20、鉄扇公主と五宝貝の二人
鉄扇公主は、未だ沙胡蝶のことを三蔵法師と勘違いしています。
五宝貝》と書かれた看板の前に煌びやかな青年達が7名ほど立っていて、鉄扇公主と三蔵法師の乗った馬車を出迎えた。7名の青年達の中央に立つ、特に見目麗しい青年二人が三蔵法師を見て、嬉しそうに顔を綻ばせた。二人は眉を上げ目を見開き、口が笑顔をつくり、頬を紅潮させ、手を広げ、駆け寄ってくる。
後、1メートルほどで抱きつける!という距離で、ピタッと立ち止まった二人は抱擁はせず、手をわきゃわきゃと動かしながら、恨みがましい声を上げた。長身の金髪の青年が……彼は鉄扇公主に檜と名乗っている……唸るように言った。
「うー!!何で?何でなの、さっちゃん!?わざと!?わざとなの?こんな砂埃だらけじゃぁ、抱っこして再会を喜べ合えないじゃないか!せっかくさっちゃんに抱きつく口実が!……え?旅の途中で野宿したって?だめでしょ!さっちゃんは可愛いんだから、男の子でもちゃんと鍵のかかる部屋に泊まらないといけないよってあれ程言っておいたのに!……ん?何?4人の親切なお兄さん質と野宿したって!!誰!?そんな羨まし……や、その、……ムニャムニャ、えっと、とにかくお風呂、お風呂だよ!お風呂の後にお説教だからね、さっちゃん!」
同じく長身の銀髪の青年が……彼は鉄扇公主に(楡)と名乗っていた……言った。
「さっちゃんの知らせが来て、あわてて仕事着着たのに!でもやっと僕質と一緒に暮らす気になってくれたんだよね!……え?お腹すいたから約束通りに僕らの食堂に食べに来たって?知り合いのお姉さんも一緒に?……そっか、さっちゃんは外の国の人だし、まだ子どもだものね。僕らの店を見たって、どういう店か、わからないよね。……ん?ああ、こっちの話だよ、さっちゃん。取りあえずは、ようこそ五宝貝へ!余所とは違う形式だけど食事が出来ることに違いないからね!でも先にお風呂だよ、さっちゃん!っと、そっちのお姉さんも!何で二人して埃かぶってるの?……え?大掃除してたって?そっか、それならお腹がすいてるよね、うん。けど!お風呂!二人とも、お風呂だよ!」
二人の青年は、後の5人の青年達に指示を出した。指示に従って5人は出て行った。そうして鉄扇公主は三蔵法師と一緒に従業員用の控え室に連れて行かれ、そこで風呂に入るようにと告げられた。
鉄扇公主は風呂に入るのは構わないが、その間に三蔵法師に何かされてはたまらないと拒むと、二人の青年達はお互いに目線を絡ませ、頷き合うと、鉄扇公主に一つの瓢箪を手渡し、小声で囁いた。
「これが何かわかりますか?」
仙女である鉄扇公主は、それが単なる普通の瓢箪では無いことがわかったので、無言で肯定を示した。
「僕らはあなたの本名を知っていますよ、牛魔王夫人。どうか僕たちを信じて下さい。僕らはさっちゃんの敵じゃない。その証拠に僕らはあの子からは本名を聞いていません。だって万が一にもあの子をこれの中に吸い込んでしまったらいけないからです。あなたはこれが何かわかるなら、使い方も知っているんですよね?」
「檜の本名は金角。僕の本名は銀角。あなたに本名を明かすのは、さっちゃんが連れてきたあなたを信用しているからです。二人が無事にお風呂から出てくるまで、あなたに俺らの宝を預けておきます。僕らが二人に一本の毛ほども傷つけたりしないという証に」
二人にそこまでされては、信じずにいられない。鉄扇公主は大人しく二人の指示に従うことにした。
「きゃー!!さっちゃん、かっわいいー!!」
「わぁ、やっぱりさっちゃんは最高だよ!」
確かに傷一つついていないことは認めよう。だが、しかし……。鉄扇公主がお風呂から出ると先にお風呂から上がったらしい、三蔵法師こと、さっちゃんは、真っ白の着物ドレスを着せられて、それはそれは可愛らしい男の娘に仕上げられていた。二人に瓢箪を返す鉄扇公主の手が震える。
「どうしました?」
「わ、私だって、さっちゃんをかわいくしたかったのに!」
思わず本音がダダ漏れしてしまった鉄扇公主であった。
次回沙胡蝶の服装詳しく書きたいですが表現が難しいです。語彙力が欲しいです。




