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異世界(この世)は戦場、金と暴力が俺の実弾(武器)  作者: 木虎海人
 1章  初心者講習

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講習生たち② 勝ち気な優等生

分割しました。細かい所がおかしかったら直します。



 冒険者ギルドの主催する初心者講習、今回は特に当たりの回だと言われている。

特に男で才能の有る者が集まった。集まった面子を見て、教官をたちはそう思っている。

いつも通りならば女の講習生で目立つ者もいる。

 だが今回は運が悪い。千人に1人、1万人に1人という人材が147名の講習生の中に数人紛れているのだ。


2メートル超え、かつ動ける強魔力持ちの男が2人同時に参加するのは講習が始まって初めての事だ。

王都で期待の新星として注目されていた天才兵士が家庭の事情で冒険者になるという。

傭兵としてあちこちを流れていた辣腕のドワーフが新人として冒険者に登録した。

2代前の〝緑の大魔道〟の孫弟子が冒険者の登録に来た。


 事前にわかっているだけでこれだけの話があった。


そこに〝氷魔法〟の先天性才能(ギフト)持ちが加わる。有り難いことにそいつは冒険者ギルドの教官の弟子になる。


話題になるのは男の講習生ばかりである。



 これを面白く思わないのが、自分もやれると思っている一部の女性講習生たちだ。彼女たちは自分たちで勝手に格付けを始める。これはどこの世界でも変わらない。人が集まれば勝手に格差を主張するのだ。

 彼女たちは今回が特別に才能のある()が集まってしまった回だとは理解していない。

勝手な理由をつけては噂の男たち(彼ら)よりも上に、誰かをランキングしては、はしゃぐ。

 対立を、無自覚に煽りながら。


 真っ先に名前が上がったのは女性講習生の中で頭一つ抜けた運動神経を持ち、鍛錬に真摯に励んでいて、頭の回転も早く、魔法にも才能を見せ始めている赤い髪の女性だ。

名前を〝ビアンカ〟という。


 彼女は女性内の勝手にランキングで常にトップにいる。


 勝ち気な美少女、イゾウは彼女をそう評価していた。

彼女はイゾウの評価ではバランスの取れたかわいこちゃんである。

アイドルにでも為れそうなルックスとスタイルを持ち、キツく見えるがとても美人だ。 


 イゾウと彼女の間に接点は無い。

無いが故に見た目は良いと評しながら、イゾウから見る彼女は普通と評された。

 イゾウやユリウスに比べての話だ。実際に講習での達成速度は一段も二段も劣る。

ただしこれは彼らが規格外が故である。

 通常の講習回ならば彼女は間違い無くトップに入れた1人である。これはビアンカだけでなく他にも同じような被害者がいる。知らぬは運の悪い本人たちだけ。




 そんなビアンカの目標は勇者と呼ばれることだった。

幼い頃より高い運動能力でなんでも上手くこなしていた。

毎日毎夜、木剣を振り、己を磨いていた。


親も自身も平民で、いずれ家を出て冒険者になることは幼い頃より決めていた。



 村ではその整った美しい容姿のせいで多数の男に言い寄られた。

中には彼女を物にしようと力で組み伏せようとする男もいた。

身体能力と志が高く、鍛錬を怠らない、男に負けない力を持つ彼女はそれを力で跳ね返した。


 そんな生活の中で彼女はどんどん男が嫌いになった。

弱いくせに口だけの強さ、色欲に溺れた行動、薄っぺらい努力、朝やると言ったことを夜には投げ出しているような男を多数見てきた。

 美しく成長するにつれ、男を寄せ付けない鋭さも伴い、彼女には常に男の悪意のある視線が絶えなかった。



 彼女が、生まれ育った村で最後に叩きのめした男は村長の息子だ。

小さな村の権力者の息子。

村の中でならば、親の力で何でも思い通りになる事を理解して育った馬鹿息子だった。


 妻帯者の彼は、彼女に身体を差し出す事を求めてきた。

適当にいなしていたビアンカだがある夜、男は実力行使に出る。


 夜中に彼女の寝室に潜り込んできた30代の既婚者の男(馬鹿息子)を、自らに課していた訓練で使っていた木剣で叩きのめした。

 そしてその足で村を出る。見て見ぬ振りをした親を捨てて。

たった1人、駆けつけてくれ、泣いてくれた幼なじみの親友と共に。


 乗合馬車を乗り継ぎ、幾度となく追われ、女だけの旅路で危険な目にも合いながらこの街にたどり着く。





 ビアンカは講習をこなしていく中で話すようになった女の講習生に問われた。

「アレを見てどう思う? アナタならあの落ちこぼれに勝てる?」 と。


 アレとは毎朝の走り込みの後に行われる組手のことだ。講習生の中で評価の低いその落ちこぼれは、教官たち、特に武術を教える教官に可愛がられているのはビアンカも気づいていた。そしてそれを贔屓だと陰口を叩く者も少なくない。

 特に皆が不満に思っているのは、元勇者である教官長がその男にだけ自分で稽古をつける事だ。


 だったら自分にも、そう思っていた矢先、他の講習生何人かが「自分にも稽古をつけて欲しい」と教官長に直談判した。

 だが、走り込みが遅いことを理由に一切拒否された。

「せめてこやつより速く走り終えなければ話にならん。」そう元勇者は皆の前で言った。


 こやつと呼ばれた男は 一部に「落ちこぼれ」扱いされながらも、講習を受ける者の中で唯一フル装備で朝の走り込みを走っている。

 彼は日を追うごとに早く走るようになり、彼の前を走れる者はどんどん減っていった。

早く走れる者がいても装備を追加されるとあっという間に追いつけなくなった。

 フル装備で自分よりも遙かに早く走り終わる。ビアンカはそれが悔しくて、早く走れるようになって教官長に直訴するつもりでいた。

 「私はこの男より早く走り終えられます、だから自分にも稽古をつけて下さい」と。

だが追いつくどころか、自分の方が少ない装備で差が広がっている現実に気づいている。




 負けず嫌いな性格が見栄を張らせ「大した事ないでしょ、あんな奴、私なら余裕で勝てる」


そう返していた。


 それを聞いた近くの席に座っていた背の高い白金の髪の女講習生が憤慨して立ち上がった。


彼女の仲間が押さえなければ喧嘩になっていたかも知れない。

後で聞けば、あの男と一緒に講習前の準備をしていた仲間たちらしい。

男の事でそこまで怒る彼女のことも面白くなかった。



 それ以降、2人は何かと張り合うようになる。

どちらも互いに意識し、だがそれは良い関係ではなかった。少なくとも確実に嫌われている、ビアンカはそう思っていたし、自分もだからその女講習生が好きではなかった。


 女講習生の名前はセレナ。傍から見れば顔良し、プロポーション良しの美少女、ビアンカのコンプレックスを刺激する容姿をしていた事も大きい。

 170センチのビアンカが見上げるくらいセレナは背が高い。男と並んでも見下ろされる事の少ないセレナが羨ましかった。

 ビアンカの出るとこが出た凹凸のある身体よりもさらに大きく実ったセレナの身体は、ビアンカを何とも悔しい気持ちにさせた。

 自分と同じように親友と共に行動し、時に親友を庇うセレナの姿は自分と被って見える事もあった。


 だからこそ負けたくなかった。

贔屓目無くみても女子の中では自分たちが最も速く講習を進んでいるとビアンカは思っていた。

このまま彼女と張り合いながら成長していくのなら、それならそれで悪くないと思っていた。

 村の中で競い合うような存在はいなかったから、もしかしたら楽しかったのかも知れない。



 そんなある日の夜、ビアンカはセレナを見かける。

宿泊している建物の外を伺っているその姿は、講習の時と違い少し浮かれた雰囲気があるのがすぐ分かった。

その様子が何故か面白くなかったビアンカは物陰から観察することにした。


 セレナはしばらく外を眺めていたが、外に何かを見つけて嬉しそうな顔で外に出て行った。

そして道の途中で壁に寄りかかり1人の男が通るのを待つ。


「よっ」

「よっ」


 互いを見つけて嬉しそうに声をかけ、2人は道を外れていく。ビアンカは反射的に後をつけた。

物陰に腰掛けて2人はただたわいも無い話をしていただけ。


 その姿に何故かビアンカは胸の奥を締め付けられるように感じた。

セレナの顔が恋をする乙女の顔だと気づいたから。

自分と競っている相手が男なんかに(うつつ)を抜かしているのが堪らなく不愉快だった。


 しばらく話して男が先に戻ると言う。

彼女はそれを少し名残惜しそうに見送った。

面白くは無かったがこれ以上は何もないと思い私も部屋に戻る。




 帰り道の途中、ビアンカは自分が通った道の横に、その男が立っていた事に気づく。通り過ぎた後にそこに立っていることに気づき、驚いて振り返った。

 暗闇に紛れるように立っていた男は、ビアンカが通り過ぎた場所にゆっくり歩き口を開く。ビアンカにとって、男は先に帰ったはずだった。


「誰かと思えば赤毛の美少女戦士さんか、覗きは趣味が悪いぞ」


「・・・・・」


まさか気づかれていたとは思わなかった。


「・・・いつから気づいてたの?」


「おまえ一瞬だけど俺のことを()()()()()()()だろ?赤く見えたからそれで気づいた。

今はそう見えないからあの時だけみたいだけど」


男の言うことは私にはわからない。


「・・・・・あんたが何を言ってるのかさっぱりわからないわ。どっかおかしいんじゃないの?」


「くくくっ・・・・まぁそうだよな、説明するのは面倒だからおかしいって事で構わないけど。

覗いている奴に気づいたら確認するだろ? なんで覗いていてたのか、聞いたら教えてくれるかな?」


「好奇心よ。2人が話してるのを見かけたから。あんたは私のこと、あの子から聞いていないの?」


「君なら俺に楽勝で勝てるってやつ?それなら知ってる。他にあるなら知らない」


「それで合ってるわよ、聞いてたのね」


「セレナからじゃないけど。別にそれなら俺は気にしてないからそんな身構えるなよ」


「・・・・・・それはどうゆう意味かしら。私なんて眼中に無いってこと?」


「いーや、勝負なんてやってみなければわからないだろ?

やらずに結果が分かるなら努力の全てが無意味だ。俺はいつも勝つつもりで戦うし、あんたが勝つつもりでいるのも理解出来る。

だからそういう発言を気にするつもりはないよ。

最もだからと言って、負けるつもりは微塵も無いけど」


「・・・・・・そう、なら良いわよ。こっちも気にしないから放っておいて」


「気分を害したか?」


「別に違うわよ、私は誰にも負けるつもりはないし、いつも勝つつもりでやっている。あんたにも負けるつもりは無い。あんたの言うとおりなだけ。だから謝らないから」


「俺は出来ればあんたとは争いたくは無いけど」


「それは無理。私はセレナに負けたくないし、あっちもも私に負けたくないでしょ。私はあんたにも絶対負けたくなくなったわ」


「俺としては美少女戦士とは勝ち負けより切磋琢磨して競い合いたいけどねぇ・・・・・・」


「彼女がいるのに他の女に美人とか・・・・・・あんたやっぱり最低・・・・・・節操ないわね」


「セレナとは付き合ってないよ? とてもとても残念だけど。

美人と言ったのは単なる主観だし。そう見えるから言っただけ、他意は無いよ」


「そう、どうでもいいわ。

もういいかしら?そろそろ寝たいの。寝不足はお肌の天敵だわ。あとその美少女戦士ってのやめなさい、なんか気分が悪いわ」


 最近異性()と話す機会があまり多く無かったビアンカは、この男とは普通に話せている自分に気づいた。講習に来てからは話しかけられても必要最低限のみで会話を打ち切っていた。

それで良いと思っていたし、別にそれを変えるつもりも無い。

なのに今日は長々と話してしまった。意識すると不愉快になり、なのでそろそろ打ち切りたくなった。


「くくくっ、そりゃ大問題だ。不愉快にして悪かった、次から気をつけよう。んじゃよい夢を、おやすみ」


男があっさりと会話を切り上げ、背を向けた事がビアンカは不愉快だった。


「ええ、おやすみなさい。

あとひとつ言っておくわ。私は男が嫌いなの、特に弱い男。

理解出来たら人前で話しかけてこないでね〝落ちこぼれ〟さん。せめてその情けない通り名を払拭してから強いことを言って欲しいものだわ」



そう背中越しに男に吐き捨てていた。

余裕綽々なその態度が不愉快で、せめてもの意趣返し。

男の返事は無かった。


ビアンカが数歩歩(すうほある)き振り返ると、男の姿はソコには無かった。


まるで夜の闇に包み込まれたように


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