表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界(この世)は戦場、金と暴力が俺の実弾(武器)  作者: 木虎海人
4章 裏町を掌握せよ!
133/196

オークの残党を討伐せよ 2


新しい任務を受けたはいいが、最初から躓いた。

とりあえず誰が抜けるかを話し合ってもらう。

最後は強権発動で無理矢理決めるつもりだが、自主的に引いてくれるならそれがありがたい。

とはいえ、今回どうしても連れて行きたい奴が数人いる。そいつらだけは譲れないだろう。



原因はあの忌々しい子爵の娘だ。 女性に好きって言われて、こんなに鬱陶しいと思う事が有るとは夢にも思わなかった。

あの女ともあの後に時間を取って話合う機会を持ったが、なんというか図々しいというか、上から目線というか。

500万用意させた件を手土産に俺の側に置き、かつナンバー2のポジションを用意しろと言ってきている。

実際はもう少し柔らかく遠回しな言い回しだったが、どう受け止めても厚かましいとしか思えない話だ。

今まで敵対関係にあった組織にいた者を、いきなりナンバー2なんて真似はよほど有能でなければ難しいだろうに。

なによりもあの女に、ナードに任せている全体の調整が出来るとも思えないし、やるとも思えない。

俺の側にいる人間だけの人間にナンバー2なんて役職を与えられるわけがないのだ。



何より金はまだ全額を受け取った訳では無い。受け取っていない以上それを成果とはいえないだろう。

現状もらってるのは子爵の娘の分の現金だけだ。

あの女はあっさり100万くれた。


そうゆう意味では幹部として扱うのならば、全く構わないのだが。

幹部の椅子? 100万zで売っちゃう、売っちゃう。

どうせ元兵士組も名目上は幹部にするし、扱うし。 面倒な仕事も不審に思われない程度にガンガン任せるつもりだし。

年長者なんて、適当な役職をつけて、手間が多い仕事を任せておけばいい。

それでもって「いやー、流石です。」とかおだてておけば良いのだ。

最後に「次回も宜しくお願いしますね。」と言って爽やかに、そして速やかに退散するのみだ。

得てして年を取ると苦労話が長くなるからな、話を聞くのは愚鈍な誰かに任せればいい。



それよりも問題になるのは、俺の側に来ることだろう。彼女がユリウスのパーティを抜けて、俺のところに来ると言っている事だ。

それだけは絶対に許可できない。彼女自身が鬱陶しい存在でなかったとしてもだし、〝血統魔法の回復魔法〟には大いに興味が有っても、だ。それをやったら、今後互いの関係が構築がかなり難しくなるだろう。

散々壊すような事をしておいて何だが、仕切り直した今に、それをやってもやはり決定打になるだろう。

つい感情的になって、


「無責任だ。」 と言ってしまった。





      ★☆





「無責任!? わたくしが、ですか!?」


女は心外だとでも言いたそうに、顔を強張らせた。

いや、どんな言い方しても、あっちを放り出してこっち来るなんて無責任だよ。


「うん、ユリウスの任務、いやユリウスを勇者にする任務に潜り込んでたのはいい。

で、正体がバレたから自分は知りませんってそれは、無責任だと言わざるをえない。」


「どうしてでしょうか?正体をバラしたのは旦那さまが原因ですし、責任を取る必要があるとすれば旦那さまだと思います。それに、わたくしのあとの回復役に関してはそれは残る者の責任でしょう。

脱退したあとの事を考える必要はありませんわ。」


「いや俺に責任ないよね? 脱退も普通ならそうだろうけど、本来そこの役に入る奴を押しのけて潜伏してたんだろう?」


俺がバラしたのは貴族家って事だけで、潜伏してた話はバラしてない。そもそも知らなかった。

多分自分で勝手に言いだしただけ、俺のせいじゃない。


「関係ありませんわ。そこまで考える必要もありませんでしょう。」


「言いたいことは分かる。けどアンタは勘違いしている。」


「勘違い?」


「ああ、後釜についてのどうこうじゃない。一度潜り込んだとはいえ、受けた任務を放り出して、こっちに来る、という事が無責任だと言っている。

俺は無責任な奴と組みたくない。そんな奴と一緒に仕事をしたくない。

そんな女を妻にしたくないし、愛せない。

こっちに来ても何も任せられないよ。俺の次のポジションなんて絶対にお断りだ。

途中で投げ出して、また他所に行かないという保証が無いだろう。」


「わたくしが信用出来ないと?」


「今は俺に気持ちがあるからいいよ。それが本当ならばだけど。

案外他の男に気持ちが移ったら、任せていること全部放り出してそっちに行くんじゃないか?」


もしくは重要機密を盗み出して渡すとかな。組織の金をどっかの特定の誰かに貢がれでもしたら洒落にならない。特に俺と、こいつ。庶民と貴族では金銭感覚が違いすぎる。流れる額も大きくなるだろう。

そんな意味もあってお財布関係も一切任せられないだろう。

仕事を任せられない、貴族の娘なんてお飾り以外の何者でも無い。そんなもの庶民の互助会に何の役に立つと言うんだか。


「そんなに尻が軽くは有りませんわ!」


さすがにイラッとは来たようで、強く言い返してこられた。

少し目尻を釣り上げて、睨み付けている。そんな顔も出来る訳だ。

でもどこか演技っぽいんだよね。


「でもそんなの分からないだろう。仕事を投げ出す奴を信用しろって言われてもな・・・・・・・」


裏切り者に重要な仕事なんて任せない、それが普通だろう。

それが例え利益を出す存在だとしてもだ。 裏切りものに与えられる役割は、また裏切られても問題が無い程度の仕事に決まっている。

就けるのは末端の幹部、そこら辺が限界だろう。

また裏切られても、問題無いポジションにしか置けない。

ナンバー2 は当然、最高幹部にだって厳しい。そもそもそんなに大した組織じゃ無い。まだ講習生の集まりだ。だからこそ、俺の一声でナンバー2のポジションになんて就けちゃいけないのだよ。


「わたくしを側に置きたくないと?」


「別にそこまでは思わないが。今のままこっちに来ても口出しされたくは無いね。

俺の方に来るならば、そっちを丸投げでは無くそれなりに形を作ってから来て欲しい。

見た限り、あなたの回復魔法は相当なものなのだろう?」


「ええ、おそらくご存じでは無いと思いますが、〝血統魔法〟は爵位が高いほど強いという特徴があります。それくらいに、一族単位で秘匿し各々の家で研鑽しているのですわ。

特に正式な妻の子と、そうでない者の間には確たる差がありますわ。

資格無しと判断された者は、子供のうちに封印し、使えないようにするので、わたくし以外のものは任務が決まってからその封印を解いて、改めて教わっているのです。

故に未熟、当然ながら万全に扱い切れていないのですわ。

わたくしならば、全く問題有りません。」


そう言って胸を張った。それだけ自慢の魔法なのだろう。

そしてなかなか良い形だ。ついつい手を伸ばし、揉みたくなるが自重だ。我慢我慢。

一度手を出したら、後に尾を引く。

手を出すならその覚悟が要るだろう。

今は全くその覚悟は無い。静まれ俺の右手。ふぅ


「つまり俺とあなたが結婚しても、その魔法は封じられる、という事になるわけか。」


普通に考えて、他家に嫁ぐなら封印するだろうな。

むしろその封じる方法が気になる。それも〝血統魔法〟なのだろうか?


ふむ・・・旨味がひとつ、それも大きな旨味が消えたな。

目の前の女の味が一気に薄くなったわけだ。

俺が薄くても許せるのはポテチ厚さとのうすしお味だけだ。貧乳もぺったん胸も愛せるから胸が薄いのは問題無い。だが男の娘、てめーは駄目だ。胸があっても無くても許さない。

 ちなみにうすしおという味であって本当に薄いわけではない。たしか健康ブームの時に塩分の取り過ぎは良く無いとかでそう表記されるようになったはず。

実際はそこまでうすくないし、スナックはどれも大概は濃い味付けになっている。

たまーに味がしないような製品もあるけど、それはメーカーさんの問題です、俺は知りません。

まぁポテチの話は置いておこう。


「ですので勇者に、もしくはそれくらい大きい功績が欲しいのですわ。わたくしも封印されたくありませんし。」


それを見逃す功績があれば許されると・・・・・・・知らんわ。

無責任女の為に何かを頑張る気にはならない。




「ではこうしましょう。」


一気に興味を失って俺が口を閉ざすと、場は沈黙に包まれた。

しばしの沈黙のあと、女が手を当てて名案を思いついた。とばかりに口を開く。


「後発組が合流するまで、ユリウスたちも纏めて旦那さまが指揮を執ればいいのですわ。

ゾルダードたちも含めて、裏町の事も手伝わせましょう。

旦那さまのやりたいことも、必然的に5つの〝血統魔法〟を手伝わせることが出来ますわ。」


ふむ、悪くない。

5つの〝血統魔法〟が自由に使えるならば確かに悪い話じゃないな。

奴らが素直に言う事を聞いてくれるなら、だけど。


「却下だ。」


「なぜですの?」


「1つは〝血統魔法〟は欲しいけど、ゾルダードたちは要らない。

信用出来ない奴を味方として側に置くつもりはない。


そしてもう一つは、こっちは俺が1人でやる案件だから、だな。」


「お1人で、ですか?」


「ああ、裏町の件は『三ツ目』という組織の問題。

冒険者の、講習生が参加するのは互助会で、引いては『サッズ』という組織で動くの。

別問題で、別組織の話だから、手を貸させるつもりはないよ。 説明はした筈。


ま、多少は戦闘経験を積ませるために巻き込むかもしれないけど・・・」


たまたまサッズの面子が通ったところに裏町の住人が絡んできて、仕方無く喧嘩になりました。

その後に、俺の配下の三ツ目の奴らが、偶然通りかかってこれはチャンス! とばかりに漁夫の利を持っていく、くらいのことはすると思うけど。

ちなみに一通り説明は終わっている。彼女に関しては隠す必要が無いので大体全部話してある。

どこまで信じてるか興味ないし、どう報告がいくかは分からないが、実家が関わってくるならば大歓迎である。

どう報告が行ったにせよ、俺がこの女にした話を聞いたくらいで貴族が嫁に出すとは思えない。

連れ帰ってくれるならそれはそれで無問題(モウマンタイ)だ。


「裏町のことは俺がやる。これは絶対。

特にユリウスを手伝わせるつもりはないよ。手柄を持って行かれたくないし。


裏町をある程度纏めるにはカリスマ性が欲しい。

ユリウスは勿論、他の奴らの手を借りてやったら、それが分散してしまう。」


カリスマ性に関しては無い、これは自覚している。

なのである程度、後付けで伝説(ハッタリ)が欲しい。

もしかしたらそんなもの全てが、作り物なのかもしれないが。


裏町を1人で纏め上げた。 くらいの飾り言葉ならあったほうがやりやすい

ちなみに巻き込まない。というのは意思表示であって、絶対にしないという誓いでは無い。

積極的に手伝わせないだけで、一緒にいるときに揉めたら喜んで巻き込むだろう。そこまで気を使う必要は無い。



「困りましたね。ではどうすれば信用して頂けるのか・・・・」


そう言って顎に手を人差し指を当てて軽く持ち上げ、考える素振りをする。そうゆう仕草がいちいちあるから余計こちらが疑って掛かるんだけどね。無意識なら大したものだ。


「簡単だよ。ユリウスのとこの後続が来るまでは、しっかりパーティメンバーとして務めあげればいい。ユリウスのところで結果を出して、それを成果としてこっちに来るなら歓迎する。

子爵家の娘では無く、あなた個人での結果をくれ。」


「お断りしますわ。結果は旦那さまの側で出してご覧にいれますわ。無駄な時間を使いたくありませんの。」


このやりとりが無駄の極みだと思うのだがね、はぁぁ、面倒くせぇ。



            ★☆




そんなやりとりに随分長く付き合わされた。長く平行線だったが、最終的には向こうが折れた。

定期的に会う、2人の時間を取るという約束をさせられ、長くても1回目の防衛任務を受ける期限が終わる半年まで、という条件で。

 例え後続が合流しなくてもそのタイミングで必ずこちらに来るそうだ。

その辺は勝手にしてくれて構わない。 やることをやった上でなら文句は一切言わないつもりだ。

極端な話、ユリウスパーティとして少し活動してから、音楽性の不一致とかで抜けてこっちに来たとしても、それはそれで仕方が無いとなる。相性の問題もあるし。 評価はしないけどな。

そこまで教える筋合いは無いので言わないし、抜けた後にユリウスパーティが何かを成し遂げた場合、必然的に抜けた者の株は下がることになる、というだけのお話。

気づかなければそのまま半年頑張ってもらおう。


問題なのはもう一件、

「では、旦那さまが抱えている戦力から数人わたくし付きでお貸し下さい。」 

ときた。高慢だが、やはり油断ならない女だ。

どこぞの組織に潜入してもらうつもりなので断ったのだが、「ではわたくしもお断りしますね。」と良い笑顔でニッコリ笑って返された。

要は元々奴らが予定していた、後続が合流するまでの都合の良い戦力だ。

それをこっちで用立てろと言われた。 断れ無いわけでも無いが、断った方が面倒になる。

仕方無く飲むことにした。


「あとわたくしの個人的な部下、でもあるという教育も願いしますわね。」

と来るのだから良い性格をしている。

これについてはかなり迷った。 

特に「男はお断りですわ、旦那さまに疑われたく有りませんし。」と先に釘を刺されてしまった。

選択肢が必然的に半分になった。

出せる戦力としてジスナがいるが、奴をここで手札として出すわけにはいかない。

ジスナはこいつの部下にされるのは絶対に困るのだ。何だかんだ魔法も武術も使える女、それなりの組織に潜り込める可能性が高い。それを見越して魔力も伸ばしている。 ナード、ジスナの2人は多少強引にでも強いところに放り込むつもりでいる。ギルド本店のジンロさんにも相談済みだ。今更ユリウスの方に入れたくない。

彼女たちや、アベニルさんは無理。 セレナ? 俺の気持ち的に絶対に嫌だ。

そうなると切れる手札が、元々ユリウスとパーティを組みたがっている女しか切れなかった。

それに関しては、幽木女ことパメラと、マナを苛めてた3人がいた。むしろそれしかいなかった。 パメラも他の3人もナードの指示を聞くのは拒んでいるので、俺直属扱いになっている。

彼女らもどこかに潜入はしてもらうつもりだったので、一応話を通してみた。


4人ともユリウスの所なら、と言っているので未練が無いわけでもないのだろう。それは別に構わない。


 最終的には、4人の意志は勿論だが、子爵の娘が誰を選ぶか、そしてユリウスと残る兵士組が許可するか、という段階を踏む必要があるので、まだ決定はしていない。

あくまでも俺はこの4人を推薦する、というだけだ。

とはいえ、なるべく選ばれて欲しいのでこの4人は今回なるべく優先してレベルを上げたい存在という事になる。


そしてジスナとナードも確定。この2人は、互助会はともかく、サッズとしては絶対に中心に添えておきたいので、ある程度強く在ってもらう要がある。強いところに所属してもらうためにも絶対に連れて行きたい。

次いで同じ意味でだが、初期面子のノッヒとユーロフもそうなる。

これで8人だ。


悪いが確定だな。

もう1人はナード達とは別の方向で見込んでいる男だ。〝落ちこぼれ〟を払拭するときにノッヒと一緒に殴り飛ばした男なのだが、新派閥にも早くから参加している。

ノッヒたちと話合った上では無く、きちんと自分の意志で俺の側についた点も評価しているし、なにより戦闘能力の伸び代を個人的に今後1番感じている男だ。

魔力が平均並みな事が残念だが、珍しい属性2つ持ちで、体格もちょっとずんぐりタイプだが悪くない。

速度を生かした戦闘は向いていないが、腰を据えて戦うなら強くなりそうだと思ってる。あまり戦闘経験が多くないそうなので、何かしらのキッカケがあれば化けるんじゃ無いかと思っていた。

この機会がそれに該当すればと考えていたので、とても残念だ。

残念だが今回は見送らせてもらおう。





彼には今回は諦めてもらった。残念そうだったが仕方が無いと言ってくれた。

次があればその時は必ず参加させると約束しておいた。多分無いだろうけど。

呼び出しておいて全く本当に申し訳ない。

穴があったからって臆せずに、いきなり突っ込んじゃいけないのだ。 早漏の俺が全て悪い。


でも任意とはいえ、世話になっている教官の指示を断るなんて思わないじゃないか。


それだけユリウスを俺が追い詰めてしまっているって話でもあるのだろうけどさ・・・・・・


何はともあれ、俺の班はメンバーが揃った。明日の朝やることやって、とっとと出かけようと思う。

次回は来週の予定、宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ