始まりの日 3
「まったくこの分からず屋が。
他人のために身体を張るなんて、この世で最も愚かな行為だ。
馬鹿が。」
「イゾウ・・・頼む!今回だけは引いて欲しい。
君が怒るのは分かる。だけどそれは正しくは無いんだ。
回り回ってそれはいつか君の価値を下げる!」
「アホが、目を覚ますのはお前だ。俺は正義の味方なんかじゃねーよ。
お前の価値観を否定はしない、だがそれは俺には不要だ、いらん押しつけるな」
「それでも僕は・・・」
「もういい。
ライアス、ユリウスは俺がやる。
あっちを任せるから、死なない程度に痛めつけてやってくれ。
女は泣いて謝ったならお前の判断に任せるが、ゾルダードは駄目だ。
全責任はそいつに被ってもらおう。」
「なんだ俺はそっち手伝わなくていいのか?」
「どうせユリウス以外ご自慢の血統魔法で守られているだろ。
うっかり殺すと面倒だから、そっちをやりすぎないよう頼む。」
「ちっ、しゃ-ねーな、譲ってやる。
お前とコイツの喧嘩にも興味が有るところだしな。
おいてめえら聞いての通りだ。イゾウがそこの色男とやるそうだ!それを合図にやっちまえ!」
ライアスのその言葉にライアス派閥を先頭に、講習生たちが戦闘態勢を取り始める。
だがイゾウは特に動かない。腰掛けたまま続けた。
「とはいっても先手を取って終わりなんだけどな。ユリウスは戦うんじゃなくて守るだけ。
それじゃ俺を抑えきれない、喧嘩にもなりゃしない。良い子ちゃんじゃ出来る事なんて知れてるからな。
最後だ、そこをどけ、ユリウス。」
「・・・・断る。イゾウ、どうしてもと言うなら、やるなら僕を先に・・・やれ。
君にやられるなら諦めもつくよ。だがゾルダードさんたちはやらせるわけにはいかない。」
「相変わらず惚れ惚れするほど格好いいよユリウス。無様に散らせるのが申し訳ない。
くくくっ、んじゃ・・・試して見るかかユリウス。お前の得意な火魔法、もしくは風魔法どちらでもいい。
同時に何個まで展開出来る?」
「イゾウ、食堂で、いや講習時以外での魔法の使用は禁止されているよ・・・」
「真面目か。
ここに来てそれならそれでいいが、俺は勝手にやらせてもらうぞ。
『 氷の矢 』」
イゾウが魔法名を唱えると、イゾウの周囲に氷の矢が現れる。その数は10本。
氷魔法の矢を10本発動してみせたイゾウに周囲からは感嘆の声が上がる。
「数くらいはどんなに頑固で偏屈でも数えられるよな?これが10本、俺はまず10手だ。
確か俺の確認した限りじゃ、お前が使えるのは『 火の矢 』が5本 『 風の刃 』が7枚だったな。」
「どうしてそれを・・・
使える魔法の種類や数までは教えたことは無いはず・・・」
指摘されたユリウスは驚いた。互いに手の内の深いところまでは話した事が無い。
その顔を見てイゾウが不適に笑う。
「真面目で不真面目、そして怠慢だ。
誰がいつどこで敵対するかなんて、分からない。
今は仲間や友人でもいずれ敵対する可能性はあるんだ。手の内くらいは調べておくもんだ。
お前、俺がいないからって第2東門の防衛戦でかなり本気で魔法を展開して戦っただろう?
何をどうして、どうやったか、それくらいは聞いておくもんだぜ、周りから、な。
俺がいなくても、俺の眼はあるんだよ。
お前は勿論、そこで寝っ転がってる裏で小細工するのが好きな連中の事も、全部報告を受けてる。
俺がいない所での行動や発言、戦闘手段からある程度の強さの予測まで俺たちは共有してるぞ。
自分にしか興味が無いってのも、有る意味罪だ。 だからお前は真面目だが、不真面目で、何より怠慢だな。」
「・・・」
ユリウスは答えない。否、答えられなかった。
防衛任務後に班員と話す時間を取るなんて考えたことも無かったからだ。
イゾウの指摘を受けて、返す言葉が出てこない。
「それとも『 火の矢 』5本と 『 風の刃 』7枚同時に行使してみるか?
さすがにそれは聞いていない。出来るなら魔法の手数ではそっちが上回るな。魔法の手数では、だが。」
「・・・・くっ、だがいくらイゾウでも覚えたばかりの魔法だ。
身体を張ってでも止めてみせる。全てを完璧に制御なんて・・・出来ないはずだ!」
そう言ったユリウスの周りにも風の刃が現れる。
その数は7つ。
数で多く発動出来る風魔法を選んだ。
地に伏す元兵士組に狙いをつけるイゾウに対し、あくまでもユリウスはイゾウの氷の矢を狙う。
「おいおい、講習時以外の魔法の発動は禁止されてるぜ?」
「君が言うな!」
「くっくっく、俺は良いんだよ。色々覚悟を決めてるからな。
同時使用はやっぱり出来ないか。残念だ。期待してたんだがな・・・
しかし、身体を張るってか。
お前もそいつらも、手の内はガバガバで、相手の手札には無頓着なんだな。
俺はこれで11手。しかも威力は比べものにならないぞ。」
そう言ってイゾウは手に持ったフォークの先をユリウスへと向ける。
「使えるようにもうなったか?出来るなら相殺出来る。
それでも俺の方が3手多い。身体を張れるのがまさか自分だけだ、とか考えてないよな?
ちゃんと腹案もあるんだろうな? あんまりガッカリさせるなよ?
そのあとの運命はどちらでも変わらないけど。お前が無事なら少しだけ長生きできる。
誰か、ユリウスにもフォークを渡してやれ。」
イゾウが言うと人垣の中から1本、ユリウスへとフォークが投げ渡された。
だがユリウスはそれを受け取らず、地面に落ちて転がった。
「いらない。
僕はまだ『槍龍波』まで・・・・至っていない。」
視線を変えずイゾウへと言った。
それをイゾウは笑い飛ばす。
「くくくっ、だったら尚更、守っても無意味だ。
どうせお前以外のそいつらにも『血統魔法の魔法障壁』とやらが張ってある。
お前だけが必死になっても仕方無い。
守られてる奴を守られていない奴が、身体を張って守ってどうすんだ?」
「イゾウ、何の話か僕には分からない。
でも僕はこんなこと、見過ごせない。
もし、逆の立場なら君ならどうする!黙って見てるのか!?
君なら絶対にしないだろう!?」
そう言ってユリウスはイゾウへと強い視線を真っ直ぐに向けた。
「それは無意味な仮定だ。俺は逆の立場にはなんねぇ。
仮になったとしても、そいつらに怒りを向けるだけだ。
絶対に許さないという事だけは絶対に変わらない。
たとえ立場が変わったとしても、な。」
「イゾウ、もう駄目なんだな・・・・」
「あぁ終わりだ。この分からず屋が。
少し柔軟に考えられるように・・・・・叩いて柔らかくしてやるよ。」
そう言い終わったイゾウの右手が『槍龍波』を放つモーションに入る。
変わらずに口元だけが笑み、顔は冷たく冷めたままだ。
それを見てユリウスは全身を投げ出すようにイゾウの前に立ちふさがった。
それはまるでゾルダードたちの盾になるように。
だが『槍龍波』は放たれない。
「てめぇガレフ・・・邪魔すんな!」
イゾウの顔が冷たい冷めた顔から怒りの形相へと変わる。口元ももう笑っていない。
ドワーフの元傭兵、ガレフがイゾウの腕が動ききる前に止めていた。
魔法と違い、技法である『槍龍波』は、イゾウが一連の動きを完了しない限り発動することは無い。
完了する直前に、ガレフによって遮られていた。
ガレフの、イゾウよりも太い腕が、イゾウの右腕を絡みつくように押さえた。
それを拒否するようにイゾウも腕に力を込める。
だが拮抗して動かない。
その力が拮抗したことにイゾウの頭にさらに血を上らせ、ガレフは押さえ切れない事に少し驚愕する。
だが互いにその手を緩めることは無い。
「待たぬかイゾウよ、おぬし本当に手が早すぎる。
その性格、治せねば友人を失うぞ。」
「それで消えてくなら仕方無ねぇ、それでも許せないコトがあるだろうが!
てめぇは! 納得したからこっちに着いたんじゃねーのかよ!?」
「ユリウスはわしらに任せる約束じゃろう。」
「一度しくじった奴に同じこと任せる気はねーよ。駄目なら次の手段に移るまでだ。
俺が直接やる、それが確実だ。
てめぇこそ本気で止める気があったのか!?あぁ!?」
「ぬぅ、耳が痛いのぅ、止めようと思ってたのは本当じゃ。
だが迷っていたのも事実。その隙に飛び出されちまった、それはすまぬ。」
「だったら」
「じゃが待て! おぬしはユリウスを分からず屋だと言っていたろう。
本心では分かって引いて欲しい、そうじゃろう?」
「・・・うるさい、もう話は終わりだ、邪魔するな。」
「邪魔なんてしておらん。おぬしが本気でやるなら、協力者に合図をだせば済む話じゃ。
なのに合図をまだだしておらぬ、それは何故じゃ!?」
「おい、あんま挑発すんな髭親父、合図なんざ別にいつだって出せんだよ。
やんないとでも思ってるなら大間違いだ!」
そう言ってイゾウが左手を挙げる。
この手を振り下ろすのが、一斉に攻撃する合図だ。
故にここまで、イゾウは常に右手しか使っていない。
だが上げた手を今度は別の者が掴む。
シグベルだ。シグベルが手首を掴み、イゾウと目が合うと無言で首を振る。
その姿にイゾウの額には青筋が走った。
左手にも力が篭もる。
「よさぬか、短気を起こすで無い。
聞け、イゾウ。おぬしユリウスには何の説明もしておらぬじゃろう。
話をせい。言って、それでもおぬしの邪魔をするなら好きにすればいい。わしらも止めぬ。
だがユリウスはなんも知らぬのじゃ。
まずは話をする。それが筋じゃ。おぬしもユリウスも、な。」
「・・・言うよ。後でな。」
「もう今しか無いじゃろ・・・後で話が出来るとは思えぬ。
手を出したら戻れなくなる。」
「・・・・俺は人前でユリウスを晒し者にしたくないんだよ。
それこそ、例えユリウスをぶっ飛ばす事になってもな。
そのほうがいくらかマシだ。」
「イゾウ・・・・」
ユリウスがイゾウを見る。
ガレフもまたイゾウを見る。
シグベルやノリックもイゾウを見ていた。
「じゃー聞かせてやりゃーいいんじゃねーか」
そう口を開いたのはライアスだ。
「本人が聞きてぇならだけどな。」
そう言ってユリウスを見る。
ユリウスは「聞きたい。」と淀むこと無く返した。
「ラチがあかねーしよ。
いーじゃねぇか、聞かせてやれよ。その方が多分、面白れぇ。」
ライアスが悪そうに顔を歪ませて言う。
その顔を見てイゾウは少し嫌そうな顔をした。
そのイゾウの顔を見てライアスが続ける。
「聞いてもらおうぜ、ここにいる全員に。
なんでお前が怒ってるのか。お前についてるのか。
ここまで騒ぎにしたんだ、説明しなきゃおさまらねぇよ。
それを聞いてなお、こいつらの味方するなら全員ぶっ飛ばしちまえばいい。」
「まったく意地がわるいの、だがわしもそう思うわぃ
ユリウスは勿論、全員に言っておくべきじゃ。」
「イゾウ、頼む、ちゃんと・・・話してくれ。」
ガレフが言い、ユリウスも続く。
「~~~~~~~~~~~~~~~~
わかった・・・だが、後悔するぞ?」
少し考えたイゾウがユリウスへと答える。
「どんな話が待ってても、僕がこんなことを見過ごせないことは変わらないよイゾウ。」
「うんにゃ、お前は絶対後悔する。
人前で話を聞いたこと、な。
いいぜ、話してやる。」
イゾウは全く性格の悪いやつらめ、と思う。
どんなに頭に来ても関係無い奴にまで話をぶちまけようとはイゾウは考えなかった。
必要なら勝手に言う。約束なんて守る気は無い。だがそれは必要だからだ。
殴ってでも叩いてでも問題無いが、友人の事を衆目に晒したいとまでは思わなかった。
だがそれが解決策だと周りは言う。
思い通りにならない流れに苛ついた。
人垣の向こうではまだセレナとマナが言い争っている。
ユリウスは勿論、元兵士の味方もさせないために取っていた一手だ。
だがそちらも見るに芳しくは無い。
セレナを巻き込まない為に取っていた手も無意味になった。
ユリウスの身の上をセレナにまで聞かせたくないとイゾウは考えていた。
我が儘だが、正々堂々、自分の方へセレナの目を向けさせたかった。
恋心でもあり、友情でもある。
どちらも空回りしている。
「くそっ、馬鹿野郎どもが・・・・」
そう言うとイゾウは『 氷の矢 』」を7発、ユリウスの『 風の刃 』へと飛ばした。
衝突した2つの魔法は互いに打ち消し合い消える。
「なっ」
突然の行動にユリウスは反応したが、動くことが出来なかった。
魔法の衝突を一瞬目で追ってしまい、少し緩んだガレフの腕とシグベルの腕を即座に振り払う。
振り払った腕をそのまま使って、『槍龍波』を放つ。
「ばっ、イゾウっ」
ガレフの声を無視したまま『槍龍波』はユリウスの横を突き抜ける。
元兵士組の前で浮かび上がり、人垣の上を超えて飛んでいった。
「きゃぁーーーー」
「おいいっ、危ないぞ、そこ!」
頭上を飛ぶ『槍龍波』に誰かの悲鳴が響く。
浮いたその龍はすぐに急下降し、マナとセレナが言い争う横を掠め、そのすぐ脇のテーブルへと突き刺さった。
食べかけの食事や、済んだ食器が激しく飛び散り、テーブルを粉々に粉砕した。
「なっ・・・・」
セレナが声にならない声をあげる。
突然飛び込んできた攻撃に、その威力に、思考が停止する。
そして割れた人垣の先にイゾウを確認してまた驚いた。
すでに顔を冷たく戻したイゾウがそこにいる。
「ちょっ、イゾウ、邪魔しないでよ!」
マナが一瞬ムッとした顔を浮かべてイゾウを見る。
「マナ、悪いがそっちの話は終わりにしてくれ。
不本意だが・・・先に話をすることになった。」
「えっ、あっ、う、うん。」
突然の『槍龍波』に驚き、一瞬眉をつり上げたマナだが、イゾウの顔を見て何も言えなくなった。
他の者から文句が出ること無く顔を見合わせていた。
マナ、クィレアにジスナたちサッズの女講習生の一部をつけて、イゾウはセレナたちの押さえを頼んであった。
他にも妨害を予想して外側で待機している者が実は数名潜ませてある。
一瞬だけイゾウはナードと視線を合わせて、合図を送る。
『継続』の合図。
イゾウはセレナもマナも近寄らせるつもりは無い。
ナードもすぐに理解し、周囲に合図を送る。
それを悟られないようにイゾウはユリウスへと声を掛ける。
「セレナたちはそっちで押さえてくれよ。俺が言っても逆効果だろうし。」
だがユリウスはゾルダードたちを見たまま動かない。
「なんだよ?」
「僕がいなくなったら・・・ゾルダードさんたちに手を出す・・・つもりなんじゃないか!?」
「はっ、ゾルダードはともかく後ろの4人には魔法障壁が張ってあるはずだ。
お前があっちに声を掛けてる間くらい、それで防げるだろ。
何より今更だ、やんねぇよ。」
「絶対とは言い切れない、・・・だろう?」
ユリウスの少し上目遣いのその問いにイゾウは少し苛ついて、残った3発の『 氷の矢 』を瞬時に発動させた。
固まっていた3人の元女兵士へと襲い掛かり、その直前で妨げられる。
魔法障壁が『 氷の矢 』を弾き返していた。
「ほら見ろ。俺の『 氷の矢 』とはいえ初級魔法くらい跳ね返すじゃねーか。
『槍龍波』くらいの、ある程度威力のある攻撃じゃねーと1発じゃ壊れないんだよ。
ここにいる奴らで殴ろうが、蹴ろうがしばらくは耐えるだろう。
本当に何もかもがめんどくせえ。」
「イゾウ・・・・これは一体・・・」
「だからそれを説明するって言ってるだろ。
外野にギャーギャー言われるのも面倒なんだ、それとも話すの止めるか?」
「わかった。・・・だがせめてゾルダードさん・・・・・は無理でも他の人に回復魔法を掛けてくれないか?
少しでも落ち着かせてあげたい。」
「却下。これだから貴族上がりは修羅場に弱くて情けない。自分にちょっと危機が迫ったくらいでパニックになりやがって。
回復魔法も必要ねぇよ、俺の水魔法なんかよりも強力な、血統魔法の回復魔法が使えるはずだ。」
「イゾウ・・・言ってる意味が分からない。どうゆう意味だい?」
「分からないわけがないだろうユリウス。お前はそこまで馬鹿じゃねぇ。
ヒントはやっただろ。答えあわせは向こうが落ち着いて、全員が話を聞く姿勢が出来てからだ。
もし本当に俺が言ってる意味が分からないなら、話を聞くべきじゃ無い。止めとけよ。
多分お前、本能的に理解を拒否してるんだ。」
「いまさらそれも許されないけどな。」
横でライアスが言う。
特に暴れたくてうずうずしている者が多いライアス派閥を押さえている。今更ぶちまけるのは無し、と言われても無理であろう。不満が続出する。
「だってさ。
で、どーすんだ? 話、するのか?それとも地面に伏せてから一方的に聞かせようか?
それとも盤面を広げるか?ここだけの話で終わらせず、他の連中も動かそうか?
正直不本意だ、話をすることが、な。
それでも話すと言った。これ以上は折れる気は無い。ダラダラやるんなら再開しようぜ。
面倒なのは好きじゃないんだ。」
「・・・・分かった、 話を聞く。
セレナさんたちを・・・呼んでくる。」
「呼ばなくていい。あそこでいい。この部屋にいるやつ、みんなに聞こえるように話す。
もう巻き込んでしまったからな。何が有ったか聞かせよう。
それがせめても誠意だ。
迷惑な話だろうけどな。」
イゾウは、セレナとユリウスが並んで話を聞く事は許せなかった。
今も実はセレナがユリウス側の味方をしている事が気に入らない。
並んで話なんて聞かれたら、さらに激しく嫉妬するだろう。
必要なら盤面を広げるのだ。
セレナとマナにはあっちで小競り合いをしててくれればいい。
そう考えて、ユリウスを送り出す。
そのイゾウの姿をゾルダードが足下で、憎々しげにただ睨み付けていた。
どうやらやっと再起動できたらしい。
マナとセレナを見て、イゾウの怒りが少し霧散し、話をすることになったこの流れにかなりうんざりしたためだろう、〝凍える視線〟の効果が弱まった。
その視線に気づき、(いざという時に動けない奴ほど無様なモノはねーな)とイゾウは思う。
それでも座ったままでいるゾルダードの評価をさらに下げるのだった。