神は存在し、俺と凛の新たなる人生が始まる
「お主ら二人がここにいるのは偶然じゃ。偶然と言っても今回起こったことは必然とも言えるかのう」
ん?
どう言うことだ?
「本来ここにいるはずだったのはそなたの妹、凛だけじゃったのじゃよ。…まぁ、凛がこの場に来て兄を探し、叫んで、慌てふためき、動揺して妾でも収集がつかなかったのでのぉ、地球の神に相談して、湊人、お主を呼んだんじゃよ」
女神様でも収集がつかないって…凛、何をしたんだ?
「俺がいる理由は分かったが、凛が呼ばれる理由は何だ?」
「凛はもう地球で輪廻転生を行えない程魂が弱っておったから、異世界へ行き輪廻転生をリセットする必要があったのじゃよ」
輪廻転生?
死んだらあの世に行ってもう一度現世に生まれる、とかいうやつか?
あと、凛の魂が弱っている?
どういうことだ?
「凛はどんだけ輪廻転生を繰り返しても辛い運命をしておってのぉ、魂が徐々に疲弊していったのじゃよ」
そうなのか。
何度も辛い運命を辿っていたんだな。
「ん?じゃあ、凛は異世界で転生しないといけないわけだよな?そうすると今までの記憶はどうなる?」
「うむ。転生すると記憶は消えるのう」
「それはイヤ!!」
声がする方を見ると凛が今にも泣きだしそうな顔で女神様を見ていた。
俺も凛との記憶が無くなるのは嫌だ。
「どうにか出来ないか?」
「ふむ。出来るぞ」
「「えっ?!」」
「転移をすれば出来る。今回お主らが行く世界は剣と魔法の世界じゃ。そこには加護と言うものがある。加護とは神のギフトでありその恩恵は様々であるんじゃが、まぁ、凛には魂の消耗が少ない加護を与えて転移すれば転生前の凛でも魂の消耗はないはずじゃ。ふむ…“魂の安定”でどうじゃ?利点は魂がこれ以上消耗しないことじゃな。欠点は特にないのぉ」
記憶が無くならずギフトによって魂も消耗されないようで安心だ。
凛も安心しているようだ。
「ギフトで魂が消耗しないことは分かったけど、地球に居た頃の身体じゃ凛は…」
「地球の頃の身体などもうない。なんなら病気のない健康な身体を与えることくらい出来るぞい。もちろん違う容姿を与えることは出来んから、地球での容姿じゃがの」
それは願ってもない要望だ。
凛は絶世の美少女だからな!
まぁ、容姿が変わっても凛を大切にすることは変わらないんだけどね。
「それじゃあ、転移の話でもしていこうかのう。転移する際にお主らには妾のギフトと無限収納のアイテムボックス、異世界に対応出来る身体を与えておこうと思う」
「ギフトやアイテムボックスはなんとなく分かるけど、異世界に対応出来る身体ってどういうことだ?」
「まぁまぁ、慌てるでない。一つ一つ説明していくから待っておるんじゃ。とりあえず、質問があった異世界に対応出来る身体っていうのは、魔力にあてられても死なない身体ということじゃな。魔力は生あるもの全てに備わっとる。けど、生身の人間が魔力がある世界に行けば、魔力という今まで無かったものが身体に蓄積していくからのぉ、まぁ、簡単に言えば異物が身体中に溜まってボロボロになるのじゃよ」
「なるほどな。異世界で生きていける身体にするってことだな」
「まぁ、そんな感じじゃ。魔法に関してもついでじゃから説明するぞ。魔法は魔力を使って出せる。魔法には攻撃魔法や回復魔法、生活魔法など色々あるから…ふふ、行ってからの楽しみじゃな。魔法を覚える為にはスキルポイントを使って覚えられる。スキルポイントは魔物を倒したりしてレベルを上げることで手に入る。レベルとは、まぁ説明せんでも分かると思うが、その者の水準じゃ。あくまで指標じゃがの。レベルが低くても厄介な能力を持った者もおるしのぉ」
「なるほどな。ゲームみたいな感じか」
「言い忘れておったが、魔法を覚えるのにも適正があってのぉ、系統によって得手不得手があるんじゃよ」
なるほど、要約するとー
魔物を倒してレベルを上げ、スキルポイントを使って魔法を覚える、んで、魔法適正で得手不得手があるってな感じか。
「じゃ、次の説明に行くぞ。妾のギフトに関しての説明じゃ。妾のギフトというのも、この世界には妾含めて十人の神がおる。それぞれ得意なギフトがあって違うんじゃが、妾のギフトは回復系や召喚の魔法の能力向上や身体や精神に関与するのが多いのぉ。後で何が良いか決めてもらうからの。まぁ、凛は魂の消耗をしないギフトを与えるからのぉ。湊人は考えておくのじゃよ」
ギフトか、何にしようかな?
俺と凛が安全に生活出来たらいいギフトがあればいいんだけど。
「次にアイテムボックスについてじゃ。まぁ、名前の通り生きておらんものなら何でも入る鞄のことじゃ。無限収納は特別じゃからバレたり盗まれたりせんようにな」
なるほど。
思ってた通りだな。
「とりあえず、一通りの説明はしたが何か質問はあるか?」
「異世界に転移するにあたって、どこに転移するんだ?出来たら街に近い安全な草原とかがいいんだが」
「それに関しては大丈夫じゃよ。妾が転移する場所を指定して出来るからのぉ」
「服はどうする?このままだと作業着と部屋着だぞ?」
「うむ。それは考慮しておこう。異世界のどんな服がいいんじゃ?」
「どんなのがあるんだ?」
「ふむ…」
女神がパチンッと指を鳴らすと、目の前に服の雑誌見たいなのが出てきた。
「そこから探すが良い」
雑誌を凛と見て相談する。
俺はやっぱり一般的な感じでいいかな?
凛はどうせなら可愛い服が良いと思う。
地球にいた頃はオシャレなんてあんまし出来なかったからな。
「凛はどの服が良い?」
「うーんとねぇー…これが良いの!!」
白のカッターシャツとスカートに赤と黒のチェックの秋を感じるフリルエプロン、黄色のカーディガンか。
「良いんじゃないか。凛に似合いそうだ」
「えへへー、そうかなぁ?」
照れてる凛も可愛いなぁ。
「決まったかのぉ?…ふむふむ、承知した…ホレこれでいいかの?」
「「ありがとうございます」」
女神様に簡易の試着室を造ってもらって着替えた、女神様ってすごいな、一瞬でなんでも出来るなんて。
着替え終えて出てきたら女神様しかいなかった。
まだ凛は着替えている途中のようだ。
「うむ。お主は普通じゃのう。そんなんで良かったのか?」
「はい。一般的な格好の方が他の人とも接しやすいかと思いまして」
「なるほどのぉ」
女神様と軽く話していたら凛が出てきた。
…天使再臨。
もう言葉にならない程可愛い。
「どうかな?似合ってるかな…お兄ちゃん?」
いかん、いかん。
あまりにも可愛すぎて見惚れてしまった。
「とっても似合ってるよ、凛」
「えへへー…嬉しいな」
「うむ。とっても可愛いぞ、凛。お主が女神と言っても疑いもせんぐらいじゃ」
女神様もよく分かってらっしゃる。
「…!?ありがとうございます」
照れてる凛も可愛い。
「それでは湊人のギフトの話でもしようかのう。湊人、お主はどんな感じのギフトが良い?」
「んー、俺と凛を守ってくれるようなギフトかな?凛の魂に関するのは女神様に任せるとして、戦い方も分からない二人がいきなり戦闘とかなったら不安だし。俺達を助けてくれるようなやつが良いな」
「うーむ、それなら召喚系のやつかのぉ。おぉー、良いのがあったぞい。“神獣を召喚する者”はどうじゃ?このギフトの利点は妾の契約しておる神獣を召喚して主従関係を結ぶことが出来るんじゃ。欠点は一回しか出来んことじゃな。使うとギフトの名前が“神獣との契約者”になる。まぁ、名前の通り利点は神獣との主従関係を結べることじゃ。欠点は特にないのぉ」
「分かった、それで頼む」
神獣とかワクワクするな!
何がでてくるんだろうか?
「よし。それでは其方にギフトを授ける」
女神様が両手を広げると俺と凛の周りが光り出した。
両手を胸の前で組み祈るようにして言葉を紡ぎ始めた。
「ー我、女神アシュリーが願う、此度、異世界から招かれし者に、幸、恵、楽が多からんことをー」
周りの光が大きくなった!?
「ー凛、手を前に」
急に呼ばれてびっくりしていたようだが、言われるままに手を前に出している。
「ーリン・ミヤウチにギフト“魂の安定”を授ける」
凛の手に手を添えると、凛の周りにあった光が手に集まり始めた。
「凛。その光を胸に当てなさい。それで終わりよ」
言われるままに胸へ手を当てると光が身体へ広がるように消えていった。
「次は湊人。やるわよ」
「ーミナト・ミヤウチにギフト“神獣を召喚する者”を授ける」
凛と同じように手を出すと女神様が手を添えてきた。
手を胸へ当てると、光が身体へ広がるように消えていった。
「…うむ。無事に終わったようじゃな。お疲れ様じゃ」
一仕事終えた様に清々しい表情だった。
「ありがとうございます。アシュリー様」
「あ…ありがとうございます。アシュリー様」
二人で頭を下げて礼を言うと、アシュリー様が照れ臭そうにしていた。
「別に構わんっ…それよりも…その…アシュリー様…じゃのおて…“アシュリー”と呼んでくれんかのう。あと、敬語じゃのおて今までみたいに気安く話しかけて欲しいのぉ」
テヘヘと笑いながら言う姿はとても愛らしい。
「分かったよ。ありがとう、アシュリー」
「うん!ありがとう!アシュリー!」
凛はアシュリーに抱きついて感謝を述べている。
「それじゃあ、そろそろ異世界へ行くかのぉ」
凛と顔を合わせて頷く。
「「お願いします」」
「うむ。では達者での」
アシュリーがパチンッと指を鳴らすと俺と凛を囲うように魔法陣が出た。
「凛。もう凛が悲しまないように側にいるからな。今度こそ約束を守るよ。色々なことをしたり、色々な所に行ったり、色々な料理を食べたりしような」
凛の目を見て、頭を撫でながら言うと優しく微笑んでくれた。
「…うん。お兄ちゃんと一緒にいっぱい思い出作るのっ!!!」
今までで一番明るい笑顔で微笑んでくれた。
さぁ、俺と凛との新しい人生の始まりだ。
これでプロローグは終わりです。