43、檜と楡と三蔵法師
鉄扇公主が三蔵法師に語る涙の懺悔を聴いていた檜と楡は、何と可哀想な女性だろうかと鉄扇公主を哀れに思った。そして何故さっちゃんが自分を攫った鉄扇公主を自分達の店に連れてきたのかの理由に思い至り、胸が熱く感じられた。
ああ、さっちゃんは檜と楡の言葉を信じ、覚えてくれていたのだ。彼らは自分達のホストクラブを女性を楽しませる食堂だと偽っていた。目を閉じると、先ほどの着物ドレス姿のさっちゃんが色鮮やかに目に浮かんだ。檜と楡は三蔵法師達の視線に、次は自分達が語る番だと悟った。
「僕らは太上老君の命を受け、あなた達三蔵法師一行に試練を与えるために、10年前からここにいる狸の化生です」
目を大きくして驚く三蔵法師に簡単に自己紹介すると二人は、さっちゃんと出会った経緯や、あの子に渡した式神の話や、今日訪れたさっちゃんと翠さんとの事や、そして先程の三蔵法師の供である、孫悟空とのやり取りと、太上老君から託された瓢箪の試練の話をした。
「まさか、さっちゃんが孫悟空を助けようと動くなんて、僕らは思わなかったんだ!あの瓢箪は長時間、中に入っていたら、身が溶けてしまうんだ!どうしよう!さっちゃんが!」
三蔵法師は苦い表情で二人から天井へと視線を移した。そして短くため息をつくと、こう言った。
「悟空は筋斗雲に乗って飛び出していったんですよね?悟空は暴れ猿と呼ばれていたそうですが、よくつきあってみると理由なく暴れているわけではないのが、わかるんです。それに彼は不義理でもない。きっとあの子を助けるはずです。何も言わずに飛び出したのなら、よほどのことが起きたはずですが、きっと知らせを寄越すはずで……ほら、来ましたよ」
突き破られた天井の穴からスタッ!と飛び降りてきたのは、孫悟空の分身であった。真っ直ぐに自分の師である三蔵法師の元に走ってくる。
「沙胡蝶、溺れる、溶ける、助ける。二人、裸、洞、籠る。お師匠さん、ここ、まかせた」
伝言を言い終えた分身は消えた。その内容に皆が息を呑んだ。




