裏町再建へ5 初任務 と 錬金術の道具
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最終的に配下のザーノアとジョンのみを連れて行くことにして裏町を出る。第3地区にある冒険者ギルドへと向かった。
昼間で人通りもそれなりに多く、時折住民から向けられる視線に二人は多少びくついていたが、特に引き留められたり絡まれたりすることなく街中を歩けた。
冒険者ギルドに到着し、今受けられる依頼を確認する頃には彼らもすっかり落ち着きを取り戻していた。
この冒険者ギルドで任務を受けるには物語で良くあるように、掲示板から自分が受ける依頼の書かれたモノを引っぺがしてカウンターに持っていく仕様のようだ。
街によって違うらしいので、街を移動したならば都度都度 確認する必要がある。
物語と違うのは紙が貴重だからか依頼の難度によって詳細の書かれたモノが違うことだろう。
低ランクの依頼は木片に最低限度の事しか書かれていない。
採取系なら集めてくるモノの名前、数、期日と報酬。
討伐系なら 殺す魔物の名前と数、そして期日と報酬だ。
討伐証明は魔物の部位を引っぺがして持ってくること。初級程度の魔物ならどこが討伐証明になるかは初心者講習で習っている。
中級になるとパピルスのようなペラペラの紙にもう少し詳しく書いてある。
報酬もその分高くなっていた。
上級になると羊皮紙という奴だ。
比較的まともな紙に細々と書き込まれているらしい。
らしいというのはこの依頼は第2地区にある本店に行かないと張ってない。
本店に行くと中級以上の依頼しか張り出されていないようだ。
任務の時にちらっとだけ見たことがある。今の俺には関係無い話だ。
ザーノアが初級の依頼、採取系のものならばいくつか生えている所を知っていると言うのでそれを受ける事にした。
欲張っても仕方が無いので、確実性の高そうな二件の依頼を受けた。
これ以外に魔物を狩って持っていけば冒険者ギルドで買い取ってもらえるし、〝ギルドハウス〟の特典で1日5匹までは解体費用は免除される。
さらに専用の荷馬車もレンタルしてくれるのだが、今日の所は止めておいた。
「これとこれなら少し足を伸ばした所にいけば群生地がある。」そうザーノアが言うので信じることにして、今日は街周辺の確認のみだ。
下手に荷馬車などを使ってスカスカで帰ってくるというのも格好が悪く馬鹿らしい。
二人を連れ第三南門から出る。
門番は何も言わなかったが少しだけ訝しげな顔をしていた。
偽造だとでも思われたかな?と考えたが
「いい歳して俺らが最低ランクだったから見下してたんだよ。」
そうザーノアに教えられた。兵士と言ってもピンキリだ。
相手の立場によって態度を変える奴も多いらしい。
そりゃーそうだろう、何しろ賄賂をもらって街の出入りを見逃す奴もいるくらいだしな。
とりあえず今日対応した門番の顔は覚えておくことにした。
★☆ ★☆
任務自体はあっさり片づいた。
早足で30分ほど移動し、街を囲む防壁に沿って東の方向に進んだ先にある草原で少し探したら沢山生えていた。
二件受けたがどちらも傷薬になる、恒常的に出ている依頼のようで、駆け出しの日銭稼ぎみたいな依頼らしい。
「何かのついでに受けるような依頼さ」とこれまたザーノアが教えてくれた。
持つべき者は人生の先輩で有る。
依頼はこれで完了だ。だがまだ日も高い。
折角外に出て来たのにこれでとんぼ返りも勿体ないので俺は周辺で経験値の元を探すことにした。
ザーノアとジョンは食べられそうな草を採取していきたいと言うことで許可した。
「肉期待してる。」とう彼らに、他にも傷薬になるような草があればそれも集めておいてくれるように伝え、ノリックと周囲を探検に行こうと思ったのだが、彼には断られた。
周辺の警戒をしつつ、薬草の知識を実地で覚えたいということで一緒に採取していたいとのこと。
真面目か、と思ったがそういやこいつ真面目だった。
俺はその辺の事は完全に人任せにするつもりである。
知識としては吸収するが、細々した労働は配下の仕事だと考えてる。
ジョンが「護衛を・・・・・」と言ってきたけど「イゾウなら平気でしょ、むしろこっちのが危ない」とノリックに言われて引っ込めていた。この辺りには大した強い魔物はいないらしい。
その狩りだが、ちょっと信じられないくらい大量だった。
ザーノアがいう通り周囲に大物はいなかったのだが、小物ならばそれなりにいた。
人間を見つけたら逃げるような小動物が。
小動物は習性として、敵を見つけたらまず逃げるが先行する。が、追い詰められたら必死で抵抗するものだ。
だから逃げるとしても敵意が無いわけでは無い。
薄く、それも短い時間だがちょっとだけ赤く見える。
俺はそれを追いかけて行くだけである。
弓で狙えば〝氷の精霊眼(劣化)〟の補正で難なく仕留められる。例え逃げられても一度追い込めば、怒りでますます赤く表示される色が濃くなるだけだ。
逃げられたのは多数いる獲物だけ。それでも最低1羽は仕留めている。
氷の精霊眼(劣化)様々である。
割と時間が掛からず兎、鳥、ネズミといった系統の魔物では無い小動物を2~3匹づつ捕まえることが出来た。
この感じだと荷馬車を持ってきて狩りをするのも有りだろう。
冒険者ギルドにでていた依頼には ~~(魔物、動物の名前)を何匹、といった依頼も多数あった。
こちらは獲物を持ってきてから受ける事も可能なので今後は積極的に狙っていきたい。
最先上々である。
狩った魔物はザーノアとジョンが頑張って運んだ。
ノリックはコレはイゾウの成果だ、と言い張ってパーティの成果として受け取ってくれなかったという理由もある。俺の物は部下が運ぶ物である。
と言うわけではなく、一応周辺の警戒である。
急に襲われたときに俺とノリックが対応する方が確実だ。
ノリックが固辞したのも事実だが。この辺は石頭で融通が利かない男である。
日が暮れないうちに南門に戻る。
ザーノアとジョンが抱える獲物を見て、出たときに対応した兵士が目を見開いていた。
言っていた通り最低ランクの冒険者だと侮ってたのだろう。
少しだけ気分が晴れた。ハッハッハ
ギルドに精算に出し、冒険者証と共に〝ギルドハウス〟に入居中である事を伝える。
確認が取れると「5回までなら解体所が無料で利用出来ます」と伝えられる。
少し思い違いをしていたようだが、ギルドに必ず買い取ってもらう必要も無いらしい。
鳥と兎の解体をお願いし、ネズミはそのままザーノアたちに持って帰らせることにした。
何となく解体前の姿を見てしまうと。まだネズミは若干の抵抗がある。裏町の奴らなら喜んで食べるだろう。
鳥の方は意外と獲るのが難しいらしく、兎に比べ少し高く売れた。
帰った後に今日の成果の話をしたところ、食事の準備をしてくれるハウスキーパーさんに持って帰って来たら腕を振るえたのにと言われるのはまた別のお話。
依頼分の報酬は頭割りし、獲物分はノリックもザーノアもジョンも固辞したので俺の総取りとなった。
なお依頼分以外の採取した草花はギルドに報告していない。
つまりその分は金にならなかったが、初日だから別に構わないとノリックが言うので良いだろう。お金の心配は今のところいらないが、稼げるときにコツコツ稼ぐに限る。
ザーノアたちを裏町に送り届け、魔力の半分くらいまで使って水を作ってやる。
その帰りに妹分たちが会いに来てくれた。
なんでもちゃんと片付けを手伝っているらしい。
身体もお湯を作ってもらって洗っているそうで少しだけ小綺麗になっていた。
ちゃんと俺が買ってあげた服に着替えて会いに来る辺りが可愛い奴らである。
妹分の遙か向こうで見たこと無いガキどもも隠れて騒いでいたが見なかったことにしておいた。
別に子供の面倒がみたいわけでは無いし、慕われたいわけでもない。
奴らも奴らで怖い物見たさだろう。子供なんてそんなもんだ。
ただなるべく早く落ち着かせて、早いうちから読み書き計算くらいは仕込みたいと思ってる。
大人になってから習うよりも、子供のうちに学んだ方が飲み込みが早いだろう。
何より早く覚えればそれだけ使う回数も増える。
身体に完全に染みつかせた上で、俺の仕事早く手伝って欲しいと思っている。
いずれ、出来たらいいな~くらいの計画だけどな。
「で、どーするつもりなんだ?」
「何が?」
裏町からの帰り道にノリックが訪ねて来た。だが何の話だか言ってくれないと察しようがないだろう。
「錬金術師の件。どーするのかなって思ってさ。」
「んん? どうもこうも何がどのくらい必要なのか分かんないのに揃えようがないだろ?
金が無い訳じゃ無いけどさ、いきなり全部揃えてやろうとは流石に思わないぞ?」
「えっ!?」
「え!?」
俺が答えるとノリックは驚いた声を上げる。
その反応に今度は俺が驚いた。
何で?だってあの爺さんにもそう言ったじゃんよ、俺は。何かあんの?
「いや、イゾウ多分錬金術で使えそうな道具持ってるじゃ無いか!
しかも2セット。ほら、昨日大魔道様がリーダールームに入れてたから邪魔だって言って倉庫に移しただろ?」
「・・・・・・・・・あぁ、アレ錬金術の道具なん?」
それはつい昨日の昼の話だ。
冒険者ギルドから講習修了の証として冒険者証を受け取り、夕刻まではそのままいても良いと言われていたのだが、残っている奴は講習を受けているし、教官たちも皆忙しくしていた為に、「行くかっ」と誰とも無く言い出して講習所を出た。
俺とノリックはそのままギルドハウスに移るだけだったのだが、着いて早々に1つ問題が起きた。
個人の部屋割りは完了しており、そこは問題無かったのだが、俺が責任者として使うはずのリーダールームが物置になっていたのだ。
なんだかわからない道具で部屋中溢れかえり、入室することもままならなかった。
意味が分からず在籍する全ての人物を問い詰めたところ犯人は先に入居していた大魔道二人と、従業員全員だった。
部屋を埋めた道具こそ、魔法の研究に使う魔道具一式 × 2セット。
俺が入居前に、軽い気持ちで大魔道に俺の分の欲しいな~と強請っていたアレだ。
まさか二人とも自分と同じものを2種類ずつ買いそろえるとは・・・・・・
これだから弟子を取ったこと無い人が急に弟子とか取るのは良く無いと思います。
加減というか、塩梅というか、ね。
師匠達もそうだけど甘やかすときは全力なんだよね。多分自覚無いんだろうけどさ。
そんな大魔道お二人が注文した研究用の道具はギルドハウスに届けられた。
うん、ここまではいい。
大魔道二人はウキウキで自分が研究室に定めた部屋に運び込んだ。
うん、それも分かる。
怒ったのはギルドハウスに常駐している管理人さんとハウスキーパーさんたちだ。
無責任に大魔道さまたちは「それはイゾウの。」と言い放って玄関に放置していたらしい。鬼か。
怒った従業員さんたちがリーダールームに全て放り込んでおいたという・・・・・・・・
「・・・・・・・・(絶句)」(せめて倉庫に入れておいて欲しかった)
「次、同じ事があれば個人の部屋に入れておきますので。」
「すいません・・・・・・・よく言っておきます。」
「そうしてくださいね。ギルドハウスは物置では無いのですから!」
以上、事の顛末を聞いた俺と、目が釣り上がったハウスキーパーの最年少のおばさんとの会話である。
最年少とか立場弱いんだろうなぁ。特に大変だったんだろうなぁ。
と、怒り具合を見て容易に想像出来た。
だが、聞いて欲しい。この豪華絢爛なギルドハウスの中で、大魔道が研究室に確保した部屋はもっとも広いのだ。
目算だが8畳間が4つくらい入るんだぜ?アホだろ?冒険者ギルド。
単純に32畳と考えてみて欲しい。
それに対して俺が使うというリーダールームがその8畳間くらいの広さなんだよ。
元々、俺には別にリーダールームなんて必要無いとか考えていたんだが、4倍の広さに入れて設置する予定の道具と同じ物を買い集めてきたんだよあのアホ魔道どもは。
意味分かんないよ、最初は初心者用キットから始めろよ、と心の中で叫んだのは言うまでもあるまい。
つまり4倍の広さの部屋に設置する道具が2セット存在し、それを8畳間に無理矢理突っ込んであるのだ。
どっかのゴミ屋敷みたいに天井付近まで積み上げてあったよ・・・・・・もうね・・・・・・
「ノリックに1セット要る?」と聞いたところ、高速で首を左右に振って拒否された。
ノリックは個室しか自分の空間が無いから無理も無いか・・・・・・
俺としてはこの部屋の事は見なかったことにしてそっと扉を閉め
ようとしたんだけどノリックに引き留められた。
なんでもみんなリーダールームで会議をすることを楽しみにしているらしい。
意味わかんねぇよ!!
会議なんて広いリビングでやれば良いだろ、むしろ俺はそのつもりだったんだ。と言ったんだがこうゆうのは雰囲気が大事だとかなんとか言われた。うん、もっと理解出来ない。
仕方無く手伝ってもらって全部倉庫に運ぶことにしたよ。昨日はほぼそれで終わったと言ってもいい。
途中、怒りの治まったハウスの従業員さんが俺に八つ当たりをしたことを謝って手伝ってくれた。
いや、それはまぁ・・・・・・・一応責任者ですし俺、ね。
責任を取るのが仕事ですし。こちらも目が行き届かなくて申し訳ないと再度謝っておいた。
そうやって皆でがやがや運んでると、いつの間にか罰が悪そうに大魔道二人も混じっていた。
敢えて触れないのが優しさ、ではなくてお仕置きだろう。
うん、次からはよく考えて行動して欲しい。
結局昨日はほぼそれで終わったと言ってもいい。
疲れたらしく魔法の講義は明日から。と言ってババア二人はとっとと寝やがった。
年寄りの夜は早い・・・・・・・・