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異世界(この世)は戦場、金と暴力が俺の実弾(武器)  作者: 木虎海人
4章 裏町を掌握せよ!
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任務の後の祭り 1

新章ではありませんが、場面が変わります


夜道を1人歩く。

歩く速度はいつもよりも遅い。


気分は良い。だが身体の動きは些か鈍くなっているのが分かる。

酒が入り、酔っているのだから当然といえば当然だ。

この酩酊感は嫌いじゃない。少しだけ幸せな気分になれる。


ジンロに飲ませて酔い潰すつもりが、危うく逆に潰されかけた。

ご返杯、侮り難し。

お気に入りの酒なんだから1人で飲めば良いものを、俺にも飲ませたいらしく、注げば注いだだけ返ってきてしまった。

どうやら酒を褒めたのは失敗だったようだ。


彼には息子がいるらしい。酔って何度も同じ話を聞かされた。

その息子さんは酒が飲めないということで、その身代わりにされてしまった。

ジンロは師匠達と同年代で親しいようだが、俺は彼にそこまで気持ちが無い。

あくまでも交渉相手として一線を引いている、そこに少し+αがあるくらいだ。

息子と飲みたいという気持ちは分かるが、他の奴で叶えて欲しい願いだった。

次は適当な理由をつけて、あのおっさんと飲むのは避けようと思っている。



冒険者ギルド第3地区支店の講習施設の中は比較的安全だ。部外者は入れないようになっている。

講習中は外部からの接触を禁じられているので、当然の措置だろう。

とはいえ絶対でも無い、逆恨みの種はいくつも転がっている。

恨みを買うような事は散々やってきた。


居残りの連中からも一部、怪しい動きをしている奴がいると報告は受けている。

短慮を起こして襲われる可能性も無いとはいえない。

夜道で遅う。

短慮で浅薄な俺が一番得意とする行動だ。だからこそ用心に越したことは無い。


それにしてもちょっと飲み過ぎた。

だが酒にも贈答用にも使われる高級酒があると知れたのはちょっとした収穫だろう。


当然の事のようだが、世の中には値段のつけられないものが存在する。

高くて値段のつけられないものも勿論だが、価値が無くて値段のつかないものも存在するのだ。

そして安物、安い値段しかつかない物というのも存在する。

金儲けをしたいと思う以上、何を商うかというのは大事だ。

薄利多売が商売の基本なのは間違いないが、ブランドというのものもまた商売の基本である。

薄利多売は言うは易く行うは難し、資本の無い者が行うのは絶対的に難しい。

最初に〝儲け〟というモノを考えるならば、値段が高い物で利ざやを大きく取れる商いも視野にいれて動く必要がある。

看板(ブランド)〟があれば酒も大きな取引の品目になるだろう。


適当な品質の酒を手に入れて、適当な伝説をこじつけて、アホな貴族に高く売りつける。

酒の値段の話になったときに最初に思い浮かんだのはそれだった。

例えば竜を殺すとしよう。悪い竜がいい。

民草を苦しめ、貴族の利益を害し、正規軍では手に負えない竜がいたとする。

それを何らかの手段で俺が殺す。

その時に使った酒がコレだ、という付加価値。

その時の戦いの前の日に仲間を鼓舞するために振る舞ったという宣伝文句。

その戦いで傷ついた仲間と味わった勝利の美酒という謳い文句。

矛盾するが、薄利よりも高利の方が儲かるのは当然だ。それを独占できるかどうかで大きく別れる。


商人と言っても一口には言えないのだ。

どこのどんな道を選ぶか。

大事なのは薄利多売は貧乏人相手の商売で、高級品をやりとりするのは金持ち相手の商売。

大規模な薄利多売なら儲けも大きいが、大概は高い物を扱う方が儲けが大きい。

リスクも当然大きくなるが、それはどんな道を選んでもついてくるだろう。

後は継続して儲けが出るかどうかだ。だからこそ独占できるモノに付加を漬ける必要がある。


忘れてはいけない事は俺の場合、貧乏人も、貴族も相手にする必要があるということ。

子分どもに飯を食わせて、貴族からも金を引っ張ってくる必要がある。


「そういや 羊小屋 (シェプコット)の件、任せておけと言われたが、あの酔っ払い加減でだいじょうぶかな・・・・・」


酔いつぶす事には成功している。

しかし残念ながら面白い話は聞けなかったので、代わりに頼み事をねじ込んでおいた。

裏町に手に入れた『 羊小屋 (シェプコット)』と呼ばれる紡績工場(こうば)だ。

規模的に工場(こうじょう)というよりは、街工場(まちこうば)が正しい。


わざわざ足を伸ばして拠点を手に入れたんだ、有効に使いたいと思っている。

子分どもはあそこを寝床にしたいらしいが、そんな勿体ない使い方をするつもりは無い。

掃除の徹底を指示し、寝泊まりしたら殺す、と脅しておいた。

オークは馬鹿で考え無しだが、工作機械や道具を無意味に壊したりはしていなかった。

勿論あちらこちら壊れ、損傷は激しかったのだが、原型を留めていた設備が結構あったのだ。

労働力には労働する場所を提供してやればいい。


持ち主の居場所と、所有権の書き換え方法を調べてもらえるように頼んでおいた。

死んでれば話は早い。跡継ぎが居なければなお良い。

いても裏町に、そして 羊小屋 (シェプコット)には一切近づかせないつもりだ。

ただで他人の為に取り返してやるなんて、甘い事をするつもりは無い。

暴力でも財力でも、そして権力でも、何でも使って自分で取り返せっという話になる。


問題は酔い潰したために頼みを覚えていてくれるかだ。

理解してるのかどうかよく分からない反応だった。

ついでに中の設備の修理が出来る人間と、そこで働いていた奴隷の事も当たってもらえるように言ってある。

頷いていたから、分かってると思いたい。

元がどの程度の規模だったか知らんが、紡績業が復旧すれば街に取って利益になるし、それをいち早く掴んでれば、伯爵家にも利益があると思う。

もっと問題なのはそれが酷く困難だという事だ。


「でもやんねぇとなぁ。飯を食わさなきゃ言うこと聞かなくだろうし。

暴力で従えるのには限界がある。」


金で従えるか、暴力で従えるか。

迷うことは無い、両方使えばいい。

悪さをさせないだけじゃ駄目なのだ。表向きだけでも仕事をさせる必要がある。

ギルドにはその仕事の斡旋もお願いしてはあるが、それを受けるだけでは駄目だ。

力関係で圧倒的に負ける。

負けていても、ある程度拮抗するくらいには持っていきたい。



裏町の方でも、工場の関係ある仕事に就いていた奴を探すように言ってある。

働いていた人間は勿論だが、元の世界ほど流通が発達していないこっちの世界だ。

ある程度近いところに、設備を作ったりメンテナンスをする奴も住んでいたはずだ。

わざわざ毎度毎度、街から街へと通って修理に来ていた訳が無い。

作れなくても修理できる程度の奴が近くに住んでいた筈だ。

過去に街中には小さな電気屋が沢山あったのと同じ理屈だ。彼らは自分で電化製品を作れなくても、取り付けや簡単な修理が出来た。

俺の時代には大規模店舗に淘汰されていたが、地域に根付けば生き残っているところもあった。

雇い主は逃げれても、下っ端作業員が逃げ切れるとは思えない。

1人2人裏町に紛れて生きているんじゃ無いかと思う。


見つけたら攫って来い。例え他所の縄張りの奴でも。

そう伝えてある。


「くくくっ、火種は多い方がいい。侵略するのは決定してる。」


ライアスたちは良い仕事をしてくれた。

南側の裏町に、人を送り込んできていた北側の組織で縄張りを何も聞かず荒らしてくれた。

北の大手が再度南側に人を送り込んでくる前に、南東地区の裏町は俺が平らげてやる。


やることは多い。だがやりがいはある。

おそらくだが、信仰者が増えると俺が出来る事が出来るというのは本当だ。

派手に氷の壁を作ったおかげで 〝氷の神〟を本気で信じる者が増えてきているのだろう、少しだが魔力が高まった気がする。

魔力の量が増えた、のでは無く、質が高まった。 向上した。

そう感じている。


今までは俺が怖くて上っ面だけだった奴らが、本気で氷の神に祈り始めたのだ。

自分だけは助けて下さいと。


「だがまだ足りない。もっとだ。」


純度が高い程強い。今後はそこが鍵になると見ている。

強くなる要素がもう1つある、こんな絶対的有利な要素、逃がすわけには行かない。





そんなことを酔った頭で考えながら歩いていると、突然スキルが発動した。

〝看破〟のスキルだ。 〝看破〟のスキルが、道の先にいる女性の姿を発見した。

特に隠れているわけでは無いが、道の脇で誰かを待っているようだ。

酔ってはいても得たスキルは勝手に発動してくれるようだ。



1人の女性が道の先にいる。それが誰だかはすぐに分かった。

どうやら待ち人は俺では無いようだ。少し残念。


講習を受けるようになって、俺の事を待っていてくれる人は何人か出来た。


最初はセレナだった、こっそり会えるのを楽しみにしていた。

段々相手がビアンカになる事が増えた。嬉しかったが、代わりにセレナとの機会が少し減ったのが寂しかった。

胸のデカい魔法使い(自称)はまるでストーカーのようにしつこい事が有る。面倒になって勝手に課題を作って押しつけるようになった。でなければ暇になるとすぐに会いに来やがる。

メアリーが来ることもあるし、派閥の誰かがいることもある。

最近はマナが一番多くなった。

チカチーノは一度も無い。たまに遠くで見ているが、まだそこまではしてくれない。


人が待っているのは素直に嬉しいし、珍しくもない。が、今日この先にいるのはその誰でも無い。

ライアスの彼女のプリエッラだった。

ライアスの派閥でナンバー3にして、年上の彼女であるプリエッラ。

どうやら俺の方は今日は誰もいないらしい。


少し寂しい。


だが彼女は俺を視認すると、こちらに近づいてくる。

心なしか、いつもより元気がなく、服も薄着だ。


「話があるの・・・・・・」


目が合うと、あまり抑揚の無い声でそう伝えてきた。

この感じは危うい。

今この()と2人きりになると危険な予感がビンビンする。


「中で聞きますよ。」 


まだ酔っているテイを崩さず、警戒感を感じさせないように軽く答える。

まだ酒は抜けていないが、少し酔いは醒めた。

ご無沙汰で欲求不満だったら危なかったかもしれん。

昨日、任務から外してふて腐れたクィレアを押し倒しておいて良かった。

ふて腐れ絡んでくるから、慰めてたらつい・・・・・

爆乳、最高だった。 あの女初めて役に立った気がする。



「ごめん、ライアスに言われてきてるの。出来れば人の居ないところで話したい。

とても大事な・・・・・・話なの。」


だがそう食い下がられると無碍にも出来ない。

さて困った。



このプリエッラと、ライアスの派閥のナンバー4、バルダニオは三歳年上だ。

2人はライアス派閥の中では穏やかな性格で嫌いでは無い。話せる人たちだ。

周囲のまだどこか抜けきってなく、少し幼さが残る容姿に比べて大人っぽく見える。

若い時の年上は大人びて映るものだ。

そんな女が今日は随分と薄着で自分を待っている。

まず有りえなく、尋常では無い事態だろう。

こんな場合は、関わらないのが正解だ。


だがプリエッラは何かある、そう思っても後ろ髪を惹かれるくらいに、美しい女性である。

ライアスの彼女だと聞いて、(ライアスは年上好きか、良い趣味してるぜ。)と素直に思っていたくらいだ。少し羨ましかったくらいは大目に見て欲しい。

憂いのある瞳、どこか庇護欲を擽るその出で立ち。

長い髪が時に顔に影を落とし、その濃淡が様になる美しさがある女性だ。


周囲にいる誰とも違うその色香に、寄ってくると強調して見えるその胸の谷間に、酔う。

そんな美人に上目遣いでお願いされて断れないのは性格だろう。

場所を移すことを承諾してしまった。


彼女は行き先を決めていたようで迷うこと無く先を歩く。

それは余計なことを聞くな、という意思表示でもあるのだろう。

会話も無く、空気が重い。


着いた先は穴場、と言われる場所だ。

何の? と言わればいたすところだ。

若い講習生が集まれば、色恋は当然で、何組もカップルが出来る。

肉食獣()狩猟者()が争う狩り場でもあるのだ。

そんな狩り場で、ごっそり女を掻き集めているのがユリウスで、綺麗どころを選んで独占しているのが俺だ。憎しみの感情を持っている奴も多いと聞く。

そんななかで 恋愛面ではあまり恨みを買っていないのがライアスだ。

美人の彼女がいて、他にはあまり興味を示さない。

当然美人の彼女がいれば、多少のやっかみはあるのだが、俺たちに比べれば些細なものだ。


そんな美人の彼女が俺の前にいる。

人目につきにくい、そんな場所には先客が・・・・・・残念ながらいなかった。

スキルに反応が無い事をみると、周囲に人はいないのだろう。

こんな場所で何を話すのか?


「ライアス、何だって言ってました? 別に何でも直接言えばいいのに。

俺あんまり人を挟んで会話するの好きじゃないんですよ、出来れば次からはやめてもらいたい。」


どうも無駄に言葉を長く紡いでいる気がする。

こんな場所に連れてこられた事で、何の用事かなんて理解出来ない訳が無い。

ノコノコ着いてきてなんだが、それをするわけには行かない。

むしろ罠で、マーヴィッドあたりが数人引き連れて出てきたほうが幾らかマシだった。


「伝言、じゃなくて・・・・・・分かるでしょ?」


そう言った彼女の顔は酷く妖艶に見える。泣きそうな、だが誘っているような、そんな怪しい表情


「分かりませんよ。 友達(ツレ)の女に手を出すつもりは無い。そんな事を喜ぶとでも思ってるんですか?」


「大丈夫。抱かれて来いって、言われてるの。」


そう言って羽織っていた服を落とした。

薄着だと思っていたが着ていたのはその服と下着だけ。

友達の彼女、その下着姿に視線()が奪われる。


「はっ? 意味わかんないんですけど。」


今すぐに押し倒したい。そう思わないわけがない。

だがそれは後先を考えない奴の行動だ。そこまで愚かでも無い。

ライアスと戦って負けるとは思わないが、争ってまで彼女を抱きたいかと言われればそれは無い。


黙って立ち去ればいい。

でもそれが出来ず、せめてもの強がりでそう返した。


「気にしないで。好きにしていいわ。どうせ・・・・・・・・・・・」


「!? ・・・・・・・・・・・どうせ?」


そう言って一瞬だけ昏い顔を浮かべた事が気に掛かった。

おかげで魔法が解けた気がする。目が自分の意志で動く。


「何でも無いの。・・・・・・そう、何でも。

だって私は、しても、構わないんだもの。さぁ、どうぞ。」


そう言って身に付けている全てを脱ぎ去って手を広げる彼女を見て、頭の中で何かが弾ける音が聞こえた。

ご無沙汰しております。

コロナショックで生活が変わってあたふたしております。

マスクが買えなくて困りますよね。

このまま四月になると花粉症用の備蓄も完全にアウトです。

そんな中ブラジャーマスクとかいう素敵ワードが聞こえてきたので最後の手段で・・・・・・

ボチボチ投稿していくのでまた宜しくお願いしますm(_ _)m

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