戦いのゴング
多くの人間が殺し合うバトロワ系が苦手な方はご遠慮ください。グロテスクな描写はあまりございません。
ある日俺は自分と全く同じ顔、声、身長・・・
そう・・・
自分自身と出会った。
そいつは俺を見るなり手に持ったサバイバルナイフで襲いかかってきた。
今のご時世、護身用の銃の所持が認められている。
俺は目の前にいる『自分』を撃ち殺した。
「神山聖也、君は不幸な実験に巻き込まれてしまったらしいね。」
背後から声がした。
「誰だ!?」
声の主は細い目のついた仮面をつけていた。
「私は・・・スパイだ。この腐り果てた国を潰すためのね。Xとでも呼んでくれ。職業柄素顔をさらすわけにはいかないんでね。」
「さっきの奴はなんなんだ?」
俺はとにかくパニックだった。
「この国の実験結果だよ。日本は遂にクローン人間を作ってしまったんだ。
君はその実験体だ。もし事故や病気で体の一部が損傷してしまった時、クローンから体の一部を移植することができればそれは医学の進歩に繋がるという国の考えだよ。
国は君のクローンを9999体作った。そして、なにかのミスでそのクローンに実験の事実が伝わってしまった。
自分が誰かに体を移植するために生まれた偽物だと知ったクローンはどうすると思う?」
「殺し合いか・・・」
「そう。自分以外の自分を全て抹消して『本物』になろうとする。
君は命を狙われている。今君がすべきことは、偽物から身を守ること。すなわち・・・」
「偽物を皆殺しにしろってことか?」
「物分かりがよくていいねぇ・・・君が生き残るために私は協力しようと思う。
まずは、この地図に印した場所に来てくれ。詳しい話はそこでする。」
Xは近くに停めてあった黒いリムジンに乗って去っていった。
「話が・・・急すぎる。この場所は・・・渋谷か。」
俺は渋谷へ急いだ。もしかすると電車内でも命を狙われるかもしれない。
俺はサングラスと帽子で顔を隠し、地図に印された場所にたどり着いた。
ビルの廃墟の地下であった。
地下室にはXが待っていた。
「やあ、待ってたよ。」
「俺に協力とはどういうことだ!?」
俺はXに掴みかかる。
「落ち着け。私の話を最後まで聞いてくれ。」
「命が危険なのに落ち着いてられるか!!」
Xは俺の手を振りほどいた。
「とりあえず君は神山、武器がハンドガンだけではこの先危険だ。
ここにあるものは好きに使ってくれ。武器は色々あるし、自動車やバイクやヘリも用意できている。
クローンは9999人。徒党を組む者もいれば裏組織を使ってくる者もいるだろう。最後まで生きぬいてくれ。」
俺は小型で連射性能に優れたものを4つほど鞄にいれた。
「あいにく、死ぬつもりはない。これからよろしく頼む。」
「そうだ、言い忘れるところだった。神山の勤める新聞会社には神山は取材のため数ヶ月会社を離れるよう言ってある。君は戦いのことだけ考えてくれ。
君は今日からここに住んだ方がいい。君の住所はもうクローン全員に伝わっているだろう。」
「そうさせていただくよ。」
こうして俺の戦いが始まったわけだ。Xが何者かも、あと何人クローンがいるかもわからない中、明日からの戦いの激しさを俺はまだ知らない。