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32、水簾洞にて①

水簾洞着きました!

 孫悟空の故郷の花果山の近くを流れる谷川の水源(すいげん)のところに、孫悟空の昔の住処である水簾洞(すいれんどう)があった。この水源の水は、とても清廉(せいれん)だから沙胡蝶と孫悟空の酒精(しゅせい)にまみれた体を洗い清めるのに、ちょうど良いだろうと孫悟空は考えたのだ。


 そこで筋斗雲で水源まで行った孫悟空は沙胡蝶を抱えたまま水源に飛び込んだ。沙胡蝶は海の国の者だし、孫悟空は真珠がなくたって(もぐ)ることに何も問題はないのだ。そのまま浮かび上がる必要もなかった孫悟空は水中で沙胡蝶の頭の先から足の先まで、全部を自らの手で優しく()で洗っていった。

 沙胡蝶の肌は肌理(きめ)の細かい真っ白の肌で滑らかで、触り心地が良かったから、孫悟空はまるで赤子のような肌だなと思った。


 そうして一通り沙胡蝶の体を洗い終えたが、何となくまだ()()()()()()()()洗い足りないような気がした孫悟空は、その箇所(かしょ)をもう一度念入りに撫で洗い、その後に自分自身の体も素早く洗い清めた。


 強い酒の匂いが消えた沙胡蝶の()から、(さわ)やかな甘い果物のような香りが立ち上ってきた。どうやらこれが海の魔女が隠していた、沙胡蝶の秘密の内の一つのようだ。


 沙胡蝶の胸は、蟠桃園(ばんとうえん)で実る桃のように大きく美しいが、体全体から(かお)(にお)いは、桃よりも甘さは控えめで、いつまでも匂っていたいような気分にさせられる爽やかな香りだった。


 何故、このような爽やかな甘い体臭が(ただよ)うだろうか?海の王の血を半分受け継いでいる人外の者とはいえ疑問がわく。何故なら孫悟空は海の者達を見知っている。海の民も竜王達も体臭は魚臭いというか生臭(なまぐさ)い匂いがしていて、このような甘い香りを放つ者は一人もいなかったのだ。不思議は深まるばかりだが、まずは沙胡蝶の方が先だと孫悟空は思い直した。早く酒精を取り除いてやらないと体に良くない。


 孫悟空は水中からそのまま洞内(どうない)に泳いでいった。洞内の入り口付近には体を拭くための大きめの布2枚が用意してあった。孫悟空はそれで沙胡蝶と自分の体を拭き、水分を落とした。分身に伝言を頼んでおいたので、頼んだ物が孫悟空の部屋にそろっているはずだ。孫悟空は二人の体に布を巻き付け、未だ眠ったままの沙胡蝶を横抱きにして部屋に入っていった。


 昔使っていた部屋の中は、念入りに掃除されていて清潔だった。そこかしこに花瓶が置かれ、花がふんだんに飾られている。部屋の(はし)に置かれた赤い卓には数種類の果物が入った鉢と清らかな水の入った徳利(とっくり)と湯飲みが2つ置かれている。気を利かしてくれたのか、滋養のある蜂蜜まで小瓶に入って置いてあった。


 部屋の中央には、い(ぐさ)で編まれた大きな厚手の敷物が引かれていて、その上に何故か赤い花びらが()かれたように落ちていたので、何の意味があるのだろうかと孫悟空は首をかしげた。よく見れば卓の置かれた方とは逆の端の方に、湯の入った水瓶と(たらい)が置かれ、手ぬぐいが何枚も(たた)んで置いてあった。竹細工で編まれた枕が二つ仲良く並べられている時点で、孫悟空は分身が猿達に誤解を与えるような伝言を言ったのではないかと思い至って、孫悟空は頭を抱えたくなった。伝言を伝え終わった分身は消えてしまうので、今更孫悟空が、あの分身を問い詰めることは出来ない。孫悟空は深い溜め息を一つついた後、敷物の上に、そっと沙胡蝶を寝かせた。


 海の魔女の呪いがかかった真珠は、沙胡蝶の美貌を隠すために沙胡蝶の性別を隠し、本当の年齢も隠していたのだろう。呪いがかかっていない沙胡蝶は、14、5才くらいの少女の姿をしていた。孫悟空は先ほどの胸の感触から、中には()があるように思ったので、まず()()()通りの姿に間違いないだろうと考えた。孫悟空だってそうなのだが、人間や人外の者や、化生や魔力のある者、仙人、仙女、天界人、神仏……等々(などなど)の色んな生き物が、混沌(こんとん)と存在している、この世界は見た目がそのまま年齢を反映していることは、()()である。


 大昔、仙術の師範が孫悟空に人間の女人(にょにん)は、子どもから大人へと代わる頃に胸の中に()が芽生えると教えた。この()がなくなるまで胸は大きく成長していく。だから()のある女人の胸に触れる機会が訪れたときは、くれぐれも女人をいたわり、強く(つか)んではいけないと師範は、()()()()()()()()()()()()()孫悟空に力説していたが、彼は孫悟空にこういう事態が起こることを未来視(みらいし)していたのだろうか?だとしたら師範に、この術も習っておくべきだったとチラリと思った。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

今まで、自分の頭の中だけの空想(妄想)のお話を、こうして

書かせてもらえて、読んでくれる方も、いるなんて、

すごくありがたいなぁと、思っています。


読んでもいいよ、という方、これからもよろしくお願いいたします。

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