身体強化魔法 1
ご無沙汰しています
なんとか生きてます。お酒の量が増えたけど
何話か消しました、すいません。
繋がるところまで行ったら再投稿します
「しかしなんじゃな、冒険者のギルドとは言っても、魔法講習のレベルは酷いもんじゃ」
口いっぱいに食べ物を詰め込みながら白の大魔道が言う。
幼女がもぐもぐ頬張っているようにしか見えなくて可愛いが、これで80歳。
歳のことは禁句なので他のメンバーにも言わないように注意したが、ギルドハウスの食事は美味しいから心の中で漏れるのは仕方が無い。
俺とノリックが講習を終えて1週間の本日、ギルドハウスにやっとパーティメンバー全員が合流し、大魔道に問われるまま講習で受けた内容を説明をしていた。
ノリックが
だって俺まともに魔法講習受けてないし・・・・・・
話を聞いた白の大魔道が憤慨しているのがその顔で分かる。
プリプリ怒った幼女可愛い。
「仕方無いわよ。普通人族の多い地域で、平民の商業組合、魔法に関しては遅れているのは当然。坊や達はそんな中で私達にキチンと教えられるんだから感謝しなさいな」
妖艶な手つきで食事をしながら黒の大魔道が言う。
何というかこの人はいちいち全てがエロくて困る。食事の仕草もエロい。
女の魅力も魔力、を地で行く存在で、そのせいで2人並ぶと落差も凄い、デコボココンビだ。
どこが、とは言わない。
ちなみにこっちも年齢は禁句である。若く見えるのは良いコトだと思うけど。
余計な事を言わないように、言葉の中から会話が続くワードを拾う。
ギルドハウスにいる限り、俺は生徒で2人は教師。
学んでいる姿勢を見せる必要がある、質問は当然だ。
「その普通人族がよく分からないんですよね。
あと平民がってことは貴族なんかはもっと違うんですか?」
「種族についてはそのうち細かく教えるのじゃ。
今は種族ごとに魔法にも向き不向きがあると理解するのじゃ。
魔法にも特徴が有るのに、冒険者ギルドの教え方では1つの方法に適性が無ければ、他の全ても落とされてしまうのじゃろう?」
そうなんだよね。結局殆どの講習生が魔法を使えないまま講習は終わったらしい。
それでも魔法を覚えたいとその殆どが最後まで魔法講習にしがみついていたという。
「さらに言えばスキルでの魔法使用に比重を置き過ぎね。
イゾウの坊やみたいな子は堅苦しくて向いて無いわ。真面目な子ならそれで良いのだけど」
なーんか俺が真面目な子じゃないと聞こえるから不思議だ。
努力も訓練も真面目にしているつもりなんだけどなー。
だが初心者講習の魔法講習が堅苦しかったのは確かだ。主に人間関係で、だけど。
「で、坊やの質問だけど普通は貴族の方が魔力が多いのよ。それも圧倒的にね。
イゾウとノリックの坊やたちなんかはかなり特殊。
坊やも貴族に求婚されたんでしょ?これからもどんどん来るわよ。
ノリックの坊やもそのうちきっと話はあると思っていた方がいいわよ。そうやって魔力の多い血を取り込んで、貴族は家を発展させていくの」
つまり種馬だ。
黒の大魔道の言葉にノリックが少し嫌そうな顔をした。
俺が子爵の娘に求婚されているのも見てるからそこから想像したのだろう。
アレは少し特殊だと思うけど。
ただ何となく理解は出来た。権力者が美女を求めた結果、権力者の一族は顔だけは整っている、そんな話と同じだ。肝心の人間性と頭の中身が途中で抜け落ちて行き、後に凋落する物語の王道だ。
それが魔力の場合、魔力馬鹿の酷い一族が誕生しそうだが、現実は魔力だけでなく顔も求めるだろうからそれとなくバランスは取れて行くような気がする。
もし見た目を気にせずに、魔力だけを取り込んだ一族がいるならば、有る意味尊敬できる。
一点集中主義、嫌いじゃ無いな。仲良くしたい。
「当面イゾウたちはスキルでの発動意外の魔法を練習じゃな」
口の周りを食べかすで汚したまま白の大魔道が満面の笑みを浮かべながら言う。
何がそんなに嬉しいのか?
そういや厳しくするとか何とか言ってたっけか。まだ怒ってるのか?
別に厳しくしてもジャレッドの爺さんに会わせるやるつもりは無いが。
別に厳しいのは望むところだし。
早く覚えて早く強くなりたい。
「了解、宜しくお願いします。
だけど、そんなに沢山覚えるコトあるんですか?」
「先ずは身体強化魔法ね。坊やたちはみんな普通人族だから一通りやっておいて損はないはずよ。次にそれを周囲にも掛けられるように出来るかどうか、ね」
「ギルドの講習でやった魔力を外に放出する、ではなく体内で変換する訓練じゃな」
身体強化魔法、か。
それは確かに覚えたい魔法だ。それを最初に持ってくるとは分かってる。
隣で食事をしているノリックが「うわー、それは苦手そう」と呟いたのが聞こえた。
もしかしたらこの魔法でならノリックより上を行けるかも知れない。
今の所、魔法においては全てノリックの方が遥かに上手い。
魔力量だけは負けていないのだが。
「普通人族は平均的な種族だからそこまで苦手意識を持たなくても大丈夫よ。
出来ない事が少ない代わりに、飛び抜けた特徴もない種族ね。たまに例外もいるけど」
そこで俺を見るのは止めて欲しい。
そして視線を追うのも止めてくれ。結局俺に視線が集中するじゃねーか。
視線を誰とも合わせないように逸らすと、黒の大魔道が話にもどった。
「例えば身体強化魔法は獣人に得意な子が多い魔法ね。
でもその代わりに獣人の子は自分だけ、なのよね。
普通人族やエルフならば周囲にも影響を与えられる子もいるわ」
なるほど自分を強化から始めて、次に周囲の強化になるのか。
ゲームとは違う。
「獣人は自分に魔力を纏わせるのが得意じゃが、それを外に出すのが苦手な種族じゃな。
勿論例外もおるが。
普通人族も苦手な訳じゃ無いが、獣人には劣る。じゃから他の方法で埋める、という訳じゃ」
「魔法を使えるから、後衛だから、強化出来なくても良い、とはならないのよノリックの坊や。
苦手意識を持っているからこそしっかり取り組んでやりなさい。
イゾウの坊やは他の仲間にも気を配るように。パーティリーダーの役割よ」
「分かりました」
「了解です」
ノリックと共に返事をする。ノリックが心から納得したかどうかは知らないが、まず自己強化は大事だと思う。あとでノリックとも話しておこう。
例えば獣人が自己強化で3倍の力になるとする。これと向き合うとき自分も自己強化を使えないと3倍強くなった相手に素のままで立ち向かわなければいけなくなる。
これはかなりマズい。
獣人が得意だから倍率で負けたとしても、自己強化して立ち向かうのは最低条件だ。
何より強化した相手が、先に後衛を狙わないとは限らない。
どんなに強力な魔法が使えたとしても、突っ立ったままの存在に意味は無いだろう。
後衛もある程度の機動力は欲しい。
移動できる強力な砲台こそが、俺の中での後衛の理想だ。
前衛としては守らなくて良いくらいの存在だと最高だろう。前衛の意味がなくなるけど。
さらに言えば素の能力が互いに常に1、とは限らない。
俺なんて神の寝床だし。
基本能力が高い。高すぎるまである。自画自賛である。
敵の獣人の能力を仮定で1として、俺の基本能力が2だったら、相手が自己強化で3倍になっても、こっちは2倍で余裕で勝る。1,5倍でも互角だ。
獣人が種族特性で自己強化が得意だから勝てない、とはならない。
最も身体能力は獣人って基本値も高そうだけど、そこは技量だったり、作戦でも埋められるだろう。
苦手だからやらない、という選択肢にはならない。
「しかしどうして冒険者ギルドでは教えないんですかね?
初心者講習は砦の防衛任務に向かうために、平均的に鍛えられる筈ですから、魔法の発動よりもそっちを覚えた方が有意義だと思うけど」
という疑問が浮かぶ。
世の中には戦えないという存在はいない。力が弱くても石でも投げれば人は倒せる。
冒険者は初心者講習を受ければ最低限は弓は必ず習う。
魔法が発動出来るものも講習内では剣術槍術他を習う。
俺なら自己強化魔法を最初に教えて、出来た奴をならべて遠距離部隊を作るだろう。
おっ、これ良い考えだな、裏街でやろう。
正面から堂々と斬り合うなんて馬鹿の発想だ。
「多分ギルドの職員で魔法を教えられる子に自己強化魔法を使える子がいないのでしょ。
魔法のレベルが低いのよ、意識レベルでね、嘆かわしいわ」
「あー、一応冒険者でも上位になると自然と覚えて使うものじゃぞ?
自己強化魔法は魔力さえあれば使える魔法じゃからな、魔法が発動出来ない前衛職がおのずと辿り着く訳じゃ」
バッサリ切った黒の大魔道に、言葉を選ぶ白の大魔道。この構図も珍しい。
そういえば冒険者ギルドの魔法課の教官は武術課の教官に比べてレベルが低く、数段劣るんだったか。
自分が出来るようになったから忘れがちだが、魔法を使えるやつの方が少ないんだよね。
つまり魔法が使えるからこその特別意識か。
「なるほど、俺達は正しい意味で基本から魔法を教えてもらえる訳ですね。
お二人に魔法を教えて貰えることを幸せに思います」
最後にヨイショをするのを忘れない。
白い幼女はチョロいし、ノリックにもついでに発破をかける。
感謝するのは本当だから黒いエロババアの機嫌も取れる。
この日から俺達は身体強化の魔法に取り組み、練習し始めた。