やがて敵対していく人間関係 元兵士組
「それじゃー、やろうか・・・」
3人を相手に一通り暴れ、男も女も戦意を喪失してしまったのでユリウスへと向き合った。
女は止めに入っただけなので程々だが、男相手には全く手加減していない。
動かなくなった男を殴るのに飽きたので止めた。止めたら女も止めに入らなくなった。
正確にはそれまでなんとか必死で動いていたのだがもう動けないでいる。
腕を上げて拳を握り、戦闘態勢を取る。
だがユリウスは動かない。動いたのは口だけだ。
「イゾウは・・・迷わないんだね・・・相手が女性でも・・・僕でも」
「何を言ってる・・・?」
「僕は・・・イゾウと戦いたくない・・・」
「そんなの俺だってやりたくねーよ。
でもお互いの立場を考えたら仕方ねーだろ。兵士の仲間が殴られて黙って見てられるようなおまえじゃねーだろ!
素直に謝罪があれば俺も引いたさ。一度俺が折れてみせればこいつら以降もそれで済むだろう。
だがあれで許したらまた繰り返しじゃねーか!
やると決めたら徹底的にやるんだよ、例えお前を敵に回しても・・・な!」
「イゾウ・・・」
視界の隅で元兵士の女の講習生が項垂れるのが見えた。
別に女を殴りたかったわけじゃ無い。
彼女を介した話を蹴った以上、彼女を放置するわけにはいなかった。
彼女もまた自分で首を突っ込んだ話が拗れた以上黙って見ていられなかった。
だから止めに入った彼女も一緒に殴った。無傷で終わるより良いと思ったから。
ユリウスが止めに入ることを想定していたために、結構強めにやってしまった。
何度も身体をテイし止めに入った彼女には少し酷いことをした実感はある。
腑に落ちないのはユリウスの態度だ。
いくら仲良くしてるとはいえ、彼が激高して殴りかかってくるだけの覚悟をしてやった。
だがユリウスは目の前の揉め事を考えごとをしながら見ていただけだった。
「覚悟を決めろよユリウス。
恨みっこなしだ。」
俺は殺気を込め目を細めて挑発する。
ユリウスはそれでも動かない。
本音をいえば俺はユリウスと戦ってみたいと思っている。やれば負けないと心の何処かで考えている。
とはいえ無抵抗に徹するユリウスを殴りたいわけじゃ無い。
「イゾウ・・・」
だがそこにいたのは泣き顔のような困り顔をしたイケメンだ。
イケメンも過ぎると気に入らなくなる、そんな顔だとずっと思っていた。
いたが思ってたよりも俺はこいつを好きになってたのかもしれない。
何故かこいつを殴る気が一気に失せた。
そのくらい情けないイケメンだった。
それでもイケメンなのにな・・・・不思議だ。
「全く・・・」
拳を下げ、身体から力を抜いてユリウスを見る。
「ごめんよイゾウ」
矛を収めた俺を見てユリウスは力なく笑う。
結局俺とユリウスは敵対しなかった。
一度くらい本気でやり合って、そのあと認め合うような仲もいいんじゃないかと思っていた。
だから少し残念でもある。
そう思うとやっぱり殴りたくなった。お互い怪我も無いのはどうかと思うし。
暴れた俺よりも、黙って見ていたユリウスが問題になるかもしれない。
「じゃお互いに一発づつ殴りあって終わりにしようか」
「え!? イゾウ・・・意味がわからない」
「なぁに単なるけじめさ、これで俺たちは負い目なく、後腐れなく好きに生きれる。」
「いやいやいや」
「ちゃんとやり返してこいよな」
俺の右ストレートがユリウスの頬を殴り飛ばす。
イケメンは無様に振っとんで尻餅をついた。個人的にはヤム〇ャみたいなポーズで倒れて欲しかった!
残念だ。
だがユリウスはその辺にいる有象無双の雑魚イケメンではない、しっかり鍛えられた強者イケメンだ。
今まで殴ってきた雑魚と違いユリウスはちゃんと自分の足で立ち上がってきた。
暫らく困惑していたユリウスだが、手を後ろ手に組んで足を開き、頬を差し出して待つ俺を見て覚悟を決めたようだ。
俺の頬を同じく右ストレートで殴り飛ばし、俺たちは腫れてきた顔で照れながら笑いあった。
そんなユリウスが頬を腫らしたまま、呼び出されたと聞いたのはその後少ししてからだ。
俺は互いに同じ位置に青たんを作っていることをシグベルに不振に思われて根掘り葉掘り聞かれていた。
そこに件の女講習生が綺麗に治療された顔で駆け込んできたのだ。
「大変なんだ、ユリウスが呼び出されてて・・・もうどうしていいかわかんなくて・・・」
酷く慌てた様子で駆け込んできた。
「よーわからんがユリウスなら少しくらい大丈夫だよ、それより解るように説明してくれ。」
俺は彼女を落ち着かせて話を聞く。
ユリウスを呼び出した相手は元兵士組の残りの者たち。
怪我だらけで部屋に戻った彼女に治療を施して、事の経緯を聞いたらしい。
兵士組の中に回復魔法を使える奴がいるようだ。
「で・・・ユリウスに怒ったの?
俺にじゃないの?」
「君に怒ってる子もいるんだけどまずユリウスだって・・・
何でここまでされてたのに黙って見ていたのかってみんな怒ってて・・・・」
まぁそこの気持ちは分からなく無い。
正直ユリウスの今回の反応は俺も理解出来ないでいる。
俺に殴られたせいで動けない元同僚の彼女すらを放置して戻ってしまった。
その所作はイケメンらしさを全く感じなかった。
最もユリウスはともかくお前もべらべら喋るなよ、とは思う。
適当に誤魔化せば良かったものを。難しいだろうけどさ。
「で・・・残りの面子で呼び出したと?
はー・・・多数で1人を呼び出したら俺が殴って廻ってる奴らと変わんねーじゃんかよ・・・」
「ごめん、止めたんだけど・・・」
「元兵士って言っても群れるとチンピラと思考が変わんないんだね・・・冷静に1人がユリウスと話すとか出来ないのかよ・・・」
「ごめん・・・お願い止めて欲しいの・・・」
「俺が行くと余計揉めると思うんだけど?」
「・・・・・・・」
どうやらそこまで深く考えて俺のところにきたわけじゃないようだ。
彼女なりに焦って必死での行動だろう。
完全に悪手だけどな。
俺が行けば火に油を注ぎに行くようなもんだ。
何より横には鬼の形相をしたシグベルもいる。
訓練所の裏手、少し木が生えた所がある。
雑木林というには少し寂しいがそんな場所だ。
そこに彼らはいた。
普段と違いキツい目付きをしたイケメンと、その対面にいるのは1人の男。そしてそれを囲むように3人の女がいる。
誰もが元兵士であり鍛えられた戦士である。
互いに殺気を隠すことなく睨み合っている。
「こちらはまず話が聞きたいだけなんだ。遠慮してくれないか?」
到着した俺とシグベルを見て、元兵士の男が言う。
「どうせ次は俺を呼び出すんだし二度手間でしょう。」
「それをするかどうかは話を聞いてからだ。まずユリウスに話を聞きたい。」
「代わりに俺が答えてあげますよ。そちらが納得する答えをね。」
「ほう・・・ユリウスは言うんだよ、悪いのはイゾウではないと。ただその先が聞けなくてね。
何故イゾウ、君が彼女にまで手を出しているのに黙って見ていたのか、君はその理由を知っているのか?」
「知ってますよ。
その答えは全部『俺が悪い』ですよ。ユリウスは悪くない。
文句が有るなら俺が聞く、後の揉め事も俺が引き受けますよ。
元兵士のあんたらが身内で争う必要は無い。」
「イゾウ!それは!」
ユリウスが声をあげる、だがそれを構わない。
「いくら何でもそれをそのまま受け止める事は出来ないよ。
イゾウ、我々は君を評価している。君を〝落ちこぼれ〟扱いする者は我々の中にはいない。だからといってそこまでユリウスに影響があるとは思えないし、まさか君がいくら強くても我々に1人で勝てるつもりでいるのか?」
「イゾウにもユリウスにも1人でやらせるわけねーだろが!
1人を大勢で囲みやがって、やることがセコいんだよ!」
それまで鬼の形相で我慢していたシグベルが吠えた。
「・・・・君には関係無いだろう、黙っていてくれないか?
仲間が傷つけられて黙ってはいられないんだよ。」
「それはこっちも同じだろうが!」
「まぁ落ち着けって・・
さっきの返事ですが1人であなたたち全員に勝てるとは思いませんが、その場合後遺症が残る形で最大限やり返させてもらいますよ。あなたたちも目的があって冒険者になるわけだ。俺は勝てないかも知れませんが未来を壊す形で負けないつもりだ。」
雑魚講習生ならともかく兵士の職についていた人間が複数の場合にでも自分1人で勝てると思うほど思い上がってはいない。いないが、ただで引き下がるのも癪なのでそこは釘を刺しておく。
突然襲われたなら難しいが、そうで無ければやりようはあるだろう。
こっちに覚悟があることが伝わればそれでいい。
「彼女に暴行を加えたときもそのつもりだったのか?」
「少なくとも彼女には手心を加えていた。彼女以外、その前に殴った奴等なら壊れても構わないつもりで殴って廻ったが、和解案で交渉に来た彼女にまではそこまでしてはいない。」
勿論全部嘘だ。今考えた。何とでも言える。
「想像以上に最低だな、イゾウ・・・君は強い。
そこまでしなくても〝落ちこぼれ〟扱いは払拭出来るだろう?」
「買いかぶりですよ。身体ならば俺のほうが強いだろう、でも奴等はよってたかって心を壊しに来た。
だから俺は身体を壊してやったんだ。
あんたらの仲間はそこに口を出したからな、上手く纏められなかったら責任取るのが当然だ。」
それを聞いて元兵士の男は少し黙る。そしてそれ以上に当事者の女が項垂れて沈黙してしまった。
話を上手く纏められなかった負い目があるのだろう。
個人的には無責任な人間よりは嫌いではない。
とはいえこいつが口を挟んでこなければ今の状況は無かったはずだ。
彼女が連れて来た2人は〝殺すリスト〟には載っているが今回の〝殴るリスト〟には載っていなかった。
別に何の影響も無い雑魚だしな。
突発的にぶっ飛ばした奴ら以外は一応〝殴ったら廻りがビビる〟程度の影響力の有る奴らを選んでいる。
つまり彼女の行動は無かった方が良い方向に進んでいた可能性が高い。俺にも彼らにも彼女にも。
そしてユリウスにも、元兵士組にも。
「・・・・・
ユリウスも同じ考えなのか?」
「それは」「違うよ、俺がユリウスに先に釘を刺しておいただけ。だからユリウスはあの場で何が正しいかがわからなくなっただけだ。
ユリウスは優秀だからな、これから冒険者になるってのに兵士の考え方を引きずっているあんたらと違って考え方が変わりつつある。
その変化に戸惑っているだけだ。
言っただろ、悪いのは俺。
遠からずユリウスには止められると思ってたからな、先に手を打っていただけだ。
前から会話の中で止めないように誘導しておいたから、現場を目の辺りにして動けなくなったんだ。」
思っていた方向とはだいぶ話がずれてきている。
当初は彼らと揉める展開は全く考えていなかった。正直口を挟んでくるなんて思ってもいなかった。
基本的に元兵士組は自分たち以外の他人に無関心だと考えていた。だからこそ想定外だった。
手を出した事に後悔は無いし、出すときにもその覚悟はちゃんと決めてやっているので問題はない無いのだが、出来ればユリウスの人間関係も、女のほうの元兵士の人間関係も壊したくは無い。
壊れるなら俺との関係だけで充分だろう。どうせ元兵士組となんて講習が始まってからの付き合いだ。
彼ら彼女らは元兵士なだけあって確かに強い。敵に廻さない方が得策だろう。
でも世の中強い奴なんていくらでもいるわけで、元までいれたら兵士なんて腐るほどいるわけだ。
それにいちいちビビって遠慮しているのもどうかと思う。
だったら方向を修正しよう。味方以外は全部敵でいい。
とはいえ一気に敵対すればそれこそ彼らの人間関係に問題が出る。
本音は最悪それでも仕方無いんだが今後の俺の計画に大きく支障が出る方が問題だ。
今回はどこかで一度話を落ち着かせて、その後ゆっくり距離を取っていくのがベストな方向だろう・・・
向こうもいきなり殴りかかってくるほど間抜けな考えなしでは無いようだし。
ちゃんと話せば案外纏まる話だとは思う。
喧嘩には〝前戯〟がいるんだよ。いきなり突っ込んではいけません。
「なるほど・・・君が悪い影響を与えていることはよくわかった。
今回の件は忘れよう。だがユリウスとの付き合いは遠慮してもらいたい。」
「意味がわからんし、嫌だね。俺はユリウスと友達でいたい。友達になるのに他人の許可はいらん。
俺らは独立した冒険者、指図は受けないよ。あんたらユリウスの保護者なのか?」
友達になるのに許可はいらない。何かの漫画で見たセリフだ。
ついに自分でも言ってしまった。とても恥ずかしい。
顔に照れが出ないように必死でポーカーフェイスを作る。
俺がポーカーフェイスを作る横でユリウスの目が見開かれていたけど。
人が無表情作るのに忙しいときに笑わせにくるのは堪忍して欲しい。
「そう受け取ってもらって構わないよ。僕は兵士の職についているときに指導員の役にいた。
ユリウスの事は親御さんや彼の兄弟からも頼まれている。
一緒に来た兵士の中でユリウスは最年少。いくら才覚に溢れているとはいえ、まだ導いてやる必要がある。」
「くくくっ、まるで家族ごっこだな。
親の傘から出て自分で食い扶持を稼ぎ始めたら独立した個人なんだよ!誰と付き合うかなんて自分で判断するもんだ!
おまえらのそれは仲間じゃなくて見張りって言うんだ。」
「ふむ・・・」
「反論しないのか?自覚はあるってことか、どっちがタチが悪いんだかわかんねぇぞ?」
「いやなに・・・もっと単細胞で考え無しに暴れているだけの男かと思っていた。
言っても聞かない男なのかと。
仲間を殴った君を我々は許せない。誠意ある謝罪をすれば許す、たしか彼女にそう答えたそうだね?」
「ああ・・・・それが?」
「事の経緯は置いておいて、彼女に誠意ある謝罪を君がするなら我々も今回は引こう、どうかな?」
「・・・・ユリウスのことは?」
「納得は行かないが君の言うこともわかる。確かに前から話をしてあったならユリウスが話を持ってこられて困惑したこともね。そこを含めて引こう。
どうする?」
「お断りだね、俺は事の経緯を置いておかない。彼女が連れて来た奴らと同じ謝罪ならしてもいい。それをあんたらが誠意のある謝罪だと受け取れば済む話だ。」
「受け取ると思うか?」
「受けないというのなら、悪いのは俺でもユリウスでもなく、彼女の顔を潰した2人だろう。
ケジメはそこから取りなよ。そこは不問でこっちに矛先を持ってくるなら・・・・・」
「君も納得はしないか・・・」
俺の提案する妥協点、それは他人に罪を擦りつけること。
元々元凶だしな。
可哀想?知らん知らん、クソガキがどうなろうと俺の知ったことではない。
「そりゃーね。なんで間に入ろうと思ったのかは知らないが不誠実な奴の味方なんてするのが失敗だろう。
そっちは責められないで、ユリウスが責められるのは納得いかないな。」
「なるほど・・・まだ納得はいかないが聞くべき所はある。だが君が我々の仲間を殴った事実は消えない。それはどうなる?」
「くくくっ、それこそ俺と彼女の問題だろう。俺と彼女が決めること、そこに首を突っ込んで来るのならそいつと俺との新しい問題になるだけだ、受けて立つよ。
受けては立つが、彼女が中途半端に話を持ってきたことを謝罪するならこっちも謝罪してもいい。」
政治家のやりとりみてーだな、と思う。
要は落としどころをどこに持って行くかどうか、だ。馬鹿らしいが少なくとも現在の状態で元兵士組を敵に廻すメリットは無い。
これ以上手を出し合えば人間関係がグチャグチャになっていくだけだ。
予定では今後もっと敵が増える。
そっちに与されると厄介以外の何者でも無いのだ。
頭を下げて済むのならそれで終わらせて置いた方が良いのだ。
どうせ謝ったところで完全に許すなんて無理だ。わだかまりは残る。
彼らは潜在的な敵になった。
何かあれば再燃するだろう。そんときにまた揉め直せばいい。
女兵士はメスゴリラみてーのしかいねーからな、別に仲良くしたいとも思わない。
「中途半端だったと?」
「ああ、謝る気の無い奴を連れて来て、謝らせるから許してくれじゃ収まらなかった話だ。
先に謝るって納得させてからユリウスに話を持って行くべきだったと思うよ。
多分謝るって口では言ったけど、あいつらが口だけだったんだろうけど・・・」
「それは私もその通りだと思う。イゾウの言うとおり謝るって約束した話だったのに、直前で・・・
本当にゴメンナサイ。」
そう言って元兵士の女が頭を下げる。
正確には突然俺が乱入したからだろう。謝る気はあったけど頭を下げる覚悟がまだ出来てなかったのだ。
ユリウスに話を通して、間を置いてから俺に繋いでいたならばもう少しマシな謝り方が出来た可能性はあった。その場合俺の顔は立たず、ユリウスの株だけが上がる。そしてお馬鹿な彼ら2人にも、俺に頭を下げたのはユリウスが間に入ったからだという事実ができて面子が保たれただろう。
それならば誠意ある謝罪が聞けた可能性はある。
ユリウスが話を受ける事が嫌だったからその前に姿を現したわけだ。
元兵士の女ならまだ顔は立てられるのだ。歳も上だし、目上で有ることは間違い無い。
だがユリウスが間に入った場合、いくら天才でイケメンでも同い年の顔を立てたらその時点でユリウスの方が上の立場だと俺が認めたことになるだろう。
おそらく〝落ちこぼれ〟扱いならば払拭できる。だが〝ユリウスの下のイゾウ〟扱いをされた場合になると払拭できるとは思えない。講習が終わってもずっとついて回る危険性がある。
別にずっと暗闇の中に隠れていようと思えばできなくもなかった。本当だよ?
「こちらも頭に血が上ってやり過ぎたと思う。申し訳なかった。」
こっちもとっとと頭を下げておく。
これでこの話をまだ引っ張ろうとするのなら、それはそいつとの問題になるわけだ。
彼女と俺との話には決着がついた、一応だけどな。
大人は体裁が大事。
馬鹿2人と俺の違いは下げる頭があるかどうか。
頭なんていくら下げても0円だ。手持ち0円の俺の最強の武器でもある。
顔をあげると元兵士の連中は意外そうな顔で俺を見ていた。
あーこれはアレか。
俺が頭なんて下げる人間だと思って無かったから呆気に取られていたパターン。
馬鹿にするのもほどが有る、中身は元40歳のおっさんだ。
必要で有れば頭なんざいくらでも下げられる。
代わりに必要で有ればいくらでも暴力に訴えるし、どうでもいい奴は幾らでも切り捨てる。
見ろ、他人がゴミのようだ!
あとは頭を下げたことで向こうが納得してくれるかどうかだろう。
それで納得しないなら、これ以上謝るだけ無駄だ。
俺だって謝られただけじゃ納得行かなければ銭金を請求する。裁判だって辞さないぜ?
とはいえ此処ではあちらが年長だ。実は実年齢ならばこっちが上だけどな。
こちらから折れておこう。
「皆さんにも迷惑を掛けた、あの時はこちらもどうしても許せなかったが、今は申し訳ないと思っている。」
意外そうな顔の元兵士組の奴らに向かって畳みかけるように頭を下げることで顔を立てる。
これで許せるとは思えないが、納めどころとして納得して欲しい。
してくれなかったらもう殴り合うしか無いんだけどね。
それならそれで構わないのだよ。俺としては引いたという体裁があれば後で何とでも言える。
引いた態度を取ったのは事実だしな。そして目撃者は多数だ。シグベルが不満そうな顔をしているがそれは知らん。君も大人になりなさいとしかね。
何度も言うが手持ちは0円だ。妥協点としては誠意と頭を下げるくらいしかないのだよ。
傍観者に殴られてやるなんて絶対ごめんだしな。
彼らは確かに俺を〝落ちこぼれ〟扱いはしなかった。
それはユリウスやシグベル、セレナたちと同じに見える。
だが元兵士組は味方だったわけじゃない。
彼ら彼女はただ見てただけだ、我関せずでな。
それが許してやれと口を挟んできた。
それを一度許したのは彼女らが強い〝集団〟だからだ。
本音を言えば納得がいかない。
言ってきたのが正義感ぶった雑魚ならばその場で容赦なく叩きのめしてやった。
正直屈辱だ。
だが今は、二度許そう。
強い奴には勝てないからな、今はまだ。
元兵士組は潜在的な敵になった。
向こうがどう思っているかは俺にはわからない。
だが俺にとっての敵になった。
無責任な傍観者なんて俺は許さない。
傍観者がステージに上がってくることも許さない。
その傍観者が誰かに説教なんて絶対に許さない。




