹ 』だったら目も当てられない。
普通のレベルの方も10を境に上がりにくくなったし、相当頑張らなければ厳しいだろう。
中途半端になるくらいなら、遠距離は魔法に集中した方がいいだろう。
「まだメインは決めてないですけど、おそらく師匠が使う、槍、大剣、剣のどれかになるでしょうね。
無手格闘術も大事だと思うので疎かにはしないつもりですけど。」
大事大事、超大事、いつも武器を持ってるとは限らないし。
「うむ、イゾウ殿はまだ若い、実戦を経てゆっくり考えるのもよかろうよ。」
メイン武器はそろそろ決めておきたいところではある。
それを決めれば色々行動に移せる。武器の確保から始まる異世界生活だ。
そのあと結局ナードが自分もやりたいと言いだし、俺とギュソンさんで軽く相手をした。
「ナード殿は格闘の方はまだまだだな。」
ギュソンさんにハッキリ言われていたが。波〇拳すら使わずいなされていた。
多分だが彼は格闘のスキルを得ていない。だけど経験をしておきたかったのだろう。
そのハートは評価する。
俺としては回復魔法の練習が出来たので良かった。
組手の後はそこにいる面子で先んじてサムソン教官に弓を見てもらった。
俺は黒弓があるので問題無いが、メンバーはそれぞれ体型と腕力に合ったものを見繕ってもらい、改めて借り受ける。
決めたメンバーがここに班員を集めてきて残る彼女ら全員の分も見てもらった。
これで弓は一新だ。サムソン教官に感謝を。
とりあえず最低限の準備は整ったことになる。
ちなみに訓練で使っているのは量産品の安物の中でも玩具に毛が生えたようなモノだ。
さすがにそれを持って実戦投入は推奨されていない。
それより少しマシな普通の安物を借り受けている。
そのあとは移動して、弓の腕を一度見せてもらった。
ナード、ジスナは問題無かった。凄く上手い訳でもないが無難にこなしている。
ジスナは暴走しなければ戦力としてちゃんと数えられそうだ。
チカチーノも弓はそれなりにこなしている。如何せん呪いのせいもあり非力なので距離が伸びない。
寄ってくる魔物を優先して狙ってもらうよう話しておいた。
神殿兄妹は兄が弓はポンコツだった。脳筋ここに極めり。
なんでも豪快にやれば良いってものでは無い。
叫びながら弓を引き絞り放つポンコツ筋肉。
リリースする瞬間に全身が動くお間抜け達磨。
こうゆう奴のせいで筋トレ好きが誤解されるから困る。きつく注意しておいた。
小さく細かく狙いをつけるように練習させておく。
力があるんだから限界まで引き絞る必要はないだろうに。
まぁ防壁まで敵が来たならば、弓を撃ってるより迎撃に廻した方が良い人材だ。
妹のアニベルさんは弓を変えたらだいぶ撃ちやすくなったようでガシガシ的に命中させていた。
自分でもビックリだそうだ。多分あの脳筋と二人で練習してたから駄目だったんだと思う。
悪影響な筋肉達磨め。
何故かチカチーノを気にかけてくれている。 2人で仲良く練習を始めたのでお任せしておくことにする。
いいお姉さまだ。
幽木女も弓の腕は普通だったが、こやつも細くて力が足りない。
結局力が無い、肉が無いと、遠くへ矢を運べない。
今回はどうしようもないので頑張ってとにかくオークを殺しまくるように言っておいた。
レベルが上がれば細腕でも腕力がつくかも知れないし。
「おう、任せとけ」と男らしい返事をしてたので大丈夫だろう。
将来的にマジで俺を殺しにこられると面倒なので、あんまりレベル上げに協力するのも微妙なところだ。
目的もわからんし。
それでも目撃者さえいなければいくらでも誑し込む方法はある。
今のうちに策略を練っておくとしよう。
「見ないでよ!」
マナにそう言われたが見ないわけにはいかない。「無理いうな。」と返すしか無い。
なにしろ班長さまだしな。
だが、マナは弓はまぁなんとかだ。彼女も背が低く体型に恵まれていない。
おかげで威力も飛距離もいまひとつだが、120位に入っただけあってなんとか形にはなっている。
変えた弓が合っていたようでそれなりには使えるようになっているように。
「なによ、どうせ下手だって言うんでしょ!これでもマナは頑張ってるんだからね。そりゃー班長になるような人には」
「いやそんな風には思ってないよ。マナ、ちゃんと120以内に入ってたな。頑張った。
別に班長とかは関係ない、ここからはいかに戦っていかに経験値を稼ぐかだ。大事なのは上位に入ることじゃない、足切りから逃れるかだ。だから大丈夫だよ。」
「えっ、あっ、うーん、そうかな?」
「レベルが上がれば強くなる。強くなればマナがセレナを守れるさ。」
「本当っ!?」
「本当だよ。だから弓手として期待してる。
俺の班だと嫌かもしれないが、班員として一緒に頑張って欲しい。」
「う、うん。しょうがないな、マナちゃん頑張るよ!えーと、宜しく。」
「ああ宜しくな。セレナも。嫌かもしれないが宜しくお願いするよ。」
「えっ!? そ、そんな別に嫌じゃないよ?
こちらこそ宜しくね。」
セレナとマナに関してはよくわからん。
散々口出ししたが、聞かず、それでも勝手に120位以内に入ってきた。
今は好きにやらせてやろうと思う。あんまり言っても聞かないだろうし。
気持ち的にもどうしていいかわからない。
ちゃんと平等に扱うテイで声はかける。
もう少し情報が欲しい。
問題はこちらの2人も魔力が注げない事か。
樽の水にだけは魔力を注いで欲しい。
あれは魔力を感知して飛ばせる水だ。緊急時に役にたつ。
どうしたものか・・・・
「で、お前か・・・・」
「何よ?別に魔法使いなんだから弓なんて使えなくたっていいでしょ。」
「良いわけあるか、魔力は余裕があったほうがいいに決まってる。弓で殺せる時は殺すんだよ。
背筋を伸ばせ、猫背が酷い。」
「うるさいわね、私の事はほっといてよ。
他の子を見に行けばいいでしょ! ふん、なによ女の子ばっかり集めて!スケベ、エロ男!」
「ばーか、他は問題無いんだよ。問題はお前だ。
お前がちゃんと弓を撃てないと話にならん。
いいから背筋を伸ばせって。」
「ちょっ、ばっ、やめて、触らないで、きゃああ!」
言っても言っても直らないクィレアの姿勢に腹がたち、無理矢理背中側に回って姿勢を正させた。猫背はよくない。
背が丸まってるから矢がまっすぐ飛ばないんだよ、間抜け女が。
そう思って後ろから肩を抱え胸を張らせた。
突然、胸元で破裂するような音がして、魔法使いクィレアの胸が膨らむ。
地味な魔法使いクィレアは爆乳魔法使いクィレアへと進化していた。
「はっ!?なにその乳?」
「きゃああああああああ!!!」
叫び声をあげてクィレアが走り去って行った。
えーと・・・男装女子だったってこと?




