商業国カルナート
門の近くまで来ると沢山の馬車や人が並んでいた。
行商人らしき人や冒険者らしき人など様々だ。
ちなみにフェンは子犬サイズまで小さくなってリンに抱っこされている。
大きいままだとまた怯えられるからね。
しばらく並んでいると後ろに並んでいた冒険者らしき四人組のパーティーが話しかけてきた。
「よぉ!見たところ冒険者や商人みたいな格好じゃないがカルナートへ何しに行くんだ?」
話しかけてきたのは茶髪の明るい感じの青年だ。
俺と同じ歳くらいか?
「カルナートとは何ですか?」
「おいおい。今から行く所の名前も知らないなんて…さては田舎もんだな?」
「…えぇ、最近村を出てきたばかりなんですよ。よければカルナートについて教えてくれませんか?」
「あぁ、いいぜ。っとその前に俺はリッキーゼン。リッキーって呼んでくれ!んで、俺達は暗黒の狩人っていうパーティー名で冒険者やってるんだ。それでこっちが俺のパーティーメンバーのカレン、アレン、ガルドだ!よろしくな!カレンとアレンは姉弟なんだぜ、そっくりだろ!」
カレンとアレンは二十代前半くらいの暗めの茶髪で身軽な装備をしている。
どちらも美形だ。
違うのはカレンがロングでアレンがショートってだけで、髪型を変えたら本当に見分けがつかなそうだ。
ガルドは筋肉モリモリの白髪が生えてきた四十代くらいの男性だ。
ニコニコしているせいか見た目に反してなんか優しそうな雰囲気がある。
「俺はミナト・ミヤウチです。こっちが妹のリン。抱っこしてるのがフェンです。よろしくお願いします」
「リンです。よろしくお願いします!」
「うむ。我はフェンだ」
フェンや、鼻をフンと鳴らして威張っても、女の子に抱っこされてたら、ただ可愛いだけだぞ。
と思っていたらリッキー達は目が出そうなくらい驚いてる。
えっ?
何に驚いてんの?
俺の妹が可愛い?
ははっ、ありがとう、当たり前だけどね!(笑)
えっ?
違うって?
…分かってるよ、フェンのことだろ?
リンが抱っこしているフェンをガン見してるもんな。
「えー、どうしました?」
「どうしたもこうしたもない(わ)!なぜ魔物がしゃべってる(リンちゃんとても可愛いわね)!!」
「…えっ(えっ)!?」
「カレン!魔物がしゃべっているんだぞ!驚かないのか!?」
「そんなことより!リンちゃんでしょ!こんなに可愛い子を初めて見たわ!なぜこんなにも可愛い子がいるのに驚かないの!?」
「いや、ミナトの妹は可愛いと思うが俺はもっとボン、キュ、ボンとした女性の方が好みだ」
「…リッキー、お主の好みよりそちらのフェンと呼ぶ魔物のことに関しての議論をした方がいいのではないか?」
「あぁ、そうだった!おいミナトその魔物はどうして言葉を話している?」
「ちょっと無視しないでよー!私の話は終わってないわ!」
「だー、うるさいな!俺の話が終わったらお前の話を聞いてやるから!」
「…分かったわ!早くしてね」
「はぁ、で、なんでなんだ?ミナト説明してくれ…」
呆れているリッキーとふてくされているカレン、それをなだめているアレンとガルド。
「…えー、フェンは私が召喚した神獣です。魔物とは違うので喋れるんだと思います」
「その通りだ!魔物は知性の低い魔力を持った獣の事を言うから我とは違う!二度と間違えるではないぞ!」
「という事らしいですよ」
「なんで神獣を召喚出来んだよ!神獣を召喚なんてそんなの聞いたことないぞ!」
両肩を掴まれて鼻と鼻がくっつきそうなくらい顔が近い。
鼻息も荒いし、顔もなんか怖いし。
リンもおどおどしてるからそろそろ離れて欲しいな。
「おい、リッキー、ミナト殿が怖がっておるだろ?離れんか」
「そうよ!リンちゃんがおどおどしてるじゃない!怖がらせちゃダメでしょ!」
「…あぁ、わりぃ」
離れてくれて良かった。
リンも安心してるそうだな。
さてとどう説明しようか。
俺がギフト持ちと素直に説明してもいいけど、何かと面倒が起きそうだな。
といっても、いい案が思い浮かばないし、どうしよう。
けど、さっきのリッキーの雰囲気的にはぐらかしてもしつこく聞いてきそうだな…仕方ないか。
「…えぇっと、俺ギフト持ちでして、そのギフトによって召喚されたのが神獣のフェンだったってことです」
「…なるほどなぁ、ギフト持ちについては噂程度に聞いていたが、こんなギフトもあるんだな」
「そうであるな。ギフトには色々な恩恵があると聞いたことがある。ミナト殿は召喚系のギフトということじゃな」
「んじゃあ、フェン様はとても強いのか?」
フェン様?
どうした?
なんで急にフェンを様付けし出したんだ?
「…どうしてフェンを様付けし出したの?」
リンも疑問に思ったそうだ。
「ん?あぁ、神獣様は神様に最も近き存在だからだよ」
「うむ、やっと我の偉大さが分かったか、人間。これからも我を敬うようにな」
「はい!もちろんでございます」
なんかリッキーが尊敬の眼差しでリンに抱っこされて威張ってるフェンを見ている。
「もう話は終わった?じゃあ、私の番ね!」
カレンがそう言うと、リッキーを押し退けてリンを力強くハグして頬ずりしだした。
「ちょっ、カレンさん、くすぐったいですよー」
リンはいきなり来られてビクッとなっていたが、相手が女性だからなのか、敵意がないからなのか拒否している様子はない。
ただ、抱っこされているフェンはリンとカレンに挟まれて苦しそうにしているようだが。
「…!?おい、カレン!フェン様が苦しんでおられるだろうが!もう少し優しくしろよ!」
「…しょうがないわね。はい、これでいいでしょ。今はリンちゃんを堪能している所だから邪魔しないでよね!」
カレンはリンを横からハグし直して堪能しているようだ。
フェンは解放されて咳き込んでいたが大丈夫そうだ。
「リッキー、それでカルナートって所はどんな所なんだ?」
「…あぁ、カルナートはブライガル・カルナートって言う人が作った国なんだ。なんでもその人もギフト持ちだったらしく、彼の仲間と一緒に世界を旅して世界中の珍しい物を集めていたらしい。それを自国へ持ち帰ったら、戦争で無くなっていたんだとさ。自国を滅ぼした国は別の国と戦争してたらしく、その相手国に協力を申し出て戦争したらカルナートとその仲間達が次から次へと敵を倒して遂に敵国を鎮圧したんだ。この戦争において最も貢献したカルナート達は自国の再建の援助を申し出て作ったのがこの商業国カルナートってわけだ。今や色々な国の名産物が集まる場所になったり、当時のことを劇にした催しや援助をした今やほぼ敵なしの国マルザハバルートと一緒に年に一度の祭りなんかもあるな。まぁ、祭りは半年後くらいだが、今は劇をやってる期間だと思うぞ。時間があったら見たらいいと思う。なかなか迫力があって面白いからな。それに美味しい物も多いから色んな物を食べるのもいいと思うぞ」
なるほどな。
色んな物を買い集めるにはもってこいの場所だな。
それに劇もあるみたいだし、リンと一緒に見よう。
リンは劇とか見たことなさそうだしな。
俺も学校とかの劇しか見たことないし、本格的な劇は見るのは今から楽しみだ。
リッキー達と話しながら並んでいると俺達の番になった。
フェンには魔獣と言われても静かにしておくように言っておいた。
フェンは不服だったようだがリンからもお願いされて撫でられると了承してくれた。
一々驚かれて説明するのめんどくさいからね。
門番の警備員は三人いた。
一人は紙と筆を持ち、もう二人は槍二つを交差させて通せんぼしている。
「えーと、この国に来た理由は?」
「観光で来ました」
「子供二人と魔獣で?」
「はい。田舎から出たばかりで少しでも見聞を広めたいと思い妹と旅をしています。それに妹が抱っこしているのは、私が召喚しました。とても強く頼りになりますので」
「なるほど。そちらの女の子が抱っこしている魔獣は勝手に危害を加えることはありせんか?もし、国で暴れると検分の後吟味して最悪死刑になりますよ」
「大丈夫です。私が契約しておりますので、しかし襲われるようなことがあれば正当防衛は構いませんか?」
「えぇ、それが正当防衛であれば大丈夫です」
「分かりました」
「では、入国料として銅貨二枚と銭貨五枚を頂きます」
「えっ?」
「…入国料として人間分銅貨二枚と魔獣分銭貨五枚です」
「「…えっ?」」