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異世界(この世)は戦場、金と暴力が俺の実弾(武器)  作者: 木虎海人
3章  土台作り
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昔の友は今も友。俺とお前と


ある日のこと。

教官たちに捕まり、取調室のようなところへと連れて行かれた。


罪状は 教唆  それも殺人教唆


師匠達から話を聞いたジンロさんが、本部から来てくれなかったらもう少し拘留されていた。

そうなると、うんざりしてぶち切れて暴れていた可能性が否めない。


俺を取り調べ室に連れて行ったのは、魔法課の教官。

奴らは魔法講習を俺がボイコット(棄権)したことを根に持ち、講師を再起不能にしたことを恨んでいるため、ネチネチとかなりしつこかった、最初は。

だいぶ苛ついていたので多分、手を出す確率が高かっただろう。

魔法課の教官もそれが分かっているからか、後半トーンダウンしていた。

だが頑なに解放はされなかった。


取調室の机の上に両足を乗っけて、椅子の前足を浮かしてふんぞり返っていたところにジンロさんが入ってきてしまい、まずお前の態度を改めろ、と怒られた。

いや、最初はちゃんと座って聞いてたんですよ?

信じてもらえなかった。

日頃の行いは大切だ。



殺人教唆、とは言っても、死んでいない。だから殺人未遂教唆だ。

だがこの件に関しては本気でノータッチである。


では何故俺が疑われたかといえば、それを実行したそいつが、この講習に来て、最初の俺の友達のような奴だったからである。


講習前の手伝いバイトで一緒だった エータ 。 

最近ちょっと色々あって、落ち込んでいたから励ましてやっていた。

その線で疑われたらしい。

俺が唆した、とな。

全く馬鹿な話だ。

やるんなら自分でやるし、確実にやる。

あんな死にかけのじじいサックリ殺してやるわ。証拠も残さずにな。


アイツが勝手に絶望して、魔法課の老教官を抱えて階段からスーパーダイブしたのだ。

やるんなら確実にしっかり決めろっての。


どっちも大した怪我はしていないらしい。

回復魔法ですぐ治る程度の怪我だ。

なのでスーパーダイブ。 スーパー(駄目な)ダイブだ。




エータと俺の関係は、本講習が始まって一度途切れている。

講習生内最高の検査結果をだした俺と違い、エータは肉体的に駄目駄目だった。


代わりに講習生内最高の、魔力Ⅷを叩きだした。

これは147名の講習生内でただ2名だけ。

ノリックとエータだけだった。


そう、ナードたちが囲まれたときに知らん顔をしてたノリック(たち)だ。

ただ、これは有る意味仕方が無いと思っている。

ナードとノリック達は、禄に付き合いが無い。それは今も変わらない。

顔くらいは知っているがほぼ付き合いは皆無だ。

ナードは俺の後をついてきてはいるが、あまりノリックやシグベルとは深く関わらない。


だからさすがに本気では責められない。

冷たいな、と思うくらいだ・

俺がもしノリックやシグベルは勿論、ナードやジスナの知り合いが囲まれているときに、助けにいくのか? という話になる。

知ってればいくだろう。けれど、行かなくても責められる筋合いは無い。

だって知らないもん。正直気分による。

ちなみに彼女の知り合いなら100%行く。絶対だ。



そんな冷たいところのあるノリックと並び、講習生きっての魔力の持ち主がエータだ。

だが、元はただの村人A太。魔法の教育など受けていない。

彼は魔法課の教官数人で取り合った挙げ句、最後は老教官に師事するようになった。

そのせいで結局、そこで伸び悩む事になった。



ただ、本人に魔力という才能は勿論あったんだろうが、俺と接していた時間が長かったせいで伸びたんじゃ無いかと今は疑問を抱いている。

あの時俺は、もしかすると魔力を垂れ流しだった可能性がある。

高めの魔力を持っていただろうエータは、俺の魔力を浴びて、感じて魔力Ⅷまで伸びた、という可能性に思い至った。



そう推測することが出来る。勿論ただの推測だ、絶対では無い。

有る意味、慰めるために考えた詭弁だ。

一度手を離したが、この世界に来てしばらく一緒に過ごした情がある。

間接的に俺に、彼が落ち込む原因があったりもするからでもある。




ギルドの教官の給料はそれなりに良いらしい。そのため、教官は自費で弟子を賄う者もいるらしい。

特に魔法課の教官は自費で弟子を賄い、自分の研究を手伝わせる教官が多く、老教官なんかは息子の給料をつぎ込んでまで弟子をそれなりの数、囲っていた。

教官の弟子になる、つまり元々は講習生の出が多い。禄に就職もせず、ジジイの弟子として生活していた。

それをどこかの悪い氷の魔法使いが、ギルド本部に魔法課の事を色々ぶちまけたらしく、責任を取らされた魔法課の教官は軒並み減給された、らしい。

給料事情だからね、あくまでも又聞き、の又聞きくらいだ、なので詳しくは知らない。

ほんとだよ?



そんなこんなで弟子の奴らの面倒をみれなくなってしまった。

この影響で、1番新人の弟子、でもなくただ師事していただけのエータは老教官から放り出された。


老教官に師事しているという理由でちょっと、ほんのちょとだけえーたは態度がでかくなっていた。

俺に言わせればエータよりも、俺やライアスの方が遥かにでかく、悪い態度なのだが。


だが、エータの廻りにいた人間は、放り出されたエータに手の平を返した。


これもまた仕方が無い事だ。

それまでデカかった態度が、その後も変わらない事に腹を立て、数人でボコるのは自然の摂理だろう。

だが、さすがにそれが三度続くと止めに入る。


囲んでいた彼らは現在、ナードたちが活用している。

俺は参加しない状態でも、脅しがスムーズにいくよう練習を頑張って欲しい。

本気で少しは上手くなってくれないと困る。






久しぶりに見る友人の変わり様は見るに堪えないものだった。

あれだけ明るく脳天気だった男が、随分ひがみっぽくなった。

もしかしてそれが素なのかも知れないが、何度か本気でぶん殴ろうかと頭によぎったほどだ。

2,3発で止めた自分を褒めてやりたい。


それまでそこそこのポジションだったのが、急に突き落とされたのだから仕方無いと言えば仕方無い。

だが自業自得でもある。

高い魔力に胡座をかいて、それ以外を伸ばす努力を怠ったのだろう。


そんな彼を哀れに思い、俺は秘密基地にエータを(無理矢理)呼びだして、酒を飲ませた。

重い雰囲気になるのが嫌で、配下を総動員して酒を奢ってやった。

最も、ちょこちょこ飲んだときのあまりを隠していた物だがな。

俺に自由になる金はまだ無い。

だが自由になる酒だけは、コツコツ貯めてある。

まだもう少し隠してある。しかも特に高い奴は避けてある。

彼女との初エッチの時に飲もうかと思って大事に取ってあったりする。


あくまでも、気分を高揚させて、良い雰囲気を作るための小道具(ツール)ですよ、小道具。

直前でゴネられると面倒だとか、そんな理由では無い。断じてないのだよ。




それはともかく、わーっと騒げば元気が出ると思い、屋上の秘密基地をみなで整理し、場所を作り、エータを呼んで飲んで騒いだ。

思ったよりも効果があり、エータも楽しく飲んでいるように見えた。


それで元気が出たと思ったらこの有様である。










「うーん、私と付き合ったことを聞いたから、とか?」


解放され、無罪放免で戻っていた俺を迎えた彼女たちの中でマナが口を開いた。

そういえば、マナをエータはお気にだったな。


「あれ? ひょっとしてまだあの馬鹿、マナの事口説いてたの?」


さすがに諦めているかと思っていたが。


「うーん、そこまであからさまなのは減ってたけど、1人でいるとニヤニヤしながら話しかけてきて・・・・えーと・・・気持ち悪かった。」


あー・・・あれだよね、女慣れしてない調子に乗った奴がやりそうなことだ。

クィレアも横で「うん、それは気持ち悪いわね。」とか言っている。

チカは何も言わないが、言わないとこ言うことは多分同感なのだろう。この子はそういう子だ。


「でもまだ、言って無いんでしょ?」


クィレアが言い、それに頷く。 知ってるのはナードたちサッズの連中と、ここにいる3人だけだ。

彼女たちにはマナとの関係成立後、即座に報告している。

こうゆう事案は隠さず迅速に伝えるに限る。

同班で顔見知り、その任務時には俺が庇う行動をしていたので特に驚かれも、反対もされなかった。

ここは一安心だ。仲良くやって欲しい。

ちなみにマナは付き合うと決めて以降、食事時間や講習もセレナから離れた。

俺たちと行動するようになっている。

それを見て気づいている奴は気づいているだろうな、とは思う。


「じゃー、ちゃんと教えたら今度は本当に死んじゃうじゃないかしら。」


クィレアよ、そうゆう冗談は洒落にならないから時と場合を選んで欲しい。


「と、とりあえず出てきたら、ちゃんと話してみるわ。」


顔を引きつらせながら言うと、そうしなさいと3人に言われた。

彼女というか保護者(おかん)みたいな顔をするときがある。きっと母性だな。

ただ教官につれていかれた事は少しギャースカ言われてしまった。

特にクィレアとマナ。

講習を見てやる約束を今日はしていた。


全く、エータの馬鹿が面倒を起こしてくれる。

彼女との楽しい時間が台無しじゃねーか。








そのエータが解放されたのは翌日だった。

俺のようにコネが有るわけでも無く、突き落とした当事者だ。仕方有るまい。

解雇にこそならなかったが、重いペナルティを課されたらしい。

戻ってきて、遠巻きにされているところを捕まえて人気のないところへ連れて行った。

残っていた小さめの樽の入った酒を飲みながら話す。



「まぁーやっちゃったことはしゃーないんじゃねぇの?俺も随分怒られてペナルティ食らってる。

確か・・・・忘れたけど、しばらく最下級ランクから昇格できないらしいわ。

期間は忘れたけど。」


俺は永遠に冒険者なんてやるつもりが無いのでペナルティなどどうでも良い。

金が出来たら、商売をするつもりだ。

そして金の算段もついてきている。

最悪ギルドの報奨金がもらえなくても、近いうち持っている奴からごっそり奪い取るつもりでいる。

だからペナルティ自体気にしていない。多分今後も気にしないだろう。


「・・・ああ、僕もそれくらいで済んで驚いているよ。

正直奴隷落ち、もしくは解雇されるかと思ってた。」


「あんな死にかけたじじい殺したくらいで、んなことねぇさ。」


勿論本気で思っているわけじゃ無く、ただの慰めの言葉だ。

エータは無理矢理笑って返してきた。


「で、なんであんな事したんだよ?

やるなら相談してくれれば手を貸してやったのに。」


多分相談されたら他の方法を提案しただろう。

せめて目撃者がいないところで、一方的に突き落としていれば、しらを切れたものを。


「うん、どうしても許せなくってさ・・・

こんな一方的に、捨てられてさ・・・」


「うん。」


「イゾウ言ってただろ、イゾウは弟子に誘われたって。

任務後に、棄権するって言ったら、相当しつこく勧誘してきたって・・・」


「あー」


言ったな。魔法講習の棄権を取り下げろとしつこく喚かれた。「死ね」と返して中指立てたらタコみたいに真っ赤になってたっけ。

当然師匠に怒られて殴られた。


「他にも言ってたろ、ノリックくんとかユリウスくんとかみんな弟子になるように声を掛けられてたって。」


「うん_?」


言ったっけ? 覚えてねぇな・・・そういや結構飲んだのは覚えてる。

何話したかは・・・えーと。


「 僕はずっと・・・雑用を言いつけられててさ、それをやり遂げれば弟子にしてやるって。

僕はイゾウ達みたいに身体は強くないから、魔法だけ、魔力が高かったことだけが取り柄だったから。


先輩の講師たちの練習に付きあわされたり、教官の調べ物を手伝ったり、そんなことばっかりやらされて自分の練習の時間は、くっ・・・・」


そう言ってエータは膝を抱えて泣き出した。

あれー、これもしかして俺が余計なこと言ったせいか?あれー・・・


よし、こうなったら聞かなかったことに。


という訳にはいかないか。

膝を抱えたままエータは涙声で続けた。


「ノリックくんのこともユリウスくんの事も呼びに行ったの、僕だ・・

なのに、呼んで来たら、僕は見本も見せてもらえなかった。

あれやってこいだの、誰の手伝いいけだの、そんなのばっかだった。」


そういや魔法講習で呼びに来てたのはエータだった。

顔見知りなのに俺やシグベルを無視して、ユリウスにだけ声を掛けたから憤慨してた覚えがある。


ふむ・・・・   あれ!? 悪いのこいつの態度じゃね?


「おかげで魔法の講習の〝認可〟ももらえていない。

武術の講習中にも呼び出されて、呼び出されて、うぅ・・・」


なるほど、それで班長の12名にも、選抜の30名にも入っていないのか。

まさか魔法の〝認可〟もまだだったとは・・・

馬鹿すぎる。


実際のところ魔力Ⅷというのは相当だ。

俺の魔力Ⅶは参考にならないから置いておくが、魔法を2つ3つ覚えたら、即魔法使いとして実戦に連れ出してもいいレベルである。

火力職の魔法使いはそれだけで一気に育つ。ベースレベルだけの話だけどね。



ただまぁ自業自得だ。

その扱いを拒否し、魔法の練習に励まなかったこいつも悪い。

強く気持ちさえ持てば講習生側も習う相手は選べる。

気持ちを強くもてればだけど。


ちなみに同じ魔力Ⅷだが、同じ結果を出してさらに、俺と魔力を探る訓練をしてしまい、長く魔力の底上げをしてしまったノリックは、俺の〝氷の精霊眼(劣化)〟から見ても圧倒的にエータより多い。


講習開始時、魔力Ⅷは目を引くだろうが、今はノリックだけで無く、シグベル、そしてユリウスもエータより遥かに魔力が多いのだ。

俺は言うまでも無い。

多分近いうちにもっと増える、魔力が高い奴。

うわー0088期大豊作だな、マジで。


そして腐っても魔法課の教官だ。

どっちが魔力的に才能が有るか分かるのだろう。


だからこいつは冷遇された。

言いなりで気概も無く、自分で学ぼうともしなかったから。

便利な坊やだったわけだ。



うん、よく分かった。俺は悪くない。


「さてえーた、そこで悔やんでいても仕方ねーよ。前を見ようぜ。

俺の方に来い。知ってるだろ、派閥、あんの。

魔法課の教官になんか頼らなくても魔法何て使える、覚えられるぜ。

勿論お前次第だけどな。」


「派閥って、解散したって・・・」


「ばーか、じゃーこないだ一緒に飲んだ面子は何なんだよ。

講習生の派閥は解散した。

今は、講習終了後、互助会って形で助け合っていけるような仲間を集めているんだ。」


「ご、互助会?」


「ああ、聞き慣れないだろうけどな。

講習が終わって、バラバラになってからも、何かあったら助け合おうって集まりさ。

情報の共有とかな。

まーしばらくはたまに会って飲み会とかして愚痴を言い合うくらいだろうけど。」


「へー、色々、イゾウは考えてるんだな・・・」



エータ。馬鹿な奴だと思うが、ここで切り捨てるのは勿体ない。

昔、話してたときには〝氷の精霊眼(劣化)〟が無かったので解らなかったが、コイツには複数の属性に才能が見える。

闇、風、火 だ。 風と火は割と多い。だが闇はあまり見ない才能だ。


爪弾きにされているくらいなら抱え込んで味方にしておこう。



エータは名前だけの使い捨てキャラの予定でした。特に名前。

なので多分少し矛盾とか違和感があるかも知れません。

時間見て直しますm(_ _)m

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