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異世界(この世)は戦場、金と暴力が俺の実弾(武器)  作者: 木虎海人
5章 イゾウのお気楽冒険者生活
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身体強化魔法 6 天狗とオーガ 顛末

西の大山脈からは帰ってきました。


「はぁ・・・・・・それで・・・・・・天狗と大鬼(オーガ)と仲良くなったと」


「別に仲良くはなってないけど、水を作ってくれてやったら喉が潤ったのかね?

なんか口が滑らかになったらしく、少しだけ話し込んだじゃっただけで」


「村で待ってたギュソンの坊やたちを放って置いて?」


「それについては誠に申し訳無いと・・・・・・」


 視界の端でギュソンの唇が「いや別に某たちは・・・・・・」なんて動きをしているのに気づいたが、今それを言うのは悪手だろう。

 ここはギルドハウスのリビング。皆がテーブルの席に着き、俺だけが黒の大魔道の前に立たされて話をしている。


所謂お説教タイムという奴だ。


 個人的に悪い事をした自覚が全くなかったのだが、西の大山脈では水不足に悩まされているようで、天狗と大鬼に水を飲ませてやると、その辺の苦労話を勝手に語り始めたので帰るタイミングを逃してしまい、結局昼過ぎまで3人?で喋っていた。

その後何度も水のお代わりをせがまれながら。

これがまた美味そうに飲むもんだから、つい。

ただの水なのに。

 そんなやりとりは今思い返すと楽しかったのだが、その裏側で問題は進行していた。

 夜中に部屋を抜け出していなくなった俺を探し、残されたギュソン・アベニル兄妹側が大騒ぎになったのは言うまでも無い。村でもちょっとした騒ぎになったのだという、当時は完全に失念してた。

 朝のうちにギュソンさんが急いでこの街に戻り、大魔道のお二人に救援要請。

大魔道のお二人は冒険者ギルドへ駆け込み、教官筋(師匠)へとヘルプ要請。

極道コンビが急遽休暇を申請し、大魔道のお二人と入山申請を冒険者ギルドへと出し、許可待ちの段階で俺がひょっこり帰ってきた、と。


 笑い話で済めば良かったが、ここで1つ問題が起きる。

入山許可が下りるのは本来冒険者ギルドの定めるランクでBランク以上で無いと申請が通らないらしい。

では何故俺が下りたかと言いと、俺と大魔道のお二人を引き合わせてギルドハウスに入れたのは誰だ、という話にまで遡る。

 大魔道に至ったお二人の冒険者ランクは勇者と同じ Sランク

勉強の為にそのうち俺をあそこに連れて行こうと思って、結構前から手を回(話を)していたらしい。

つまり黒の大魔道と一緒に行くことになっていた、だから許可が下りた、んだってさ。

俺が知るか、って話なのだが、街には黒の大魔道が居る。

なのに俺が立ち入り禁止区域の手前の村で行方不明に。

調べたら入山許可は何故か通っている。

それを知らない冒険者ギルド所属の極道コンビ(師匠)


 あれ?お説教されるべき人に何故か俺がお説教されている気がする。

ちなみに白の大魔道も流れは知っていて黙認していたので同罪ではあるが、黒の大魔道が逆ギレしているようなものなので、空気を読んでだんまりである。ずるい。

 下手に逆らっても長くなるだけなので俺は流れに逆らわず、お叱りを甘んじて受けている。

可哀想なのは食堂に集められたパーティメンバーである。

一応全員に説明をしておけ、というテイで集められたのだが、俺が黒の大魔道にグチグチ言われているのを一緒に聞かされる羽目に。


「はぁ・・・・・・もういいわ。

それで、坊やは2回も進入禁止区域に入って、それも2度目は誰にも言わずに黙って行って。

なのに何も持って帰れなかった、という訳ね?」


長い長いお説教タイムがやっと終わり、まだ少しトゲを残しながらも黒の大魔道はやっと話を進めてくれた。


「黙って入ったのは申し訳なかったけど。

実際その通りなので何も言えません。悔しいけど〝大魔道の試練〟は失敗ってことにしてください」


実は鉱石を採るのは「絶対に駄目だ」と言われたのだが、水を提供した礼と言われて、代わりに奴らから岩塩をもらっている。

だが岩塩では魔法媒介にはならないので課題は失敗である。

俺の知ってる錬金術師のゲームでは材料扱いだったけどね。塩。


「全く、隠れて移動なさいとあれほど言ったのに」


「したよ? でも見つかったんだって。

人間に荒らされないように見張ってるんだってさ。

だから現状俺が何度行っても、絶対追い返されるんだって」


ここは完全に認識の違いである。

西の大山脈に棲む魔物は、あの周辺を霊峰と呼んで神聖視している。

入る資格、つまりあそこに棲んでいる魔物に近い強さを持っていないと入山しては駄目なのだそうだ。


「黒ちゃんそろそろ許してやるのじゃ。

イゾウは考え無しじゃったが、頑張った方じゃと思うぞ?運は悪いが」


白の大魔道がフォローを入れてくれるが、そもそもそこで得た情報のせいで黒の大魔道はさらに機嫌を悪くし、頭を抱えていた。


とは言っても大した情報では無い。

あくまでも俺にとっては、だが


西の大山脈に棲む魔物が、あそこを霊峰と言って人間を追い払っているのは、あの土地を〝風の神〟そして〝大地の神〟が与えた土地だからだそうだ。

勿論何千、それこそ何万年も前の話で、種族に伝わる伝説のような話らしい。

俺が最も欲しかった情報である、神の居場所には繋がらなかったが。

その話をしてくれた天狗も大鬼も会ったことも見たこともないと言っていた。

だから俺にとっては大した話では無い。

そこに棲む者が、いないと言うならいないのだ。

どうせ入れない場所なのだから、拘っても仕方が無い。そのうち入れるようになる予定なのだから、それから確かめれば充分な話である。


 では黒の大魔道が頭を抱える問題なのは何か

何故に人間を追い返しているか、見張っているか、という所にある。

西の大山脈には何か貴重な物がある。例えば、鉱石資源が埋まっている可能性がある。


 大魔道の二人、そして世間の認識ではたまに低級の魔法媒介や武器防具の材料になる鉱石資源(モノ)が見つかる事がある、基本は岩塩を拾いに行く、その程度の場所だった。

それが追い返して守っている、という事実で黒の大魔道は気づいてしまった。


 多分だが手前に落ちているはおそらく目眩ましで、その奥にもっと価値のある資源が眠っている可能性が高い、と俺は考えている。

鉱石資源というのは掘るモノである。

地表に出ているのは僅かだ。掘らなければ手に入らない。

霊峰の奥地まで入り込まないように、西の大山脈に棲む魔物がばらまいているだけなのだろう。

入る資格があることと、好きに行動して良いことは全く違う。


ちなみに全く気づいていないのが白の大魔道さまだ。

金になる話には無頓着らしい。

それでも俺の聞いてきた天狗と大鬼の話には食いついていたが。




「まっ忘れることですよ、きっと。

天狗も大鬼(オーガ)も言ってたけど1体でも仲間を殺されたら、殺した相手の種族を皆殺しにするまで戦うんだってさ」


 それなんて戦闘民族?

その話を聞いて思った俺の感想である。

ちなみにだからこそ過去に種族の数が大幅に減り、神の温情で山の上に土地を、という流れだ。

そんなアホな戦闘民族、戦闘脳種族が、縄張りを分け合って暮らしているのが西の大山脈である。


 天狗と大鬼以外にも、仲間が殺されたら種族全てをもって報復に走るという性質(タチ)の種族が、仲良くではないがそれなりの関係で暮らしているのがあの場所、で霊峰と呼んでいるという訳だ。

仮に他の場所で暮らしていたら今頃絶滅していた可能性が高い。


 俺はそれを聞いて、強くなっても全面的に敵対するのは止めよう、そう誓った。

だって例えば俺がうっかり天狗を殺しちゃったとしよう。間違い無く天狗族は全員で街に攻め込んで来るらしい。ついでに大鬼族(オーガ)どももついてくるとか何とか。

この街で終わらず「人間を皆殺しにするまで戦うだろう」とか何とかマジ口調で言ってやがった。

天狗も大鬼も水で酔うんだな、なんて軽く考えた俺の馬鹿。全くのシラフでマジな発言なんだと直ぐに気づいた。あれで警告、もしくは注意したつもりなのだ。

あのお人好しの天狗と大鬼は。


さすがの俺も人類が全滅するまで続く全面戦争のスイッチを軽々に押す気にはなら無い。


 最も多少話せたからそう思うのだろうが。

オークグラジエーターや、ヒースと名付けた中級種の時もそうだったが言葉が通じるというのは、それだけで殺す判断が鈍る。

相手が殺す気で襲ってくれば迷わないとは思うが、今の所会話が出来て全面的に敵対する存在がいないのだ。

 あの2体は思ったより良い奴らだったことはちゃんと言っておこう。

俺が追い返されたのは結局、うっかり話込んで他の天狗と大鬼が追加で現れてからだった。

それくらいにはね、話の出来る奴らだった。

勿論後から来たそいつらにも飲み水は要求されたのだが。

天狗と大鬼に囲まれて少しだけビビったことは内緒だ。



最初に戦ったのが天狗A  テングエー で グエイ

次に戦った大鬼がオーガA オーガエー で ガエイ

勝手に名前を付けたら怒られた。

呼ぶのは自由だが返事をするかは気分だそうだ。

ネーミングセンスが無いのは自覚している。


名前を付けたのは最初の2体だけだ。

倒せるくらいに強くなりたいとは思っているが、殺してやろうという気持ちはもうすっかりどっかに行ってしまった。

言葉が通じるって不思議だ。


山の上は喉が渇くだろう。

だからそのうちまた水を作ってやりに行こうと思っている。



ちと眼精疲労で目がお疲れなようでして

間が空いたらごめんなさい

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