表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界(この世)は戦場、金と暴力が俺の実弾(武器)  作者: 木虎海人
3章  土台作り
104/196

呼び出し


翌朝朝食後、ギルド支店の打ち合わせ室に緊急で呼び出された。

サブマスターが来ているらしい。


用向きは緊急のトラブル発生だ。

昨晩遅くまで師匠達に稽古をつけられ、朝は普通に起こされ寝不足のまま走りきった。

急いで食べて少し休もうと、朝飯をかっ込んだ俺の前にギルド職員が食堂に駆け込んできて、トラブルだと騒いだために周囲の俺を見る視線が冷たかった。

まーた何かやったのかあいつは、みんなそんな顔をしていた。


最近風評被害が酷い。





「おはよう、よく眠れたかしら? なんでも夕べは消灯を過ぎてまで訓練していたと聞いたけど。

お弟子さんも大変ね。」


良い笑顔でサブマスターが微笑む。隣には以前と同じく護衛兼文官の男が立っている。

今日は鑑定眼持ちの女はいないらしい。

寝不足であの眼でみられると苛々するからいないほうが有り難い。


サブマスは見た目はとても好みなのだが、今日はその笑顔に苛ついてくる。


「・・・知っているならもう少しゆっくりさせてくださいよ。

朝飯を急いで食べて、少しでも休みたかったのに。


あとトラブルって呼び出し止めて欲しいんですけど。

こう、廻りの視線がね、問題児を見るような目になるんです。」


「今更だろう。かなり問題を起こしたと聞いているぞ。」


ジンロという名のボディガードの男が言い放つ。

言われなくても分かってるわ、人に言われるとムカつくだけだ。


「それにトラブルというのも嘘じゃ無いわ。アナタの事で問題が起きてるんですもの・・・」


「・・・・俺? なんかしましたっけ?」


「先日勇者と面会したでしょう? そこで何か約束しなかったかしら_?」


「ああ、報奨金に色を付けてくれるように頼んでくれると言ってましたね。

お、ひょっとして結構期待してもいい感じですか?」


「はぁ~、これだから問題児は・・・」

「全く」


2人は揃って呆れたように顔を振った。



「えーと、何かマズかったですかね?」


「いーい、あの勇者が色を付けるように言ってくれる、ということはね、彼らの上の貴族に掛け合ってくれるという話なのよ。 話を聞いたその貴族達は当然、寄付してくれたわ。

アナタに期待しているからって意味を込めて。家の名前を盛大に盛ってね。


分かってる? 当然最終的には、その貴族家を宜しくって意味よ?」


「はぁ」


「まぁ実感が無いんでしょうけどね。それだけならまだ良かったのよ。

それを聞いた他の貴族もこぞって寄付してくれるわ。


ギルドに、では無くて、〝聖剣〟を使える講習生のアナタにね。

その名目だと完全にアナタに渡さないわけにいかないわ。」


「あー、ありがとうございます。大事に使います」


これは手を組んだの失敗だったかな。

初期費用があればある程度なんでも出来る。


目の前の女は惜しいが、自由にやれるほうがどちらかといえば有り難い話ではある。


「はー、勿論渡すけど。

でもちょっと講習生に渡す額じゃないのよ。

このまま渡したらアナタさらに注目浴びるわ。冒険者ギルド始まって最大の額じゃないからしら。」


ジンロという男も神妙に頷いている。

そんなこと言われても知らん。


「えーっと、一体いくらになってるんですか?」


「聞く? 聞いちゃう?

凄いわよ。今、600万z を越えたとこ。

寄付額だけでね。これ、王都に話が行ったらもっと膨らむんじゃ無いかしら・・・・」


「ろっ、600万z・・・・ えっ貴族って馬鹿なの?」


この世界の通貨の価値は実はまだよく分かっていない。

なので1z1円で考えているが、講習費用が総額60万zな事を考えるとかなりの大金だ。



あれだ。それもらったら講習費用払い切れてしまう。

しかも複数分。

なるほど、そこを気にしてるのか。

すんなり渡したくないと。


「大丈夫ですよ。それもらってもちゃんと防衛任務には参加しますから。」


とりあえず最初の1回は参加する予定だ。

2回目以降は1回目を受けた感想次第かな。もう嫌だ、馬鹿らしいと思えば金を払ってでも行かないと思う。



「まぁ待て、勿論その心配もあるのだがな。特に勇者の上の三家の貴族の入れ込みようが凄いのだ。

貴様、これを受け取ったならば、かなりしつこく勧誘される事になるぞ。」


ジンロが言う。

ああ、そっちの心配をしているのか、手を組む事になっているのにそれは微妙だな。

勇者を擁立している家となんて手を組める訳が無い。

間違い無く勇者の下に組み込まれてしまうだろう。


「うーん、それは嫌ですね。」


「で、あろう。しかもこれを受け取ればその話が広まるだろう。王都の方の貴族も興味を持つ可能性が高い。

追加で寄付を送ってくる可能性も有る。

その三家より上位の貴族に、さらに大きな寄付を受けてみろ、貴様・・・」


想像した。

自然と眉が顰まる。碌な事にならない予感しかない・・・


「あぁなるほど、その状況は面倒くさいなぁ」


「アナタねぇ、面倒くさいじゃすまないわよ。

王都だけじゃ無く貴族はあちこちにいるんだから。その殆どは勇者を擁立したいと考えているのよ?

接触して来ない訳が無いじゃ無いの。」


そういえばそれを見越して先に接触してきたんだっけか。


「ふむ、困ったな。


・・・その寄付制限出来ないんですか?」


「だからそれを相談しに来たのよ。いきなり600万はもらいすぎだと思うし。この際寄付は諦めて、報奨金だけで我慢するのはどう?

他の事でちゃんと融通はするわよ?」


「ちなみに報奨金だけでいくらもらえるんですか?」


「そうね・・・色々頑張って 15万、行かないくらいかしら・・・」


「講習生ですからな。これが冒険者であればもう少し・・・

20万くらいは払えるのだが。」


あー、貴族が寄付してくる理由がよくわかったわ。

そして冒険者が阿漕な商売だということも・・・格差が凄い。

いや、ただ講習に来て、何も知らずにいたならばそのまま受け取って、納得はしてたと思う。


だが600万って聞いた後だとなぁ・・・


「・・・・」


さすがに返事が出来ず、顔を顰めていた。


「だって仕方無いじゃないの。そんなに渡してから、講習生や駆け出しの冒険者にも上位種と戦ったらこんなにもらえるかもという話になってしまったら、みんな上位種に特攻してしまうじゃ無いの。」


「そうだぞ。だから講習生は基本後ろに配置するように頼んであるのだ。

まぁ今回の貴様の状況は理解している。だが、こちらの事情も汲んでくれ。」


なるほど、それも一理ある。

食い詰めた新人なんか、一発逆転を狙って上位種に突っ込むかもしれない。

そんな考えの奴が大勢でこぞって掛かれば、可能性は無きにしも非ず、ってところか。


いや、ねーな。そんな甘くは無い。

だが、新人でもユリウス、ガレフ クラスの奴が混じっていたら有りえる。

普通の新人じゃ無理だ。だが新人離れした新人は定期的に現れるとも聞いている。



とはいえ、俺も金の入るチャンスを逃したくはないな。


「ん~それって俺の希望は聞いてもらえないんですかね?」


「ああ、それを聞きにきたようなものだ。

 講習生の希望を聞く。そんな事は今までの前例に無いが、上位種と戦った講習生も前例も無いからな。


言ってみろ。聞ける話かどうかはそれから判断する。」


「えーっと、寄付は匿名でなら受け付ける。 それで一口1万円、じゃなかった1万z 

で、20口まで。 こんな感じでどうでしょう?」


「ふむ・・・そうだな。悪くはないか・・・」


「もしかしたら・・・

匿名だと一件もこないかもしれないけれど、良いのかしら?」


それはそれで仕方無いだろう。貴族の争いに巻き込まれる方が嫌だ。


「もらえたらラッキーだと思って割り切りますよ。」


「わかったわ、じゃーそれで手配しておくわね。なるべく早く払えるようにするわ。

で、頼まれていた事の話なんだけど。」


「どれでしょう?」


「講師が隠れ家にしようとしてた部屋の話よ。」


おっと。1番時間が掛かるかと思ってたのが最初に来た。

居住まいを正して向き直る。


「教えて下さい、お願いします。」


「ええ、結論からいうとあの建物の所有者は個人では無くて商会ね。

ドルトマイル商会という商会の持ち物で、その商会は・・・・」






全く。

この後の話は少し予想外だった。

そして貴族の情報網は恐ろしいと改めて痛感した。









      ☆★  ☆★   




「来たか」


「ふん、何よ、この数日、声をかけても忙しいとか言ってたくせに、今頃なの?

あんな事した癖に、あんな事した癖に、」


サブマスと話した後、人気の無い場所にクィレアを呼び出した。

別に大したことはしていないはずだ。


「なんだ、怒ってるのか?面倒な奴だ。

話したくないなら帰るけどな。」


「そんな事言って無いじゃない。何よ! 」


「・・・あぁ、一応、おめでとう、かな?

お前は容疑者を外れた。 だから距離をおく必要がなくなった。」


「意味わかんないんですけど?」


「詳しい話はそのうち全員纏めて呼び出してする。今日はそれだけだ。

まぁ・・・・お前は馬鹿なだけで、一応そこまで疑ってなかったんだけどな。」


「ちょっと、どうゆうことか教えなさいよ。」


「ん~、まぁいいか、任務の最後、セレナとマナが攫われただろ。」


「ええ。」


「アレ、手引きをした奴がいるんじゃないかと疑っててな。

お前もその疑いのあるうちの1人だった、つー訳だ。」


「はぁ? そんなわけ無いじゃ無いの! なんで私がそんなことしなきゃいけないのよ。

ちょっと! 流石にそれは怒るわよ!」


「あぁ疑ったことは悪かった。

可能性は低いと思っていたんだが、一応今も完全に疑いが晴れたわけじゃ無いんだが。

まぁ知りたかった情報は集まったからな。

ある程度、目星がつくまで疑いの有る奴と接触したくなかったんだよ。すまない。」


「・・・・・・何で私が疑われたのよ。」


「最初に言っておくぞ。

犯人の目星、殆どついてなかったんだ。いるかどうかも分からなかった。

でもいると仮定したほうがしっくり来た。

だからいる前提で行動していた。

こうゆう言い方しても何のフォローにもならないと思うけど、班の面子ではナード以外全員疑って掛かることにした。

杞憂だったけどな。


特にお前、俺のスキルを暴こうとしただろ、人前で。


・・・・・・・・・・・・・・ だからだ。

ま、それも馬鹿なだけだと分かってたんだけどな。調べている間は接触しないようにしてた。」



「馬鹿馬鹿言わないでよ、そのっ、知りたかったんだからしょうが無いでしょ。

確かに私も悪かったけど、べっ、別に私が知りたかっただけで、誰かに教えたりしようとしたわけじゃ無いの。」


「ふーーーん。それは何で?」


「しょ、しょうが無いじゃ無い。知りたいんだもの、何してるのかとか、何考えてるのか、とか。

ずっと話したかったのに、会っても私とは全然話してくれないし、


どうせ最初に会ったときの事だって覚えてないんでしょ!!」


「質問の答えになってない。」


「別に良いでしょ、もう・・・知ってるくせに。」


「ふーん。そう・・・



講習開始前の、検査の時だよな。最初に会ったのは。」


「えっ!? おっ覚えてたの?」


「あぁ、あの時お前泣きそうな顔してたからな、わざわざ引っ張り出して言う必要無いかと思ってたんだけどな、そんな話。あの時泣きそうな顔で・・・とか言われても不愉快だろ?


まさか忘れられてると思われてるとは思わなかったが。

そこまで冷血じゃ・・・無いことも無いか。 でも覚えてるぞ。」


別に忘れてたわけでは無い。すぐに思い出せなかっただけだ。

正確にはすぐにあの時の女だと一致しなかっただけだ。

泣きそうな顔の印象が強かった。

事前の間引き任務で会ったときは、大半ふて腐れた顔で過ごしていたから、その顔と泣きそうな顔を一致させるのに少し時間が掛かっただけだ。




とか思っていたらまた泣き出しやがった。

そして抱きつかれた。

避けられたけど、そこまで冷血でも無い。

しっかり受け止めてやった。


「うぅ・・・忘れられてるかと思ってた、忘れられてると思った。うぇーん!!!」


それからしばらくは話にならないので、泣き止むまで待つことになった。







「で、どうする? 今後の事、あぁその前にさっきの事聞いて無いな。」


「・・・何をよ?」


「何で俺の事が知りたいのかって奴。」


「良いじゃ無いの、もう。分かってるでしょ!!」


「くくくっ、性格が悪いのが自慢でな。

あえて言わせたくなるんだよ。分かってるからこそ。」


「そ、そんなの自慢にならないわよ! 馬鹿っ」


「残念言わないと先に進まないんだな、これが。」


「アンタって本当っ、性格悪いわね。」


「はっはっはっ、そんな男を好きになったお前が悪い。

ほら言ってみそ_?  言ってみそ_?」


「くぅ~~~~~~~」





こうして二人目の彼女が出来た。


そしてその夜はジスナを呼び出した。


昼にクィレアを呼んだのは、さすがに昼間から盛る気にならなかったから。

なんというか、押し倒すには初めての相手だと外だと面倒だしな。


非処女が(俺の中で)確定しているジスナを夜呼び出す。


これはまぁ、また別の機会に。


ご馳走様でした。



また幕間ででも、エロいとこは挑戦したいと思ってます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ