決戦の地
戦いが始まってから1週間が過ぎた。
9999人いたクローンは日に日に数を減らし、残った数も少なくなった。
神山はXの的確な指示によって生き残ることができた。
「神山聖也、国からおまえあてに手紙が届いてますよ。」
神山は顔をしかめた。
「嫌な予感しかしないな。」
黙って封筒を破り、中から手紙を取り出した。
・・・神山聖也様。
政府の行った実験によって多大な迷惑をおかけいたしました。深くお詫び申し上げます。
「のんきな奴等だ。」
しかしながら、このままですと無関係な国民に被害が及んでしまいます。事実、戦いに巻き込まれた数名が命を落としております。
政府の調査によりますと、クローンの数は残り753人です。ここで、あなた方754人を東京都八丈島に御招待いたします。そこで最後の1人になるまで決着をつけてください。日にちは3日後です。なお、期日にいらっしゃらない場合はあなたを抹殺させていただきます。
また、期日までの間戦いを禁止します。戦いを行った者は無条件で抹殺いたします。
それでは3日後にお会いしましょう。
「ふざけやがって・・・」
神山は手紙を破り捨てた。
「どうします?ここに残って国と戦うか、八丈島に行って自分自身と戦うか。決めるのはあなたです。どちらにしろ私はあなたをサポートしますよ。」
「X、どうしてそこまでしてくれるんだ?おまえは俺を救ったところでメリットはないだろう。」
仮面ごしだからわからないが恐らくXは笑っていた。
「私はこの国を潰したいだけですよ・・・」
「俺は八丈島に行くことにする。俺は・・・10000人の頂点に立つ。おまえとならできる。」
神山はXの肩を叩いた。
「ふふ・・・神山聖也、わかりました。私も八丈島へ行きます。とりあえず準備をしましょう。私もあちらに行く以上戦わなければいけないでしょう。準備は私がやりますので、あなたは期日まで自分の好きなことをなさってください。」
「いいのか?」
「あなたもこれからは本当に死んでしまうかもしれません。これが最後の自由な時間になるかもしれません。心の整理も必要でしょう。」
神山はうなずいた。
「・・・助かる。行きたい場所があるんだ。もう出発させてくれ。」
「お気をつけ・・・なくてもいいですね。」
「ふっ・・・」
神山は廃墟を出て図書館へ向かった。
久しぶりに堂々と歩いた気がする。
ここ数日常に命を狙われていたから無理もない。
図書館に入ると神山は地下室に入った。
「・・・あのビルといい、ここといい・・・俺は地下に縁があるみたいだな・・・」
本棚の一番奥の本を出した。ここは神山の勤める新聞社が集めた情報が集めてあり、新聞社の記者しか入れないのである。
神山はクローン実験のページを開いた。
「20XX年8月7日
『神性プロジェクト』が始動。1人の胎児からDNAを採取し、10000人のクローンを製造した。
プロジェクト始動から数年、1つのセンサーの反応が無くなる。死亡したと予想される・・・これが実験の概要か。」
神山は大切な部分をメモし、図書館を出た。
「おかえりなさい、神山。今日はゆっくり休んでください。」
「ああ・・・そうさせていただく。」
3日後に八丈島での壮絶な殺しあいに備え、神山は廃墟で深い眠りについた。