ロリババアに口づけを
「跪いて太ももにキスをすれば魔法を教えてくれると。」
「うむ、ただしこの場でのみじゃ。
今日この場で以外は一切認めん。ロリババアと散々罵ったこの身の前で跪くのじゃ!
さぁどうするか決めるのじゃ!」
俺が確認を取るとロリババアは大きく頷いて言った。
「全く性格悪いわね。このあいだも同じ事を言って逃げられた癖に。」
「う、うるさいのじゃ!
散々恥をかかされたんじゃ、それくらいしてもらわねば気が晴れぬのじゃ!」
「全く、その発想が恥ずかしいって何でわからないのかしら。」
〝黒の大魔道〟に突っ込まれている。
お約束の条件っぽいな。仕方無い。
「あー、はい。じゃちょっと足開いてもらっていいですか?」
「え!? おぬし?」
「ちょっと坊や」
「あーはい。じゃ失礼しますね。」
椅子から立ち上がり、ロリババアの前に跪いた俺に大魔道2人は意外そうな声をあげる。
いや、言った本人が驚くってどうなの?
「ちょっ、ちょっと待ちなさい。アンタ何してるの!」
「そう、そうよ、こんな公衆の面前で!」
足を開いてくれないので手を当てて広げようと手を伸ばしたらビアンカとクィレアに止められた。
ロリババアは足を開こうとした辺りから真っ赤になって固まってしまう。
「何だよ、邪魔するなよ」
「いいから、いいからこっちに来なさい!」「そうよ、こっち、こっちに」
邪魔しないでほしい。少し不機嫌そうに返したのだが二人に酒場の隅に引っ張って連れていかれた。
相手が固まっているうちに畳みかけたいのに。
「アンタ何考えてるの?本当にやるつもりなの?」
ビアンカが声を荒げる。
そんなこと言われても俺今恋人いないしな。
何しようと自由だろうが!と思う。
「やれって言うんだから仕方ないだろ。」
「違うでしょ。やったらって言う意地悪な話じゃない。
無理にすることないでしょ」
「何言ってるんだよ、〝白の大魔道〟に魔法を教えてもらえる機会なんてそうあるもんじゃないだろ。それくらい仕方ないじゃん。
それとも自分は魔法が使えるから邪魔するのか?俺が魔法を使えるようになると何か困るわけ?」
「違うわよ!そりゃー魔法が使いたいのはわかるけど!」
「ふーん。じゃーなんだ、焼きもちか? 別に同じ事をして欲しいなら次にしてもいいけど?
むしろ口直しにお願いしたい。」
「ばっ、バカじゃないの!そーじゃないわよ!なんでそうなるのよ!
ただプライドっていうか、こんな人前で、また変な噂がたつじゃないの!」
「そんな事か。そんな噂、広まったらまた片っ端から殴って廻るだけだ。」
「「・・・・・・」」
ビアンカもクィレアも絶句している。
別に講習生だろうと冒険者だろうと変な噂を流されるなら抗うだけだ。
やるときはやる男だぞ俺は。
だがロリババアと美少女、あと地味魔法使いを比べたら、ロリババアに天秤が傾きはしない。
若いほうがいい。可愛ければなお良い。
一応フォローは入れておこう。
「まぁ聞けって。
あれは脅しなんだって。やるわけ無いと思って言ってんの。
いざ本当にしようとしたら絶対にビビって引くって。
見ろよやろうとしただけで顔まで真っ赤じゃんか。」
二人が〝白の大魔道〟を見る。今もまだ顔を赤く染めて停止している。
「だからしなくても教えてくれるって言質を取ったら止めるから。それを引き出したら止めてくれよ。
ま、最悪したところで俺は何も損はしない。」
「アンタってほんと性格悪いわね・・・」「・・・・・」
ビアンカが呆れたように言う。クィレアは何かを考えて黙っていた。
「俺は強くなることが第一目的だから、その為に手段を選ぶつもりはないよ。欲しいものはその後でいい。」
「・・・・・そう、アタシはそこまでするつもりは無いわ。
強くなっても手に入らないモノだってあるかもしれないじゃない。」
「無いね。弱ければ話にならない。俺は最短距離をまっすぐ進みたい。」
「1人で最短距離を突っ走ってどうするわけ?
誰かと一緒に強くなる道もあるでしょ?教わらなくても強くはなれるわ。」
「ないね。独学で出来ることなんてたかが知れている。」
「そう、じゃー好きにすればいいわ。私は止めないから。」
言葉の後、少しビアンカと睨み合った。お互いの主張は相容れない。
恋人でもいたら俺もまた違う選択肢を選んだ可能性はある。
横で見ていたクィレアは俺たちのやりとりの理解が出来なかったようで困った顔をしていた。
二人を隅に置いたまま、俺は〝白の大魔道〟のところへ戻る。
「どーも、中断してすいません。じゃ・・・続き、いいですかね?」
「う、うむ。そ、そうじゃな。く、苦しゅう無い。」
「何よ、その喋り方。 かなり変よ?
ねぇ坊や、あんまりからかわないであげて欲しいの。
私としては白ちゃん相手に、魔法を教わりたいだけでそんなこと嫌々して欲しくないわ。勘違いされるわよ?」
「いやー別に嫌々でも無いですよ。ロリだのババアだの散々暴言吐いたのは事実だし、目上のかたに謝罪する機会をもらって有り難いくらいです。
それにロリだのババアだのは言いましたけど、ぶすだの不細工だのとは言ってませんよね?
流石にするのも嫌なくらい醜い相手なら御免ですけど、白ちゃんさんなら大丈夫ですよ。」
「し、白ちゃんと言うでない。そ、そうかならば心してするがよい。」
そう言われたのでロリババアの眼前に膝をついた。
太ももはビッシリと閉じられている。
「ここだと膝になっちゃうんですけど?」
「う、うむわかっておる」
そう言ってロリババアは少しだけ膝を開いたが、とても太ももにキスが出来るほどには見えない。
上を見ると顔を赤くしたまま少し震えている。目を見開いたままこちらを凝視していた。
これはアレだよなー。男慣れしてないタイプだ。
80歳80年こじらせてる面倒なタイプだ。
だからといっていまさら「ごめんなさい、やっぱりデキマセン」はもっとマズいと思う。
さらに心を壊してしまうかもしれない。
家で手首とか切ったあと、電話してくるようになるかもしれない。
「ねぇ今ね、手首を切っちゃった・・・・ウフフフ」とか怖すぎる。
街半分が光魔法で火の海だもんな・・・白夜つうか赤い夜にだろうが・・・
目に毒すぎる。失明するぞ。
俺はやる姿勢を態度で示し、向こうが直前でエタるのを期待するしかない。
最悪太ももにキスくらい問題無い。一部業界ではご褒美だ。
そう考えを決めて、目を見つめ合ったまま、太ももに両手を乗せた。
「ひゃぅ!」
ロリババアは少し震えて声を上げた。
止めてくれないかな、罪悪感がわくんですけど?
「えーっと、止める?」
「だ、大丈夫じゃ、手が、手が冷たかったから驚いただけじゃ!」
気づけば酒場の中視線は全てここに集中している。
背中に視線がガンガン集まっているのを感じる。
覚悟を決めてゆっくり足を広げていった。
ロリババアの右手は太ももを必死で抑え、左手を握ったまま顎に当てて顔を背けている。
じんわりと汗をかいているのがわかる。
なんかエロいポーズになっちゃったんですけど。
顔を見ると横目でしっかりと見て来ていた。
その顔に嗜虐心がふつふつと沸いてしまう。
ゆっくりと顔を見ながら太ももに顔を近づけていく。
手前のあたりに軽くチュッっとやってお終いにしてやろうかと思っていたが、意地悪したくなった。
なるべく奥の方に向かって顔を近づけていく。
ゆっくり
ゆっくり・・・
あ、なんかエロい臭いがする。
ゆっくり・・・・・・・・
近づくと顔は見えなくなるので視線はロリババアの股間へ向けた。
なるべく付け根の近くにキスしてやろう。精々ビビらせてやる。
俺はやるときはやる男。色んな意味でな。
そう決めて顔をさらに近づけた。
「ぎゃああああああああ、やっぱり駄目じゃ。見るな、見るな、どこ見てるのじゃあああ、無し、無し、無しじゃあああああ」
ロリババアが突如叫び声を上げて、手で俺の顔を押さえた。そして太ももで挟み付けてきた。
「ぶっ、ばっ、急に挟んだら」
頬を太ももに挟まれ息が出来なくなり、首を左右に振って暴れると、ロリババアの股間に口から突っ込んでしまった。
「あっ」
「ぶはっ」
顔を突っ込んだままロリババアと目が合う。
「「・・・・・・」」
暫しの沈黙の後、ロリババアは俺を弾き飛ばし、凄い勢いでどこかへ走り去って行った。
★☆★☆ ★☆★☆
その後場所を移して再度話合いとなった。
ギルドに設置されている会議用の個室でのお話し合いだ。食事も用意されている。
黒と白の大魔道。そして俺と傷顔の教官の四人でこの個室に移ってきた。
あのあと何故か俺が黒の大魔道を中心とした女性陣にお説教を食らっていると、気まずそうに帰ってきたロリババアは黒の大魔道に捕まってやっと解放された。
教官たちを含む男性陣は見て見ぬ振りだった。酷い。
俺以外の講習生は先に〝鑑定〟を受けに行くことになった。
先に受けた奴らを含め、彼らは先に第三地区の支部に戻る。
戻ってから昼飯を食べて、防衛の班決めを行うのだ。
俺は教官の奢りで本部で飯を食いながら二人の大魔道に指導を受けてから帰ることになった。
何人か(特にノリック)は色々ごねたが
「坊やはちゃんと条件を満たした。これを勝手に無効にすることは〝白の大魔道〟の、ひいては大魔道全ての沽券に関わる。」
と、〝黒の大魔道〟さまが声たかだかにおっしゃってくれたために、沈黙した。
食事をご馳走になりながら、俺の魔法の訓練と講習の進捗状況を説明した。
大恥をかいたはずの〝白の大魔道〟さまは、ケロッとした顔で師匠の奢りの食事を堪能していた。
追加を催促する余裕まである。さらにデザートまで。
この辺は年の功だろう。
厚顔無恥とも言う。
本店の食事は支店の食事よりも美味しかったことも記載しておく。
「ふむ、初心者用の杖4本か・・・
ま、おそらくおぬしの魔力が強いからじゃな。初心者用の安い魔法媒介では耐えられぬのじゃろう。」
「そうね・・・あとは〝氷魔法〟の〝先天性才能〟がるのだから、最初に〝火魔法〟を教えるのは良くないわね。相性が悪すぎるわ。」
なんだかんだ黒の大魔道さまも一緒になって相談にのってくれている。
最初は変なことしないか見張り役よ、とか言ってたのに。
ついでに自己紹介をした。いまさらだが
〝白の大魔道〟の方がシルヴィアさま。
〝黒の大魔道〟の方がリアマリアさま。
ただ色付きの大魔道間では色名で呼ぶことが多いらしく、あまり人前で名前では呼ぶなと言われている。
人前では白の大魔道さま、知り合いだけの間なら シルさま。
同じく黒の大魔道さま、そしてリアさま。 となる。 略称で呼ぶことは許されたが敬称はつけろと厳命された。
さすがに不敬罪に当たるようなので人前では当然だろう。
心の中で ロリババア と エロババア と呼ぶだけである。
あとは呼び間違え防止のために名前など呼ばなければいい。
師匠は師匠だし、大魔道さまは大魔道さまだ。
「やはり魔法の相性的に厳しいですか・・・
薄々気づいてはいたのですが、今回は火魔法光魔法が使える者が講師として圧倒的に多くなってましてな。
そのうえ水魔法を使える教官にイゾウは嫌われていて・・・」
嫌われるようなことをした覚えは無いんだけどね。
本当だよ?その教官には何もしていない。それ以外なんだろうけどさ。
「問題無いのじゃ、わしが〝水魔法〟を教えるのじゃ。
ま、約束じゃからな、感謝するんじゃぞ。」
食事を食べた後だからか、とても機嫌が良い。
この流れでハイハイ答えてサクサク教わろうと思う。
俺が「ハイ。」と答えると、機嫌良さげに腕を組んで頷いて続けた。
「〝水魔法〟の難しいところは 水の制御に 火の制御よりも魔力を多く使うことじゃ。
火魔法は一度魔法で〝発火〟させることが出来れば魔力が少ない者でもそれなりに、じゃが使うことが出来るのじゃ。
対して〝水魔法〟は無から水を作ることが困難な上に、水の操作に魔力を大量に消費するのじゃ。」
「その点坊やは魔力が多いし強いから水魔法向けよ。最初はこのくらいのコップの水を操る練習から始めるといいわ。徐々に水の量を増やしていくの。
ある程度慣れたら、水を自分で作り出す練習ね。ここから難易度が高くなるけど諦めずに頑張っ」
「待て待て待て、わしが教える話じゃろう。何故黒ちゃんが横から先に教えるのじゃ!」
「考えたんだけど坊や結構優秀そうだから今のうちに貸しを作っておくのも悪くないかなって。」
そういってあざと可愛いポーズを作る。
実年齢聞いて無ければ騙された可能性はある。でも・・・80歳か・・・
「いや借りは作りたくないんですけど・・・・」
「おぬし恩にきることは無いぞ、どうせわしが同じ事を教えてた。
わしと約束してたんだからな、そっちが優先じゃ。横入りは駄目じゃ。」
「あらあらケチねー。
まぁ別に恩はきなくてもいいけど、やって見なさいな。
せっかく一緒にいるんだから私もアドバイスくらいはしてあげるわよ。」
「なるほど、では・・・・」
俺は自分の前にあるコップの水に手を当てて魔力を操作する。
手の平でコップを包み、手に魔力を集めるようにして・・・・
「待て、待つんじゃ!おぬし、杖は?魔法媒介はどうしたんじゃ?
何も無しに魔法は使えぬぞ?」
「あ、やっぱりですか。講習で杖を壊してから使わせてもらえないから・・・・」
「呆れた、それで魔法が使えるようになるわけ無いじゃ無い。」
「全くじゃ。今のギルドの魔法講習は意地が悪いんじゃのぅ。」
「面目ない。魔法媒介は魔法課の管理区分なのもので、儂らが勝手に持ち出すわけにもいかなくてな。」
「ふーーーん。じゃー坊や私の魔法媒介を貸してあげるから試してみなさい。」
「なっ、黒ちゃんそれは!」
「いいじゃない、貸すだけよ。どうせ安物じゃ壊しちゃうでしょ。
本物を知ることで変わるかもしれないじゃない。
一度試して魔法の感覚が掴めれば質が悪い物でもそれなりに使えるようになると思うわよ。」
「そうかもしれんが、だがそれは・・・・」
「えっと・・・いいのかな?」
「いいわよ。でもちゃんと返しなさいね。もし変な動きをしたら腕を切り落として回収するから。」
「怖い、それにそこは普通指じゃ?」
「腕よ、腕ごとよ。ほら手を出しなさい。」
「あ、はい・・・お借りします。
・・・・・・なんだコレ、なんか凄い魔力を感じるんですけど。」
俺が頭を下げて両手を差し出すと、その手の平に1つの指輪をのせてくれた。
指輪は俺の手の平に乗った瞬間から自己主張を始めている。
なんだこれは?
「まぁそうじゃろうな。黒ちゃんのそれは
ネクロス作〝 七災七罪 〟シリーズの〝狂飆色欲〟という指輪じゃよ。
古き時代の魔族、〝ネクロス〟が作ったこの世に現存する最高の魔法媒介の1つじゃ。」
「〝ネクロス〟が作ったこの指輪は、7災というテーマごとに7つの罪を表した指輪型の魔法媒介になっていて、私の知る限りこれ以上の魔法媒介は無いわ。」
「いやそんなの借りちゃマズいですよ。お返ししますよ。」
「いいから一度試してみなさい。」
「いやでも・・・」「いいからやりなさい。」
黒の大魔道の目が釣り上がる。それを見て反射的に返事をしてしまった。
「あっはい・・・・」
その指輪は見たこともない金属で出来ていた。
まるで胎動するかのように怪しく輝く。
持っているだけで魔力を吸い込まれていくような感覚に襲われる。
ただ〝聖剣〟のときと違い、感覚があるだけで実際は吸われていない。
そう感じるだけだ。
指を通してみるとすんなり馴染む。
全身を巡る魔力がまるで踊り出したように躍動する。
「あっこれヤバいです。マジでヤバいです。」
「どうしたイゾウ、何か危険な感じがするのか?」
傷顔の教官が慌てて訪ねてくる。何度か目から血を出して気絶してるのでこうゆうときには本当に優しい。
「いや、細かく自在に魔力が動きすぎてヤバいです。指の周りで魔力が踊ってます。」
今まで上手く外に出してあげられなかった俺の魔力が喜んでいるのが理解できる。
今なら思う場所に魔力が飛ばせると思う。
「あら・・・坊や凄い魔力ね、ここまではなかなかいないわよ。」
「うむ、思ってたよりも強い魔力が眠っていたのぅ。指輪の力で完全に目が覚めたようじゃな。」
「そんなにですか・・・?儂にはそこまで・・・感じないのですが? 魔力が高いのは知っていましたが・・・」
大魔道2人言葉に傷顔の教官が驚いた声を上げる。
「それは仕方あるまい、おぬしは〝魔道〟に至っておらぬであろう。
山を見てただ大きいと漠然と感じているに過ぎんのじゃ。 ここから先は〝魔道〟至る者の住む世界だといこうことじゃな。」
「つまりイゾウは〝魔道〟のスキルを得る可能性があると?」
「わしの〝白の大魔道〟の称号にかけてその資格はあると断じよう。だがまだ魔力に目覚めたばかりじゃ。時間は掛かろう。あとは本人の努力次第じゃ」
〝白の大魔道〟のその言葉に傷顔の教官は黙って何かを考え込んでいるようだった。
「後は〝ネクロスの指輪〟を知らないからね・・・知った者にしかわからない世界がある・・・成功ね」
〝黒の大魔道〟ことリアマリアが傷顔の教官に聞こえないくらいの小さな声でそう呟いたのが聞こえた。
俺がそのリアマリアを見ると
「コップの水を動かしてみなさい」
と指示をだされる。
言われたとおりに指輪から魔力を発し目の前のコップの水に伝わらせる。
魔力が通った水は俺の意志に従って自由自在に動いた。
「おお・・・」
傷顔の教官が感嘆の声を上げる。俺も嬉しいが今はそれどころでは無い。
もっと色々出来るような気がする。
俺のコップに水を戻し、対面に座っていた〝白の大魔道〟のコップへと魔力を発する。
そしてコップの水に〝凍れ〟と念じる。
綺麗にコップの中の水だけが凍りついた。
「見事じゃ。
ふむ、次は持ち上げてから凍らせてみせるのじゃ」
白の大魔道はそう呟き、黒の大魔道のコップを指で指し示した。
しばらく二人の大魔道の指示に従い、水を動かしたり、凍らせたりしていた。
傷顔の教官はその間、全く声を発せずに固まっていた。
指輪を外して手の平の上で最後に良く見ておく。
いつかこのレベルの装備が欲しい。気づけばそう思うようになっていた。
黒の大魔道の前に進み、跪き頭を下げる。
「過分な物をお貸し頂きありがとうございます。よい経験になりました。」
そう言って指輪を差し出すと、静かに受け取って自分の指に戻した。
「そう、いい経験になったなら良かったわ。正直想像以上よ。とりあえず座りなさい。
もう少し魔法の話をしておきましょう。」
再度四人がテーブルを囲む。
そして黒の大魔道さまが口を開く。
「ねぇ坊や、いやイゾウ。恩を着せるつもりはないのよ?
ないけれど1つだけお願いがあるんだけど・・・」
うん、知ってた。
美味しい話には裏がある。
凄い装備を借りてしまった以上俺にこのお願いに抗う術は無い。




