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異世界(この世)は戦場、金と暴力が俺の実弾(武器)  作者: 木虎海人
 1章  初心者講習

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最初の1週間


 冒険者ギルド主催の初心者講習が始まって一週間が経った。

当初は慣れない泊まり込みでの初心者講習(生活)に戸惑っていた講習生たちも慣れてきていた。


 早朝ランニングを行う校庭型訓練所(グランド)では180センチの体躯の人が弾けるように飛んでいく様がこの一週間ですっかりお馴染みになった。

 その飛んでいったイゾウは、ごろごろと転がりながらも転がる勢いで上手く立ち上がり何度も相手に向かって突っ込んでいく。講習生の中でも気の弱い者はその姿だけで圧倒されていた。


 腕こそ未熟だがイゾウが身体能力テストで受講生でトップだったことは既に知らされている。

 そのイゾウが振り回す木剣を、教官長はまるでじゃれついてきた猫をいなすように軽く捌く。そして幾合かの打ち合いの末、再びイゾウは転がれ、倒されるのだ。

 見ている方が痛くなるような残撃で叩き飛ばされているのに、それでもイゾウは立ち上がることを止めない。

 朝食の声が掛かるまでそのさまは続いた。


 当初イゾウだけが元勇者である教官長の訓練を受けることに不満の声が多々上がった。

自分も参加させろ、という身の程を知らぬ意見が。


 教官長は、これに条件をつけた。

()()()をフル着用の上で砂袋を4つ背負い、イゾウよりも速く走り終えること。


 結果これをクリアーできる講習生はまだいない。

イゾウより速く走り終える事が出来る者は何人かいる。だがそれは何も持たず走るだけでの話だ。

 ()()()を装着し、4つの砂袋を背負わされて走るイゾウより早く、革の鎧を着けて走り終えているものは未だにいない。

砂袋を4つ背負うイゾウよりも、背負わずに遅い者が殆どだ。

 毎日毎朝の走り込みで、それでもどんどん速く走るようになっていくイゾウを見て大半の講習生は既に諦めている。


 一週間経っても教官長の訓練を受けられているのはイゾウ1人だ。

講習生の妬みは自然とイゾウに集まり、結果講習生の中で最も嫌われているのがイゾウである。


 イゾウとしては誰かが参加するのは大歓迎だ。

だが師匠である極道コンビに、絶対に手を抜かないように念を押されているために中途半端なことは出来ない。

 そんなイゾウを空気の読めない男として馬鹿にしている者も中にはいる。




 走るだけでなく、イゾウはこの一週間で講習をかなり進めている。〝認可〟をかなりの数、得ていた。


 武術の課目は第五段階まで進んだ。これは歴代の中でもかなりの早さだ。

第三段階の斧、第四段階の短剣と、ユリウスたち元兵士組の講習生たちと競い合いながら腕を磨いた結果だ。

 現在は第五段階の、棒術杖術を学んでいる。

この後六段階目の投石、投げナイフの〝認可〟 さらに第七段階の無手格闘術の〝認可〟を得るとギルドが定める規定での初級武術の講習は全て終わる。

 一通り体験した上で各々主武器を定める。 そして残りの日数で選んだ得物の技術を磨くのだ。

普通の流れなら己の武器を定めたこの後に、教官に弟子入りする。イゾウの弟子入りの仕方はかなり特殊だった。


 イゾウの3人の師匠の得物はそれぞれ

教官長         大剣 (+ 上級風魔法、他)

ガハハ髭        双剣 (+ 中級魔法数種)

傷顔の教官       槍  (+ 中級魔法数種)


である。

 何を選ぶか、そこでまたイゾウには受難が待っている。





 弓術の講習も問題ない。

不思議と痛めた右目が昔よりも〝狙い〟がつけやすくなっていた。

弓術担当の教官にも気に入られ、順調に弓術の講習も進んでいる。



 問題があるのは魔法の講習だけ。

イゾウは全く魔法を使える気配が無かった。

まだ諦めるような時間じゃないと本人は強がっているが、かなり苦労していた。

 おかげで「 落ちこぼれ 」という評価は未だ覆せていない。

嫌われっぷりと合わせてなおも炎上継続中だ。


 魔法講習の半分は座学を受ける。残りの半分の時間で、魔力を高める基礎訓練を淡々と繰り返す日々だ。

 この一週間はそれの繰り返しで、特に指導は受けられていない。魔法講習では、魔法が発動しない者には指導をしない。魔法が発動しない者の方が圧倒的に多いからだ。

使えるか分からない者に割く人員も時間も、講習の時間だけでは圧倒的に足りないから。


 イゾウはシグベルと共に訓練に励んでいた。

シグベルも魔力値は高いのに、やはり魔法が発動しなかった。


 真面目にあれこれと2人で取り組んでいる。だが出来ない者が並んでいても上手くいっていない。


 講習にはユリウスと3人で参加している。だがユリウスは魔法が既に使え、教官のお気に入りのようで、一緒に練習をすることは無い。


「出来る者は進んだ講習を受けられる、それがこの講習の最大の売りなんだ」


 性格の悪そうな魔法課の講師が、ユリウスを連れに来たときに、毎度意地の悪そうな顔でそう言い捨てていた。


初級の 〝火魔法〟 と 中級の〝風魔法〟まで既に使えるユリウスは呼ばれるたびに素直に従っているが、決して自分からは動かない。そして帰ってくるたびに不機嫌だった。

 ユリウスの面白くなさそうな顔をみてなんとなく察している2人は、呼ばれた先で何をしているのかはあえて聞かなかった。





 午後には解体の講習が行われる。これにはイゾウを含め大半の講習生が苦戦させられていた。

血の臭い、内臓の臭いに苦しめられた。目の前で起きている惨状に泣き出す講習生もいた。


 四苦八苦しながらも、涙目で必死にイゾウは魔物の身体を切り刻み続けた。それを3日ほど続けた4日目、鳥型の魔物を解体していたイゾウは突然、嫌悪感よりも食欲が勝った。

 切り分けた鳥型の魔物の部位を並べていたところ、急に焼き鳥が思い浮かんだ。


 イゾウの脳内には肉が焼かれ、タレが焦げる音が響き、鼻の奥に焦げた醤油の匂いが広がった。

自然と口の中には涎が溢れてくる。

 生来肉料理好きのイゾウだ。嫌悪感を感じていた魔物の身体が食材にしか見えなくなった。


 これを機会に魔物の解体を克服し、逆に解体に興味を持った。

人間、興味を持った事に対しては学習意欲は高くなる。

 解体講習に積極的に取り組み、教官から高評価を得るが、解体を苦手として、ふて腐れながらただ参加している講習生から疎まれていった。



 そんな事は気にもせず、イゾウは焼き鳥を思い浮かべながら積極的に解体していく。

筋トレ好きだったイゾウはむね肉ばかり食べていた。それは別に苦ではなく、既に慣れてルーティーンと化している。今世でも同じ事をしようとむね肉を確保するために、まずは自分で見極められるように努力していた。

 店で食べる焼き鳥ではあまりむね肉は使わない。あったとしても、普段食べていれば店でまでは頼まない。

 イゾウは外で焼き鳥を食べる時は色んな部位を食べ比べる事を好んだ。

焼けたタレもいい。塩で食べるのもいい。どちらも大好きだ、そこに拘りは無い。どちらも好き、それで良いじゃ無いか。

 気分で好きに注文すれば良い。人に好みを押しつけてはいけない。



 もも肉そしてねぎま。ねぎが挟んであるだけで食感がだいぶ違う。葱じゃ無くニンニクを挟んでいる店もある。

 葱なんて普段は好んで食わないが焼き鳥だと美味しく感じるから不思議だ。


 つくね。軟骨を叩いて混ぜてあるのが好みだった。あー腹減った。ビール飲みたい。

美味しい店のつくねは本当に癖になる。


 ぼんじりは尻の肉。

 ハツは心臓。

 レバーは肝臓。

 せせりは首の周りの肉。


何が置いてあるかは店にもよる。好きな味を見つけて好きに食えばいい。


カリカリに焼かれた皮や、軟骨もビールが進む。


出羽先や出羽元も嫌いじゃ無い。

カリカリに焼いて塩を振った出羽は食欲を刺激したし、皮はコラーゲンたっぷりだ。


 そんなことを考えながらイゾウは解体に励み、気がつけば解体が苦にならなくなった。

当面の問題はあの焼き鳥の焼き台の作り方だろうか、なんて考える余裕もあった。


 イゾウが作りたいと思うのは当然、焼き鳥だけでは収まらない。

魔物の肉が食えるなら豚や鳥だけでなく、牛だろう。牛肉といったらステーキだ、高級肉のような霜降りに拘らなければステーキは難易度が低い。

 異世界といったらカレーは鉄板、米が無いと話にならないが、香辛料も大事だ。ガラムマサラの区別なんてつくかどうか。区別がつかなくても香辛料があれば料理の幅が一気に広がる。

 魔物とは言え目の前には鳥肉。唐揚げ、チキン南蛮、揚げ物が食べたきゃ植物油が欲しい。

 オークが食えるんだから豚肉もある。とんかつ、生姜焼き、角煮。トンテキでもいいし、薄切りにして焼くだけでイケる。

 イゾウの思考を食欲が支配すれば身体も自然とその影響を受けた。

解体は順調に覚えていった。





 夜に行われる座学講習も5日目に無事〝認可〟を得た。

元々計算は問題の無い。苦労したのは慣れない異世界の文字だ。


 数を書かなければ文字は覚えられないと判断したイゾウは、師匠に泣きつき縁の欠けた皿を1つ手に入れて貰った。

そこに砂を流し入れ、時間を見つけては文字の書き取りの練習を繰り返した。

 これを繰り返し、無事に初級の読み書きは〝認可〟を得る。


 あくまでも出来るようになったのは基礎のさらに基礎、文字のさわりの読み書きだけだ。

どちらかというと本や文献を読んで情報を得たいと考えていたイゾウは続けて座学の中級に進む。


 たかったのだが、残念な事にこれには師匠たちからストップが掛かった。

以降、夜の座学の時間には、極道コンビ師匠との触れあい(訓練)の時間に当てられる。

 曰く、時間が取れなくなる、らしい。教わる身でそう言われれば引き下がらざるを得ない。

掘り下げて文字を学ぶのは講習を終えてから独自でやることになる。


 そして6日目からは教官を相手に実戦形式の稽古が始まった。

イゾウが座学を終えるこのときを師匠たちは待ち望んでいた。


実戦形式の稽古を行う事で、ただ講習を受けている者とイゾウの間に大きな隔たりが出来る。


 参加している大半の講習生は、初心者講習にそこまで強さを求めていない。

強くなりたいという願望は胸にこそあれど、それを声に出して叫ばない者が多い。

 挫折し、妥協し、理由を作って諦める。もしくは最初からやらないことで格好をつけた。

そんな者たちは強さを追い求め、教官の無茶ぶりに答えるイゾウを馬鹿にすることで満足感を得ていた。


イゾウは特に反応しない。言われたらそのままにしてただ黙々と講習に励んでいた。

それが他の講習生を助長させていた。



メモ: 2019/04/05 武術講習を

剣術 槍術 斧術 短剣 棍・杖術 投擲 + 弓術   の7種 から


剣術 槍術 斧術 短剣 棍・杖術 投擲 無手格闘術 + 弓術 の8種に変更。


変わってないところは気づき次第直します。 8種が正解と言うことでm(__)m

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