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異世界(この世)は戦場、金と暴力が俺の実弾(武器)  作者: 木虎海人
3章  土台作り
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始まりの日 2


「ゾルダードさん!!」


イゾウが作為して作らせていた人垣を、ユリウスは無理矢理掻き分けてゾルダードへと向かてくる。

飛び込んできたユリウスを通さないように人垣も抗うが、身体能力で勝るユリウスを止めることはできず、ゾルダードへと通った。

掻き分けられたイゾウ派の講習生はユリウスをそれでも止めようと動く。

特に一部の好戦的な者が、ユリウスを見て目の色を変えた事に気づいてイゾウがそれを手で制した。


予定外のユリウスの登場に、人垣の形成に参加している者たちにもざわめきが走る。

だが、「新しいフォークをくれ」というイゾウの声で踏みとどまった。

ギルドに武器を預けている講習生にとってこの場で認められる武器は己の身体のみ。


唯一の例外がイゾウだ。

例え木の棒ですら、歪で不確かな形ではあるが『槍龍波』を放てることは人垣作りに参加する全ての者だけには知らされている。

そのイゾウが次弾の準備をすることは、続行を意味する。


それは当然、飛び込んできたユリウスも敵と見なしての継続だ。

このイゾウの判断に一部の者が少し焦り、好戦的な一部の者は素直に喜びイゾウを心の中で賞賛する。




駆け寄られたゾルダードたちは、『槍龍波』を打ち込まれたという現実を受け止められず呆然としていた。目の前で破損して砕けた魔法障壁の欠片を目で追いながら、どうしていいか分からないでいた。

その顔には困惑の色がはっきり浮かんでいた。


「ゾルダードさん、大丈夫ですか!?」


「えっ、あ、あぁ・・・・だ、大丈夫だ・・・

当たってはいない・・・」


ユリウスに声を掛けられ事で、ゾルダードはやっと再起動できた。

飛び込んできたユリウスの逆を視線で追えば、氷のように冷たく感じる視線を自分に向けたまま、イゾウはテーブルを椅子代わりに浅く腰掛けたままだ。

砕けたフォークの柄を床へと放り捨て、次のフォークを受け取る。

そして切っ先をゾルダード(自分)へと再度向けた。

ここまで来ていてなお、ゾルダードを含め、元兵士組の者たちはイゾウの調べが全て済んでいる事に気づかない。故に、怒りという感情を向けられている事にも今ひとつ反応が鈍い。

ただその動きを認識し、殺されそうになっている事にのみにようやく理解が追いつき、その行動に心底恐怖した。


戦闘に出たことは何度もある。だが、誰かに言葉も無く一方的に殺されそうになった経験など無い。

イゾウだけでは無く、周囲も完全にイゾウに合わせて動いている。その本気さが伝わっている。



一瞬で大量の汗が吹き出し、膝が抜けた。

崩れ落ちたゾルダードをユリウスが腕を回し支えることで、倒れるのを防いだ。


イゾウから盾になるように位置を変え、ゾルダードを座らせた。

そしてイゾウへと向き直る。


そのユリウスの視線を受けて、イゾウは無言でフォークの切っ先をゾルダードの後ろにいる元兵士の女たちに向けた。

視線は冷たいまま、ただ口元にだけ薄く笑みを浮かべたイゾウを見て女達も腰が抜けるようにへたり込んでしまう。


「ヒッ、待って、待って、撃たないで・・・撃たないで、くだ、さい

お願い、ごめんなさい、ごめんなさい。」


切っ先と視線を同時に向けられた元兵士組の1人の女が思わず泣き声をあげる。

過去にイゾウに殴られた過去をもつ彼女は、イゾウの笑っている口元と、それ以外は全く笑っていない顔を見て、その時の恐怖が蘇ってしまった。

一切の躊躇も、容赦もない男だ。

それはやられた者の心に深く刻みつけられている。甦ることはあっても、消えることは無いだろう。


「落ち着いて聞いて下さい!囲まれています、下手に動かないで下さい!」


ユリウスが声を上げるが、恐怖とは一瞬で伝播するものだ。

泣き出した1人を、2人が必死に支えているが、呼吸も荒く乱れ、完全にパニックに陥ってしまった。

視線を完全にイゾウの手に奪われ、次の一撃が自分に来るかも知れないという恐怖に縛られている。

ユリウスの目には行動が出来る状態には見えなかった。

最後の1人も完全に顔を伏せて震えている。



目の前にはイゾウ。改めて自分たちには理解不能な男だと痛感していた。

だが全ては遅い。

ゾルダードたちはあくまでもまだ、話合いが出来ると踏んでいた。

例え決裂したとしても、こんな行動をするなどと考えたことすら無かった。

それがイゾウには甘えにしか見えないのだが、当人達はこの時点で気づくことは無い。


イゾウは対話を拒否し、躊躇することなく殺しに動く。この場ではそれが全てだ。


彼らが呆気に取られているうちに、イゾウの横にはライアスが合流し並んでいる。

イゾウと並ぶ、危険人物だ。 元兵士組とは良好な関係では無い。

付き合いが無いという意味では、イゾウよりも悪いと言える。

そのライアスよりはまだ、イゾウとならば話が出来ると踏んでいたゾルダードたちは、並んで見下ろす2人の男をみてそれが叶わない事を理解する。

完全に周囲を囲まれていることを、囲んでいる足の数で理解する。

ライアスが動けばその派閥の者も動く。

無駄にした数秒の間に人垣は厚くなっていた。


視線が下がった彼ら彼女ら(元兵士組)には、もう囲んでいる者達の下半身しか、見えなくなっていた。

味方はいない。いるのはその人垣の向こうであろう。

目の前の2人がそれの到着を許すわけが無いのだ。

ユリウスだけが唯1人の例外。

そこで再度恐怖する事になるのだった。


元兵士であった彼ら彼女らが多数に囲まれるのは、ユリウスを含めても初めての経験になる。

囲むことはあっても囲まれることはない。王都での兵士とはそんなものだ。

イゾウのみでなく周囲の者も、悪意そして敵意を隠さない。憎々しげな視線で5人を睨み付けている。

王都の兵士だったから、では無く、育ってきた環境で彼らは、人の悪意に晒されるのは初めての経験だった。

悪意、敵意、そして凍りつくような殺意。


それを全身で受けて、早々に折れた。

駆けつけたユリウスが無意味に見えるほど、ビビってヘタレれてしまった。



そう確信し、イゾウがユリウスに対し口を開く。











「おいおいユリウス、何しに来た。お前はお呼びじゃない、戻れ。

今なら居なかった事にしてやる。」


「イゾウ!!馬鹿を言うな、一体何をしているんだっ!!!」


ゾルダードを庇いながらユリウスがイゾウに向かって吠える。

だがイゾウはその言葉には取り合わなかった。


「話が違うぜ? ユリウスはお前らが押さえる、そういう約束だったはずだ。」


イゾウが人垣を掻き分けて合流してくる影へと声を掛ける。

その影を確認してユリウスは驚いた。


「ガレフ・・・

シグベル・・・

ノリック・・・


まさか・・・君たちも・・・なのか・・・」


先ほど、動きだそうとしたところを引き留められた面子の顔だ。

こんなにすぐに際介意するとは思ってもいなかった。


「面目ねぇ、マジで魔法障壁なんてあるもんだから驚いちまった。

その隙に走り出されちまった。」


ユリウスの声に応える事無くシグベルがイゾウへと答え、ライアスが「役立たずが!」と吐き捨てる。

それを聞き、ライアスへと詰め寄ろうとするシグベルをガレフが身体全体を使って押さえながら言う。


「すまんのぅ、やるとは聞いていたがまさかこんなタイミングで始まるとは思って無かった。

イゾウ、おぬし手が早すぎるわぃ、せめて何か合図が欲しかった。」


食堂において、イゾウとユリウスの距離は最近は遠い。

イゾウは自派閥の者に囲まれ、ユリウスとは少し距離があった。

少し打ち解けたばかりだが、それが変わる事はもう無いだろう。

故にイゾウは、開始の合図に『槍龍波』をぶつける、という事を教えるのは壁を作る者だけに限定した。

事前に漏れるの事を恐れるが故に。


それが徒となった。

まさかのフォーク(食器)での『槍龍波』

人を、敵対する者を殺すための技術だ。それを合図にするなどと普通の思考では考えない。



「俺が手が早いなんて・・・今更だろう。」


「今更じゃが、な。付き合う方は急すぎて、大変何じゃ!!」


「だから中立でいろって言ったのに。」


「それこそ今更じゃろうが」


ガレフとイゾウが言い合いながらも、立ち位置はイゾウの味方のそれだ。

ユリウスと向き合う形で合流した。


「どうゆうこと・・・?

イゾウ、ガレフ、まさか・・・・まさか・・・本気で?」


3人は少し気まずそうに視線を逸らす。

代わりに答えるのはイゾウだ。


「ユリウス、お前を巻き込むつもりは・・・今のところは無いんだ。

ガレフたちと向こうに行っててはくんないかな?」


イゾウが変わらず薄く笑みを浮かべながらユリウスへと問いかけた。

だがその眼は全く笑っていない。


こんな場合に、イゾウを止めてくれる可能性があるとすれば、イゾウの彼女の誰かだろう。

ユリウスがイゾウから聞いているのはチカチーノとの話だけだが、最近は3人の女性をいつも近くに置いていることには気づいていた。

だが、その誰もが、既にイゾウの側に残っていない事に気づく。

ユリウスがゾルダードに向かって走り出したときには、間違い無くイゾウの横にいたはずの女性が、すでに誰もいない。


そう認識したときに、姿は見えないが人垣の向こうでセレナとマナが言い争う声がユリウスの耳に入った。

ユリウスはそれで察する。

この流れは全てイゾウの計画で動いているのだと。


「イゾウ・・・なんでこんなことを・・・

いくら気にいらないからといって・・・ここまでしなくても良いじゃ無いか!」


イゾウに食ってかかるユリウスの姿に、周囲で見守る者の一部の目が釣り上がる。

イゾウほどでは無いが、ユリウスもまた敵が多い。

男女問わず一部に圧倒的に嫌われていたイゾウに対し、女性受けの良いユリウスは男性に敵視されることが圧倒的に多い。嫉妬が呼ぶ感情なので普段はあまり表に出てこないだけだ。

だが、潜在的な敵として常に存在している。消えることはない。


ライアス派閥は勿論、イゾウ派閥にも、そしてそれ以外にも多々潜んでいる。

普段は表面化されていないだけで、今回のように事が起きればそれは、一気に表面に現れてくる。


飛んで火に入る夏のなんとかだ。

この機会にユリウスを殴りたいと考える者も周囲で壁を作っている者の中には多かった。


そんな一部の者が動いていないのは、ライアスが軽く牽制していたから。


あくまでも喧嘩を始めるのはイゾウの合図。という約束をしてライアスは参戦している。

イゾウ自身はライアス派閥にも中立を求めていた。


イゾウはライアスに参戦する条件として、独断で暴れないことを求めた。

ライアスはそれを快諾する。

イゾウの合図は、まだでていない。今のところは囲んで威圧するだけの指示だ。


正義感からでは無く、約束を守るためにライアスは味方を牽制して止める。



「やめろよ、ユリウス、きれい事は。

やられたことをやり返している、それだけだだろう。

やったらやり返される。

やり返したらまた、やり返される。

ソレが世の理で、ここで止めたらまたやり返されるだけだ。

邪魔しなければ綺麗に終わる。死人は何も語れない。」


「断る。これは正義じゃ無い。

何より君らしくない。こんなやり方間違っている、何も解決しないじゃ無いか!」


イゾウは腰掛けていたテーブルから立ち上がり、ユリウスへと語りかける。

だがユリウスはイゾウの言葉を真っ向から拒否した。


「俺らしく?意味が分からん。

この流れこそ、俺の本気度なんだけどな。

想像はしてたけど・・・やっぱりお前は理解してくれないか。」


困ったように首をかしげたイゾウに、ガレフが言う。


「じゃから先にユリウスにも話を通しておいた方が良いと言ったんじゃ。」


「同じだって、先に言えば言ったで止めに入っただろう。それじゃいつまでも始めらんないんだよ。

だからお前らにはユリウスをを止めてくれって頼んでたんだ。」


「・・・・ぬぅ、返す言葉も無いわぃ。」


ガレフが軽くため息をついて言う。

それを見てユリウスはまだ話が出来そうだと考える。

そして問いかけた。


「イゾウ、何でこんなことを?」


「何でも糞も無いだろうに。

俺がいないところで喧嘩しそうになった。

だからそれを俺がいる状態(ところ)でやり直そうとしてる。それだけだ。」


「オークの上位種の時の話・・・だね?」


「ん!? ・・・他に何かあったのか? 俺は聞いていないが?

あるのなら教えてくれ。それも理由に追加してやる。」


「無い。だがその件なら一度謝罪を受け入れてくれたじゃないか!」


「ああ、さすがはユリウスだ、潔い男だ。お前の謝罪は受け入れたとも。

あの時のこと、お前を攻めるつもりはない。」


「だったら!」


なおも言葉を続けてイゾウへと問うユリウスをイゾウは手で制止した。

それを受け取り、ユリウスはイゾウの言葉を待つ。


「だがそれで済むと思っていたのなら、お前少し自己評価が高すぎるな。

やられた人間の気持ちはどうなる? 囲まれた人間の怒りはそれで消えるのか?

お前が俺に謝った。

それで・・・? そこの5人に対する怒りが全て霧散して消えるとでも言うのか?」


「言わない。

だから・・・それを、どうにかして欲しくて、僕は君に謝まろうと思ったんだ!

班長の僕と、班長の君、それでどうにか・・・収めたかった!」


「それはムシが良すぎる。 そっちにだけ都合の良い話だ。

班長だというならば、俺とお前だけでは無く、ライアスもそうだし、そこの元兵士の中にも班長がいる。

責任は参加した全員にあるはずだ。 参加しなかった俺に、おさめろ? 

馬鹿を言うな、お前1人の謝罪で収まるほど話は軽くねぇよ。」


「・・・・・でも」

「全員が納得する結果なんて不可能だ。そっちは頭を下げたことで終わった話で済ませたいのだろうが。

それはそっちの都合、こっちは納得いかないなぁ。


じゃーどうするか、俺はそいつらに泣いてもらうことにした。

責任をそこの5人に取ってもらう。なに、殺しはしないよ。

流石にそこまでは躊躇われる。

うちの班の面子をリンチしようとしたんだろ。それをそのまま、やり返してやるだけだ。

元兵士で鍛えてたんだろ?ちょっと殴られるくらい平気だよ。

怪我したら治せば良い。そいつらの中に回復魔法持ちがいる事も把握している。」


「イゾウ・・・・それは・・・」


「別にいいだろ、普段から年長者だってだけで上から目線で物を語ってるんだ。

責任を取るのも目上の者の役目だ。

それともそいつらは、お前に頭を下げさせれば、それで収まると本気で思っていたのか?

知ってるよ、お前が俺に頭を下げたのは、そいつらに頼まれたから。

そうなんだろ?」


そう言ってイゾウはチラリと人垣を作っている人間を数人、目で追ってみせる。

それは事実であり、任務後にゾルダードに頼まれた話だ。

ユリウス班だった者、そしてゾルダードの班員だった者もが何故か、人垣を作ることに参加していた。

となれば筒抜けなのは、当然だろう。


ユリウスに代理で頭を下げるように頼んだゾルダード。

イゾウに代理で頭を下げたユリウス。

ユリウスの謝罪を、ユリウス個人の謝罪として受け取ったイゾウ。


間に入る者がいなければ、手打ちは成立しずらい。



「・・・・・・・そうだ。でも僕がどうにかしたかったから、でもある。

ゾルダードさんたちにも、謝罪してもらう。キチンと、頭を下げてもらう。

君が、君たちが納得してくれるように!!

頼む、それで納得してくれないか?」


「それこそいまさら、だよな。

この状況での謝罪が、本気の謝罪だと受け取る奴がいると思ってるのか?

次はそいつらが腹の中に怒りを抱いて過ごす事になるだけだろ?

攻守が入れ替わってまた再燃するだけだ。

だからこそ俺はお前に止められたくらいで止める気は無い。

やるなら徹底的にやるべきだ。相手が逆らう気を無くすくらいにな。

そして年長者だという事を強調するのならば、普段から細かい所に気を使って、安定に努めるべきだったんだろう。

怠った自分たちを、せいぜい恨め。

知ってるか? 都合の良いときだけ年長者になるっていうのも結構頭に来るものなんだよ。

無責任ここに極まる、だろう?」


イゾウの言葉にユリウスの顔が歪む。

準備して望むイゾウ。

飛び込んできたユリウス。

最初から覚悟が違う。


やると決めて動き出したイゾウは、ユリウスの言葉を受け入れない。

だが引けないのはユリウスも同じ。


「・・・イゾウ、言ってることは分かるよ。

でもゾルダードさんたちだって人間だ。完璧じゃ無い。出来ない事もある。

同じ講習生、大目にみてはくれないか? 頼む。」


ユリウスは精一杯の誠意を示すつもりでイゾウへと頭を下げた。


だがその言葉はイゾウの怒りに火をつけてしまっていた。

静かに殺気立っていく。ユリウスを見る目も冷たく冷え切っていった。

そして心底呆れたように吐き捨てた。


「・・・・・ふっ、結局それか。」



比較的ユリウスに対しては穏やかに話していたイゾウだったが、この瞬間から殺気を隠すこと無く醸し出していた。

雰囲気の変わったイゾウに元兵士組やユリウスはもちろん、イゾウの味方側もたじろぐ。

特にイゾウの前にユリウスについていた者達の動揺が大きい。

だがイゾウの顔を見てなお、声を上げられる者はそこにはいない。

洗脳を解かれたいま、ユリウスよりも自分がかわいい。

矛先が自分に向かうのをおそれ、押し黙ってしまった。



「ユリウス、その言葉、おまえからは聞きたくなかった。

大目にみる?完璧じゃない!?


おい、()()()・・・俺の班員(なかま)はそいつらにリンチにあう寸前までいった! ライアスが駆けつけてくれなかったら間違い無くされていたんだぞ!


それを大目に見ろ? 

許せ!? 

出来ると! 思うのかよ !?」


「くっ、ちがっ、待ってくれイゾウ、そういう意味じゃないんだ!

いまからゾルダードさんたちをリンチにしたところで、何も解決しやしないじゃないか!

許せと言たのは取り消す、だが頼む、他に何か・・・方法を考えさせてくれ。」


殺気立つイゾウにユリウスも怯む。

だがそれでも、ゾルダードたち元兵士を庇うように立っていた。


その後ろで、問うの元兵士組は凍えるように震えている。

無意識だが、イゾウが本気で放つ殺気には冷気が含まれるようになっていた。

イゾウの持つ『 氷の精霊眼(劣化) 』の所持スキルの中に、〝凍える視線〟というスキルが発現する。

バッシブなスキルで、イゾウ自身もまだ気づいていないが、イゾウの怒り具合で効果が左右される。

今日1番に怒りを露わにしたそのスキルの効果は、元兵士組の向こうに布陣する、イゾウの味方側の者ですら背筋を本気で凍らせた。

そのスキルに強烈に当てられている元兵士たちは当然、凍りついたように動けない。

その中をユリウスのみが耐性(レジスト)して動いていた。


元兵士を庇うその姿にイゾウの頭が少し冷える。否、心が冷めた。

この瞬間、イゾウの中でユリウスの扱いが一気に落ちてしまった。

普段なら友人に対して、絶対にイゾウが向けない思考が浮かび、向いた。

イゾウが初めてユリウスへと悪意を向ける。


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