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異世界(この世)は戦場、金と暴力が俺の実弾(武器)  作者: 木虎海人
序章 この世は戦場、小金持ちは悪人の鴨と葱
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考えるのは0円です


 しばらく(荷)馬車に揺られた後何事も無く街に着いた。

酔いによる吐き気以外は。

そこは必死で耐えた。


 街は周囲をぐるりと高い壁で囲まれていた。それを見て本当に異世界に来たんだと改めて実感する。

壁で囲まれている街、これは自分が生まれ育った日本には無かった物だ。

見たこと無いだけかもしれないが柵では無く壁、防壁といった物がそびえ立つ様は圧倒されるには充分な物だった。

 これを見て実感すると共に痛感した。

今自分が乗っている荷馬車に乗っている元生物だった肉片は人間を殺すモノだと。

場合によっては自分はコレと戦わなければならないのかも知れない、と。


 次にその防壁が思ったよりも粗末な物であることに驚いた。

粗末といっても街を覆うほどの長さを誇り、高さは身長の二倍は優にあるのでおよそ4メートルを超える。

厚みというか奥行きは3メートルはあるだろう。

造りが荒いとは言え建造物が街を覆い、防壁の上は人が歩ける仕様なのだから充分立派だ。


 なぜ粗末なモノに見えるかといえばあちこちに補修の痕が見えるからだ。

そのせいで建築耐久期限の切れている物件を無理矢理使い回しているようにしか見えない。

途中で色や模様が変わるのはご愛敬で、所々欠けている。

継ぎ接ぎで縫われた戦時中の着物みたいな建物だ。

こんなものが日本で公共の建築物としてあったのなら批判殺到でワイドショーのイイネタにされるだろう。

 芸能人が喜んでリポートしにくるレベルだ。

ノリノリで破損しているところをゆびで指して「こんなになってますよ!」とか言ってる画が浮かぶ。

つまり建築物としては構造が立派なのに造りがかなり粗末に見える。

建築系の仕事に従事していた経験のある俺にはもの凄く中途半端なモノに見えたのだ。


もし現代科学で防壁を作ったらどうなるか考えてみる。

死ぬ前の日本では戦争が無かった。

もし戦争が起こったとしても街を囲う壁などはつくらないだろう。

現実に建物ごとに壁はあるが街を囲うのは難しい。

某大国の当時の大統領が国境に造ると言っているが俺が生きているときには難しそうだった。

日本でなら要人を守る場合、防壁ではなくシェルターを造るだろう。

一部の人間だけで逃げるに決まっている。


壁を作る場合思いつくのは刑務所の壁みたいなものだ。

上に有刺鉄線が張ってあるような高い壁。

それでも壁を作るくらいなら電流を流すような気がする。

この辺は少し違うかもしれない。刑務所も実際は見たことは無いので想像するしかない

あっちでならそこそこの大きさのバスとか移動車両をずらっと並べただけでバリケードになってしまう、比べるのがおかしいか。

もっとも車両だと攻撃されたら爆発するかもしれないが。

だがもし、仮に、日本で防壁を作るとしたらこんなあちこち綻んだ物は作らないはずだ。

そう考えると再度異世界に来たことを実感し、この先にあるだろう不便な生活を考えると気持ちは沈む。


後に気づくことだが魔物の襲来のある街ではそれだけ防壁、城壁を作るのは困難らしい。

作っては壊され、直したら襲われる。

それを繰り返し少しずつ広げて大きくしていったらしい。

だがこのときはそこまで考える余裕が俺にはなかった。




街の入り口では兵士の集団と言うことで特に時間が掛かることもなく中に入れてもらえた。

もうだいぶ外は薄暗くなっていたが街に入るために多少の列が出来ていた。

本来ならあそこで止められて身分確認などをされていたのだろう。

一団はそのまま兵士の詰め所のようなところに進んでいった。


その日は兵士の宿舎に一晩泊めてもらえることになった。

こぢんまりとした薄汚れた客室に粗末なベッド。

シーツもガサガサだ。文句を言いたくなったがそれでも野宿するよりははるかにマシか。

何処の世界でも兵士の寝泊りするところなんて粗末な物だろう。

自衛隊なんかも酷い扱いだと聞いたことがある。

災害救助で救援に行ったのにちょっと良い生活をしているだけで被災者からクレームが来るらしい。

とんだ被災者ファーストだ

助ける側が万全の健康でなければ、助けられる人も助けられないと俺は思うがな。

隊員は被災地では温かいご飯も食えないとか、酷い話だ。そんなんじゃ助けられる人も助けられないだろうに。

救援に向かう者にこそ栄養が行き届いた美味しい食事を取らせ、しっかり睡眠と休息を取らせるべきだと俺は考えるが。

まぁ死んだ後で何を言っても何も変わらないが。



実際にここまで来る途中に見たところ、生活水準はあまり高く無さそうだった。


それでも夕食にとスープと黒パンの粗末だがありがたい食事も提供してもらえた。

正直そこまでは甘えられないかと思っていたのでこれが本当にありがたかった。

あのままあそこにいたのならば飯も食えない所だった。

ただこの建物には食堂のようなところがあり、兵士は皆そこで食べているのに俺の分はそこではなく部屋に運んできたところを見るとこの部屋は客間というより監視場所だろう。

身元不明の全裸の男をさすがに放置するわけにもいかなかったが、完全に信用するわけにもいかないといったところか。

つまりあんまり歓迎はされていないようだ。長居しない方が良いだろう。





その監視部屋の堅い粗末なベットに横になって考える。

夕食をもらったときに「今日はゆっくり休んでくれ、明日じっくり話を聞かせてもらう。」と言われたことから明日話を聞くまでこの部屋で軟禁で、下手をすると明日は尋問に近いことをされるかもしれない。

ここが異世界で文明レベルが低いことを考えると魔女裁判みたいな風習が残っていてもおかしくはない。


異世界といえば剣と魔法の世界(ファンタジー)、剣は見てないが槍は持ってた。

魔法もある可能性がある。

いや誰かがあるような事を言っていた気がする。誰だ?

目が覚めてから話した相手なんて限られているからありえないのだが、確かに誰かに聞いた気がする。

仮に嘘を見抜く魔法とか道具があったらどうするか?

嘘を見抜く魔法や道具があったと仮定した場合あまり余計な事は思い出さないほうが良いかもしれない。

最低限生きてさえいければ記憶はゆっくり思い出せばいい。記憶がなくても死にはしない。

下手なことを急いで思い出すと殺されるかもしれない。


となると死んだ後の記憶は余計で、死ぬまでの記憶で話を進めるのが上策か。

「別の世界で死んでしまい転生して何故かこの世界にいるんです。だから素っ裸だったんです」

とか言ったら多分頭のおかしい奴扱いされる。

いらぬ波風を起すよりは、


攫われて監禁されて殴られた。

頭を殴られたところから覚えていない。


が無難だろうか。

あまり脚色しないで大まかな事実で通す方向がいいかも知れない。


攫ったのは知らない人だった、そう答える。これは本当だ。

知人ではあったが本名までは知らない。

通り名というかネット上の名前でしか呼んだことの無い男だ。


後は自分の名前はなんと名乗るか・・・・

そういえば今日あった人に名前を聞いていなかった。どんな名前が一般的なのかもわからない。

仮に日本の名前を名乗った場合に、変わった名前だという扱いを受けて出身を突っ込まれる可能性がある。

それはそれで面倒かもしれない。


それに剣と魔法の世界(ファンタジー)といえばもう一つ重大な要素がある。

『 奴隷 』 だ。

ある意味裏要素と言ってもいいくらい重要だ。お約束ともいえる。

もし奴隷化する、もしくは奴隷契約を強引に進める場合の条件の中に相手の本名が入っていたならばどうなるか?

確かなんかの漫画では悪魔は本名を人間に知られたらその人間に従わなければならないとかいう話があった。それで女悪魔にエロいことをしまくるのだ。ゲームだったかもしれない。


別に本名を今さら名乗る必要も無い気がする。どーせ死んだ身だ。

名前も忘れたで通すか・・・・・

そのうち適当な名前でも名乗ろう。

第二の人生らしい名前を考えよう。



その前になんとか明日の話を誤魔化さないと。

その後も色々考えていたらいつのまにか眠りについていた。

思ったよりも疲労が溜まっていたようだ。




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