決闘 4
この決闘編が終わるまで見直しは中断することにしました
コロナ、緊急事態宣言、年度末、そして花粉。追い打ちで人手不足が。
地球が私に優しくありません(T-T)
「紹介しよう。此奴がイゾウ、儂の弟子になった。
そしてそこにいる2人の大魔道殿との共通の弟子でもある。貴様らが何を言おうが、何をしようとも、儂らは此奴に弟子を辞めさせることはない、と先に宣言しておく」
教官長の言葉に会場内はどよめきが走る。
辞めるも何もまだ大して教わってねーけどな。
「目の届かない所にいかれたほうが、坊やは怖いからね。絶対問題起こすじゃない」
「そうじゃな、イゾウは何をするかわかんから見張っておく必要があるのじゃ」
・・・・・・
大魔道の俺の評価が酷い。俺はこれでも色々頑張っているんだけど?
「此奴と全員に戦ってもらい、その中で見るべき所があった者を弟子にする、それはは約束しよう。それは儂だけで無く、大魔道殿も同じ。
だが見るべきは勝ち負けでは無い。多少腕が立とうとも、見込みが無ければ弟子にはせぬ」
その言葉に観客席の視線が俺へと突き刺さる。このギラギラした視線を送ってくる奴らが俺の敵。真っ赤っかだな。危ねぇ、ちゃんと真面目に、本気でやるつもりで来て良かった。こいつら殺る気マンマンじゃん。
〝決闘〟にかまけて殺す気でいる奴が混じっている。それも1人2人じゃねーな、複数だ。こういうシチュエーションでは俺の精霊眼は本当に便利だ。(劣化)だけど。
ここに来てからやっと本気になった、だったら少し遅かったかもしれない。早めにやる気になって良かった。
スロースターターだしな、俺。エンジンかかるの遅いんだよ。
「本来であれば1対1で戦うが、今回に限っては此奴が連続で戦う事になる。
勝ち負けこそ重視はしないが、負ければ此奴はそこで装備を失う事になる。そうなるとその後の者が見られない。
故にそれを避けるため、今回に限り此奴の装備総代金分の金額を師である儂らが立て替える事にした。
勝った者には此奴の装備に掛かっている費用分 先に計算した所22万zと少しだ、だが色をつけて25万z払おう。勝った者で金よりも装備が欲しい、という者は終わった後に言うがいい。金ではなくそちらを渡そう」
これを聞いて会場の空気が変わった。赤色が濃くなる。
殺気が強くなり始めたようだ。
これって師匠が俺の装備分を立て替えるのが気に入らないって所かね?
そりゃーまぁー、うん。そこだけ見れば凄く可愛がられているように見えるよね、俺。
でも違うんだなぁ。お金の出所は間違い無く、取り上げられた(事になっている)俺の貯金からだろう。
冒険者ギルドでもお金の預かりシステムがある。
あるのだが、俺の口座には入金はゼロだ。貯金残高ゼロ円です。
過去にカツアゲした分の金がいくらかあるのだが、最低ランクの俺が大金を入金しているのは不自然ということでギルドハウスにしまってある。あそこなら何時も誰かいるし、色付き大魔道という最強の番犬がいる。
というかその番犬扱いした師匠に取り上げられた。
まさかの申告制お小遣いシステムである。
今日はギルドハウスにおらず、全員がこちら来てるけど盗みに入る度胸がある奴はまずいないだろう。
冒険者ギルドの敷地内だし、職員さんもいつも数人駐在している。
なにより大魔道さまの部屋、良くわかんない魔法道具でトラップだらけだしな。
何度か覗いて死にそうになった。
・・・・・・エロい意味では無い。好奇心だったのに。身体もロリとエロババアだったのか確認するという尊い目的の為であって。
未達成だけど。
「その者は何度か見掛けた事がありますが、新人には不釣り合いな業物のハルバードを持っていましたが」
「アレは儂が貸与している物だ。最初は此奴が冒険者ギルドの放出品をローンで買いおったが、分不相応なので止めさせた。儂が全額支払い、此奴から毎月支払いを取り上げ・・・・・・受ける事になっている。
此奴は元勇者である教官長、そしてそちらの大魔道殿の弟子であると同時に儂の弟子でもある。師が弟子に貸しているものは私物とは言えぬだろう」
どこかで俺を見掛けたであろう誰かが立ち上がって声を上げた。が、目も口元も全く笑っていないガハハ髭が怒気を混ぜて返した。
でたよドイヒー理論。ローンなんて組んで無いし、全部嘘っぱちだ。しかも取り上げって。されてません。
基本的に俺の持ち物は無し。持ってる物は最低限で、師匠から借り受けたモノで生活している設定だ。
当然所持金も無ーしー。文無しのもんじろうくんです。
こんな無茶が通るのも、講習を妨害するぐらい弟子入りを売り込んだ自分たちのせいだけどね。使者の人が言っていたが、ギルド関係者も結構お怒りらしい。押しかけて来られて通常業務の邪魔なんだとか。
声を上げた男は、「ならいいです」と小さく言って座り直した。
続いて傷顔の教官が此奴は最近少し稼げるようになったが、同期と共用の装備や道具を買っていて貯金が無いことを話した。
今それ言わなくてよくね?と思うが、文無しアピールだろう。止めるなら今だよという最後通告でもある。俺に勝っても大した物は得られないのだ。
なにより俺に勝っても、どうせ誰も受からないのだし。
しばし3師匠が代わる代わる説明を続け、最後に教官長が締めた。
「と言うわけで〝決闘〟というシステムで判断させてもらうが、やらないのは自由だ。だが儂らは貴様らをこれ以外の方法で弟子にするかの判断はしない。後日同じ事を繰り返す事も無い。これで終わりだ。話に納得がいかなければ引き返すが良い。
だが受けぬ者落ちた者が、明日以降冒険者ギルドに来て先日と同じ事を繰り返すならば、冒険者ギルドとしても一切容赦しない」
校長先生や来賓の話ばりに長いなー、なんて思って聞いていたらそこに繋げる為の説明らしい。
校長先生は兎も角、来賓も大変みたいだけど。実は話すのも大変なんだと聞いたことがる。
来賓の顔なんてみんな知らないしな。「この人誰?」って雰囲気の中で話をするのもそりゃーね、大変だろう。
来賓は兎も角だが、師匠たちとしても弟子入り希望者を無碍には出来ないが、チャンスを拒んだくせにしつこい奴には厳しく当たれる、そんな所か。
それでも出て行く者がいないから凄い。そこまでして誰かの弟子になりたいもんか。俺には全然分からない感情だ。
説明が終わると俺は後ろに下がらされた。椅子に座って休憩。
その間に決闘の手続きをすすめるようだ。1人ずつステージに上がってきては確認作業をしてサインをする。するとそのサインした紙が俺の前に回ってきて、同じように俺もサインをする、という流れだ。
これで〝決闘〟の合意になるらしい。違反すると当然奴隷落ちだ。怖い世界である。
座って待っていると時々罵声が飛ぶだ。出所は教官たちだ。相変わらず怖い。
どうやら財産を少なく申告する奴がいるらしい。
冒険者ギルド側は完全に調査済のようで、誤魔化しは一切通じていない。どうやらこれは、放置してた訳じゃなて、調べが済むまで待ってたんだな。それに気づかず・・・・・・・か。手の平の上でやんの。
馬鹿な奴らだ。俺も完全に片棒担がされているけど。
こりゃー儲けても、そこから何割かを差し出すことになりそうだ、冒険者ギルド、商売が上手いな。性格はかなり悪いけど。
ちなみに相手がサインをした書類を、俺のとこに持ってくるのは黒の大魔道の仕事だ。ギルド職員が「そんなことは私がやります」と言うのを、「いーのいーの」と言って追い返している。
困った顔のギルド職員に対し、黒の大魔道の顔はニッコニコだ。契約書と一緒に財産の目録もあって、それを俺に嬉しそうに説明しては戻って行く。そして次の紙を運んで来る。
「奴隷が何人いるわ」とか「この子の装備は高く売れるわね」とかさ。まるで人の顔が諭吉に見えている人みたいだ。目が$マークになってんじゃねーか。
誰だよコイツの提案に乗ったギルド職員。良いように使われてますよー。
許可を出したのはサブマスターあたりだろうけど。
貴族が庶民の懐なんか心配する訳がない。
憎憎しげにこちらを見つめている参加者たちに、心の中でご愁傷さまと呟く。悪いけど手は抜かない。本気で潰しに行きますよ。
思ってたより開催側が本気なんだもん。俺は空気が読める男。自分の身が可愛いです、まる。