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異世界(この世)は戦場、金と暴力が俺の実弾(武器)  作者: 木虎海人
序章 この世は戦場、小金持ちは悪人の鴨と葱
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女子との出会い

細かい所を修正していたら、時間切れになり、何度も辿って直すのが面倒だったので分割しました。

元は前話の「体重計のない世界で」の後半で、新しい話ではありません。

中途半端に長いと直すときに大変なんだと反省m(_ _)m


 準備期間五日目、夜



 その日は飲みに連れて行ってもらえなかった。

教官たちが夜に集まって会議をするらしい。


 会議なんて昼にしろよと思ったが、なんでも酒を飲みながら集まって打ち合わせをするらしい。

半分仕事、半分息抜きだろう。

 どこの世界でも大人が大変なのは変わらない。

こっちの世界の子供も大変だろうけど。

上手く息抜きをして欲しい。

こっちにきてから本当にお世話になっているからな。毎日毎晩俺なんかのために本当に申し訳ない。



 それでも夕飯後には少し扱かれた。


「時間が無いから濃くやるぞ」


と言われたときは死刑宣告の言葉に聞こえたが。


 それって俺が死ぬ奴じゃねーか。

おかげでかなり痛めつけられた。

教官はみんな回復魔法を使えるらしく、おかげで容赦がない。

 初級しか使えないらしいが、教官の人数が増えているので、数を重ねれば初級でもそこそこの効果があるようだ。

治療院のおっぱいさんが恋しい。

あの日以来会えていない。


 その後は1人で訓練所で身体を動かしていた。

型をやったり、打ち込み台に打ち込んだり、好きなように動いてみたり、筋トレをしたりして過ごす。


 ここ数日はいつも教官が相手をしてくれたので特に考えずに言われた事をやっていたが、1人になって改めて思う。

強くなるには師匠が必要だと。

独学には限度がある。

1人で闇雲に武器を振り回していてもそこまで強くはなれないだろう。


 少し考えて、相手をしてくれた教官の動きを思い浮かべる。

技術は模倣から始まる。


 盗みは罪だが、目で見て覚えた技術を身体に覚えさせて模倣する(盗む)ことは罪にはならない。

人はそうやって日進月歩、技術を進化させてきた。


 どんな世界でも職人は見て覚えることから始まる。

だから俺は目に焼き付け、身体に叩き付けられた、極道コンビの技を思い浮かべる。

そしてそれをなぞって動く。


 あの2人はヤクザのような怖面の外見と違って、動きは滑らかだ。それがとてもで美しく見えた。

多彩で華麗な技を使う。

弱々の新人に本気ではないだろう。

だがそれは俺が思う理想に限りなく近いものだ。


 無駄の無い美しさ。

シンプルかつ最短という、機能美のような美しさがある。


「(立ち姿は)穏やかな水面の如く、技は一瞬の風の如く」


 これが俺の理想だ。柔道の超強い女性の漫画のあれだ。

面白くて元気なお爺ちゃんが言う。

タイトルの響きで連想されるのは、政治家でプロ野球選手の奥さんの方が多くなっちゃったけど。

漫画の方が元なのに。



 1人で思い出しながら2人の動きをなぞっていると、あの2人の技こそが俺の理想に近い動き(それ)だという事がよく分かった。


 それが何故か凄く嬉しくて、俺は繰り返し極道コンビの動きを思い出しては真似て動いた。


 武器を持ち替えながら何度も繰り返した。





 一息ついたときに、俺が1人繰り返し練習している姿を入口から見てる者たちがいることに気づいた。

しばらく俺はそのまま続けていたが、視界の端に白金色の何かが揺れるのが見えた。


 それが人の髪だとすぐには気づかなったが、一度気になるともう駄目だ。

その髪色がとても美しく見えて目が奪われる。

集中出来なくなった。


 こちらの世界の人間は様々な種族に様々な髪色、瞳の色をしている。赤だの青だの珍しくもないようだ。

黄色に近い金色は何人かいたが白みが強い白金色は珍しい。

目を奪われると心が奪われる。そして体が動かなくなる。

俺の視線は入り口でこちらを覗きこんでいる一団に固定された。


 当然相手の視線もこちらに向かう。

俺の姿を見ていた集団は俺と目が合うようになる。

相手は4人の女子だった。


 そのなかから1人の女が前に出る。

背の丈は180センチの俺と変わらないくらいで、体格の良い者が多いこちらでも背の高めの女だろう。


「あはは、ごめんねー。気を散らしちゃったかな?

悪気は無いんだ。

少し練習しようかと思って来たら先客がいてね。

様子を見てたらつい、ね」


「ああ、お互い講習生で、手伝い要員だ、気にしないで使ってよ。ここは教官から使用許可下りてる場所だし。

俺ももう少しやるけど、気にしないでいいよ」


 1人だったので訓練所内の予備の訓練用装備が置いてある前を占領していたが、場所を譲って少し離れる。


「うん、ありがとう。講習前に少し慣れておこうかって話してね。練習しに来たんだけど1人しか使って無いから駄目だったかな?って」


 離れようとした俺の背中に声がかかった。

思ったよりも気安いが、おかげで接しやすいとも思う。


「この時間はいつも俺と教官しかいないよ。

単に誰も来てないだけだから気にしないで使えばいい。

教官は誰も来やしないって怒ってるくらいだし、練習してるの見たら喜ぶんじゃ無いかな」


「そうなんだ。じゃ私たちも少し練習させてもらうね」


 そういって彼女は仲間の元に戻りワイワイ練習用の装備をいじくりまわし始める。

俺の方はというと、集中していた流れが途切れてしまった。

少し腰かけて一休みすることにした。


 女は4人組で見たことがあった。

それはそうだろう、毎朝一緒に走っている訳だ。


 俺の後を走っている二番手のグループの人たちだ、つまり走り切れていない人たち。

だが今いる連中の中じゃトップクラス。

身体が慣れたらそのうち走りきれるだろう。

こればっかりは繰り返しやらないと出来るようにはならないだろう。

持久力とはそんなものだ。


 それにしても俺と話したあの女、目線がほとんど変わらなかった。

つまり180センチの俺とほとんど変わらないということだ。

異世界の女はデカい女が多いのだろうか?


 彼女以外の3人はさほどでも無いことから多分それは無い。

デカい奴はデカい。

俺のいた前世でも俺よりデカい女はいることはいた。

 女子バレーボールの選手なんかは有名だ。

俺よりでかい女がいて、俺よりはるかに高く飛びあがる。

そして真面目で熱心だ。


・・・・・・あれ?俺より転生者向けなんじゃね?バレーボーラー。


 彼女もまたその範疇なのだろう。

俺と変わらない背丈に、性別的に細く見えるが肉付きは良い。

つまり体格は良い方に分類される。

講習生で手伝い要員の連中の中では俺と並ぶツインタワーだろう。

 というのは嘘だ、実はもっとデカイ奴がいる。


 背中まで伸びた髪は白金色、それを後ろで一纏めにしていて、前髪も綺麗に整っている。

瞳の色も髪の色と同じ。

 ぱっちり開いた美しい瞳に、むっちりとした唇はバランスが取れていて俺の目を強く惹く。

うん、かなりの美少女だと思う。話す機会が出来てちょっと嬉しい。


 他の3人も彼女に見劣りすることは無い。

講習生の中でも可愛い子たちが集まったグループなのだろう。

だいたいかわいい子はかわいい子同士で固まる。


 その辺は講習が始まると人が流れ込んで来てまた再編があるだろう。

どう変化があるのか楽しみだ。


 4人中でも彼女は飛び抜けている。

主に身長面でだけど

先にでた女子バレーボールの選手のようだ。

体育会系美少女とでも言おうか。

代表して声をかけてきた事を省みるに活発な性格か行動的な性格な子なのだと思う。

つまり社交的。

どっかの黙々と身体を鍛えながら金の事しか考えていない陰気な名無し野郎とは大違いだな。


 一瞬あわよくば!とか考えた。

彼女は勿論彼女の仲間でも。

多分色々溜まっていて誰でもいい気分なのだろう。

こーゆうときは惚れっぽくていかん。


 話しただけで好きになってしまう。

モテ無い男あるあるだ、これはイカン。


 煩悩を振り払うために訓練を再開する。


 彼女たちとは少し離れ、再度極道コンビの動きをトレースする訓練に戻る。

思えばあの2人は軸が全くぶれない。


 対し俺は武器を振ると身体、特に上半身が流れていると自分でも思う。

空手をやっていたときに独楽の動きを意識するように教わった。

独楽のように軸を中心に回転するように動くのだ。

独楽は軸が中心に回転している限りぶれない。

勢いが弱まる、軸もぶれる。

そして止まる。


 習うべきは高速回転している独楽の動き。

軸を乱さず身体を動かすのだ。


そう意識して再度身体を動かし始める。


 しばらく練習するとたまに、自分でも「おっ、今のいいんじゃないか!」と言う動きが出来るようになった。

あとはこの「おっ!」の動きを増やす努力だ。

 常に良いと思える動きを出来るようにし、さらにそれを昇華させる。


 それを自然に行えるくらいに。

教官たちの凄いところは戦闘の動作がごく自然に行えることだ。


 人間には闘争本能があるはずだ。

それは細胞(DNA)に叩き込まれているはず。

まずはそれを呼び起こす。

鍛錬してればそのうち起きるだろう。起こし方は知らない。


 起きるまで、自分自身に求めるモノは戦闘技術だ。

しかしこの戦闘技術は人間の細胞(DNA)には叩き込まれていない。


 生来努力せずとも強い奴はたまにいる、が、それは身体能力が強いからだ。

図抜けた体格と筋力で圧倒できる。もしくは筋力と反射神経で圧倒できる、この辺りだ。


 全ての格闘技術、そして戦闘技術は人が研鑽し積み重ねてきたもの。

強い人間はそれを自然に使える奴だとも言える。

息をするように、歩くように人を殴れる奴、殺せる奴。

近くにいたら恐ろしくて仕方ない。

だがそんな奴になる必要がある。


 努力とは反復だ。

反復とは非反射だ。

人間の身体は元々自然に可能な動作と、練習して可能になる動作がある。

反射的に発する動作、これは自然に可能な動作になる。つまり誰でも出来る動作だ。

これは戦闘向きでは無い。

それを訓練で押さえ込み、練習した動作を新たに組み込む。

これが戦闘技術だ。


 極端な例をあげれば相手が殴りかかってくる。

目を瞑ってしまうのが反射だ。

反射的に顔の前に手をだして防ごうとする、これも反射。


 それに対応して目を瞑らず、手を前に出さずにやり返せる。

これが非反射になる。

避ける、ガードする、殴られる前に潰す、あえて殴られてからやり返す、などなど。


 当然簡単ではない。

それを得るには数をこなすしかない。



 まずは剣と槍を自然に振る動作を身体に染み込ませ、覚えさせる。


 俺は消灯(終わり)の鐘が鳴るまで煩悩を振り払うかのように黙々と鍛錬に励んだ。




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