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異世界(この世)は戦場、金と暴力が俺の実弾(武器)  作者: 木虎海人
序章 この世は戦場、小金持ちは悪人の鴨と葱
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冒険者ギルド

「ではこれより君の身柄は冒険者ギルド預かりとする。

街中での行動は冒険者ギルドの許可する範囲のみとし、冒険者ギルドが君の行動を反社会的行為と判断した場合、奴隷落ち、もしくは死罪することがある。

ただしこれは冒険者ギルドのライセンスを取るまでの仮処分とする。

冒険者ギルドの一員と認められた場合は冒険者ギルドが認める冒険者として市民権が認められる。その場合には資格と義務が生じる。つまりは街での生活を認める代わりに納税の義務が発生する。これについては違反すると即奴隷落ちとなるのでよく聞いておいて忘れないで納めて欲しい。

長くなったが【バームクーデル】の街の一員として新しい市民の誕生を祝福する。

君の今後に期待している」




ここは街にある冒険者ギルドの一室。

先の言葉は冒険者ギルドに俺を引き渡した兵士の言葉だ。ちなみに隊長らしい。

つまり兵士長といったところか。特に問題ない知識なので流してくれて構わない。

それにしても奴隷落ちとか死罪とかポンポンでてくるんだけれども、どんだけ人権が薄い世界なんだ。


昨晩予想していた事情聴取は特に厳しく責め立てられることも無く経過を聞かれるにとどまった。

予定通りに拉致監禁されたこと、頭を何かで殴られたこと以外覚えていないで通した。

倒れて(はいなかったが)いた場所が盗賊の出没地域に近かったことから盗賊に攫われて身ぐるみ剥がされたのだろうという見解に落ち着いたようだ。


故にそれ以降の議題は俺の身の振り方になった。

名前も無く記憶も無く服も荷物も無い俺に街の兵士はどこかのギルドに所属して働くことを勧めてきた。

ちなみに服は「ぬののふく」みたいな物をもらえた。

なので現在服はある。一応だが。

下着が無いのでズボンの中でブラブラしているのが現在の悩みだ。


兵士が言うには、所属先があればそこに身分が保障され街に滞在が許可される、と。

つまり身元の保証が無い俺は、彼ら兵士にとって捕縛の対象になってしまうのだ。

不審者は即逮捕とか前世の日本でならば男前だと思う、だが現状の身持ちでは危険すぎる世界だ。

それだけここでは犯罪も多いのだろう。


体格がそこそこ良かったことから冒険者ギルドを勧められた。

冒険者といえばアレだ、昨日の荷台に積まれていた獲物を魔物って言い直されちゃう程度には危険な匂いのする職業の奴だ。

モヒカンでとげとげの肩パットを装着している奴が「ヒャッハー」って言いながら集団で肩で風を切って歩いてるそんなイメージだ。


そんな危険が大好き肉体派!みたいなことはしたくなかったので商業系の仕事で従業員を探してるところはありませんか?と聞いたところ、それなりと言える程度には元手が無いと商業系のギルドには登録出来ない事と、身元のはっきりしない人間を雇う商人はおそらくいないと思うと返答された。

どこか仕事を紹介して欲しかっただけなのだがハローワークのような機関は無いらしい。



「ここは冒険者は仕事が多い、なので冒険者が多くギルドも賑わっている。それを相手に商売する連中もそれなりにいるが突然現れた君に仕事をくれるとは思えないよ。もらえてもどこかギルドが身元を保証してないとまともに給金ももらえないだろう。

我々としては比較的身元を保証してもらえやすいギルドに紹介するくらいしか出来ないんだ。

誤解しないで欲しいのだが、街を守ることが仕事であって、街を訪れた者に仕事を斡旋するのは我々の仕事では無いんだよ。それでもせっかく保護した君にはスラムの住人や犯罪者なんて人生を送って欲しくないと思ってこうして助言を送っているんだ。あまり多くの要求を飲めない事は理解して欲しい。」


と、言われた。

冷たいなぁとも思ったが助言をもらえているだけマシな方か。

もし俺が兵士なら全裸マンなんか有無を言わさず捕まえて奴隷に落としているだろう。

全裸ウーマンならルパンダイブだ!

ヒャッハーとか言いながら飛びかかると思う。そう思うと俺以外と冒険者に向いてるかもしれない?

しかも困ったことに断った場合に他に選択肢が思いつかなかなかった。

「ちなみにもし断ったらどうなるんですかね?」


「うーん、入場税を払えるのならば自力で所属や仕事先を探せば良いと思うよ」

ふむ・・・入場税か・・・

貸してくれ・・・ないだろうな。

こうして俺は冒険者ギルドに売られたのだ(ドナドナドナ)




この一室にいるのは兵士長とお供の兵士が一人、それに売られた俺。

二人は案内として冒険者ギルドへ連れてきてくれたが、おそらくは逃げ出さないように見張りでもあるのだろう。

冒険者ギルドからは教官だと名乗った男が二人。事務員なのか手続きを進めてくれている小柄なおっさんが一人だ。

教官二人は180センチの俺と変わらない身長にがっちりした体型をしている。

どちらも歳の頃は50歳前後だろう。とても貫禄のあるお顔をしている。

そう貫禄があるのだ。

1人はスキンヘッドで整えられた口ヒゲをはやしている。ヒゲは上品だが紳士というよりはヤクザだ。かなり強面の顔をしている。

もう一人は短髪で、その顔にはデカい傷が走っている。さっぱりとした短髪がその傷を際立たせている。左の頬に眉毛の上から目の横を通り口の横を通過してその先まで通っている。その傷を見ただけで危険な職業なのだと痛感出来る。その上こっちの顔も怖い、ヤクザが二人。


普通ここは美人受付嬢が登場!とかじゃねぇのかよ!と思ったがとても口には出せなかった。

エロフとか獣人娘とか期待していたのにガッガリだ、せめて美人さんでも出てきたらやる気が漲ってきたはずなのに。

贅沢言わないので性別が女ならおばちゃんでもいいから怖い顔の二人との間に誰か入って欲しかったよ・・・

それにしてもこの2人怖い上に凄いトラウマになりそうな人たちに似ている。

違いは高そうなスーツを着ていた前世に対して、こっちでは作業服みたいな格好をしている所か。

どっちも紙一重で怖いことに変わらない。

なんというかこの2人を見てると死んだときの恐怖心が蘇ってきて顔が見られなくなる。

少し震えてしまった。





兵士の二人は先だっての宣誓の後、教官達と少し会話した後に一礼して部屋を出て行った。

彼らの任務はここでおしまいらしい。

不審者の俺を面倒みてくれたんだ、落ち着いたら挨拶にでも行こう。

ボロイが服をくれ飯と寝る場所をくれた、ただ感謝しか無い。

冒険者ギルド支部(ここ)に連れて来てもらうまでに街を少し見てきたが正直生活環境が整っているとは思えなかった。

おそらくこの街で生活している人たちは貧しい暮らしをしている。兵士もそうだろう。

昨日見た城壁は第三城壁らしい。

街の中にはしっかりとした頑丈そうな石造りの城壁がもう一つあった。

それが第二城壁。街が発展するたびに外側に壁を造りその内側に街を作るのだという。

この街は魔物との戦いの歴史で発展してきたらしい。第二と第三の間には比較的新しい、または貧しい人が多いらしい。第一の中は貴族と街の重要施設のみで庶民は用事が無い限り入ることは出来ないのだという。

当然軍事拠点は第三城壁に近くなり兵士の宿舎もそこにあった。

常に魔物との戦争状態で街を広くするため常に戦い続けているのだろう。

そんな中で一晩面倒を無償でみてくれたんだ、街を歩いてみて本当に有り難いことだったと再度実感した



そういえば街を歩いてるうちに獣人を何人か見かけた。

見かけたのは男で犬耳と猫耳っぽいのがついたおっさんたちだった。

だが男がいるという事は、当然女も居る筈だ。

特に物語でみるような迫害されているようには見えなかったので一つ安心した。

元の世界ではそんなにコミュニケーション豊かなほうでは無かったが折角だ獣人娘とイチャラブしたい。

エロフとエロフスキーしたい。

むしろドエロフスキーしたい。


そう一つ心に誓いながら、兵士が出て行く扉に向かって頭を下げた。

なんとか冒険者として頑張って、いつか礼を出来るくらいになろう。

心の中で「ありがとうございました」。と言って頭を上げるとヤクザが此方を覗き込んでいた。


うっ、と声に出さなかったのを褒めてやりたい。正直かなり怖かった。

するとヒゲのヤクザ改め教官が笑いながらビシバシ背中を叩いてきた。


「ガハハハハ、なかなか礼儀正しいじゃねーか。裸で倒れてたって?生きてて良かったなおまえー」


叩く力に遠慮が無い、結構痛い。

が、思ったよりフレンドリーだ。

笑い顔も自然で口を大きく開けて豪快に笑っている。

これだけ見ると陽気なおっさんに見える。


だが顔が・・・

はっきり言おう。


この2人、俺を殺した奴らの組織、つまり裏稼業(ヤクザ)だ。

その幹部にそっくりなのだ。



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― 新着の感想 ―
[一言] 「うーん、入場税を払えるのならば自力で所属や仕事先を探せば良いと思うよ。」ふむ・・・入場税か・・・ 貸してくれ・・・ないだろうな」 少しでも、見ず知らずの人に金を貸して貰えないかと発想すると…
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