兄弟船
消灯時間が近くなった為にイゾウを、寝泊まりするギルド内の建物に送り届けた傷顔の教官が夜道を歩く。その足取りは酒が入っていても軽い。
先ほどまで4人が飲んでいた店に戻る最中だ。
イゾウは講習生、消灯時間があり、規則で1人で出歩けないが為に彼が連れて一度戻った。
戻り、今宵は3人で飲み直すつもりだ。
「ガハハハ戻ったか、兄弟」
「ああ、送り届けてきた。
鍵は他の教官たちで掛けておいてくれるそうだ。ゆっくり飲んで来てくれ、と言ってくれた」
「ガハハハ、そいつは気を遣わせちまったな」
話しながら傷顔の教官は、自分の酒を注文する。
イゾウが戻り、1人分だけ少し広くなった個室で3人は静かに杯を傾ける。
先ほどまでは儀式としての盃を交わすために、盃という名目のお椀を使い小樽の酒を皆で回し飲んでいた。
4人で樽を空にしたので、今は各々好きな酒に変えている。
とはいえオークとの戦いの防衛最終ライン、その一つ手前に位置する街だ。
そこまで酒の種類は揃わない。
酒どころか食料はもちろん衣類、医薬品まで諸々の物資が足りていない。
物資は優先して砦に送られてしまう。
だが弟子が出来たのだ。今日という良き日にし腰だけ好きな酒をし飲むくらいは許されるだろう。
3人は遠慮無く店主に注文をいれていく。
「しかし向こうから来るとは・・・・・・予定外であったな」
口を開いたのは教官長だ。頬はもうほんのり赤らんでいる。
酒はそこまで強くない。
だが今夜は少しペースが早い。
「でしたな。どうやって話を持って行こうか悩んでいたのが無駄でした。
まぁ、あいつらしいとも言えますよ兄者。
あんな奴ですから儂は弟子にしたかった」
「ガハハハ、違いない。
ふざけた奴ですが、いい加減な奴ではない。やっていけるでしょう」
「ふむ。 ま、儂も異存は無い。
最初は少し怯えていたようだが、最後にはすっかり落ち着いていた。
普通の講習生は儂らを相手にあれだけガバガバ酒は飲めぬだろう。
あれくらい図太い方が鍛えがいがある」
「確かにっ、図太い奴ですなガハハハッ」
豪快に笑う1人の怖面と笑い合う2人の怖面。
この3人の義兄弟、付き合いは教官長が勇者の時代に遡る。
勇者だった時代に彼に見いだされ、薫陶を受けたのがイゾウに極道コンビと呼ばれるこの2人の教官だった。
それぞれが教官長の若き日の姿に憧れた。
どちらも教官長を慕い、力になりたいと励んだ。
2人の仲が悪く見えていたのは2人の関係ではなく、周囲の問題だった。
当時別々のパーティに所属しており、2人が入ったことで伸びたパーティは自然とライバル関係になっていく。それは当人たちの意思を置き去りにしてしまったから。
2人の当時からの凶悪な人相が、じゃれあいを殺し合いに見せた。
切磋琢磨していた2人の関係は、周囲には泥沼の抗争のように見えていた。
その周囲を取り巻く人間関係が原因で2人は兄貴分の跡を追い切れなかったのだが、それを当人たちが知ることがない。
その凶悪な人相は、彼らが弟子を取る障害にもなっていた。
3人が正式に義兄弟の盃を交わしたのは、教官長が30代後半,2人が20代後半に差し掛かる頃だ。
過酷な勇者としての生活の中、傷つき、戦闘能力に陰りが見え始めていた頃、陰に日向にふたりが力になり、いつからか兄と弟のような関係になっていた。
以来、立場が変わっても、彼らの関係は変わっていない。
元勇者の弟子になる。
これはこの世界において出世コースの王道と言える道だ。
教官長が勇者の座を降り、冒険者ギルドに所属し教官の道を選んで以降、100を超える存在が弟子入りを望んだ。
だが今までに彼の弟子になった者はいなかった。
押しかけた者達が望んでいるのは教官長の弟子になることでは無い。
奴らは元勇者の弟子、という肩書きが欲しいだけの存在だ。
それに気づき、弟子は一切取らなかった。
教官という生活に必死だった為でもある。
強い者が、教える者として優秀だとは限らない。
指導する側に立場が変わり、納得する指導が出来るようになるには時間がかかった。
そして年月が経つと、弟分が自分を追って教官になった。
時間がいくら経っても、相変わらず寄って来るのは自分ではなく、(元)勇者の弟子になりたがる者だけだった。
そんな者たちは決まって、この3兄弟の弟子になることを条件に出されるとみな逃げていった。
「儂ももう歳だ。教官長という仕事もある。教える時間は多く取れない。
だが3人でならば・・・・・・目的がなんであろうと強くしてやることは出来た。
それを望んでくれるなら、弟子をとっても構わなかったのだがな・・・・・・」
気がつけば役職が付き、責任のある立場になった。
1人で弟子を見ることは難しくなっている。
故に、その方が良いだろうという考えでもあった。
「ガハハハッ、根性の無いやつらばかりでしたからな」
「全くだ。うんざりする」
それがイゾウは逆だ。
厳しい武術課の教官に、自ら教えを乞いに来る講習生は珍しい。
中でも特に厳しいと評判で、怖面揃いの中でもトップクラスに怖い2人は初めてだ。
それがとても愉快だった。
「しかもあやつ、儂の弟子になるのを嫌そうにしとったからな」
笑いながら教官長が言う。
「ガハハ、あいつは変わってますからな~。
今回も講習生の中にいるんですよ、勇者志望が。
イゾウはそいつに向かって、「自分は強くなりたいが、勇者になりたい訳ではない」と、言い切っておりました。
がッハッハッハ、勇者に成りたがるボンクラどもより、強くなりたがる。
その為に儂らに鍛えて欲しいと言いに来るんだから面白い奴ですよ、ガハハハハハハハハハハハ」
ガハハ髭教官はとても上機嫌で、強い酒を浴びるように飲んでいく。
「性能も保証します。腕力は講習生随一でした。
あの身体で既に2メーターの奴らを問題にしないほど津から強く。
足も速く、持久力もある。手伝いの中で毎日走りきっていたのは彼奴だけでした。
しかも初日からやりきりました。
魔力 Ⅶ は歴代講習生でもそうはいない。
物覚えも良く、頭も悪くない。
多少頑ななところもあるようですが、言えば分かる範囲ですから問題も無いでしょう」
「ガハハハ、戦闘技術はお粗末。
ですが、変に癖がついておらず、本人も熱心だから伸びる伸びる。
入所前鑑定で、『剣術』 『槍術』 得てましたからな。
初めてみたときは間違い無く初心者だった。
10日ほどで初級とはいえスキルを得られるのは大したもんだ」
傷顔の教官が言えば、ガハハ髭教官も言う。
講習生は入所前に簡単な適性検査を受けた。
その中でもイゾウは圧倒的な成績を取った。
元々筋は悪くないと眼を掛けていたのだが、そこまで抜けているとは教官の中でも誰も思ていなかった。
検査の項目はそこまで多く無く、道具も簡単だ。
だからこそ差が分かる。
まずは石上げ。
大きさの違う石を選び、それ持ち上げてみせるだけだ。
おおよその腕力をこれで判断する。
検査用に置いている中で、最大の大きさの石を純粋な身体能力だけで持ち上げたのはイゾウとシグベルと、もう1人いる2メーター越えの男が3人だけだった。
足の速さは、グランドを横切って走って測る。
端から端まで走るだけだが、これもイゾウはトップだった。
持久力は特に測っていない。 毎朝走るので今後もそれを見て教官たちが判断する。
毎日走りきっているので、イゾウの評価が低くなるはずが無かった。
この評価は転生し、肉体が強化されたおかげだが、生前の弛まぬ努力の成果でもある。
イゾウは身体能力以上に、身体の使い方が上手いというのが教官たちの一致する評価だ。
組手に参加していた教官たちみながそう評価している。
技を使ってみせると、それを上手く模倣して返してくる。
その日は物真似だが、しばらくするとキチンと自分の技のように扱うようになっている。
1人で相当努力しないと出来ないことだと教官たちは感心していた。
身体検査の他に、『魔力』 と 『スキル』の鑑定も受けた。
これも転生チートの肉体は相当で、おかげで騒ぎになった。
特に『魔力』
『魔力』高い者は、魔法が存在するこの世界でも珍しい。
元々手伝い期間に目を掛けていた極道コンビの2人は、そのせいでイゾウを弟子にする方向で急遽舵を切ることにした。
その為に教官長に相談していたところだった。
イゾウが現れたのはその最中である。
当人たちの困惑はイゾウが思っているよりもはるかに大きかった。
魔力の高い者は、武術課の教官である2人だけで無く、魔法課の教官が欲しがることは間違い無かった。
今まで弟子を取った事のない2人は、弟子を取り慣れている魔法課に持って行かれる前に確保したかった。
これは教官長や教官が強制できる話では無い。
当人の承諾が要る。
話の持って行き方次第でどう転ぶか分からない分、3人は悩んでいた。
そこへイゾウが自分から来たため、勢いで強引に話を進めたが、イゾウが反対せず素直に弟子収まった事に3兄弟も驚いている。
もし、嫌だと言われても無理強いは出来ない。
知らぬはイゾウだけだ。
だから急いで固めの盃を執り行っということもある。
イゾウの気が変わらぬうちに
他の教官が勧誘する前に
誰かに変な知恵を吹き込まれないように
今後も他の教官には注意が必要だ。
魔力が高いために魔法課の教官が干渉してくることは充分に考えられる。
徒弟に関しては、魔法課の教官の方が熱心だ。
対し武術課の教官はそこまで弟子には拘らない。
「あやつ、魔力の鑑定、まだ余裕があったのですよ・・・・・・」
傷顔の教官が声を潜めて言う。
「そんなになのか?」
驚いたのは教官長だ。
報告だけでは 『魔力 Ⅶ』という結果しか分からない。
「魔力を鑑定するあの装置は、手前から魔力を注ぎ、メーターが奥に倒れていきますよね?
イゾウが触れただけメーターが一気に奥へと振れましてね・・・・・・
あやつは驚いてすぐに手を離したのですよ。
なのに出ていた記録はⅦでしたからな・・・・・・」
「・・・・・・それを聞いたら魔法課の教官は放っておかぬだろうな」
魔力を測る魔道具は、魔力が少ない者でも注ぎやすいように2本のバーを握って行うような形に作られている。
そのバーを握ると装置がある程度の魔力を自動で魔力を感知し、半円型の重なった幌のロールが奥に倒れていく仕組みになっている。貴重な魔道具だ。
その幌が奥に倒れた回数で魔力を判定する。
かなり昔の肺活量を測る測定器のような形をしている。
手伝いの中でも最後の番号が割り振られたイゾウは、自分以前の検査で、ゆっくり奥に倒れていく様を見ていたために、握っただけで急に奥に触れ出した幌のメーターを見て焦り手を離してしまった。
最後のイゾウを横で見ていたのは付き添いだった極道コンビのみだ。
対してメーター側には他にも手伝いの講習生数人と、一部の教官が見ていた。
さすがにもう一度やらせるのは不自然だと判断し、これまで黙っていた。
この 『魔力 Ⅶ』 はかなり強い魔力を持っている数字だ。
147名の講習生でイゾウより上は 『魔力 Ⅷ』 が2名いるのみ。
『魔力 Ⅸ』 や 『魔力 Ⅹ』 などは教官たちさえ見たことが無いレベルだ。
対して 『魔力 Ⅶ』 はイゾウ以外にも6名いた。
だがどれも時間を掛けてじっくり魔力を注いだ結果だ。
イゾウのようにすぐに手を離した者はおそらくいない。
当人のイゾウが再検査を求めなかったので、そのことは伏せたまま終わらせている。
147名講習生がいて Ⅷが 2名 Ⅶ が7名 Ⅵですら15人いない。
この鑑定結果には0が無い。
なので真ん中より上の魔力を持つ者がその24名ということになる。
残りは全員 Ⅴ 以下だ。
Ⅲ以下が圧倒的に多い。
それでもこの結果を見て魔法課の教官は今回は当たり回だと喜んでいる。
魔力持ち、なかでも高い魔力を持つ者は少ない。
「魔力だけだったらまだいいですけどね。あいつはスキルもデタラメで・・・・・・」
スキルも測定している。
イゾウは前出のように、『剣術』 『槍術』を取っていた。
これは極道コンビが取れるなら取らせたいと仕込んでいたのだ。
それ故に、取れていた喜びは大きい。
シグベルも同じように鍛えていたが、取れたのは『剣術』のみだ。
これは元、木こりであり、斧に慣れていたために、持ち換えに手間取っていることが理由だ。
斬る剣術よりも、突く槍術をシグベルは苦手としている。
それでもかなり早い上達をしているので、剣術が取れているだけで充分である。
木こりで生計を立てていたシグベルは足腰も強く、何よりも体格が突出している。
まごう事なき有望株であると、教官だたちは見ている。
意外な所で良い拾いものをしたと2人は喜んでいた。
だがその喜びもすぐに消える事になった。
イゾウのスキルの表示欄に 『氷魔法』 という文字が暗転して載っていたからだ。
冒険者ギルドの所有する鑑定道具では、取得したスキルは白で表示される。
持っていないスキルは映らない。
映っているのに、色が違った。
「初めて見ましたが聞いたことがある。
先天性才能・・・・って奴ですか?」
傷顔の教官が教官長に問う。
「たまにいる、儂も見たことは殆どないが。
ということはまだ覚えていないのだろうが、間違いなく才能はあると言うことになるな」
「驚きました、儂らは初めて見ましたから」
「ガハハハ、儂らに立ち会わせなかった講習生に、もしかしたら持ってる奴がいたかも知れん。
だが隠しすのは自由、だが後にそれが日に当たったかどうかは分からん話だ。
そんな奴が過去に自力で解決できたかどうか」
スキルの検査は個別に行われる。
鑑定を行うこの装置は、普段は冒険者ギルドの本店にある。
初心者講習のためにわざわざ運んで来た。
これは魔力を測った魔道具と違い、〝秘宝〟という扱いだ。
ただし複製品である。
故にこの装置では〝スキル〟と〝年齢〟のみしか見えない。
本物は王都にあり、〝スキル〟〝年齢〟のみならず、もっと細かい事まで鑑定できる。
国が管理する〝古代秘宝〟となる。
複製品とはいえ、使用するのにコストがかかる。
そのため、冒険者ギルドでは講習生に、この最初の一回だけ無料で受けさせている。
以降、鑑定したい場合は本部に通い、費用を払って利用する。
『スキル』は冒険者に限らずとも、その者の生命線とも言える貴重な情報なので、教官が立ち会うか、1人で受けるかは講習生個人の意思に任されている。
立ち会った場合は、教官にはギルドへの報告の義務があるため秘匿は出来ない。が、それを生かした方向で講習時にアドバイスをもらえるという利点がある。
立ち会わせずに鑑定した場合、特に問題は無いが、講習は決められたカリキュラムをただ受けるしかない。
初心者講習以外に冒険者ギルドが行っている講習会では、最後に鑑定を受け、スキル表示があれば取得したと判断される。
イゾウはこの世界の文字がまだ読めなかったので、特に深く考えず2人に立ち会いを頼んだ。
何しろ鑑定したところで、読めないければ意味がなく、イゾウはとにかく今は情報が欲しかった。
本来、教官かギルド職員1人で充分な立ち会いを、イゾウだけ2人だったのは、どちらに立ち会いを頼むのかで2人が喧嘩になりかけた為だ。
巻き込まれるのを嫌がったイゾウは、両者に立ち会いを頼んだ。
「他のスキルはあったのか?」
「結構ありました。
『 計算Ⅲ 』『 指揮Ⅰ 』『 料理Ⅰ 』『 演奏Ⅰ 』で『 格闘Ⅲ 』ですね。
『 魔力 』『 魔法 』系統のスキルは他に全く無かった。
なのに 『 氷魔法 』だけ表示されている。
見間違いかと何度確認したか・・・・・・」
「記憶が無いのだったな・・・・・・
スキルの構成だけみれば商人系の家系・・・・・・」
「ガハハハハハ、『 格闘Ⅲ 』のスキルがそれだと説明つきませんぞ。
儂らが教えるまで剣も槍も使ったことが無かったのは間違いありません。
『 演奏Ⅰ 』と掛けて 吟遊詩人だった、とかな・・・・・・
それは無いか、ガハハハハハハッ」
「十日ほどで〝剣術〟と〝槍術〟を得たのは間違いない。
そちらの見込みはあるでしょう。
そして高い魔力。
となれば、教官長と同じ魔法剣士タイプが期待出来る」
「ガハハハ、それも良いな。
寄らば剣、離れれば魔法、〝殲滅〟と呼ばれた勇者と同じか・・・・・・
それが出来たなら胸が熱くなるな、兄弟。
魔力がさほど高くなかった儂らが憧れるしかなった、たどり着けなかった境地だ」
「ああ、そうだな兄弟。
だが選ぶのは儂らでは無い。イゾウだ。
彼奴は何を選ぶのか・・・・・・楽しみでならぬ。
当然、儂と同じ槍を武器に選ぶだろうと師匠としてはもう、確信しておるが」
「ガハハハハハ、兄弟、それはわからんだろう?
何しろ師匠はここにもいる。忘れてもらっちゃ困るなガハハハッ
儂と同じ双剣という手もあるが、まずは剣と盾からだ。
みっちり仕込めば剣術の魅力に気づく。きっとそうなる、何しろ儂の弟子だからなガハハハハハハハハ」
「なんだと!」
「なんだ!」
青筋が額に走り、立ち上がって睨み合う2人。
それをやれやれと言った感じで諫める教官長
「やめんか・・・・酒が不味くなろう。
弟子と言っても講習中でやることは変わらんのだぞ」
教官長は弟子にはしても、特に贔屓はするなと暗に告げる。
最もそれは講習の中での話しなのだが。
「分かっております。
奴が〝スキル〟を両方得てしまい、武術の講習は3段階目からなのでちとムキになりました。
すまんな、兄弟」
「ガハハハッそのようだな兄弟、こっちこそすまなんだ。
一周しなければ儂らは教えられぬから、ついな」
武術の講習はまず槍を習う。これが1段階。
2段階で片手剣 + 盾を習う。
3段階で 斧 を。
4段階目で 短剣 とその後も続く。
これは武器を一通り扱わせ、経験させる事が目的であり、覚えさせる為ではない。
だがその分、ある程度慣れて出来ていないと先に進ませない。
対し弓だけは講習期間中に、徹底して行う。
武術の訓練の中で継続して行うのは弓だけだ。
自分の武器以外使えない冒険者ほど、武器を無くした時に脆い。
例え仲間が死んでも、生きる為には死んだ仲間の武器で戦ええなければならない。
だから最低限として一通り、触らせる。体験させる。
認可を得るということは、教官がその武器での初級のスキルを得ただろうという評価が基準になる。
〝認可〟を得た者は次の段階へと進む。
初級スキルを持っている者がもう一度受ける意味はないので、免除となる。
弓は完全に防衛任務の為である。
防衛任務に就いたときに、素人がいても役に立たない。
せめて弓が、〝最低限扱える人員〟 である必要がある。
その為に、防衛任務が義務のこの講習では、特に弓は重点を置かれている。
「ガハハハ、どっちか覚えりゃ御の字だったんだが、まさか両方覚えちまうとはなぁ・・・・・・
まぁ早いとこ座学の方を片付けさせるしか無いだろう」
夕飯後に行われる座学も、最低限の読み書き計算しか教えない。
覚えたものから、各自に足りないものを選択し練習出来る時間となる。
消灯までの時間を含め、訓練に当てるには充分な時間だろう。
自由が効くということは、教官と講習生の関係のまま、師匠と弟子の関係を持ち込んでも問題ない。
初めて弟子を取った3人の相談は、店の灯りが落ちる深夜まで続いたという。




