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異世界(この世)は戦場、金と暴力が俺の実弾(武器)  作者: 木虎海人
 1章  初心者講習

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イケメンと臭い飯


「なかなか生きがいい、だが年寄りは大切にせい」

つい興奮して暴言を吐きながら踏み込んだ俺の腹を教官長の木剣が横凪ぐ。


「ブフォ・・・・・・」


突然の腹部の痛みに動きが止まり腕が勝手に下がる。


「打たれ強いとは聞いていたが・・・・・・もう少し強くいってもよさそうだな」


 そう言いながら木剣で頭をコツコツと叩かれた。


 俺の頭はスイカじゃないぞ。ちゃんと考えるだけの脳みそが入っている。

しかし強いのは解っていたがやはり手も足も出ないレベルだ。

さすがは元とはいえ勇者は伊達じゃない。


 だからといって適当に誤魔化す戦い方は俺好みでは無い。

勝てなくても勝つつもりでやる。勝つ方法を探りながらな。

諦めたらそこで敗北だと昔の偉い人も言っていた。

今は食らいつき、相手の引き出しを暴く。そしてそれを自分の引き出しにパクるのだ。

見て学んだ技術を覚えることは盗んだと言わない。

人はそれを学ぶという。


下がった腕に力を込め、下段から斜めに斬り上げる。


ガッ


木剣と木剣がぶつかり合う。


「ふむ・・・・・・腕力はなかなかだと聞いていたが60のじじいを押し戻せんのか、まだまだだ」


 力ずくで押し込もうとする俺の木剣を、教官長の木剣が受け止める。

俺は下段から上へ

教官長は上段から下へ

その違いはあれど体格で勝り、さらに神の寝床として若くなり強化されている俺が、もう現役を引退して久しいだろう教官長に力で押し込めないとは。


・・・・・・とんでもないじいさんだ。


 技で遥かに劣る俺に、力でも負けないところを見せているのは教官長の教育(やりかた)なのだろう。

まるで単純な腕力で出来ることなどたかがしれていると言われているようだ。


 今もその目がほら、押し込めなければ次はどうするんだ?」とでも問いかけてくるようなぎらぎらした眼をしている。じいさんの目つきじゃない。

 俺の知っている年寄りはもっと欲深い自分勝手な眼をしているか、死んだような目をしていた。


 この体勢から俺に使える剣術()は無い。

ここ数日で多少は他の教官から学んだとはいえ、鍔迫り合いからの出来ることは無い。小手先の技術など通じるわけがないだろう。

 であれば発想力、もしくは引き出しの多さで勝負だ。


 男は度胸、ここはいっぱつ身体でぶつかろう。


 交差した剣を支点に身体を回し、下段蹴り、いわゆるローキックを放った。

強化された下半身の脚力は腕力の比では無い。

 元勇者とはいえ、年寄りの太ももに蹴りを叩き込めば悶絶間違い無しだ。

ローのカットは知らないと難しい、少しは効くだろう。

 下段蹴りは割りと近年の技術だ。

甘くみると死ねる。

 空手を始めて最初の洗礼は大概下段攻めから始まる。

俺が通っていた空手道場は2階にあった。

洗礼を受けると帰りの階段を下りるだけが試練に変わる。

そーゆうことをするから道場生が続かないのだが、しらには道場の経営者だけだ。

ヤルは奴は自分もやられたから喜んでやる。


 蹴りは今まで他の教官には使わ(見せ)なかった。

師匠になる教官長になら、少し自分の引き出しを見せておくのも良いだろう。


 そう意気込んで放った下段蹴りだったが、蹴りが届く前に支点にした剣から力が抜け俺の身体が前に流れた。

そこへ何故か後ろに現れた教育長から頭部への一撃が襲いかかる。


 反射的に腕を上げてガードしてしまった。

ハイキックから頭をかばうように、頭を抱えるように上げた腕に木剣が叩き付けられ、激痛が走る。


「いってぇ、くっそあぶねぇ、・・・・・・食らったら死んでたんじゃ?」


「全く無茶な受け方をしおって。真剣なら腕が無い所だぞ」


「だが生きてますよ。頭に入ると死ねますって」


「元気な奴だな・・・・・・まぁよい。次だ、仕切り直すぞ」


「おぉ!」


 どうやらまだ解放してはくれないようだ。

自分を鼓舞するように声を上げて、前に出る。


 そして剣を振る。

その度に俺だけが傷つくのだが・・・・・・


 俺は(おとこ)らしさというモノを人生観として求めていない。

必要であれば逃げるし、不意討ちで片付くならそれで良い。

人生では勝つことより負けない事が大事だと思う。


 だからこそ訓練では逃げてはいけないと思う。

練習では下がらないと決めている。

 やり直せる、何度でも学び直せることは、積極的に挑戦していくことにする。



 朝飯の準備が出来るまでに30回近く地面にキスすることになった。

それも熱烈で強烈なやつだ。

それでも俺が訓練を投げ出す事は無かった。

教官長はそんな俺を満足そうに見下ろしていたが、口元だけ薄ら笑っているのは分かった。


「教官長、そろそろ朝食の支度が調ったようで」


 教官の1人が声を掛ける。

どうやらこの激しい時間は終わりが来たらしい。

普段よりも凄く長く感じた。


「残念じゃなイゾウ、儂はせっかく身体が温まってきたとこだったが。

ふむ・・・・・・そうだな、明日から砂袋を二つ増やせ。

この訓練は鎧を全部着けて砂袋を四つ持つ事でフル装備だ。早めに慣れておけ。

明日からは今日よりも早く走り切れ、そうすればも少し訓練に時間を割ける」


 教官長は倒れた俺に近付き、俺にのみ聞こえるように言っている、つもりなのだろう。

だがそれは周囲で様子を見ていた教官たちもちゃんと聞こえていた。

さすがにそれは無茶だと教官たちも思っやようで、なんとも渋い顔をしていた。


 だろうなぁ、今も結構砂袋背負って走るのは辛いのに。


「御意」


だが、師に言われたら、弟子に否などと答える事は出来ないのだよ。


「ほほほ、言いきりおったのう。なんじゃ今日まで手を抜いておったのか?」


「まさか・・・・・・やる前に出来ませんと俺は答えたくないだけです。

出来ない事を言いつけるとは思ってないですしね。」


「そうか・・・・・・

ま、すぐにとは言わんからなるべく早く走れるようになり、なるべく訓練できる時間を作るようにな・・・・・・」


 誰も何も言わないが俺を見る教官たちの視線が生暖かいものだった。

当然無理難題なんだろよね、フル装備で今より早く走るなんて。







 朝食を食べる。


 今日から食べ終わった者から退室して良いと言われた。

今までは全員が食事が終わるまで食堂から出られなかったのだが。

それだけ講習生内でも差が出来てきているのだろう。


 俺は教官長が光の中級回復魔法とやらを使えたので残念ながら治療院には行けなかったが、怪我自体は全く残らなかった。だが、体感的に体力と血液が随分削られた感じがする。

 失った成分を補充するために肉を食いまくった。食って食って食いまくり、早々に食堂から退室した。

 その数計7皿。俺の中でも自己新記録更新だ。



 自室に戻るも当然誰もいないので、この時間を使って身だしなみを整えることにした。

鏡の無い世界で身だしなみを整えるのはかなり難しい。

 だが、だからと言って気にしないのはどうかと思う。

 顔を洗ったり出来る洗面用の部屋は一応建屋内にはある。洗面所と呼んでいいのか微妙な場所だが、あるという事は整えろということだろ思う。

差し当たって、伸びまくっている髪の毛をどうにかしたいと考えた。


 死ぬ直前の時期、俺は髪型は短髪で整えていた。

少し白髪も混じりだしてきて、伸ばしているのも面倒になっていた。

短ければ染めるのも手間にならない。


 子供とも定期的に一緒に風呂に入り、スポーツジムのプールで泳ぎ、時間があればサウナで汗を流すという生活を好んでしていたので、ドライヤーに時間を割かれるのが億劫だったのが最大の理由だ。

 増えてきてはいたが、必ずドライヤーが備え付けられている訳でもなく、無い所も多かったし、あっても風力が弱くて乾きが悪く、苛々することも多多あったからだ。

 タオルドライですぐ乾き、ドライヤーを少し当てれば乾く短髪の生活は快適だ。

忙しいとドライヤーの時間さえ面倒になる。

それだけ格好に気にしなくなっていたのだろう。


 対して若い頃は頑張って伸ばしていた。

常に女の目を気にしていた。精一杯お洒落をしていたつもりだった。


 実際はそんなに見られていないのにね。


 俺が再生したのその若い頃の姿のようだ。

短かった筈の髪は、前髪は眼に掛かり、横は耳を隠すように超えている。

数年ぶりの感覚だ。

 鏡と整髪料でもあれば、頑張って整えちゃっても良かった。


 長さは頑張れば結わけなくも無いくらい。

なんとかだ。頑張って引っ張れば!だ、禿げるわ。

禿げるのはもう少し先でいい。前世でも少し薄毛が気になりだしていた。

結わくには少し短い、正確には足りない。


 この髪型をどうにかしたいと考えていた。

訓練をするのに、視界を塞ぐ邪魔者でしかなかった。

布でも巻けば誤魔化せはするが根本的な解決にはならないだろう。

 ぶっ飛ばされるたびに布はほどけて落ちるし、解けて結わき直す手間も惜しい。

シャワーを浴びれても、ドライヤーが無い世界だ、整髪料もない。

ならば短い方が楽でいい。



 問題は短く整える場が無いことだ。

バリカンでもあれば丸めて坊主でも構わないが、そんな上等な物はもっと無い。

 それどころかハサミも無い。


 傷顔の教官が短く整えているのでどこで整髪しているのか聞いた所、第2区画に床屋があるらしい。

きっとその店はヤクザ御用達のパンチパーマとか得意なところだな。

切ったら勝手にそり込み入れられたりしてな。

 ちなみに一緒にいたスキンヘッドの方に「儂には聞かないのか?」と絡まれた。

聞けるわけが無いつーの。

ヤクザジョーク、返事に困るわ。 

何と答えたのかは内緒だ。思いっきり殴られたとだけ・・・・・・うん。



 第2区画にはまだ入れない。講習後に冒険者のランクを上げる必要がある。


 他に手伝いのときに極道コンビと共に仕事をしていた若い教官が中分けのサラサラヘアーで俺より長い髪型だったのでその人にもどうしてるのか聞いてみた。

若い分、穴場の店とか安く済む方法を知っているかも知れないと期待してだ。



「髪の毛? すまないな、私は昔から女房が切ってくれるんだ」


と返された。つい、


「チッ、リア充死ねよ!」


 と言ってしまいヘッドロックをかけられた。

 死ねに反応したようで、リア充を説明して謝るまで離してもらえなかった。

強化された腕力でロックを切って逃げられるかと思ったのだが甘かった。

ここの教官は若くても甘くはなかった。


 切るのは後にするにせよ、手入れくらいはしておきたい、洗面所に向かった。

ベタベタで櫛も通らない髪なんて御免だ。

手櫛ででも少し整えておけば違う。

 もう少し伸ばして、とりあえず邪魔にならないように結わくのが今の所金もかからない最善手だと思う。

紐くらいならなんとか手に入る。




 洗面所に入ると、ブロンドの長髪が揺れていた。

セレナの白金とは違う黄金色に輝く金髪だ。


 肩を超える長い髪を、優雅に手櫛で掻き分けながら髭を剃っている。

髭を剃っているだけなのに、無駄に格好良い。

というか色男だ。

男の俺から見ても物凄い、かなりの色男。

それがT字の髭剃りなどないこの世界で、ナイフを使って上手く顎の下をあたっていた。


 こいつスゲー絵になる男だな、とか考えてしまった。

髭を剃る姿で絵になるとかどんな俳優だよ、と俺の僻み根性を刺激してくれる。



 この男の名はユリウス。

180センチの俺が少し見上げる高い身長で、おそらく185センチほど。

ゴツい体躯では無く、女性受けしそうな細身のシルエットをしている。

そのしなやかな身体はよく鍛えられ、まるで猫科の大型獣のよう。

サラサラの長髪を伴う整った顔は貴公子然としている。


 俺はこいつが王子様だと言われても納得する。

たたずまいで鍛えられているのが分かる。

なのに優雅で品があり、育ちの良さも匂わせている。


 講習前日にえーたから聞いた王都から来たという元兵士である。

その中でも特に噂になる男。特に女子。


 直接聞いた話はえーたからだけだが、その後も食堂やあちこちで話題に上がっていたために、話し相手に乏しい俺の耳にも聞こえている。

盗み聞いたわけでは無い。勝手に聞こえてくるのだ。

女からは容姿と将来性を、男からはその実力と秘めた能力の高さを、相当評価されている男だ。


そんな男を見つめてしまい。

ほーら、やっぱり。

目が合ってしまい、お互い固まってしまった。

 そりゃー洗面所で男に見つめられたら困るわな。

断っておくが俺はそっちの気はない。

ホモの気が無い人の事をノンケと言うらしい。昔誰かに聞いた。

俺はそれだと主張したい。



「あ、あー・・・・・・っと失礼。

髭剃り中?

俺も使いたいんだけど、横、いいかな?」


 慌てて言葉を絞り出す。

別に洗面用に置かれている水瓶は複数ある。

彼に断る必要は無く、他のを勝手に使えばいいだけの話だ。

だが卑屈な俺の心はイケメンに屈したためについ声を掛けてしまった。


「あ、ああどうぞ。悪いね、髭。後でちゃんと片付けるからさ」


「ん、大丈夫」


そういってお互いに少し離れたところで黙々と作業に戻る。

むしろ髭の処理の話を振られても困る。

後処理は当然だろう。


 濡れた手櫛で伸びた髪を後ろに流していく。ついでに顔も洗っておいた。

指通りすら無くなると、髪がベタついてさらに重くなり、もっと邪魔になるだろう。

邪魔も問題だし、何よりも男は清潔感だ。

『最低限の清潔感』何てよく言うが、女に相手にされたいなら『清潔感は最大限』だ。

お洒落は出来る範囲で精一杯、それで良いと思うが、

清潔感が最低限、は絶対駄目だと思う。

それって汚いと紙一重だからな。

紙一重という事は、何かあればすぐ汚い方に分類される。気をつけてくれ。


 しかし髭か。若返ってすっかり忘れていた。

昔は毎朝剃っていたっけ。

 今じゃまったく生えてこないから気にせず過ごしていた。

前世ならこれだけほっといたら、その無精髭どうにかしてこいって誰かしらに言われるくらいは放置している。

だが今の所、全く問題無い。触っても生えていない。


 この身体もそのうち生えてくるんだろうか。そうなると髭剃りもいる。

カミソリくらいなら作れなくも無いのか?

どうせならT字が欲しい。I字だと少し怖い。


 しかしイケメンも髭が生えるんだな。

髭のあるイケメンは見たことあるが、髭を剃るイケメンは初めて見た。

そう思ってそのイケメンを見ていたら、またも眼があってしまった。


「どうかした?」


「ああっと、いや失礼。

そういや俺まだ髭生えてこないな~って思って、つい見てしまって。すいません」


処理中に見られると気になるよね。

集中出来ないよね。すまんこってす。


「なるほど。そんなに濃くないのかな?それはそれで羨ましいよ。

いくつなの?イゾウくん・・・・・・だよね?」


[・・・・・・イゾウですけど。自己紹介、してないですよね?何故に知ってます?

俺は18歳です。そちらは?

ユリウスさん・・・・・・ですよね?]


「ふっ、そうだね、お互い自己紹介してなかったね。

でもお互いに、互いの事は知っていた、か。フフッ

今朝の教官長の件で一気にみんなに知れたようだけど、僕はその前から知っていた。

事前の検査で身体能力1位。魔力が3位。 総合で圧倒的 1位だって教官から聞かされてたんだ」


「・・・・・・ちなみにその教官ってどんな人ですか?」


「あ、敬語は止めて欲しい。同い年なんだ、僕も18歳だよ。

教官はスキンヘッドで髭があって、声の大きい、教官?」


 ふむ、同い年ときたか・・・・・・

兵士って何歳からなれるんだろうな、どうでもいいけど。

それよりあのガハハ髭めぇ

なんで吹聴して回ってんだよ。弟子になるの早まったか?くそっ


「ふーむ、同い年か。なるほど、ならお互いに、と言うことでなら敬語は止めますよ。

お互いに、ならば。

知っているのは手伝いで早くから入ってたので、王都から兵士の人が来るって話は聞いてたんですよ。で、申し込みの時に見てますんで」


「僕も覚えてる、背の高い人と一緒にいたよね。

で、お互いに、は了承するよ。これからよろしく」


「よろしく。イゾウでいいです、いいよ。

見回りに配属されてたから、王都から来た人たちは目立つからすぐわかったよ」


「じゃー僕もユリウス、で。

イゾウく、イゾウも目立ってるよ。食事の時も朝の走り込みも、ね」


「だよね、俺としちゃあんまり悪目立ちしたくないだけど」


「フフッ、違いない。僕もだね」


そう言って2人で何故か笑いあった。

思っていたよりも感じの良い男だ。


「イゾウく、イゾウは髪の手入れ?」


「眼に入るから鬱陶しくてさ。

出来れば切りたいんだけど金が無いんで、とりあえずなんとかならないかなと」


「なるほど、散髪屋で切ると高いからね。僕もバッサリ切りたいんだけどなかなか行けないよ」


「え!? 伸ばしてるんじゃ無いんで、無いの?」


 どうも言葉使いが難しい。

というのも同い年に見えないのだ。

日本人基準に考えると彼はちょっと老けている。

大人びているとも言えるが、イケメンだから老けていると言ってしまおう。


「伸ばしてるといえばそうかな。でも、ちょっと違うんだ。

実は僕はあんまり裕福な方じゃ無くてね。

あ、勘違いしないで欲しいんだけど、兵士の時はそれなりにもらえてはいたんだけど、事情があって髪を切るお金を節約していたらここまで伸びてしまったんだ。

本心では出来ればもう少し短く整えたいと思っているよ」


 イケメンとロン毛の組み合わせは鉄板だ。

なのに、このイケメンは何を言っているのだろうか?

雰囲気イケメンと違って、目の前のこの男は正統派の超色男だ。

ロン毛で良いと思う。


 しかし王都で兵士はかなり良い職だと聞いていたが。

髪を切る代金すら節約しなければいけないとは、ビックリだ。

所詮この世はブラックで、下っ端は搾取される定めなのだろうか。


「ユリウスは兵士としても強かったと聞いている。

散髪代くらいすぐ稼げるようになりますよ」


 軽く持ち上げておく。

あくまでも初対面ゆえの社交辞令だ。

冒険者としては負けても、お金を稼ぐ方向で負ける気はない。

むしろ冒険者としては負けてもいいから、危険な任務はこのイケメンとその愉快な仲間たちに押しつけたい。

 適度に仲良くしといて、危険な任務でこいつが死んだら、こいつの廻りにいるであろう女どもと共に泣いて悲しもう。

そこから連帯感を高めてその女たちを美味しくいただいてやる。


 イケメンは()だ。

存在(いる)だけで失恋を振りまく疫病とも言える。

人の恋愛を刈り取る死神とも言える。

それがイケメンだ。


「イゾウくんも強そうだ」


まさかのおべっか返しときた。このイケメンやりおる。


「朝、見てたでしょ? あんだけ一方的にやられる程度ですから。

大したことないですよ」


敬語はボチボチなくす方向で慣らしていこう。

混じる。


「そんなこと無いよ! 相手は〝順滅〟の元勇者。

あの人を相手に戦える相手なんて王都にも何人もいないさ。そんな勇者に眼を掛けられいる。それだけでイゾウくんが期待されていることが解るよ」


 俺の自嘲にユリウスが強く食いついてきた。

何故かそのまま教官長の勇者時代の武勇伝について熱く語りはじめた。


 どうもユリウスも勇者に憧れを抱いているタイプらしい。


 勇者とか俺に良いイメージは無いんだが。

魔王の城に乗り込んで魔王を倒すとか、ヤクザの世界でいうところの鉄砲玉だろうに。

 死んでも良い、使い捨ての駒の一つに過ぎない。

大事な存在なら絶対そんなことはさせないのだよ。

 ちやほやされるのは、良い気分で相手に突っ込ませるための方便だと思っている。


 まぁ元とはいえそんな勇者さまの弟子になっちゃったんだけどね。

俺もいつか


「どこどこの誰々殺してこい、組織()のために。  なぁーに数年臭い飯を食う辛抱だ。戻ってきたら幹部の椅子(勇者の称号)が待っているゾ」


とか言われちゃうのかね。

 怖い怖い。

 言われない方法と、言われたらどこに逃げるかも調べておく必要があるかもな。

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