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自分の力、他人の力

ブルーム・ストリームがもつ大型病院。ブルストのメンバーが入院するほか、事件被害者などが事情を聞くために入院したりもするここに、


「カリー!大丈夫?!」

「カリーのおっちゃん、生きてるかー?」


クリスティと、ピアリークラントアッシュが来ていた。昨日の外来船乗組員との戦いで負傷した彼は、ブルストが誇る素晴らしい医者によって、脳を打ち抜かれたにもかかわらず回復に向かっていた。


「ああ、大丈夫だ。それより、事件はどうなった?」

「あのさあおっちゃん、今は事件より自分の体のこと心配しようぜ?」


大柄なカリーでも楽々収まる巨大ベッドに腰掛けてアッシュが言う。といっても、1週間もかからず退院できるだろうと言われているためそこまで心配しなくてもよさそうだが。


「事件は、犯人グループ全員確保で無事解決した。カリーもお疲れ様」


とりあえず、とさっき自販機で買ってきたジュースとお茶から、アッシュがジュース、カリーがお茶を選び、私もジュースをとって飲み始める。

しばらく事件のことを報告し、例の敵スナイパーの話になったところで、アッシュが顔を手で覆った。


「まさかのまさか、あいつを雇ってるとはねー、予想外。情報屋として見せる顔がないよ!」

「あいつ?有名な人か?」


すかさず話に食いつくカリー。

私はもうその正体を知っていた。怜さんが撃った後、あのスナイパーがいたビルに向かった私が見たのは、最近アメリカで起きた大統領補佐官暗殺事件の犯人。ヘッドショットしか狙わないという謎の美学を持った凄腕のスナイパーだ。噂でしか聞いたことがなかったが、同じスナイパーのクリスティとしては見逃せない存在であった。不思議に思ったのはそれが外人ではなく日本人だったということ。


「驚いたよ、事件の顛末を知った時はさすがクリスピーたんだって思ったのに、まさかその怜さんがやったことだとは」

「あの怜がやったのか?」

「そう。なぜか私のいた屋上まで上ってきて、私の銃を使って撃った」


悔しい。なんであいつにできることが私にできないのか。なんで私にしか使えないはずのあの銃をあんなに軽々、当たり前のように命中させて。


「まあいいんじゃない?ブルストの中ではクリスピーたんの仕業ってことになってるし」

「いやだよ、私がやったわけじゃないのに。あいつ、私よりずっと銃の扱いに慣れてた。本当に何者なんだか」

「クリスティ。あいつと関わるな。ろくなことがない」


ばーん、とサイドテーブルを思い切り叩いてカリーが言った。その目はいつも以上に本気で、銃弾の軌道さえ読んでしまいそうなほど真剣だ。


「私から関わりたいだなんて思ってない」


私は首を横に振って、静かに言った。冷たい声に、その場の皆が凍りつく。


「そうか、それならいい」

「く、クリスピーたん、顔怖くなってる。許せないのはわかるけど落ち着いてったら」


やっと凍結から解けたのか、クリスティの肩に手を置いて顔を覗き込むアッシュが言った。


「__ああ、ごめん、私はもう遅いから帰るね。また命令が来た時に」

「待って、クリスティ」


何か言いたげな顔をしたアッシュ。

バイトは今日はないはずなんだけど、ていうか、あの恥ずかしいバイト早くやめたいんだけど、アッシュのスマホから私の写真抜き去りたいんだけど。


「なんでもない、私も帰る」


不安そうで言おうか言うまいか迷っていた顔はすぐに消え去り、アッシュにはいつもの白い歯を見せる笑顔が戻っていた。

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