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41、玄奘と五宝貝②

 雨が上がったばかりの歓楽街は、キラキラと昼下がりの光が雨露に乱反射されて輝いていた。欲望渦巻く歓楽街に似合わない、清らかな美しさに街はつつまれ、おまけに普段の酒やたばこの匂いではない、爽やかな香りが街全体に漂っていた。どの店からも客も店員も次々と店の外に出てきて、皆、嬉しそうに深く息を吸い込んでいる。


「なんて爽やかな空気なんだろう。今日は何だか酒やたばこもしたくないなぁ」

「こんな日は、なんだかピクニックに行きたくなるわ」

「まるで心が洗われるかのような清々しさだ」

「そう言えば、さっき紫雲が天に向かって昇っていくのを見たぞ」

「私も見たわ!紫雲に真珠色の光が見えた!」

「まさか!あの少年か!?もしかしてあの方は天の使いだったのか!」

「きっと、そうだ!!賭け事を止められない我らを救うために神が使わした天使様だったんだ!」


 人々の口から紫雲と聞いて、それは玄奘の供の孫悟空の乗り物である筋斗雲のことだと玄奘は察した。真珠色の光とは、きっと沙胡蝶のことだろう。無事に助け出せたらしいと聞き、胸を撫で下ろす。酩酊状態の猪八戒を何とか起こして、孫悟空の匂いの行き先を案内させた。悟空の匂いは五宝貝というホストクラブの店へと続いていた。


 玄関は蹴破られていたので、そのまま中に入ると、店内は水浸しで、おまけに天井には大きな穴が空いていた。客達は避難し、中には二人の青年が呆然と天井を見上げ、それをいたわるように五人の青年が立っていた。少し離れた所では一人の女性が床に打ちひしがれて泣き崩れ、二人の中年の男達がオロオロと背を撫でていた。飛び抜けて美しいよく似た二人の青年達が泣きながら、三蔵法師が溶けてしまったと悲しんでいたので、詳しい話を聞かせてほしいと頼んだ。


 息を切らした沙悟浄が、玄奘のことを人間離れしていると横でぼやいているが、男を担いで半里全力で走ったくらいは、玄奘にとってはたいしたことではない。息切れするほどの疲労など感じてもいなかった。


 玄奘は自分こそが三蔵法師であり、攫われた子どもは別人だと話すと、彼らは大いに驚いた。


「え?あなたが三蔵法師なの?じゃ、さっちゃんは誰なの?」

「まさか!だってあんなにも強運で賢いのに!?なのに、ちっとも威張らないし、強運を私利私欲で使わない高潔なお坊様だったよ!」

「そうだよ!優しくて穏やかなのに、時には人に厳しい教えを授けてくれる立派な僧侶だったよ!」

「自分を騙した賭場の男も、改心させた凄いお坊さんだったよ!」

「なのに、お人好しで直ぐに攫われそうで、ずっと心配だったんだ!」

「そう、何でも信じてしまいそうで、ヒヤヒヤして目が離せなかった!」

「僕ら、さっちゃんが大好きなんだ!例え、さっちゃんが三蔵法師でなくたって、あの子が大事なんだ!」

「っていうか、さっちゃんは誘拐されてたの?翠さんは何か事情を知っているの?」


 7人の青年達が目を向けた先に、翠こと鉄扇公主がいた。

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