不撓不屈の精神で
『 氷の眼 (劣化)』
氷の眼、こおりのめだ。
アイスアイとでも読むのだろうか。
その存在も謎だが、気になるのは(劣化)の二文字。
別にスキルとして得られるのならば (劣化) である必要は無いと思う。
むしろ、極上とか特上とか贅沢を言わないので、普通のが欲しい。
普通がいい、普通が1番。
劣化の文字を視線で強くなぞると、詳細が出た。
『 氷の眼 (劣化)
古代の装置に連なる道具に触れたことで、身体の中に眠る氷の神の能力が強制的に一部が具現化された。
眼の所持者の見聞に強く影響され、表示される。
自分のスキルのみ確認、振り分けが可能。
自身に対し殺意を持つ者を赤く映す。殺意が濃いほど濃い赤で表示される。 』
・・・・
・・・・・
・・・・・・
おお・・・・・・
やべぇそのまま寝そうになった。
人間理解不能なことに直面すると脳みそが拒否反応を起こすんだな・・・・・・
あやうくそのまま寝てしまうところだった。
明日も早いからそれはそれで悪くない。だが自分の身に起きていることくらいは把握しておきたい。
寝るのはその後だ。
なんか一気にかなり眠くなったけど。
えーと、俺は死んだ。
死んだけど氷の神さまの寝床になる条件を飲んで、新しい世界で再生してもらった。
つまり俺の中で氷の神さまは寝ている。
此処までは良い。分かっている。
あの黒い石の装置を触ったことで、俺の中で眠っている氷の神の能力の一部が、強制的に表に出てきた・・・・・・?
能力のみ、それも眼に・・・・・・
だから眼から血を出して倒れたわけか・・・・・・
すげー痛かった・・・・・・
それにしても何で眼なのか、だ。
こうゆう場合普通・・・・・・・・・・・・・
うん、眼でいいんじゃないかな。
よく考えたら眼が1番恩恵有ると思うわ。考え無しに悪態ついてすいませんでした。
感謝しておりますです神様。文句言ってすいませんでした。
戦う者にとって視力って重要だ。
これ後々強化して、動体視力アップとか出来ないかな?
極道コンビも治療院の人たちも特に眼を見て問題ないと言っていたし、特に見た目は変わっていないと思う。
ならば問題有るまい。
オッドアイも憧れなくはないが、黒目と他の色というのもまた微妙だ。
普通でいい。
眼ではなく、仮に手とか足とかに神の能力とやらが宿ったとして、そこまで便利になるかどうか微妙だ。
手から魔法とかなら有りだけど、魔法は魔法で有る世界だし。
俺が触ると女が発情する能力とかなら大歓迎だが。
俺に宿っているのは氷の神さまだから、発情とは関係ないから厳しいかなー。
むしろ発情して興奮した女性が冷やされて冷静になりそうだ。
手に神の力が具現化するのは無しの方向でお願いします。
それよりも えーーーーーっとそう、性能だ。そっちを気にしよう。
・表示方法は所持者の見聞に強く影響される
とあるから所持者、つまり俺。
俺の見識にそった表示方法で表されていると。
この表示方法はどっかで見たことが有る気がする。なんかのゲームの画面に似ている。
だがいちいちクリアーしたゲームなんて細部まで覚えていない。
レベルステスキルのある世界の表示方法など、どれも大して変わらないというのが俺の見解だ。見やすい見にくい好みはあるだろうが。
おまえは今までクリアーした ゲームの数を覚えているか?
世の中には数えたり記録したりしている奴はいそうだけど。
終わったら次に行く派だぞ、俺。
そもそもRPGなんて説明書やチュートリアルを飛ばしても、大概なんとでも出来るという思考の持ち主だ。
で、後で見落としに気がついて攻略サイトを漁ってやり直すまでがワンセットだ。
・自分のスキルのみ確認、振り分けが可能。
確認は今の現状だろう。
視点を合わせるのが難しかったがなんとか出来ている。
今は集中してやっと見える程度だが、慣れればそのうち動きながらでも合わせられるかもしれない。要練習だ。
振り分けるが分からないが、言葉面は分かる。
現状は出来ない。
視界の中に0という欄がいくつかあるのでそこが変化したら出来るのだと思う。
その時に変化する欄がそのポイントだ。
まずはそのポイントを増やす方法をあたる必要がある。
こまめに確認する必要がある。
・殺意を持っている者を赤く映す
部屋で寝ている奴らを見ても誰も赤く映っていない。
少なくとも同室の奴らには殺意をもたれていないということになる。
昨日初めて会った奴らに既に殺したいほど憎まれてたら、凹むところだった。全く関わっていないのにそれってどうなの?とりあえずそれは無かった。
こればっかりは殺意を持つ奴に会ってみないと分からないか。
眼を痛めた後に、会った奴の中には赤く映る奴はいなかった。
いまのところは誰からも殺すほどは憎まれてはいない、ということで良いだろう。
冷たい視線は時々感じるけど。
後は空欄がいくつかある。スキルにもあるし、他の項目として空欄もある。
気に入ったゲームはやり尽くす。そういうプレイが好きな俺としては全部埋めたくなる。
そのあと禄に覚えてないから本当にゲームって(俺には)無駄な時間だ。
どちらにしろ最初は埋められるところをコツコツ埋めていくしか無い。テストと同じだ。
取れるところで点を取って稼ぐのだ。
(劣化) 以外の文字をなぞっても詳細が出るところは他に無かった。
このスキルが(劣化)だから (劣化)のところしか見られないのかもしれない。
とするといつかは劣化じゃなくなるスキルを取れる可能性がある。
もっとも俺の認識では劣化した物は取り替えるしかないんだよね。日頃の手入れこそが重要です。劣化させたらアウトなのだ。
主に設備関係機械関係。
騙し騙しやってもそのうち壊れるだけだし。
眼は設備機械と違って劣化の後にも再び成長することを祈ろう。
最後に触れてはいけないものに触れておく。
眠いからそろそろ意識が落ちる。現実逃避だ。
スキル欄の裏ページとでもいうページがあった。
二枚目とも言えるが、この項目だけ独立しているのが怪しい。
・スキル 神の御加護シリーズ と書いてあって意味が分からない。
『 神の見えざる手 』
加護を与えた者の目的に沿って行動している限り、幸運値が常に少し上昇する。
経済、相場に思わぬ方向で有利に働くことがある。 このスキルは他のスキルにも影響を与える。
『 神味噌汁 』
どんな行いをしようとも50%の者には必ず悪く評価される。
代わりに、ごく一部の者には高く評価される。
『 不撓不屈 』
女性に本気で求められた場合120%の状態で復活する。
男性に本気で求められた場合、相手の本気度に比例して〝凶暴化〟する。
生前欲しいと最も強く願った強さを神の御加護により具現化されたスキル。
とある。
もう何も考えれないので今日は寝るよ。
俺、生前何を求めてたんでしょうかね・・・自分がよく分からなくなった。
煩悩じゃねーか! そこをスキルにすんじゃねーよ!
もっとこう、さ。 戦闘に左右してレベルあげしやすくなるスキルはねーのか。
『経験値二倍』とか『戦闘力二倍』とかさ『種族特効』とかでもいいぞ。
『何とか耐性』とかさ、考えれば色々あるじゃん?
どうして戦闘に関係無い望みを優先しちゃうかな・・・
なんか一気に疲れが出たので今日は寝る。おやすみなさい。
翌朝、いつも通り起こされてランニングをする。
この辺り俺はとっくに諦めがついているのだが、講習生の中にはまだまだ不満な態度が見える。
足なんて速くても冒険者はやれないとか、走るのが上手くても冒険者として成功するわけじゃ無いとか。
多分それを聞いたら教官は「文句言う事だけが一人前でも冒険者として一人前にはなれるわけじゃない。」と言うと思う。ついでに殴られる。
体罰上等な世界だし。
文句を言っているのは大概走りきれない奴らだ。
出来ない事を馬鹿らしいことだと切って捨てるのは簡単だ、だけどそれはどうかと思う。
少なくとも俺はラントレには意味があると思うし、愚痴を聞いているとイライラする。
関わりたくもないのでさっさと先頭で走る。
だが今日もまた砂袋が増やされた。
リュックサックを背負わされ、その中に勝手に放り込まれる。
おかげで追い抜かされるようになった。
俺より先に走り終える奴もちらほら出てきたよ。
別に順位なんてどうでもいいのだが、おかげで俺以外にも砂袋を担がされる奴もちらほら出てきた。これは気分が良い。
はっはー、ざまーみろ。
切磋琢磨する同期の仲間だ、共に頑張ろうじゃないか。
話したこともない仲間たちよ、全員砂袋を背負わされやがれ。
砂袋を背負いつつも、かなり早い順いで走り終えて、どyされないうちに筋トレでもしようと場所を探していると、木剣を持つ教官長と目が合った。
道を塞ぐようにいきなり俺の前に現れた。
音をたてずに現れるのは止めて欲しい。心臓に悪い。
教官長が朝のマラソンの時間に校庭型訓練所に来るのは珍しい。今までは無かった。
「さっそくだがやるとしようか。儂はこの時間くらいしか時間が融通利かなくてな」
そういって木剣を一本俺に投げ渡して来る。
さすが元勇者、時と場所は選ばないようだ。
他の講習生たちがまだ走ってるすぐ側なんですけどねここ・・・・・・
できれば人目の無いところでやりたかった。
木剣を構えて完全に戦闘態勢に入ってしまったので無理だろうけど。
多分もう何を言っても聞いてはくれない気がする。
諦めて俺も木剣を構える。
格上を相手に訓練で待ちに徹するのは良く無いことだ。
胸を借りるときは自らがガンガン行くべきだ。
でないと練習にならない。
強い奴が弱い奴を一方的に攻撃しまくるのは練習とは呼べないと思う。
弱い奴から動いて、強い奴の動きに学ぶべきだ。
動作とはその一つ一つに意味がある。
俺は元勇者に向かって走り出した。
「うおおおおおおおお、死ねジジイ!!!」
教官長にして、元勇者、この場で最も偉い男に暴言を吐きながら。




