講習生たち 青い髪の眼鏡っこ
・短話 ④ 壁に耳あり障子にメアリー
「あいつらちょっと出来がいいからって調子に乗ってんのよ。ユリウスとかライアスとか強い奴らには勝てない癖に!」
少し疲れた顔の女の講習生が怒鳴るように吐き捨てる。
「分かってるって、セレナにビアンカ。どっちも女の癖に生意気だからな。ここらでお灸をすえてやるさ。」
それを聞いて答えるのもまたくたびれた顔の男の講習生。
どちらも同性の2人組で互いの相方の声に頷いている。
4人の男女が講習の行われているギルドの片隅で人目を避けるように話をしていた。
彼らと彼女らはこの講習からドロップアウト寸前の存在である。
講習から10日、ついて行けなくなっていた。
お互いにその現状を理解しているために話すようになる。
ついに冒険者としての今後に見切りをつけたために最後の逆恨みの相談である。
ユリウスたち講習のトップランナーをどうこうするつもりも、それを出来るだけの実力の無い彼女らは、女子のトップの2人を憎んでいた。完全に逆恨みなのだが、何をやっても上手く行かない彼女たちはそれに気がつかない。辞める前に痛い目をみせてやりたいと企てる。
だが共犯者として捕まえたこの男たちではその2人に痛い目をみせられるとは思え無かった。
仕方なく弱い所から狙う。
「まずはセレナの相方のマナだ。ぼーっとしてる女だからあたしらが声を掛けて引っ張ってくるさ。」
「そしたらあんたらが無理矢理押し倒してって寸法さ、見た目はガキくせえが男はああゆうのが好き何だろう?ああゆうのはかわいこぶってるからな、乱暴されたとしても表沙汰にはしたがらない。
最初に狙うには1番さ。」
2人が語る計画のターゲットは〝セレナ〟ではなく、そのセレナの影に隠れるように講習を受けている、彼女の親友の〝マナ〟だ。
ロリ美少女と言ってもいい美しく小さい、だがメリハリの利いた身体を持つマナを性的な目で見る男は多い。すこしとぼけた感じで抜けたところがあり、男の講習生に人気がある。
そんなマナが気に入らない2人は、最初の狙いをマナにつけた。
「俺たちはセレナでもマナでも問題ねぇよ。どっちも講習のテイでもなければ楽勝だ。
ま、最初はちっちゃいくせに出るとこは出てるマナからなのは楽しみだ。」
「おまえはそうゆうのが好きだからいいけどよ。俺はあーゆうガキくせえのに興味ないんだからな。報酬の方はキッチリ頼むぞ。
あと、セレナのほうは勿論、ビアンカとその相方もしっかり呼び出せるんだろうな?」
対して聞いていた男が答える。
彼は幼い美少女のマナよりも、背がでかい大女のセレナよりも、大人っぽい系美少女のビアンカと、その親友でクール系眼鏡美人の方を狙っていた。
「大丈夫、問題になれば辞めた後に。ならなくてもちゃんと私らが相手してやるよ。」
「そんなにがっつかなくても逃げやしないさ。あたしらだって最後に楽しみたい。事が済んだらゆっくりな、しっかり痛い目をみせてくれたらその分、熱の籠もったサービスをするって。」
彼女たちが彼らに差し出した対価は自身の身体。
どこかに逃げるつもりの彼らと違い、彼女たちは生きることを諦めている。
容姿も並、体型も並、頭もよくはなく、強くもなれない。彼女たちは地元で親にすらゴミのように扱われてこの講習に捨てられた。
やけになった女に捨てる物など既に残っていない。
この講習を放り出せば、落ちるところまで落ちた生活が待っているだろう。
その道連れに選んだのだ。女講習生のトップの2人とその親友を。
そしてこの2人を、だ。
対して男はこの状況を楽しんでいる。
冒険者を辞めさえすれば逃げられるという安易な考えで平気で犯罪を犯す低能だ。
ガキのまま育った中途半端な大人少年。
「自分はロリコンじゃねぇとか言いながらちゃっかり参加するくせにな。」
「最後になるからな、精々楽しませてもらうだけだ。見た目にこだわる気はねぇさ。」
罪の意識が無いために、これから行う犯罪に対する罪の意識が薄い。
上手く行っても行かなくても待っているのは底なしの沼である。
今回の話は女の講習生側から持ちかけられた。
目的は女の講習生のトップである、セレナ、そして赤い髪の美少女ビアンカへの嫌がらせである。
ただしそのどちらにも手が出しにくいために、その相方をまず狙うことにした。
長身で白金の髪を持つセレナの相方、マナ。
赤髪で女講習生トップの身体能力を持つビアンカの相方メアリー。
マナは天然なところがあり、少しとぼけているのに対し、メアリーは、眼鏡をかけた知的な印象通り、活発なビアンカの作戦参謀とも言える立ち位置だ。
狙いは必然的にマナになる。
目立つ2人の影に隠れる2人をレイプさせることで、手の出せない2人の講習への集中を乱すのが狙いだ。
可能ならばそれをネタに目的の主である2人のほうを呼び出して罠にかける算段でもある。
人生を投げ捨てた者を〝無敵の人〟という。
彼女たちはそれに近い思考で動いていた。
「へへへへ、約束は守れよな。」
そう言う男の視線は女の身体を舐めるように這う。
男は限界を知った為に講習に未練が無くなった。これ以上努力しても冒険者として大成する道が見えない。
最後に講習内でも美人と言われる彼女たちを手籠めにし、さらに報酬でこの彼女たちと楽しみ、逃げるするつもりでいる。そこに一切の迷いが無くなった。
迷い以上に考えが足りないのだが当人たちには良い考えだという以上の先の思考が無い。
講習に夢中で、共にライバル視しているトップ2人はまるで気づいていないハズだ。
そこをついて彼ら彼女らは計画を立てている。
人生を捨てた男は一時の快楽を得ることを選択する。
人生を捨てた女は道連れを増やそうとする。
建物の影、その建物が作り出す暗闇に紛れて彼らの話を全て聞いている男と女がいた。
1人はイゾウ。師匠であるガハハ髭教官より、〝隠密〟というスキルを取得するための訓練として闇に紛れて行動するという鍛錬を課されている。
その技術は鍛錬開始数日で、今一緒に来た女が側にいてすでに分からないほどに闇に紛れ溶け込んでいた。
当然見られていることすら気づいていない。
イゾウにとってマナという女は気分の良い相手ではない。とにかくイゾウに対し彼女は態度が悪い。
だが許せる範囲でもある。彼女はイゾウを〝落ちこぼれ〟扱いはしなかったし、悪い態度も焼き餅にしかみえないかわいいものだ。それくらい許せるくらいにマナは美少女であり、彼女の親友のセレナとイゾウと親しくしている。むしろイゾウはセレナが好きでもある。
〝落ちこぼれ〟騒動の間も特に変わらず接してくれて、口汚く〝落ちこぼれ〟とイゾウを罵る者にセレナは怒ってくれていた。
イゾウとしてはマナがこいつらにレイプされてセレナが悲しむ事など論外である。
何より、セレナを狙うイゾウにとって、マナもまた狙いたい女の1人である。
その身に宿した〝氷の神〟の寝床としての使命のためにも子供をたくさん作る必要がある。
仲の悪い女を複数娶るよりも、元々の親友を囲い込んだ方がのちのち上手く行くだろうし、何よりも効率が良い。
イゾウとはそうゆう性格の男である。
「おいおい、マナはそのうち俺が押し倒す予定なんだ。お前らが汚ねえもんを突っ込んだら萎えるじゃねぇかよ、やめとけやめとけ。」
建物の陰、黒い影の中から浮かぶように人影が現れる。
黒い髪は闇と同調し、180センチの体躯は彼らよりも目線が高い、そして服の上からでも良く鍛えられているのがわかる。動作に淀みが無い、口元は薄く笑い、この状況でも余裕を感じさせた。
「て、てめぇは!イゾウ!」
「なんであんたがこんなとこに!」
「悪巧みが聞こえたから・・・な。我慢出来なくなった。くくくっ若返ると少し早漏気味でな、色々敏感で困ってるんだ。
なぁおねーちゃんたち、こんなカスどもに股を開くなら俺に開けよ、数をこなして慣れさせたいんだよね。」
「てめーは一体何を言ってやがる!どこまで聞いてやがった。」
男が焦り、イゾウを怒鳴りつける。
対してイゾウはそれに取り合わない、流すように答える。
「全部だな、おまえさんたちが悪巧みをしてるって密告があってな。まさかと思ったらそいつの予想通りでやんの。ビックリして聞き入ってたけど、我慢出来なくなってつい出てきちゃったよ。
やめとけやめとけ。全部聞いた。
上手く行こうと、失敗しようと俺が全部聞いてる以上先はねぇよ。
今なら忘れてやる。俺に一個借りって事で胸にしまって真面目に講習頑張れって。」
「ふん、知ってるよ、イゾウ。おまえ今〝落ちこぼれ〟呼ばわりしてる奴を殴って廻ってるよな?
たいしたもんだ。お前みたいに上手く行ってるから妬まれて1つの欠点を取り上げて〝落ちこぼれ〟呼ばわりされてる奴もいれば、俺たちみたいになんも出来ない奴もいる。何も出来ないから〝落ちこぼれ〟どころか誰も俺らを相手にしねぇ
もう終わったんだよ。聞いてたからなんだ、いくらおまえが強くても4人相手に勝てるとでも思ってるのか!1人でのこのこ顔を出しやがって、馬鹿にするんじゃねーよ!」
男が声を上げる。そして戦う姿勢に入る。
その所作はイゾウにとって不愉快きわまりないものだ。ドSのスイッチが入る。
「あらら、説得失敗か、頭悪いな。女の子チームもかな?」
「・・・・私達ももう後には退けないわ。あんたが誰であれ聞かれたなら排除して続けるだけ・・・」
そういって4人は広がり臨戦態勢を取る。
イゾウはそれを眺めながら、背後の暗闇の中から飛び出してきそう気配のする女に対し手を上げて制する。
「くくくっ、残念だ。」
そしてその中で最も弱そうな女性講習生の腹部を横蹴りで蹴り上げるのだった。
イゾウの動きに反応出来ない3人は一瞬のことに対応出来ず固まっている。
腹部を蹴られ呻く女の髪を掴み上げてイゾウは頬を張る。パンパンパンパンと手首を利かせて頬を叩き目を合わせて睨みつける。
「どうする?まだやるか?」
「や`ら`な`い`で`す`、ゆ`る`じ`て`」
元々講習について行けないレベルの相手だ。簡単に心が折れた。
そしてイゾウは服をまさぐり胸を揉む。モミモミモミ
手のひらサイズで悪くない。女は呼吸が荒く自身が何をされているのかすら理解していない。
「ふーーん、俺が呼んだら来るって約束できるなら見逃すけど?」
「わ`が`り`ま`じ`た`」
息も絶え絶えに女が答える。
イゾウはそれを聞いて笑みを浮かべて髪を掴んでいた手を離し、振り返る動作の勢いで固まったまま突っ立っている男を2人殴り飛ばす。
目の前の出来事に頭がついていかない男2人は殴られただけで戦意を喪失し、うめき声をあげて踞る。
そしてイゾウはもう1人の女に向き合った。
口の端を釣り上げて凶悪な顔でにやりと笑う。
こいつも胸くらい確かめておいても問題ないだろう。イゾウはそう考える。思わず芝居では無く顔が笑ってしまった。
女は笑うイゾウをみて腰が砕けた。膝から落ちて座り込んだ。座り込んだ姿勢のまま地べたをすって後ろに下がろうとする。
その顔は今にもお漏らしする寸前のようだ。
しなかったのはそこまでイゾウが追い込まなかったからに過ぎない。
「おいおいまだ乳も揉んでねーぞ、座るのは早いだろ。」
イゾウは呆れたようにため息をついて横を向いた。
そこまでしてどうでもいい女の胸が揉みたいわけではない。
では何故揉むのか、そこにあるからだ。
「忘れろ、4人の誰にでも手を出したら誇張では無く殺しに行く。いいな?」
イゾウがそういうと壊れた人形のように女はコクコク高速で頷いた。
それを見てイゾウは何も言わずまた闇に溶けるように消える。
講習生内にイゾウという〝毒〟がじわじわとを蔓延していった。
4人は講習を辞める選択肢を何故か諦める。
後日1人ずつイゾウという男の軍門に降ることを選択した。
そんな彼ら彼女らが講習をこなすようになるのはまた別のお話。
・短話 〝青髪眼鏡ッ子メアリー〟
〝落ちこぼれ〟扱いされていたイゾウという男が、そう自身を呼んだ人間を〆て廻っている。
講習内でその噂が流れたのは講習が始まってもうすぐ10日を過ぎようかと言う頃だ。
ピンポイントでかなり暴れているようでその噂はすぐに講習生内に広まった。
治療されない講習生が講習に出てくるようになり、それが真実だとあっという間に知れ渡った。
その話を聞いた親友のビアンカは歓喜していた。
彼女自身がイゾウという男を〝おちこぼれ〟扱いをした事は無い。無いが彼女の親しくしている者の何人かは口さがない人がいて、随分彼の悪口を言っていた。
勇者志望の才女である彼女は、勇者の教えを受けているイゾウと戦いたいと望んでいる。
特にビアンカが敵視する、ライバルのセレナと親しい為に、彼女は彼を公衆の面前で自分の手でたたき伏せたいと強く望んでいる。
セレナの良い人を大したことがないと見せつけてやりたいのだろうと思う。複雑な女心だ。
だがそれは難しい。
ビアンカは幼い頃から美少女で、かつ、やれば何でも出来る存在だった。
ともに貧しい農民の娘、幼い頃から冒険者になって自力で今の環境から抜け出したいと語っていた彼女は、成人する今の今まで鍛錬を怠ったことが無い。
だがそんな彼女を遙かに凌駕する存在が、この冒険者講習には何人もいる。
私には彼女のように人よりもすぐれた才能は無い。
無いが故に相手の強さ、長所、そして短所を見て、そこから作戦を立てて行動する事で何事も人並み以上にこなしてきた。
だがどんなに作戦を立てても勝てない相手がいる。自分だけでは無く、親友もまた適わないであろうと。
気づいているが彼女には言えないでいる。
特にイゾウは色々な意味で悪い。
セレナというビアンカのライバルと親しくしてはいるが特に交際しているようには見えない。
男嫌いの彼女が、認めた相手に男の影がちらついているのが面白くないだけなのだ。
そしてそんなイゾウは最近暴れ出したという。
敵対すれば間違い無く嬉々としてとして攻めてくるだろう。
私は言っていない。いないが言った人間が何人も近くにいる。キッカケがあれば揉め事に発展するだろう。
彼の実力は講習生内で間違い無く最前線を行く。
王都の兵士が誇るユリウス、彼に対抗するために武術課の教官たちが用意したのでは無いかと一部で噂されるほどだ。
そんな相手に親友は無謀にも戦いたいと思っている。
キッカケがあれば彼女もまた喜んで立ち向かうだろう。
講習生同士の組手は武術の講習内で、初級の〝認可〟を全て得た者でなければ行われない。
ビアンカがイゾウとの戦いを望みつつも未だに行われていないのはここに理由がある。
イゾウが全ての〝認可〟を得終わっているのに対し、ビアンカがまだ半分ほどしか進んでいないからだ。
そしてビアンカのライバルのセレナはイゾウに教えを受けることでビアンカに張り合えている。
つまりイゾウは教えるのも上手い。
それは技術を本能ではなく、技術として完全に理解していることを意味する。理解して自分のものになっているからこそ、人に伝えることが出来るのだ。
イゾウが暴れだしたことで講習生内カーストが慌ただしく動きだしている。
特にそれにこだわり、積極的にランキングを操作することで自分を優位な位置におこうと裏で目論んでいる者が優先的に叩きのめされた。
これまで講習生内の裏で暴れていたのはライアスという男だ。
表でも裏でも影響力がある。自分の派閥を持ち、王様のように振る舞う男。
正直好きでは無い。
だがその彼の勢力はイゾウが暴れたしたことで思うように動けなくなった。
派閥の人間かどうか、その微妙なラインを何人もイゾウにやられてしまったのである。
やられたのに、やられた彼らが悪い扱いをされ、問題視される。
冒険者としては勝てば官軍なのだ。勝ったイゾウが偉い。
10日で落ち着いたカーストがまた再編されようとしていた。
そんな隙をついて不審な動きをしている者が目についた。
今にも講習から出ていきそうな人たちがこそこそ人目を避けて行動し、同じように今にも講習をやめようという男に声をかけているのに気づいた。
講習生としては微妙な存在。
だがそれが4人もいると私1人で対応するのは難しい。
何度か後をつけて探るが、個人の力では限界が来る。
だが黙って見ているわけにはいかない。
それでも私にはビアンカ以外に腹を割って話が出来る相手がいない。
顔も地味、スタイルもビアンカに比べて平坦で、人付き合いも上手くない。
友達というほどの間柄はビアンカを介してしか存在しない。友達と呼べるのはビアンカしかいないのだ。
自分以外の手が必要だった。
「ふーん・‐・・ビアンカさんね・・・
怪しい動きをか・・・・・メアリーさんの予想通りなら確かに俺も人ごとでは無いな・・・」
私が選び頼ったのは親友が最も毛嫌いする男だ。
他に頼る者がなく泣きついた私を彼は宥め話を聞いてくれた。
教官に管理を押し付けられたという空き家に案内され、温かいお茶をだし、一通りの話を黙って聞いてくれた。最初は色々この態度を疑ったが、話し始めると止まらなくなって全て話した。
「突然こんな話をして信じられないのはわかります。
ですが友人に危害を」「ああ、細かい話はいいよ。話したければ終わってからそのうち酒でも飲みながらにしよう。とりあえず話はわかった、じゃー俺らはどうするか、を決めよう。
メアリーさん。力になるのは構わない。聞いた以上ほっとけないしな、あんたと連携しなくても勝手にやると思う。好きにして良いならこっちで片付けるよ。
だがあんたが自分の好きな場所に問題の着地点を決めたいならば、俺を使うのに対価が必要だ。
俺があんたの指示を聞くかどうかはあんたが何を俺に差し出すかによる。
俺はあんたの友人じゃーない。無償では働かない。
力にはなるよ、対価があれば。
選べ、そして差し出せ。
初めて話す同期の友よ、割りにあえば力になろう。
割りに合わなければ今日初めて話す相手だ、断られても仕方あるまい。
メアリー、お前は何を俺に対価として差し出すか?」
「・・・私に価値はありますか。私には他に何も無い。でも大事な友達なんです、知られること無く守りたいの。 対価は・・・私、私ではあなたは、私の力になってくれないでしょうか!」
メアリーはイゾウを頼った。
取捨選択のすえイゾウが残ったともいえる。
ライアスという男には聞くまでもない。聞けば配下に置かれてしまうだろう。
シグベルという男には向いていない案件だ。裏で動くなどと彼はしない。
ユリウスという男ならば聞けば力にはなってくれるだろう。だが女の講習生ほとんどを敵に回す覚悟がいる。
他の上位講習生ならば交渉すら難しい。話を聞いてもらえるかすら怪しい。
もしイゾウが感情のままに暴れるタイプならば彼に相談することはなかっただろう。
セレナやユリウス、シグベルと話しているところを遠目に見ていて話の通じるタイプだと判断した。
最悪の場合、身体を差し出すことで親友の助けになるのならば、を覚悟した場合、あの中でならイゾウならば我慢出来るくらいには嫌悪していない事もある。
何より見返りに自身の身体を提示するくらいには、思い悩んでいた。
「くくくっ、面白いなあんた・・・
あんたに価値はあるよ。充分魅力的だ、俺眼鏡ッ子フェチでもあるしな。
でもまぁ身体を求めるのは今回はやめとこう。勿体ない、そのうち自分で股を開かせてやる。
一個貸しな、今回は力を貸すよ、今度あんたは俺に知恵を貸してくれ。
それでどうだ?」
そうイゾウは真面目な顔で、しかし楽しそうに言った。
私はそれを受け入れた。
2人で怪しい男女を探ることになる。
「あいつらか・・・、んじゃ悪いけど離れて見てて。俺なら近くで全部聞けるから。」
「え、ちょっとそれはいくらなんでも・・・」
「師匠がいるの知ってるよね?斥候系の術だけど覚えとけば便利だからって探索系の技術も色々教え込まれてるんだよ。だから一緒にいると見つかるの、わかる?
それとも斥候系の技術持ってたりする?」
「う・・・確かに私は持ってないですけど、イゾウさんだってまだ10日も経ってないのにもう覚えてるんですか?」
「教わって3日くらいかな、なんか俺師匠に言わせると俺って天才肌らしいんだよね。
ま、最悪見つかっても俺だけならなんとでも言い逃れ出来るよ、メアリーは少し離れて隠れててよ。
あと面倒だから呼び捨てで呼んでよ。」
「3日・・・・天才系・・・って・・・いやでも・・・」
「んじゃ行ってくるからさ。ぼーっとしてると行ってきますのチューするぞ?おーい。
って聞いて無さそうだな、残念。」
協力者になった男は私がその言葉を真実かどうか吟味しているうちに1人闇の中に溶けるように消えていった。
隠れるところを見てたのに認知できないという、その技術に私が絶句しているうちに、彼は勝手に姿を現して暴力で決着をつけてしまった。
「4人瞬殺ですか・・・・そうですか・・・しかも女にも容赦ないし・・・」
その手並みに驚愕以外の反応が出来なかった。
そして改めて3人の教官の弟子という存在を知るのだった。
後に知ることになる話だ。
私たちに降りかかるハズの問題は、私達が知らないうちにイゾウが全て潰していた。
「一個貸しな。ちゃんと返せよ。」
その日の終わりにイゾウは言った。
「利息を請求されそうだから身体で払う。それで忘れて欲しい。」
後日その言葉の重圧に絶えきれなくなった私はそう返した。
それを聞いてイゾウは楽しそうに笑った。
「身体は欲しいが、代償としてのマグロ女抱いても面白くないんだよ。」
「ま、まぐろ、ですか?それはどうゆう意味でしょう?私に問題が・・・?」
この男は時々意味の分からない事を言う。
その質問に返事はせず楽しそうに笑っていた。
「んじゃーメアリー。俺と友達になってよ。
ユリウスとシグベルとは共に切磋琢磨し、困難に立ち向かって死ぬときは一緒だって誓ったんだけどさ、女の友達はいねーんだ。損得抜きで俺と友達付き合いしないか?」
「いやその人たちと横並びはちょっと・・・」
「あっ、そうっすか・・・残念だ・・・」
私は彼の提案を反射的に蹴った。
彼はその後私に友達付き合いをしようと二度といわなくなった。




