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異世界(この世)は戦場、金と暴力が俺の実弾(武器)  作者: 木虎海人
3章  土台作り
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3人目 その2


「ごめん、もう大丈夫・・・・」


泣き止んだマナは涙を拭い、顔を上げてそう言った。

まだ目は赤く腫れている。 支給されている布を渡すと少し考えた後それで涙を拭いた。


「セレナは?」


言葉足らずな言い方だがこのやりとりもこれで四度目になる。意味は伝わるだろう。

毎度助けに入る度に聞いているのだ。


「言って無い・・・呼び出された事・・・」


言えばついてきて庇うだろう。

だが、マナはそれを拒んでいる。首を振って言った。


考えていることまでは分からないが、おそらくはセレナに迷惑をかけたくないのだろう。


「ユリウスは?」


「それこそ・・・・言えないよ。

マナは・・・ユリウスさんのこと、別になんとも思って無いし・・・」


消え入るような小さい声で「親しくもないし」と続いた。


おまえ(マナ)が好きなのはセレナで、セレナがいるからそこに一緒にいるだけ・・・か。」


「うん・・・」


マナはいわゆるレズビアンということになる。これが本当かかどうかはわからない。

ただ知り合ったときからセレナが好きだと、そう宣言されているだけだ。

それは別に責めることでもなんでも無い。それはそれで有りだと思っている。

ただ個人的には男もいけるといいなぁとは期待している。

マナがセレナに言うその好きは、俺から見ればあくまでもライクの好きだ。

男よけでラブだと言っているように見える。


どっちでもいいけどな。

女が好きな女の中にも、男がイケる奴はいる。




俺はセレナが好きだった。マナもセレナが好きだった。俺にとってのマナは同じ女を好きな同志だ。

そしてマナも俺の好みの女である。 正直好きだ。

一緒に囲んでしまうのが俺の中でのモアベターだ。


「さっきの奴ら・・・・何だって?」


少しかっこつけて言う。

今日は少し時間を取って接したい。

許可を取らずしゃがみこんだマナの横へと勝手に腰掛けた。

まだ半分泣いているようなマナは素直にそれを受け入れる。


「んっ・・・ユリウス、さんに甘えるなって。

あと・・・いい気になるなとか、そんなとこ」


「ボキャブラリーが少ないやつらだな・・・・」


チープな因縁の付け方に少し引いた。

人に絡むならもう少し考えてから文句をつけるべきだと思う。

多分語尾にブスとかつけたんだろうなぁ・・・・子供の口喧嘩かっての。


「セレナ、まだユリウスのとこ行きたがってるの?」


指先に魔力練ろ、その形を変えて指遊びをしながらマナに問う。

マナには魔力が見えていないようだ。


「うん・・・ユリウスさんは弱者の味方だからって。

そばにいるだけで大丈夫だからって・・・」


「はっ、全然大丈夫じゃねーじゃん。まだ言ってるのかそれ。

俺も言われた。ユリウスみたいになれって、セレナにさ。

もー何言ってるんだ訳わかんなくなった・・・・

まぁ結構酷い目にあったから、ショックだったのは分かってるんだけどさ。」


「うん・・・・・・だね、助けてくれたのも、イゾウだって、言ったのに・・・

全然信じてくれなくてさ。 説明したんだけどさ・・・・」


「伝わらなかった・・・・? いや、聞いてくれなかったか・・・」


「うん・・・・

ねぇイゾウ、なんでこうなっちゃったのかな?

私も、セレナちんも、別にどこにもなんにも所属してなかったのに・・・

それで普通に講習受けてて、たまにイゾウが来てさ。セレナちんと話してさ。

マナが焼きもち焼いて、イゾウに文句言って、セレナちんはそれ見て困った顔してさ。

そんなだったのに。マナはそれで良かったのに。


急にユリウスさんユリウスさんって・・・・なんでセレナちん変わっちゃったんだろう・・・」


マナはセレナのことを呼び捨てでも、ちゃん付けでも無くセレナちんと呼ぶ。

個人的には違和感があるが、子供の頃からの呼び方らしい。

セレナがなんと言ってもマナはそれをやめようとしない。

子供の頃からの呼び方を絶対変えたくないらしい。


マナの訴えに答える答えは持っている。

多分軽く洗脳されているからだろう、と俺は考えている。


誰に? 唆したやつに決まっている。

推測だが、講師も洗脳されかけてたんだろう、出なければさすがにあんな真似できやしない。

小物だったからな。

知っているか?小物が悪さするときは、後ろに誰かがいるんだよ。

1人で悪さ(何か)する勇気なんて持ってないからな。


だが残念な事に証拠は無い。

証明できない以上、言うだけ無意味だ。俺の妄想扱いされかねない。誰も聞いてくれないだろう。

証拠があればとっくに殴り込んでいる。

証拠が無いからこそ、今は手順を踏んでいるわけだ。


最も最後には証拠なんていらないけどな。

気に入らないから殴るだけだ。



そんなことを考え込んでいるとマナが続けた。



「・・・あんまり言いたくないけど。

セレナちん、最初はユリウス、さんに、イゾウのことを相談してたんだよ。

イゾウのこと・・・・・・・・・・・・・好きだけど、って。

踏み込めないんだって。

で、ユリウス、さんは、どうしてもイゾウとね、パーティ組みたいんだって。セレナちんに良く相談してた。」



「へー・・・それは初耳だ・・・」


知らなかった。

何故か2人が急接近してたと思っていたが、そんな背景があったとは


どっちも相談する相手を間違えている。お馬鹿な話だ。

残念だ。  特にセレナ、出来れば俺にその話は直接して欲しかった。

全てにおいてもう遅いが。



今はプランBで行動している。

プランB   それは、セレナよりも先にマナを口説くルート。


手順を逆にする。

セレナと付き合ってからマナを口説くのでは無く、マナと既成事実を作ってからセレナを巻き込む。

結果が同じならば課程は拘る意味が無い。



「なぁマナ、相談なんだけど」


「無理。」


「いや、聞けよ最後まで」


「だって、イゾウはマナに彼女になれって言うんでしょ?

守ってくれるって・・・言うんだよね?」


「・・・・まぁそうだけどさ。

そんなに嫌か?」


「・・・・・・・・・・・・」


「答えるのも嫌なのかよ!」


「・・・・そうじゃないよ。

前は・・・嫌だった、けど今は、今ならそんなに嫌じゃない。」


「だったら」

「でもイゾウはセレナちんが好きなんでしょ!

セレナちんが好きだから!  だからイゾウはマナにも優しくしてくれる、助けてくれる!

ありがとう、嬉しいよ!?

でも、でもでもでも、それは、それは辛い・・・


マナもセレナちんが好き、でも、マナは恋をするのならちゃんと、ちゃんと・・・マナを好きになってくれる人がいい。

でなければ、家を出た意味がない。 マナは結婚するならマナのことを見てくれる人がいい。」




「・・・・・・!?

じゃー別に俺でいーじゃん、問題なくね?

おい、いくら何でもセレナが好きなだけで、そこまで気を遣わないぞ。

マナのことも気になってた。

だから気にしてる。助けに行く。


そこは信じて欲しいんだが・・・・」


「嘘っ!?  えっ!?


そうなの?」


「自慢じゃないが気が多いからな。セレナと一緒にいるマナにも一目惚れした。

だから別に俺の行動に、セレナは関係無いよ。


俺はマナを見て行動を選んでいる。

今も、セレナいないよな?


だけど俺は来たよ? 大体いつもマナのことも気にしてる、考えてるからちゃんと見ている。

だからどんなときも助けにこれる。

こないだも・・・・・俺はマナの方に先に駆けつけた。


だろ?」


「・・・・・・そうかも!?

ニヘヘヘヘ」


おかげでセレナは死にかけて、俺は貴重な大魔道謹製の水を失った。

その選択に後悔は無い。

逆だった場合、マナはこうやって笑えないような状態になっていた可能性もあった。

セレナも死にかけはしたが、ちゃんと助けられた。


助けたことはどうも信じてもらえなかったらしいけどな。


俺がそれを伝えるとマナは驚いた後に少し顔をにやけさせた。

その笑顔はとても美しい。 笑えるように守れて良かったと思う。


攻めるならこの辺りだな。


「セレナも好きだけどマナも好きだよ。

別に俺が好きな分には問題無いだろう?」


「無いけど、じゃー、どこが好き?」


「理由なんて無いよ。気づけば好きになってた。

恋心なんてそんなもんだろ?」


「ぶー、ぶーぶー。

あのね、女の子はそうゆうの、言って欲しいモノなんだぞ?」


そう言って指で突っついてくる。

そんな甘いのは、ベッドに入ってからでいい。


「まぁそう言うなって。その辺はマナがOKしてくれたらな。

俺からもう一つ提案があるんだけど・・・聞く?」


「・・・なんか、嫌なこと言おうとしてる?」


「なんでだよ、良いことだと思うけど。」


「本当?」


「本当、まぁ聞いてから判断してよ。


もし、マナが俺と結婚したとするだろ?」


「それは飛びすぎ。マナまだそこまで言って無い。」


「聞けよ、例えだっての。例えば。


でな、俺がセレナとも結婚したとする。

するとな、なんということでしょう!  マナとセレナは姉妹、ってことになる。


現状、マナとセレナが家族になるにはこれしか方法が無い。」


この世界のことはまだそこまで詳しくは無い。だがこの国では同性婚を認めていない。

家族になりたければ廻り兄弟、この場合姉妹だが、これが確実だ。


ちなみに俺で無くてもこの方法で家族にはなれる。

ただしその場合、俺は全力で邪魔をするだろう。

だからそんな話は、最初から無い。選択肢は俺1択でいい。


「ちなみに子供を産んだら、その子供は完全に兄弟姉妹だ。

本当に血の繋がった家族になるよ。子は兄弟、母親は姉妹だ。


マナが先に子供を産んだら、マナの子が兄か姉、ということになる。」


マナは真面目な顔で聞き入った後に、顎に手を当てて考え込みはじめた。

頭の中で色々考えているのだろう。

だが口元には薄らと笑みが浮かんでいる。

ここを攻めるという俺の判断は間違っていなかったようだ。


「言うまでも無く、勿論だがマナはマナで大事にする。

誰にも手出しさせない。生涯掛けて守る。」


「・・・・・・・・・それ、本当?」


「〝聖剣〟は返しちゃったんだけどな、 俺の〝氷魔法〟にかけて誓うよ。

ああ、でもセレナを口説くのは手を貸して欲しいかな。マナの力がいる。


俺も子供は欲しいから子作りは絶対なんだけど、マナが望むなら3人でするっていう手もあ」

「ほっ、本当っ!?」


「えっ!?  あっ、う、うん。何が? 」


「3人でしてもいいって」


「あ、っと、うん、そだね、えっと、いいけどさ、個別にもするよ?」


「うん、うん、それは勿論。子供は作らないと。マナだって商人の家の子だったんだよ?

跡継ぎは大事だって分かってる、イゾウがマナを大事にしてくれるならいいけど・・・


でも、3人でも・・・たまには良いよね? たまには!」


「・・・・ソーデスネ、イイトオモイマス」


自分で振った話だが、ここまで食いつきがいいとちょっと引いた。

だが気が変わることは無い。逃がす気も無い。


「えーっと、あとさ、他にも彼女がいるんだけどそこは問題無いかな?」


「・・・・・誰?」


「チカチーノとクィレア。」


「ああ、やっぱりか。なんとなくそんな気はしてた。」


「そうなの?」


「クィレアさんはいつもイゾウの事しか気にしないし、チカちゃんもずっと目で追いかけてるよね。

多分みんな気づいてるよ、セレナちんだって。

そう、それは良いけど、なのにイゾウはセレナちんの事も好きなの?」


「それは違う、なのに俺はマナとセレナが好きなのだよ。

人を好きになるのは仕方無いだろ?」


どっちかというとクィレアがおまけだったし。


「にへへへへへ。 ねぇ、あんまり急に好き好き言われると嘘っぽく聞こえちゃうよ?」


「そりゃー失礼、一度言ったら歯止めが効かなくなっちまった。

好きだぞ、マナ。」


クィレアに無理矢理言わせた後もそうだった。

無理矢理一度、好きと言わせた後は何度あいつに「好き好き」言われてることか。

最初の1回は伝えるハードルが高い。だけどそれ以降はそれなりに低くなる。

割と簡単に言えるようになる。

特に俺は好きのハードルが低い。 やりたい、抱きたいが少し進化して好きになるのだ。


ついでに言えば、元がおっさんだけに気持ちを伝えるハードルも低い。

恋愛は気持ちを伝えない奴より、伝えた奴の方がはるかに有利だと知っているから。

秘めた恋心とか、言わなくても伝わる愛、とかな。転生して突然この世界に降ってわいた俺には難しすぎる。幼なじみとという、万人が憧れるシチュエーションも俺には存在しない。


氷の神の事もある。

せめて好きになった女には自分からガンガン伝えるべきだろう。

失恋の大半は()()()()だと思っている。


「ふーーん、にへへへへ。

マナが、って2人は許してくれるかな? きっと迷惑掛けちゃう、今日みたいに。」


「迷惑なんて思わないだろ? それに、今日みたいなこと二度とさせない。

彼氏が彼女のことを守るのは当然だろ?」


ちなみに今日の程度の話ならばトラブルのうちに入らない。

多分今後は、違うな。今後もきっと俺の方が問題(トラブル)を起こすだろう。

俺はそれを謝る気すら無いしいな。


「彼氏か・・・・ニヘヘヘヘ。


えっと、じゃー・・・宜しく?お願いします。

ニへへへへ。ふつつか者ですが、かな?」



なんとか三人目、完了っと。


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― 新着の感想 ―
[一言] だんだんと最低の男になっていますね。口説く場面って、面白く読んでいる人多いのかな?
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