神は存在しない
ーーー五日後の昼。
今日は祝日で人通りが多い。
「おーい、湊人、もうそろそろ休憩とってもいいぞー」
「はーい、お先に休憩いただきます」
ふぅ、今日も寒いな。
昨日の大雪でいつもより寒く感じる。
早く暖かいものを食べよう。
うどんかラーメンどっちにしようかな?
ん?
あれは事務の高橋さん?
「ーッ、湊人くん、すぐに病院に向かって。妹さんの症状が急に悪化したって今病院から電話があったわ」
「…えっ、何て言いました?」
「妹さんが危篤で危ない状態だから早く病院に向かって」
はっ?
何言ってんの?
凛が危篤?
はは、ふざけてるのか?
冗談にしては酷すぎる。
「ーッ、早く行きなさい。妹さんがあなたを待っているのよ」
「ーッ、クソッ」
どういうことだ?
凛が危篤?
ふざけるなっ!!
この間約束したばかりだぞ!!
もっと色々なことを一緒にしようって、もっと色々な所に行こうって、もっと色々食べようって言ってたのに…。
神さまがいるなら凛を助けてくれよ。
「はぁ…はぁ…」
赤信号か、病院まであと半分って所だな。
「キャー」
へ?
何?
何騒いでるの?
ん?
なんかトラックがこっちに向かってきているような。
何このスローモーション。
はは、ゆっくり近づいて来ている。
ゆっくりならトラックなんて余裕でかわせるし。
あれ?
足が動かない。
足だけじゃなくて身体も動かない。
なんで?
ドンガラガッシャーン
何だ?
何が起こった?
身体中が死ぬほど痛い。
ん?
周りの人は何て言ってんの?
そんなことより早く病院に行かなくちゃ。
あれ?
足が動かない。
それに何でこんなに俺の身体赤いの?
あぁ、俺の血か、これ。
血って本当に暖かいんだな。
「…凛、待っ…てろ。…今、行…くか…ら…な…」
意識が朦朧としてきた。
ヤバイな、死ぬのかな俺。
死ぬ前に凛の所に行かないと。
側にいてやらないと。
グチャ。
あぁ、ダメだ。
足が折れて、立てないや。
悔しいな。
頬をつたうのは涙か、それとも雪か。
分かんないや。
ただ俺の心情を表しているのは確かだな。
「ハァ…ハァ…」
ごめんな、凛。
そっちに行けそうにないや。
側にいてやれなくてごめんな。
ごめん。
凛…。
これで地球での生活は終わりです。